181 〈呪霊灰山 7合目〉村人達の捜索を始めた

 二つの神域を作りニュイ達眷属と戯れた後、エルアクシアに朝が来るまでの間、島主屋敷で仮眠を取りながらゆっくり過ごし英気を養う。


「ん~~っ! はぁ~~!」


 グッと伸びをして仮眠に使っていたベットから起き上がる。


「さてと、そろそろ時間かな? リフレッシュも出来たし、エーランブラム山に戻って登山&探索の続きをしますかねぇ~」

「うにゅ。山登りの続きなのじゃ!」

「ですね!」

「頑張るのです!」


 リフレッシュしたチナが、エルナの言葉に元気よく応えそれに皆も同意する。


「主様。今日は、7合目で村人を探すんですよね?」

「そのつもりだよ」

「見つけた後は、一旦修練場に戻るんのですか?」

「うん。出来れば、見付けた村人達を預かって貰いたいね。その後、行けそうなら8合目を目指す予定かな?」

 

 これは、今日の予定の心算だが。村人達を確保修練場に戻って来たとして、村人達を預かって貰えるとは限らないんだよな。まあそうなると、一旦下山して村人達を村に送らないと行けないから、往復に時間が掛かるんだよなぁ。


「その村人達ですけど。管理人さんの話を聞いた限り、戦闘に為るのはほぼ確実ですよねぇ……」


 桜の言う通りなんだよなぁ。

 フロイドさんから得た情報だと。村人達は正気ではなさそうだし、何か妖怪化してそうなんだよな。

 まあ兎に角、まずは7合目を探索して村人達を見つけないとな。


「それじゃ、皆エーランブラム山に戻ろうか」

「うみゅ!」

「はい、なのです!」

「行けますよ」


 サレスも頷く。

 エルアクシアへのゲートを開く。


「エルナ様,皆様、いってらっしゃいませ。お帰りをお待ちしております」


 スフィーさんの送り出しの言葉を聞きながら、ゲートを通り再びエーランブラム山へと舞い戻るのだった。




 ゲートを通って戻って来た場所は、アルケシオンに行く前に居た修練場の管理人小屋だ。

 小さな窓から陽光が射し込み、エーランブラム山に朝が来ている事を確認した。

 予定通りかな?


「おやっ? 皆さん今お帰りですか?」

「っ!?」


 急に声を掛けられ思わずビクッとなる。

 直ぐに声のする方を見ると。フロイドさんが、そこに居るのが実に自然かつ当たり前な事である様に立って居た。


「フ、フロイドさん居たんですか!? ビックリせないでくださいよ!」

「ふむ? 何をそんなに驚いているんですか?」

「急に話し掛けられたら普通ビックリしますよ!?」

「ええ~? 私は皆さんが戻って来たのが分かったから、普通に扉を開けて小屋に入って来たんですよ? 普通気付きません? もしかして、私は影が薄いんでしょうかねぇ……」


 おいおい、声を掛けられるまで全く気付く事が出来なかったぞ?

 気配と言うか存在感? それが、この小屋と完全に同化している。

 もしかしてこれは、『自然一体』のスキルの力なのでは?


「一応聞きますけど。フロイドさんは『自然一体』のスキル持ってるんですよね?」

「Σあっ、なるほど。これは失礼しました。確かに、私はそのスキル修めてますね。いやはや、私も意識せずに『自然一体』のスキルを発動出来る様になっていたんですねぇ~。う~ん、感慨深いものですよねぇ~」

「フロイドさんそれ、修行が終わって普通の生活に戻ったら、周りの人達の迷惑になりますよ?」

「うぇっ!?」


 フロイドさん、自覚無しにスキルを使っていたのか。

 でも、それはそれとして、『自然一体』のスキルヤバくね?

 今も話をして居なければ、フロイドさんの事をこの小屋の家具か何かにしか、認識出来なくなりそうなのだ。うん。これは『自然一体』のスキル強いな。

 でも、エルナも『自然一体』をスキルクリスタルで覚えているから、LVが上がるとこんな感じで無意識に発動する様に為っちゃうのかね?


 う~ん。これは、フロイドさんみたく無自覚発動は流石にダメだよな。

 だって、自分も相手もビックリさせちゃうからな!

 うん。俺はちゃんとメリハリを付けて意識して使う様にしようっと。


 ちなみに、『星覚』スキルを意識すれば、『自然一体』を使っている相手でもきちんと認識できる様だ。よかった。

 それと、エルナ達が戻って来る前なのだが。騎士団をエーランブラム山に派遣して貰うため、朝早くパープシャル村に向け修行者PTを出発させたらしい。


「それじゃ、私達は村人達の捜索をしないと行けないので、7合目の探索をしてきますね」

「皆さんの無事を祈ってますよ。そして、可能ならば侵略者共の殲滅もお願いしますよ」

「それはまあ、出来たら私達もそうしたい所ですけど……」

「うにゅ! 任しぇるのじゃ!」

「当然なのです! わたしはわたしを酷い目に遭わせた奴らを絶対に許さないです!」


 おお、うちのちびっ子達は、騎士団が来る前に蹴りを付ける気満々の様だな。

 まあ俺も、ボスの討伐報酬とか独占したいし、やる気は有るけどな。

 それにしても、チエは元蛇竜なだけあって執念深かったりするのだろうか?

 蛇は執念深いって言うし物凄い殺気やるきだよ。

 うんうん。なので早速、村人達を捜索しに行こうと思う。


 小屋を出て修練場の結界の端まで行くと、何時の間にか修行者達がエルナ達を見送りに姿を現す。う~む。やはり『星覚』のスキルを意識しないと、まるで路傍の石の様にここの修行者達の事を上手く認識出来ない。これは何と言うか、某有名ネコ型ロボットが持つひみつ道具でも使っているのかって、言いたくなるよなぁ。

 

 結界を抜けると。7合目の岩肌剥き出しの光景が目の前に広がる。

 村人達を捜索するのなら、やはり7合目で一番怪しい場所である巨大岩壁を目指すべきだろう。まあ、略粗確実にフィールドボスも居るだろうけどな!


 サレスが再び機動仏尊に搭乗し、餓鬼共を討伐しながら壁の方に向かって移動を開始する。


「ギャギャッ!?」

「ギャッ? ギャガッゴフッ!?」


 移動すると。餓鬼共が次々とそこかしこから湧き出て来る。

 そんな餓鬼共を、無慈悲に虐殺しながら壁を目指して登山を開始する。


 ゴツゴツとした岩肌を見つつ、山を登って行くのだが餓鬼共が一向に減らない。

 と言っても、機動仏尊 金色千手阿修羅の殲滅力&殲滅速度は途轍もなく、壁の近くまでは割と直ぐに行けたんだけどな。


 壁の近くまで来て、改めてこの巨大岩壁が相当デカいんだなとよく分かる。

 巨大岩壁の高さは優に100mを超えて居そうだ。

 壁の根本付近ををサッと見て行くと、祭壇の様な物がある事に気が付く。

 ほほぅ、如何にもって感じだな。行かない理由は無いし、行きますか!

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