220 〈呪霊灰山 8,9合目 灰影庭園〉6 灰影夜天法鬼シャヌルヤクシャ1
【呪鬼】の力で変異しすっかり姿の変わった元影法師が、自信に満ちる力とそれを与えた存在に対する感謝と畏敬の念で打ち震えている。その顔はただの影でしかないと云うのに、何故か歓喜の笑みが浮かんでいると分かるのが不思議だ。
さて、そんな元影法師が変異した灰影夜天法鬼シャヌルヤクシャの姿は、修験者を思わせる荒法師もしくは天狗と言った風体だ。一本歯の高下駄も履いてるしね。
しかし、腕は四本有り背中には一対の黒混じりの灰色の翼、平面的だった影の体は立体的な物と成り角が生え、良く知られているあの天狗の鼻ほどではないが鼻が高い事も分かる。更には身長が元の三倍以上の5mを越えるのだ。
そして、手にする獲物は腕の数に合わせて、錫杖,ヴァジュラ,羽団扇,刀を持つ。
鬼神である夜叉と天狗が混じった様な姿だ。
『カァーカッカッカッカァ!! ナントナント!! 【呪鬼】様ガ拙僧ニコレ程ノ力ヲ授ケテ下サルトハ!! 拙僧モ期待ニ応エネバナルマイ!!』
夜天法鬼が高笑いし、【呪鬼】への感謝の言葉を口にしながらスウっと宙に浮く。
翼を動かす事無く浮いたが、そもそも夜叉は一部を除き空を飛ぶんだよな。
しかも、天狗も混じってるからかなり飛行能力が高そうだ。
とは云え。敵は悠長に構えている様だし、先制攻撃させて貰いますかね!
「先手必勝! 『アステルイリスシャワーダンス』!!」
ヒュバババァッ!! 虹の軌跡を描き無数に分裂する星輝の輝きを宿した矢が、夜闇の中宙に浮き静止する夜天法鬼に殺到する!
『カァーカッカッカッカァ!! 無駄ダ! 拙僧二ソンナモノ当タラヌワッ!!』
夜天法鬼に殺到した矢は、全て夜天法鬼の体を擦り抜ける!
ホーミング能力のある矢が、何度も夜天法鬼の体を通り抜け当たりもせず、そのまま効果の終わりと共に消えて行く。
なっ! まさかのノーダメ!?
今のは単純に回避されたのか? それとも幻術か何かのギミックか?
『カァーカッカッカッカァ!! 今度ハ拙僧ノ番ダ!!』
夜天法鬼が羽団扇を一振りすると、これまた『ナイトビジョン』が働いていると言っても夜だと視認し難い黒い霧がエルナ達に足元からフッと沸き立つ。
『夜天霞影縛り!』
黒い霧が粘性を帯び、夜闇と同化する様にエルナ達に張り付き身動きを封じて行く!
『怨魔渦 式灰灰戒界 鬼剋仏降 仏聖調伏 仏哭悪鬼笑 悪鬼業魔天上天下 呪想鬼呪詛鬼天 無色灰呪鬼呪想天 蘇灰禍!!』
そのまま続けて、夜天法鬼が影法師だった時に唱えていた呪文を唱える。
その呪文が力を発揮し、闇夜の世界に瞬く間に灰色の景色が広がり染め上げる。
そして、身動きの取れないエルナ達に、全ステータス低下のデバフが発生し、更に夜天法鬼から感じる力が激増する!
「む! これはよろしくないのぅ! 『流水流転・散』!!」
エナ作り出した流水の球が、一瞬だけパーティ全員を包み込む様に現れ、黒い霧とデバフを打ち消す! しかし、自分達の自由が利く様になると同時に、エルナ達を見降ろす様に上空で静止する夜天法鬼から強烈なエネルギーが発せられる!
『夜天墜ツ! 影世ノ雷全テヲ滅セヨ!! 『夜天影世雷滅箭』!!!!』
¶灰影夜天法鬼シャヌルヤクシャが、超広域殲滅必殺アーツ『夜天影世雷滅箭』発動しました。
効果範囲は灰影庭園全域に及びます。現実的な対処をしてください。
はあっ!? 灰影庭園のフィールド全域って、中々巫山戯けた攻撃範囲だなおい!
ゴゴゴォッ!!ゴロゴロゴロ!!!ドゴゴォ――ン!!!!
夜闇の全てが、影の雷と同化し鳴動する!! これはヤバい!!
『
ドゴゴォ――――――――――――――ンッッッッ!!!!!!!!
夜が雷と為り墜ちて来る!! そこに割り込む様に、桜の『
「『アセンション』!『
そして、その数舜が有れば、桜が続けて発動した『アセンション』を加えた『
フゥオン!! 無事、『
これで、夜天法鬼が放った『夜天影世雷滅箭』をやり過ごせる筈だ。
ちなみに、『
「ふぅ~~。『アセンション』を合わせたのは正解でしたね。何時もの『
「えぇ~っ!? それ、本当?」
「はい。絶賛影の雷が蹂躙中ですね」
如何も、桜の『次元感知』スキルが何時もエルナ達を避難させる次元空間に、夜天法鬼の放った影の雷が侵入&激しく掻き乱しているらしく。
桜にはそれが、現在進行形でハッキリと分かるようだ。
うん。桜ナイス判断だ!
「さてと、元の次元空間に元の戻る前に。どうして私の先制攻撃が、夜天法鬼の体を擦り抜けたのか考えないとね」
「ふむ。恐らくじゃが。あれは、『
なるほど。それなら分からなくもない。
確かに『
「でも、夜天法鬼は遷移した様には見えなかったし、宙に浮いてる夜天法鬼に『アステルイリスシャワーダンス』のホーミングも反応してたよ?」
「それこそ。わしらが見ていたのは、『
「ああ~そっか、そう言う事か! つまり、私の初手アーツの選択ミスだった訳だねぇ~……」
う~ん。これはちょっとへこむわぁ。
夜天法鬼の名前から、これ位予想がついても可笑しくないもんなぁ。
「うむ。恐らく、エルナが『
「だよねぇ~……」
エナが「まあ、仕方がない事なのじゃ」と言い、尻尾で「うんしょ」と背伸びをして、自分のミスで落ち込む俺の頭を良し良しと撫でて慰める。
そしてそれは、傍から見てとても微笑ましい光景だし、撫でられる自分にも思わず笑みが浮かぶ。と同時になんだか不思議な感覚も湧き上がって来る。
はわっ!? ええ、なにこれ!? なんか物凄く嬉しいんですけど!?
しかも、エナに頭を撫でて貰って、めっちゃ癒されるし幸せなんですけどっ!!
ああ、この湧き上がる気持ち、多分これはエルナが感じてる事なんだな!
Σはっ、もしかしてこれ、あの有名な『なでぽ』なのでわ!? そうだよな!?
はぁ~。まさか自分が、エルナを通してとは言え、『なでぽ』を実体験するとは思わなかったぜ。
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