221 〈呪霊灰山 8,9合目 灰影庭園〉7 灰影夜天法鬼シャヌルヤクシャ2
桜の『次元感知』が、元の次元で影の雷の猛威が引いて往くのを察知したので、戻り際に一撃入れる為に星界煌弓アステルエルアクシアに矢を番え構える。
「戻ります!」
「OKだよ」
桜の合図と共に、丁度影の雷が引いた直後の灰影庭園に戻って来る。
『ナニッ!? アレヲ喰ラッテ無傷ダトッ!?』
『
影の雷の猛威を受けた筈のエルナ達が、無傷で現れた事に動揺する夜天法鬼に紫に輝く五つの軌跡が放たれる!
『ムオッ!?』
夜天法鬼は、戻り際にエルナの放った攻撃に一瞬驚くも、エルナが最初に仕掛けた攻撃よりも矢数が少ない事に油断したのか、『
『カァーカッカッカッカァ!! ソンナモノ拙僧二ハ通用セヌッ!!』
ズドドドドドシュッ!! 紫に輝く五つの軌跡が夜天法鬼に突き刺さる!!
『ナンダトッ!!』
ドゴンッ!!! メキメキバキバキィッッッ!!!!!!!!
夜天法鬼は、エルナの攻撃がそもそ命中するとは考えていなかった様だ。
メキメキと音を立て紫の氷晶が、夜天法鬼を飲み込んで行く。立体的に為ったとは言え、真っ黒なその顔に驚愕の表情が浮かんでいるであろう事は容易に想像できる。
『クッハァ!? コレハ……堪ラン!! 『影空蝉』!!』
夜天法鬼がアーツを使用すると、スゥーッと夜天法鬼の体が二つに分かれる。
一つは氷晶に覆われドスンと地に落ち、一つは宙に浮いたままその場に残る。
空蝉ねぇ? 影分身か何かに自分のダメージと状態異常を肩代わりさせたのか?
でもまあ、これでどういう攻撃をすれば良いのか確定したな。
『クァッハッハッ! マサカ、コウモ容易ク『潜影幻身』ガ破ラレルトハ! 拙僧、【呪鬼】様カラ力ヲ授カリ少々油断シテイタヨウダ!!』
「そのまま油断していろ! 『ローリングサンシャイン』!!!!」
無駄なお喋りをしている夜天法鬼に、サレスが黄金大鉞 深山熊谷の必殺アーツの一つ『ローリングサンシャイン』を発動し、灼熱する黄金大鉞を投擲する!!
ドシュウゥゥ――――ッッッ!!!!!! 黄金の大鉞が、回転する黄金の太陽と為り夜天法鬼に向かって飛翔する!!
おお! サレスの放ったこの必殺アーツなら、確かに夜天法鬼に効く筈だ。
何せ『ローリングサンシャイン』の熱は、別次元に飛ばしたにも拘らずこちら側に影響を諸に及ぼしていたし、その上次元の隔たりも結局突破してたもんな。
『カァーカッ! ソンナ物騒ナモノ、真面ニ受ケル訳ナカロウッ!!』
ブンッ! 夜天法鬼が残像を残して姿を消す!
夜天法鬼は、単純な素早さで『ローリングサンシャイン』の初撃を躱したのだ。
黄金の太陽は、何もいない空中を通り過ぎ空高く昇り、さながら朝日の如く灰影庭園を照らす。
『カァーカッカッカッカァ!! 日ガ昇ルニハマダ早イト云ウノニ、マルデ朝ガ来タヨウデハナイカ!! シカシ、コノ灰影庭園ニ、コノヨウナ空ハ不要!! 月ナキ闇夜ニ沈メ!! 『新月 暗夜天落』!!!!』
『ローリングサンシャイン』で明るく為ったフィールドがフゥッと暗くなる。
フッと重力が消えた様に体が浮き上がり、そのまま体が空に向かって行く!
「うわっ! なにこれ!?」
「ほぅ、面白いのぅ」
「ふにゅ! 浮いたのじゃ!」
「わわっ! 引っ張られますぅ!?」
「おおっ!? 機体バランスが崩れる!」
「?」
皆慌てているが、エナは面白がっているし桜は何ともなさそうだ。
しかしこの浮遊感、もしかして空に向かって落ちてる?
