190 〈呪霊灰山 7合目〉修練場に戻って村人達を蘇生した

 久々にフルでステータスを見て思ったのは、エルナの外部装備枠とも言えるサレスが、朱厭狒緋童子の特別討伐報の装備を全部装備して、その上追加BPも相まってエルナのステータスがまたもや大幅アップ、と云う感じだな。

 ちなみに、称号の効果でもステータス補正が付く様なのだが、ステータスに表示された数値には反映されていない模様。

 しかし、フルでステータスを見るのはやっぱり偶にで良いな。

 アーツやアビリティ関連だけでも、かなりの量があるからなぁ。




「ギャギャ……!?」

「ギャヘアッ!?!」

「グギャギャガッ?!?」

「グヘッ?」

「グギャッハァ!??」


 餓鬼共の愉快な悲鳴をBGMに、綺麗に直った金色千手阿修羅を駆り、快調に餓鬼を殲滅しながら移動する。それにしても、餓鬼は実に様々な表情を浮かべて死んで行くのだが、どうも来た時よりも餓鬼の数が多い気がすんるだよなぁ、気の所為かな?


 ちなみに、サレスは当然金色千手阿修羅に搭乗しているため、非常に楽に移動が出来ている。まあ何が言いたいのかと云うと、サレスだけ移動が楽でズルい! って事だな。


 と、そんな訳で。サレスの移動スピードに合わせる為もとい、エルナ達が楽ちんに移動するため。金色千手阿修羅の宝輪を一つを使い宝鏡を浮かせ、乗り物代わりにしたのだ。う~ん、楽ちんだ。


 修練場の近くまで移動して来ると、餓鬼共の数が多く為っていると感じていたのが気の所為では無いと確信する。何処を見ても餓鬼が視界に入るのだ。

 そう、パッと周囲を見渡しただけでも、そこかしこに幾つもの餓鬼共の群れが目に入り、正直かなり餓鬼共を倒すのにウンザリしている。


「漸く修練場が見えて来たね~。でもちょっと、餓鬼の数が多過ぎじゃ無いかな?」

「うにゅ、がき共は雑魚じゃこじゃが、数が多くてめんどいのじゃ」

「ほんとにそうですよね。もしかして祭壇を壊したからですかね? それとも、私達が朱厭狒緋童子を討伐したからでしょうか?」


 桜は原因を二つ考えてた見たいだが、実際はその両方じゃないだろうか?

 まず、朱厭狒緋童子が餓鬼玉を作れる事。祭壇は7合目より下の霊脈のエネルギーを集めて蓄えていた様に思う。それに、多分生贄に捧げられた者達のエネルギーも蓄えられて居た筈だ。

 それを考えると、餓鬼を贄に変えていたと思しき餓鬼玉が作られなくなり、餓鬼が増えるための栄養に為りそうな霊脈のエネルギーが余る事に為る。

 異界化してる訳だし、エネルギーがあればより簡単増えそうだよな。

 まあ何にせよ。この事態のトリガーを引いた俺達だよなぁ。今この山を攻略しているは自分達だけなんだからな。


 もちろん、修練場の結界周りをウロウロする餓鬼共を、全て殲滅してから修練場の結界を超えた。餓鬼共は直ぐに復活して増えそうだがな。


 結界を抜けると、霊山の息吹を感じさせる心地よいエネルギーを全身で感じる。

 思わず伸びをして深呼吸したくなる感じだ。これは、木は生えて無いけど森林浴をしている様な気分、とでも言えば良いのかな?

 と云うか皆、「んん~」と大きく伸びをして、「すぅー、はぁ~~」と大きく深呼吸してリラックスしていた。


「おや、皆さんお戻りですか?」

「わっ!?」


 まーた気配も感じさせずに出て来たよ、フロイドさん。


「おっと、これは失敬。また驚かせてしまいましたか」


 フロイドさんはそう言いつつ、何とも胡散臭そうな笑みを浮かべる。


「もしかして、ワザとやってません?」

「いえいえ、決してそんな事は無いですよ」

「ほんとですかぁ?」

「ああっ、そうだ! こちらに戻って来たと云う事は、パープシャルの村人達の行方でも掴め増したか?」


 うん。これさっきのヤツ、絶対ワザと気配消してたな。

 フロイドさんをジト目で見つつ、六名の村人達の魂を確保した事伝える。


「村人達の魂を確保したんですか……。それは……非常に残念な事です」


 何やら、ご愁傷さまですと云う様な雰囲気を出すフロイドさん。


「んん? 何が残念なんです?」

「それは、魂だけ……。つまり、死体も残らずお亡くなりに為られてたんですよね? となるともう、蘇生は不可能でしょう? それが出来るのは、癒しや復活の御業を持つ大神様方だけですからね」

「ああ! そう言う事ですか!」

「え……ええ、そう言う事ですよ?」


 そうだった、そうだった。うんうん、忘れてたよ。

 魂のみから蘇生は、転輪神ルージュネアの回帰の加護を持ってる様な人でなければ、普通は無理なんだっけな。


「それなら心配ないです。私、肉体を含めた完全蘇生が出来るので、魂だけでも全く問題ないんですよ~」

「え? ちょっと何を言ってるのか分かりませんね? 少なくとも、癒しの御業を持った大神様でないと出来ない様な事ですよ? 分かってます? つまり本物の奇跡ですよ?」


 ズズィっと、フロイドさんが詰め寄って来る。

 すると素早く、桜が無言で『ディメンションウォール』を展開する。

 うん。おっさん顔近いよ!


「あ~、そう言う話らしいですね~。でもほら私。創天の巫女らしいので、それくらい、出来ても可笑しくないんじゃないかなぁ~、なんて?」

「え? 創天の巫女……? 何それ私聞いてませんよ!?」

「あぁ~、そう言えば、フロイドさんには確かに言ってませんでしたね!」


 まるで、アクリルボードに顔を押し付けて変顔してる見たいに為っているフロイドさんに、創天の巫女であると言う事とパープシャル村で既に村人を完全蘇生させた事を、チナの証言と合わせて話してみた。

 まあ、それでも半信半疑の様なので、とっとと村人六人を復活させる事にしたんだけどな。


『パーフェクトボディ・リザレクション!!』×6


 綺麗に浄化し保護して置いた村人達の魂を解放し、『パーフェクトボディ・リザレクション』を発動する。

 エルナから光が溢れ、村人達の魂の記憶から彼らの肉体を再構築して行く。


 Σあ、服は如何しよう? う~ん。まあ、魂の記憶からお気に入りの服でも、適当に再現すれば良っか。


 フロイドさんがポカーンとしているのを傍目に、肉体を再構築して衣服も作り上げて行く。お気に入りの衣服を再現した所為か、村人達が普段から着ている様な服の感じでは無くなってしまったが、まあ良いだろう。

 具体的に言うとデートに行く時に着る様な服って感じだ。

 あ、これ、下山とかし難い格好なのでは?

 それに勢いで蘇生しちゃったけど、村人達は修行者達と違って食糧とか要るよね?

 う~ん。共有倉庫から、ショッピングモールの食品を出せば問題ないかなぁ~?


 再構築の光が治まると、ふぅっと村人達の身体が息をする。

 うん。バッチリ蘇生完了だ。


「ま……まさか、本当に蘇生したのですかっ!?」


 フロイドさんが驚愕の声を上げると、釣られる様に「おおっ!」と言う驚嘆する様な声が上がる。この修練場のフロイドさん以外の修行者達が、何時の間にかフロイドさん同様気配を感じさせず、エルナ達の前に姿を現したのだった。

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