182 〈呪霊灰山 7合目〉変異呪物クエストエネミー狂信汚染 サトラレ呪面僧

 祭壇らしき物がある場所は、日の角度と巨大な岩壁の所為で丁度影が落ちていた。

 もっとよく確認しようと、その場所に近ずくと。


『その祭壇に近づくなぁぁ……!』


 声が聞こえ、ふっと影が広がったと思った次の瞬間。

 ズドンッ!! 大きな音共に祭壇とエルナ達の間に、何か大きな物が落ちて来た。


『フシュゥゥゥゥッ……! まさか、もう現界の者共が此処にやって来るとはなあぁぁぁ……!』


 落ちて来た何かが影の中で立ち上がる。立ち上がったそれは、優にサレスの倍以上の巨体で高さだけでも5m以上は有りそうだ。

 よく見るとそいつは人型で、僧侶の様な法衣と錫杖を身に着けている。

 法衣から露出している部分は、顔も手足も毛むくじゃらでサルにしか見えない。

 ビックフットかな?


『まだぁ……先月の分を送っていないと言うのにぃ面倒な事だあぁぁ……』


 ん? 先月の分を送っていないねぇ? もしかしなくても、あの祭壇重要なのか?

 気になったので、素早く祭壇を『星覚』を意識してよく見ると。

 祭壇の下に、膨大なエネルギーが溜まって居る事が分かる。

 ふむ。となると、あの祭壇は壁の向こうにエネルギーを送るための物って事か?


『新入りどもぉ……こいつ等を始末しろぉぉ……!』


 ビックフット? が何かに命じると。祭壇に掛かる岩壁の影が一瞬大きく揺らぎ、祭壇の周囲により濃い六人の人影が姿を現す。

 現れた人影の背格好は皆バラバラだが、黒い外套と一体型と成った気色悪い木目が浮かび上がった仮面を付けて居るのは一緒だ。気色の悪いテルテル坊主の様にも見えなくもない。


¶変異呪物カースドクエストエネミー狂信汚染 サトラレ呪面僧が六体出現しました。


 ん? クエストエネミー?

 クエストって言うと、今受けてる冒険者ギルドの依頼に関係あるって事だよな?

 もしかしてこいつ等、パープシャル村の村人か!?


「にゅぅ……あの仮面呪われているのじゃ」


 チナの言う通り、あの気色悪い仮面はガッツリ呪われている。正確には呪詛だが。

 仮面の装着者の魂が、内外同時に現在進行形で呪詛に蝕まれ狂わされて行く。

 そんな様子が、『星覚』のスキルとアニマソムニアの力が合わさって見て取れた。

 外側からの物は、仮面からの物で仮面の意思の様な物が感じられる。

 それ所か。その仮面こそが、狂信汚染 サトラレ呪面僧の本体だと分かる。

 内側からの物は、多分このクエストの元凶である灰呪行僧の物だろうな。


「むぅ、わたしと同じ呪いの犠牲者ですか……」


 チエが綺麗な顔をしかめて言う。

 チエも呪詛に蝕まれ苦しめられたもんな。そりゃ複雑な気持ちだろう。


『@G%γAΟβV〆ΘE!!!!』


 意味不明な叫び声を上げながら、前衛と思われる三体の呪面僧が飛ぶ様に駆け突っ込んで来る!


影心縛鎖シャドウバインド!!』


 動きを桜が読んでいたのか、直ぐにアーツで六体の呪面僧を纏めて拘束する。

 おっと、悠長にし過ぎた様だ。とにかく、まずはこいつ等を倒して、それから解呪なり何なりして復活させれば良いよな!


「『通力岩斬』『蝕光黒断』『虚空千手』『空闘拳舞』」


 桜のアクションに素早く反応したチエは、突出した前衛正面の呪面僧の仮面にグラディオリギュムを叩き付ける! 同時に、金蝕星剣ラーフを装備した自在空手サハスラブジャの片腕が、右前衛の呪面僧を黒い剣閃を走らせ斬り付け、『虚空千手』で数を増やした無手のサハスラブジャが無傷の他の呪面僧達を殴りつける!!