その考えを証明する様に、グンっと体が空に向かって加速する!
うわ、これ男の体だったら股間がヒュってなるな。それに、暗く闇に染まった空がまるで底なし沼の様に見えて来る。
うん。でもまあ、これなら焦る必要は無い。エルナはもちろん、皆飛べるしね!
『ムゥ、誰モ天に落チヌトハ。シカシ、直グニ自由ニハ動ケマイ! 『影鬼分身』!!』
夜天法鬼が、残像を残しながら高速移動する度に分身が次々と現れパーティメンバー全員に襲い掛かる!
確かに夜天法鬼の言う通り、『新月 暗夜天落』の実質的な天地逆転の効果の所為で、少し慣れなければ自由に動けそうにない。何より夜天法鬼のあの速さだ。
ちょっと厄介かも。
『カァーカッカァ!! 貴様ラヲ我ラガ灰ノ呪界ニ送ッテクレヨウ!! 貴様ラノ死ヲ以テナァ!!』
エルナにも、夜天法鬼の三体の分身が三方から武器を振り翳し攻め掛かる!
近接戦に対応するため、直ぐ様武器を持ち替える。
『死ネェイ!!』×3
『連星箒弾閃煌刃!!』
シュィン!! 夜天法鬼の三体の分身それぞれの四本の腕から繰り出される、実質12回の連続攻撃を『連星箒弾閃煌刃』の高速斬撃機動で回避する!
回避のために『連星箒弾閃煌刃』を使用したが、攻撃アーツのなので回避と同時に夜天法鬼の分身を切り刻む事になる。まあ、どうせ効かないんだろうけど。
『グァッ!?』
『グヘッ!?』
『グヒッ!?』
三体の分身が切り刻まれ、血の代わりに黒い靄を噴き出す!
「えっ!? 今の攻撃通ったの!?」
思わず漏らした言葉に、エナが自分に向かって来た分身を処理しながら答えを返す。
「ふむ。流石に分身まであの能力を常に発動すのは無理なようじゃな。これはリソースの問題かのぅ?」
そっか。あんな強能力、幾ら何でも分身まで常に使えたらヤバ過ぎるし、それに分身が劣化するのは普通の事だもんな。でも、もし使えてたらこれは相当な地獄だったな。
『カァーカッ! ソレガ知レタ所デ如何ト言ウ事モ無イワァッ!! 『天狗影礫』!!』
夜天法鬼が分身を増やしながら羽団扇を振るうと、乱戦になっているエルナ達に夜闇の至る所から黒い礫が降り注ぐ!
流石にこれは皆、被弾を免れない。特に
「調子に乗り過ぎです! 『
チエの体から切り裂く様な鋭利な神気を宿した光の大蛇が出現する。
フィンフィン! フィィ――――ン!! 光の大蛇は鎌首をもたげ、その体から放たれる光が瞬く度に光の大蛇がフィールドを駆け巡り、夜天法鬼の本体と分身をその都度切り刻む!!
『グァガアアアアアアアッ!?! ナンダトォッ!?』
流石に夜天法鬼も光速の攻撃を避けられず、切り刻まれたその体から黒い靄を噴き出す!
「今です! 『
ジャララララララララァァァッ!! ジャキンッ!!!! 夜天法鬼の動きが止まった瞬間を逃さず、【次元干渉】で強化した影鎖で夜天法鬼の体を拘束する!
「せやーっ!!」
そのまま拘束した夜天法鬼を、桜が影鎖を操り『新月 暗夜天落』の作り出す闇夜に投げ飛ばす!!
『グォオオオオオオオオオオッッ!!??!』
夜天法鬼が、絶叫を上げ投げ飛ばされた夜天から猛烈な熱を感じる。
ドッパァ――――ン!! 闇夜が真っ二つに切り裂かれ黄金の太陽が姿を現す!
そう、『ローリングサンシャイン』が戻って来たのだ。
『ナンダトォォォッ!!??』
ジュバァシャァアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!
投げ飛ばされたと言っても影鎖に拘束されたままである夜天法鬼は、戻って来た『ローリングサンシャイン』を避ける術は無く、回転する灼熱の太陽が直撃する!!
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!?!?!』
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