222 〈呪霊灰山 8,9合目 灰影庭園〉8 灰影夜天法鬼シャヌルヤクシャ3
夜天法鬼が猛烈な熱と共に、黄金の太陽と化した大鉞に縦に真っ二つに焼き切られる!
また闇夜を、『ローリングサンシャイン』が真っ二つに切り裂いた時点で天地逆転は元に戻っており、半身と為った夜天法鬼が砂地の地面にドシャァッ!!と落ちる。
もちろん、討伐のアナウンスが流れるまで油断はしない。
『『クッハァ! カァーカッカッカァ!!』』
真っ二つの状態で、地面に横たわる夜天法鬼が笑い声を上げる!
「ふむ。縦に真っ二つだと言うのに器用な奴じゃのぅ」
エナの感想は最もだが、縦に真っ二つの状態で夜天法鬼が笑うので、笑い声が重複して中々に五月蠅い。
う~ん。これは、討伐アナウンスは流れそうに無いなぁ。
『『マサカマサカ! 【呪鬼】様二力ヲ授カッタト言ウノニ、此処マデノ失態ヲ晒ストハ思ワナカッタゾォッ!!』』
ズリュゥゥゥッ!! 夜天法鬼の体の断面から、タールを思わせる様な真っ黒な闇が流れ出て断面同士を接着する。
スゥ―っと滑る様に地面から浮き上がり、夜天法鬼は体の調子を確かめる様に首をゴキゴキと鳴らす。
『サア、今度コソ貴様ラヲ、【呪鬼】様ノ元へ送ッテヤル!!』
夜天法鬼の内包するエネルギーが瞬間的に激増する!
『『夜影侵蝕同化』『灰世天狗影隠し』』
能力の発動と共に、夜天法鬼は激増した筈のエネルギーの反応事存在が希薄に為り、闇夜に体が溶け出す様に消えて行く。その姿は『ナイトビジョン』でも確認できず、『星覚』でも夜天法鬼の存在を確認できない。当然『星覚』で分からないのに、スキルLVが上がっていない『自然一体』では到底把握出来ない。
これ、模造神像が使って来た『蝕光阿修羅暗空』に雰囲気が似てるな?
敵が何処に居るのか分からない所が特に……。
『灰獄刺影刹』
!? 胸の辺りに熱を感じたと思ったら、次の瞬間エルナの体から黒い刀身が生えその周囲が灰へと変わって往く。
「がふぁっ!?」
口から星輝の輝きを思わせる紅く光る血を吐き出し、エルナが大ダメージを受けた事をHPバーが知らせる。これは、防御無視の貫通攻撃!?
直ぐに黒い刀身は消え、灰化して崩れた胸の傷口から大量に出血し、エルナのHPバーがどんどん減少して往く。
「エルナさん!?」
「ふに!?」
「主様!?」
「エルナよ大丈夫か!?」
攻撃を受けたのはエルナだけで、皆が心配の声を上げる。
大丈夫とジェスチャーをして直ぐに、霊命之器シュナセラフィアにチャージされている生命エネルギーを解放し、出血であっと言う間に瀕死状態になっていたエルナのHPを回復。当然、灰化した傷口の回復が【紅月】の呪いで阻害される事も考慮して、『
『ムゥ……! マサカ、今ノデ仕留メラヌトハ……! シカシ、ソノ娘ガ貴様ラニトッテ一番重要ナヨウダナ!!』
むむ。夜天法鬼はこのパーティの中心が、エルナだと見抜いてエルナに攻撃して来たのか。しかも、今ので確信を持ってしまった様だし、夜天法鬼に積極的に狙われてしまいそうだ。うへぇ、厄介だなぁ。
しかしだ。夜天法鬼の声は聞こえるのだが、このフィールドから存在を一切感知できない。それは、他のパーティメンバーも同様でこれは非常に不味い。これを打破出来ないと、夜天法鬼に一方的に殴られる状態が続いてしまう。
「とにかく守りを! 『
桜がとにかく、夜天法鬼の攻撃に備えようとエルナの守りを固める!
『カァーカッカッカァ!! 無駄無駄ァ!! 『灰獄断影斬』!!』
「なあっ!?」
しかし、夜天法鬼の攻撃は、『
『マダマダ行クゾォーッ!! 『灰獄無明刺突』!!』
「馬鹿者が! それ以上はやらせぬ! 『空隙爆氷』!!」
ドバシャキィン!!!! 夜天法鬼の追撃に合わせてエナのアーツが発動し、辺り一面の空間が氷で埋め尽くされる!!
『ウガガァッ!?』
氷の中に、エルナに突きを放たんとする夜天法鬼のシルエットが一瞬だけ浮かび、形が崩れる様にして消えて行く。エナの作り出した氷は、夜天法鬼が攻撃を仕掛けられない様に、エルナ達の周囲を隙間なく埋め尽くしたのだ。
ちなみにこの氷、自分達には影響がないようだ。流石はエナ、神様なだけあるな。
もちろん、この隙に回復など済ませて置く。
「ふむ。やはりあやつ、このフィールド内におらんようじゃな」
「ええっ!? 『夜影侵蝕同化』何て言うから、フィールド内に居るのかと思ってたけど違ったの!?」
「うむ。それはブラフ、もしくは攻撃時にこちらに攻撃を悟らせぬようにするための小細工じゃろう。もしこのフィールドに潜んでいるのなら、あやつは直ぐにわしの氷を何とかしようと動くはずじゃ。しかし、あやつに動きはないし、次元空間の感知に長けた桜には今現在も、フィールド内にあやつの存在を感知する事が出来んのじゃろう?」
「はい、エナさん。確かに今も感知出来ないです」
「ふむ、ならば間違いなかろう」
うわぁ、これは名前に騙されたって感じだなぁ。
「でも、私が感知できる他の次元に感知範囲を広げても、敵の反応が全く出ませんよ?」
「それは恐らく。彼奴等の世界あるいは、それに近しい次元空間に潜んでおるのじゃろう。なあに別に無理をせずとも、あやつがエルナに攻撃を仕掛けて来た瞬間に、わしらカウンターをお見舞いすれば良いだけなのじゃ。それに、『空隙爆氷』はちゃんとあやつにダメージを与えた様じゃし、桜の影鎖で捉えられるじゃろう」
という訳で、『空隙爆氷』の効果が切れる前に仕込みをして置く。
桜は『
サレスは、
ちなみに、エナは『透龍真水波』の発動を待機、チナは自身のオリジナルアーツ『氷天静河・氷獄竜牙』を使う心算のようだ。『氷天静河・氷獄竜牙』は、『空隙爆氷』の完全な上位互換アーツだし間違いなく効くだろう。
う~む。これ、もしかしたら過剰攻撃かも知れないな!
「さあ、『空隙爆氷』が解けるのじゃ。皆準備はよいな?」
「うん。もちろんだよ!」
「ふにゅ! わちもバッチリなのじゃ!」
「大丈夫です。行けます!」
「主様を傷付けたアイツを、わたし許しません!」
「ああ、この丸太の必殺アーツならいけるだろ」
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