242 〈呪霊灰山 8,9合目 灰影庭園〉28 宝物庫の守護者 銀砂宝環機HGNエングレイブドAR16

「むぅ。今ので壊せない何て、思ったよりも硬くて厄介ですね。しかも、再生してしまいましたし……」


 チエの言う通り、コアグラスは今まで壊して来た砂時計とは違って、ガラスの部分が再生する見たいだしこれはほんとに厄介だな。流石に、さっきコアグラスから零れた砂が回復するって事は無いよな?


『GOGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!』

『GUGIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII!!!!!!!!!!』


 二つの頭が今までとは異なる咆哮を上げる!


「なっ!?」


 グォゴゴォオオン!!! 大小様々な闇を濃縮した様な黒い球体がエングレイブドの周囲に出現する。そして、それらを繋ぐ様に紅い光がスパークする!!


 もしかして、闇と雷のギミックの力の同時発動!?


 Σしまった! エングレイブドがギミック発動を一工程づつしか進めて来ないから、てっきり同時発動しては来ないと思い込んでたわ!

 頭二つ有るんだし、何よりもこのフェイズに入る前にも、散々ギミックの同時発動して来たのに。


 ジジジッ!!! ヴィィィィィン!!!! カッッッ!!!!!! エングレイブドの装甲表面を光が明滅する様に駆け抜け、赤雷がフィールドに放たれる!!


次元遷移ディメンショントランジション!!』


 ドガズドドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!

 桜の『次元遷移ディメンショントランジション』が闇の機雷と赤雷が超反応を引き起こす前に発動し、赤い雷光で世界が照らされる瞬間を遷移の直前に垣間見る事になった。あっぶな。


「ふぅ~、焦ったよ。今のは危なかったね。桜、ナイスだよ」

「私は警戒して居ましたから、これ位は……」

「それでも、助かったよ。桜」

「はい!」


 褒められて嬉しそうな桜を見て少しほっこりする。


「さてと。元の空間に戻る前に、ギミックの同時発動で引き起こされる事を少しは予想して置かないとね」

「うむ。そうじゃな。あやつの次の攻撃は、金属性と水属性の力の同時発動になるはずじゃな」

「パッと考えられるのは、岩礁地帯の様な物がフィールドにいきなり作られる感じでしょうか?」

「うむ。まあ、そうなるじゃろうなぁ」


 その後の攻撃はログを見る限り、土属性と遅延のギミックなのだが。

 クラックヘルフォールとスタグネイトスクラップ? あんまり相性が良さそうに思えないけど、これは同時発動して来るのか? そう思いエナと桜にその事を話すと。


「ふむ。そうじゃな。相性も有るじゃろうし、必ず同時発動するとは限らんのではないのかのぅ?」

「そうですね。あのロボットさんは、ギミック効果の同時発動以外にも時間差発動も出来ますし。そもそも、次の攻撃が金属性と水属性の同時発動と言うのも、あくまで私達の予想でしかないですからね」


 Σくはっ、時間差……。それも有ったか!

 でも、大体予想は出来たから良いのか?


「う~ん。予定された行動なのにめんどくさいよぉ!」

「エルナどんまいなのじゃ!」

「そうです! 主様! 戦闘は水もの流れものです! 予期して置くだけでも十分なのです!」


 はぁ~、何はともあれ。エングレイブドの居る通常空間に戻った瞬間、エングレイブドがギミック攻撃をして来るのは間違いないだろう。


「取り合えず、戻ったらサレスは飛ばないとね」

「まあ、そうだな。エングレイブドが次使って来るギミックは、どちらも地面に近い方が危ないしな」


 エングレイブドはデカいからサレス以外は基本空中戦だ。

 だから通常空間に戻ったら、エングレイブドの上を取る心算で高度高めを維持するのがベストかな?


「それじゃ、戻るよ!」

「うむ!」

「りょなのじゃ!」

「はい、なのです!」

「おう!」


 桜に元の空間に戻るため、『次元遷移ディメンショントランジション』の揺り戻しによる遷移をお願いする。

 ちなみに、『次元遷移ディメンショントランジション』は行って戻るまでが一応セットとなっているのだ。


「元の空間に遷移します!」


 ブン! 戻って直ぐに目に入ったのは灼熱する赤錆に染まった空間で、エングレイブドの右の頭が待ってましたとばかりに咆哮を上げる姿だった。もちろん直ぐに、フィールドの上空高々度へ急上昇する!!


『GOGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!』


 ドドドドドドドドドォ――――――――――――――ン!!!!!!!!!!

 灼熱する赤錆の大地が、煮え立ち噴き上がる様に幾つも鋭く隆起する!!


 相当な高度まで、熱気を孕んだ赤錆塗れの鋼鉄の柱が突き刺す様に隆起するのだが、予めこれを予期してフィールド上空に急上昇していたので、余裕を持って回避する。しかし、これはギミックの同時発動じゃないよな?


『GIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!』


 ズドドドドドドドパァ――――――――――――――ン!!!!!!!!!!!

 ドゴゴゴゴォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッ!!!!!!!!!!!!

 部大な量の水がフィールド全体に蒸気と共に噴き上がり大爆裂する!!!!!


「うみゅ! 『あめの霊冷清めの力満ち、悪しき魔禍事鎮めし天の氷壁をこの地に齎さん! 『氷天浄壁』』なのじゃ!!」


 チナがギブシンサラマンダーの時の様に、フィールド下部で起こった大爆発とエルナ達と隔てる様に透き通った高い美しい氷壁が蓋をする。


 ドガガガガガガガガガガガガガガガガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!

 フィールド全体で起こった水蒸気爆発は赤錆塗れの鋼鉄の柱を散弾の様に炸裂させ、水蒸気爆発と相まって凶悪な威力を発揮し氷壁が見る間に穿たれ削られて往く!!


「みゅみゅ! 追加術式なのじゃ!! 『悪しき魔禍事説く鎮めんがため! 天の氷壁よ元凶を押し潰し封滅せよ!! 『氷天浄壁 封潰』』なのじゃ!!!」


 ヒュゴッ!!!! ビシバキ!!メキメキメキメキメキゴキィッ!!!!!!!!

 今にも砕けそうだった氷壁が、見る間に厚みを増し氷晶を急成長させて行く!!


「落ちるのじゃ!!」


 ズウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!

 チナの小さな手が振り下ろされると、地上に向かって『氷天浄壁』が落ちて往く!


『『GAGA!!??』』


 ドガッシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!!!!!! 蓋の様に天を覆う氷塊が、まるで逃げ場など無い様にフィールド下部で起こっている現象事、エングレイブドを押し潰す!!


 実際の所『氷天浄壁』のサイズは、フィールド全域に及ぶそれをカバー出来る程大きくは無かったのだが、発生源であるエングレイブドが押し潰された所為か、追加の水蒸気爆発が起こらなくなる。そう、水の放出が止まったのだ。


『『GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!!!!!!!』』


 ドン!!!! ズズズゥッ!!!!!! エングレイブドの雄叫びが上がると、地上を埋め尽くす氷塊やら赤錆塗れの鉄塊が、地面の下に飲み込まれて往く!

 これは、クラックへルフォールを使って脱出って所か?


 フィールドが掃除されて行く様にどんどん綺麗になって往く。

 まあ、赤錆だらけだし、灼熱する赤錆の嵐は吹いているんだけどね。


『『GOGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!』』


 綺麗に為って来たとは云え、エングレイブドが半ば氷に埋まりながら元気に吠え動き出そうと上半身を暴れさせる!


 再生能力が有るとは言え、エングレイブド元気過ぎないか?

 コアグラスが再生するのを見て、ちょっと嫌な予感がしてたんだけど。

 もしかしなくとも、コアグラスから零れた砂も回復してるんじゃないか?


 う~ん。何でこんなに気になるんだ?

 そうか……、これは『直観』のスキルがそう訴えかけてるんだ!

 そう気が付くと、『直観』が既知の情報から俺が気付く可き事を脳裏に提示する。


 エングレイブドは自身を赤錆化した。

 それは、コアグラスの中の砂も赤錆化してるって事になる。

 そして、エングレイブドの発動したパッシブ効果で赤錆は再生する!


 うん。これは今の攻撃を続けても倒せないな!

 一撃だ。一撃でコアグラスを破壊しないと、良くて最初から悪くて全滅だな。




※エルナ達はエングレイブドがギミック攻撃を空撃ちして、自身の攻撃スケジュールを勝手に進める可能性を考慮して居ませんでしたが、今回の場合その危険性はありません。何故ならある理由でエングレイブドは馬鹿みたいに強化されているのですが、それと同じ理由でエルナ達なら倒せる様に調整されているからです。

まあ、調整されていてこの心折設計なのですが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る