180 今度はチナが神域を作った
「どうです? 島主屋敷の敷地内では、ここがチナ様に一番ピッタリの立地だと思いますよ?」
手つかずの自然と言った雰囲気が有り、俺も神域にピッタリだと思う。
「と、ファタムさんは言ってるけど、チナはどうする?」
チナは湖を見てうんうんと頷く。
「うみゅ! ここならバッチリなのじゃ! あとわちも、湖まわりの土地が欲ちいのじゃ!」
へぇ~、チナも湖周りの土地が欲しいんだ。
「湖周りの土地ですか? エルナ様が良いと言うなら問題ないですけど?」
「あ、もちろんOKだよ」
「ふにゅ! やったのじゃ!」
湖周りの土地も、神域にして良いと聞いて小躍りするチナ。うむ、可愛い。
そう言えばチエが神域を作る際は、神力で神域にしたい場所を覆って神域を作っていたけど。チナは場合はどうするんだ? チナはまだ神力の使用に制限が掛かってるんだよな? エナから借りて来るとか? 一応聞いて置こうか。
「所でチナは、どうやって神域を作る心算なの?」
「うゆ? わちの神域とここを繋いで神力を持って来るのじゃ!」
ああ、なるほどね! 神域は神力を使って作るんだから当然神域は神力が満ちている。要はその神力を利用って訳ね。自らの神力を発揮するのに制限があっても、別の所から持って来て使うのはセーフって事なんだろうな。
それに、ブエナの町の神域と繋ぐ許可は前に出しているし、許可を取り下げた覚えも無いから問題なく繋げられるって事かな。
「うにゅ。まずはわちの神域とここを繋げるのじゃ」
チナの背後にゲートが開く。ゲートの向こうには、光が射し込み青く美しく揺らめく水底が映し出される。ここはブエナの湖の水底か? 神力を引っ張って来るのに一番良い場所がここって事なのかな?
「ふにゅ。神力の引き込みもバッチリなのじゃ! 【神威行使】を発動なのじゃ!」
チナは、自身の神域から引き込んだ神力を権能で制御して使うみたいだ。
チナの制御下に置かれた神力が、湖とその周囲へ広がって行く。
ちなみに、神力を使う際はチエも【神魂神体】以外の権能を発動している。
それが、【神威発露】の権能だ。【神威発露】は神力を発露し制御するための権能で、この権能は【神威発露】→【神威解放】→【神威行使】→【神威顕現】とバージョンUPして行くものだ。
しかも、ただ神に成っただけではこれら権能は得られない。【下位神】以上の称号を獲得して初めて得られる権能なのだ。
これらの権能を持たない存在は、神力を持っていても使い熟せないのだ。
序でに言うと、チナの様な神力に制限を受けている分霊とは、【神魂神体】の権能に制限が掛かって居る状態の分霊の事で、【神魂神体】が有ると神力を生み出せる様になると同時に、単純利用出来るようになるのだ。
なので、【神魂神体】=神力と言えなくもない。
まあだから、今のチナだと神水を作るのが難しいんだよな。制限の所為で自前で扱える神力の量は少ないし、上手く扱うにも量は必要だからな。
ちなみに、前にも言ったけど、本霊であるエナのBALVが3600を超えると、【神魂神体】制限が解除されてチナはめっちゃパワーUPする予定だ。楽しみだよな。
チナは、【神威行使】によりゲートの向こうから引っ張って来た神力を操作し、新たに神域とする湧水地である湖とその周囲に神力を広げて行く。
『我が巫女エルナが治めし小世界に、新たなる我が水の神域を築き、かの者の眷属とこの地に住まう者達に祝福を齎さん! 『水竜守護神域』』
フォ――――――――ン 波紋が広がる様に水色の波動が広がり、スッと世界に神力が馴染んで行く。おお、チエが神域を作った時とは明らかに違うぞ?
ボコボコッ!! ザッバァ――――――――ン!! 神力が馴染んだ影響なのか。湖底から湧き出る雪解け水の水量が、急激に増え一気に溢れ出す!
溢れた水が、辺りを水浸しにするのかと少し身構えたのだが、そんな事にはならず水が自分達の居る所に届く事もない。
溢れた! そう思った水は岸を超える事も無く湖の内側に収まっている。
それ所か、水位が上昇する素振りすらなく全く変わらない。
そして、気付く。自分達の対岸のどんどん岸が遠ざかって行く事に。
湖がどんどん大きく為ってる!? ちょっと唖然としてしまう。
湖が広がって湖岸もどんどん広がって行ってるのに、自分達の立つ地面には何の異変も感じない。少し位、揺れてもよさそうなのに。
Σあ、そっか! 神域もある種の迷宮化現象だから、空間拡張が起こってるのか!
でも、チエの時に空間拡張が起こらなかったのは、何でだろうな?
神力の使用量か? それとも制御力?
う~ん。やっぱり、『水竜守護神域』って言うアビリティだったからかな?
¶【天壌の楽園アルケシオン】に【水竜神ブエナ】の神域が形成されました。
神域形成時の盟約により、コスモプレイヤーエルナの眷属がこの神域に出現する様になりました。
空間の拡張が終わるとアナウンスが流れ、チエの神域でも起こった光が地面から立ち昇りエルナの眷属達が姿を現す。そう言えば、さっきの神域化の詠唱に、チナがさり気なくエルナの眷属の事も言ってたっけ。
「きゅきゅぅ~!」
「わふっ!」
「にゅい!」
もっふもふなウサギとオオカミ達に紛れて、光の中から元気よくニュイちゃんが出て来る。光から出て来たニュイちゃんは、直ぐにポフっとエルナに抱き着いて来る。
うん、かわいい。
「おおっ、ニュイちゃん! 三日ぶりだねぇ~♪」
「にゅいにゅい~♪」
まさか、ニュイちゃんが出て来るとはなぁ。
まあ、ニュイちゃんはエナの神域に行ってたんだし、当然その神域と直で繋がっているんだから、そりゃ出て来るよな。ま、何でチエが神域を作った時には、出て来なかったのか分からんけどな。
うむ。何か取り合えず、この無性に触って撫で回したくなる、サッラサラの白銀の髪を思う存分撫でさせて貰おうか!
「にゅい~♡」
頭を撫でられて心地よさそう目を細めるニュイちゃん。うん、とってもかわいい。
「Σみゅみゅ! 神域を作ったわちも撫でるのじゃ!」
おっと、そうだな。神域を作ってくれたチナを、ちゃんと褒めてあげないとな!
「チナも頑張ったねぇ~、偉いよ~♪」
「うにゅ!」
チナを褒めながら撫でてあげると、心地よさそうにチナの尻尾が揺れる。
しかし、チナにとってはもふもふよりも、エルナに褒められる事の方が嬉しいみたいだ。なんせ周りにこれだけ魅惑もふもふ達が居るのに、エルナに褒められる事を優先してくれてるんだからな。
ふふ、もふもふに勝った。何か嬉しいな。
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