『AγGא!?βҐΠ@αΑΨ%a!!』


 呪面僧が『影心縛鎖シャドウバインド』に拘束されたまま、激しく体を震わせながら再び意味不明な叫び声を上げ、グゥ~っと神経を逆なでする様な不快な感覚が突き抜ける!

 何だかよく分からないが、不快な感覚に桜以外の皆が顔をしかめる。


「ああああああああああああっ!!?」


 桜が白目を剥いて声を上げ、ビクンビクンと震える!

 直ぐに何が起こったのか察しが付いた。

 こいつ等の名前、狂信汚染 サトラレ呪面僧のサトラレとは、現実世界に実在する思考の全てが周囲に伝わってしまうと云うものだ。

 それに狂信汚染と付けばもう、精神汚染攻撃を受けたのだと分かる。


 故に、皆耐性は有るが。桜だけ耐性を抜かれたのは、呪面僧達を拘束して居る影鎖を通じて強烈な精神汚染を受けたのからだと。


「あぅ……」


 精神汚染の影響で桜が『影心縛鎖シャドウバインド』を維持できなくなり、拘束が解けた呪面僧達は狂った思念を撒き散らしながら近くに居るチエに襲い掛かる!


「しゃしぇぬのじゃ! 『樹棍氷天牙』!!」


 ドゴォッ!! ガギガキィ――ン!!!! 氷の牙を宿したロマディアルヴルの樹根が、チエに襲い掛かる呪面僧達を逆に襲う!


『クリアソウルバニッシュメント!!!!』


 カッッ!!! ドドゴゴォオオオオオオオオオオッッッ!!!!!

 氷の顎と成った樹棍に噛みつかれ、再び身動き取れなくなった呪面僧達を、眩いばかりに輝く黄金の炎が焼き焦がす! そして、更に続けざまにアーツを放つ!!


『脱魂!!』×6


 呪面僧の宿主である村人達の魂を焼き尽くす前に、アニマソムニアの『脱魂』のアーツで無理矢理呪面僧達から魂を引っこ抜く!

 当然引っこ抜いた魂は、『クリアソウル・ピュリフィケイション』で呪詛を浄化して癒し、そのまま保護する。


 魂を抜かれた呪面僧達は、体から力がガクッと抜けそのまま黄金の炎に焼かれ続ける。しかし、黄金の炎に焼かれながらも、魂が抜けて空になった身体をしぶとく仮面が操り再び動き出す。


「さっきは良くもやってくれましたね! 『因果応報・業斬』!!」


 グォン!! パカァ――――――――ン!!!! 世界が一瞬モノクロになり、『因果応報・業斬』の文字と共に縦にズレ切れ落ちる。

 泥中之蓮袈裟のパッシブ効果で精神汚染から回復した桜が、斬苦獄刑ヘルデモリッションブレードの必殺アーツで呪面僧達の仮面を叩き切ったのだ。


¶変異呪物カースドクエストエネミー狂信汚染 サトラレ呪面僧六体を討伐しました。

討伐報酬はギフトボックスに送られます。後程ご確認ください。


 おっ! どうやら今の桜の必殺アーツで倒せたようだ。

 うん。それにしてもサレス君、何もしてませんね。

 いやまあ、今の戦闘でサレスが手を出し難かったのは分かるんだよ。

 何せ、金色千手阿修羅に乗ったままだからね。


『はあぁぁ~~、たっくよぉ~使えねぇ奴らだったなぁぁ……。全く、これだから現界の奴らは駄目だなぁぁぁっ!!』


 先程の戦闘に加わらず、傍観していた僧侶姿のビックフッド? がその巨体に闘気を漲らせる。


『敗者は贄たる灰となり、勝者は贄たる灰を生み出す至炎へ至る、生死を分かつ決闘の火葬場よ! 此処に顕現せしめて炎獄を為せぇいっ!! 『灰呪・炎闘灰贄結界』!!』


¶エリアBOSS 覚大猩々僧鬼 朱厭狒緋童子がBFを構築しました。

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