191 蘇生した村人達への対処

「ここは……? 私は確か足の治療を受けていたはず……、それに何でこの服を着ているんだ?」

「いっつぅ……!? ここはどこなの? わたし何でこんな場所に……」

「んぅおや? 此処は御山の上かのう? んん? それにしても腰が軽いのう!」


 蘇生した村人達が目を覚ました様だ。

 あとお爺さんの腰が軽くなったのは、その身体が出来たての新品だからな。


「意識が戻ったぞ! 本当に蘇生したと云うのか!?」

「まさか本当の奇跡を目に出来ようとは……」

「これは、エルアクシア様に並ぶ創天の巫女だと言う話も納得出来ますなぁ」


 フロイドさんと姿を見せた他の修行者達は、目の前で起こった事に何やら納得している模様。反応は上々、村人達も多少混乱してるかもしれないが問題なさそうだな。


 でも、つい勢いで村人達を蘇生しちゃったけど。

 これって、村人達をパープシャル村まで送らないと行けないよな?

 う~ん。村に戻ってから蘇生した方が良かったかなぁ?


「パープシャル村の皆さん、お話良いですか?」


 蘇生した村人達の中で、一番しっかりしてそうな髭のおじさん話し掛ける。


「ええっと、あなたは……?」

「あなた達の村の依頼を受けた、冒険者のエルナと言います」

「ええっ!? 村が冒険者に依頼を!?」

「あれ? もしかして心当たり有りません?」

「心当たりですか……つっ!?」


 如何やら灰呪行僧に治療を受けた村人達は、その瞬間から意識がぼんやりとしていた様で、その後村で起こった異変の事は全く覚えていないようだった。

 なので一から説明したのだが、「まさかあの修行僧の方が!?」と驚き信じられないと云った様子だった。だが翌々考えて見たら、その修行僧の顔も名前も思い出せないのだから、意識を取り戻した村人達は首を傾げるばかりだ。


「エルナさん達が村から依頼を受けた冒険者だと言うのは分かりました。ですが、御山は今大変危険な状態なんですよね? 私達は如何すれば?」

「それなんですけど。ここに残るのと、村に戻るのどっちが良いです? 村に送る事も出来ますけど、多分ここの方が安全ですよ? ここの修行者の皆さん強者揃い見たいですし、下手に移動するより安全たと思います」

「そ、そうなのですか!? しかし、ここが安全なのは分かりましたが、食糧などは如何すれば……」

「あ、もちろん飲み水や食料は、幾らでも用意できますよ」


 共有倉庫を通して、7ショッピングモールの施設から幾らでも手に入るからな。


「むむ……ならば、ここに残った方が」


 Σってそうだ! 一番良いのはアルケシオン島に一時避難して貰う事なのでわ?


「あ、今思い付いたんですけど。私の所有する小世界に、一時避難すると云うのは如何でしょう?」

「え? 小世界……ですか?」


 あら? この髭のおじさん小世界の事知らない見たいだな。


「おんやぁ? お嬢ちゃん、もしかして神様なのかい?」


 お、こっちの腰が軽くなったお爺さんは少し知ってる見たいだ。


「私は神様じゃないですけど。でも、この二人は神様ですね」


 そう言ってチナとチエを指差す。


「んにゅ? わちはエルナの守護神ちゅごちんなのじゃ!」

「はい! わたしは主様の眷属神なのです!」


 二人が元気よく手を挙げて返事をする。かわいい。


「と言う訳ですお爺さん」

「お嬢ちゃん……、寧ろ普通の神様より凄そうなんじゃが?」


 六人の村人達に、取り合えずアルケシオン島の様子をゲート越しに見せた所。

 皆喜んでアルケシオン島への一時避難を受け入れてくれた。

 パープシャル村の皆さんは、山育ちだから海に興味津々だったんだよね。

 なので。スフィーさん達に保護した村人達を預かって貰うため、そのままゲートを通りアルケシオン島に移動した。


「おいおい、ここは天国かよっ!?」

「綺麗……こんな場所があるなんて信じられないわ!」

「ひゃっほう! バカンスだぁー!!」

「ほほっ! こりゃ若返り返りそうじゃのう!」

「これが海……初めて見たよ……」

「わたしもよ……」


 ゲート越しで見た海を生で見た事はもちろん、その美しい景色は大変好評の模様。初めての海に感動している村人達に、暫し南国の海を堪能して貰った後、ゲートを再び開き島主屋敷に移動。スフィーさん達に村人達を預け、自分達は直ぐに山に戻る事にした。ちょっと餓鬼の大量発生の事が気になるからね。


「それじゃあ、パープシャル村の人達をよろしくね?」

「お任せください、エルナ様。お客様方は、私共がしっかりと御持て成しいたしますので、どうぞご安心ください」


 そう言葉を交わし、スフィーさんの美しい所作のお辞儀に見送られ、ゲートを通り修練場に戻る。ちなみに、別に必要は無いのだが、ストレス発散の為アルケシオン島で昼食を取って来たよ。


 そうして、戻って来たエルナを出迎えたのは、「バカンス、羨ましい……」と言うフロイドさん含む修行者達の声だったのだ。

 いや、バカンス行きたいと思ってるのフロイドさんだけじゃないんかい!


「Σはっ、エルナさんもう戻って来たんですか。随分と早いですね」


 フロイドさんが、最初にエルナ達に気が付いて話し掛けて来る。


「ええ、気になる事があったので直ぐに戻って来たんですよ」

「気になる事ですかぁ……。それは、エルナさん達が此処に戻って来る少し前から、急に餓鬼共の数が増えだした事ですかね?」


 千里眼の様な能力を持つフロイドさんは、流石に気が付いている様だ。


「そうです。もしかして、今も増えてますか?」

「そう見たいなんですよねぇ。おまけに、只増えてるだけじゃなくて、此処の結界の周りに集まって来ている見たいなんですよねぇ」


 おいおい。それってもしかして、餓鬼共を操っている親玉がここを狙ってるって事じゃないか?


「むむ! これは状況が変わりましたねぇ。装備を揃えた餓鬼共が、まるで軍隊の様に戦列を取って此処に向かって来ていますね!」


 如何やら状況が変化したらしい。これはもう、餓鬼共が修練場。つまり、霊穴を狙って来てるのは間違いないだろう。


¶突発強制クエスト『餓鬼の乱』が発生しました。

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『虐げられてきた時代は終わった! 我ら餓鬼は栄華を欲す!』by餓鬼王

朱厭狒緋童子により、個体数を抑制されていた餓鬼達の王が、〈呪霊灰山 7合目〉より下の全異界化領域を支配するため、エーランブラム山の霊穴と霊脈を狙い動き出した。


クエスト達成条件:餓鬼王の討伐と高速餓鬼生成陣の破壊。

クエスト失敗条件:修練場と他パワースポット三ヶ所の餓鬼達による占拠

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 !? ええ!? 突発強制クエストって、これ餓鬼共が反乱起こしてるじゃん!?

 うへぇ、達成条件の餓鬼王の討伐と高速餓鬼生成陣って、要は餓鬼王と陣探せって事だよな? 面倒くさそうだなぁ~。

 しかも、失敗条件なんてここの霊穴と、7合目に来るまでに頑張って解放したパワースポットの占拠だぜ? どう考えても嫌がらせだろ?

 はぁ~、兎に角。これは速攻で餓鬼王と陣を破壊しなければ!

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