179 神域を作ってみた
ファタムさんお勧めの神域候補地、ラパン湖にゲートを開いて移動して来た。
アルケシオン島には、エルアクシア側の時間に関係なく昼間に来る様にしていたので、外は明るくラパン湖の湖面に光が当たりキラキラと輝いている。
このラパン湖、ブエナの町の湖ほどでは無いが相当大きな湖の様で、湖面上にはチラホラと小舟が浮かび、ムンモイ達が小さな体を一生懸命動かして漁をしている姿が見えた。何だかとっても和むなぁ。
ちなみにムンモイとは、前に島に来た時にも見たアニメのちびキャラみたいな見た目と、「ムンモイ」と言う鳴き声? が特徴的な島固有の半精霊種族の事だ。
覚えてたかな?
それはそうと、この湖のデカさもそうだけど。
アルケシオン島って、実はかなりデカい島なのかも?
「エルナ様,チエ様、ラパン湖はどうですか? ぼくは、チエ様の神域に相応しいと思うんだけど?」
ファタムさんが身長さの都合上、エルナに上目使いで聞いて来る。
うむ、可愛い。
「私は良いと思うけど、チエはどうかな?」
「そうですね。このラパン湖、大きな湖でとても良いと思います。でも、ラパン湖の岸を含む陸地も、一部わたしの神域として欲しいと思うのです」
陸地も欲しい? 日向ぼっこでもしたいのかな?
「わたしは主様の眷属神ですから、その繋がりでわたしと同じ主様の眷属の皆さんも、多分わたしの神域を利用できる筈なのです」
あ、うん。全然違ったわ。
「わたしだけなら湖だけでも良いんですけど。きっと眷属の先輩方も、あそこは居心地が良いとは云っても、やはり通常空間の居場所が欲しいんじゃないのかと思うのです。それに先輩方は、ウサギさんとオオカミさんの陸上動物さんなので、陸地は是非とも欲しいのです!」
うん。真面な理由だったわ。まあでも、分かったよ。エルナの眷属と言えばもふもふ。つまり、ラパン湖の周りはもふもふランドに為るって事だよね!
チナも「もふ!」っと反応してるし、チナももふもふランド誕生の可能性に気付いた様だ。うん。ゲーム的にはめっちゃどうでも良い事だな!
「湖の周りかぁ。島民が住んで居ない場所なら問題ないと思うし、エルナ様がOKならラパン湖の岸の一部とその周辺を神域にするのは大丈夫だよ」
ファタムさんが、確認する様にオッドアイの瞳をこちらに向けて来る。
「うん。別に良いんじゃないかな? でも、こんなに広い場所を神域にするのって、結構大変だったりとかするんじゃないの?」
土地を自分の領域にするのって結構大変そうだし、広いラパン湖と一部とは言え陸地も領域化するんだよな? それは、神域にするのも変わらないだろうし、結構時間が掛かりそうだなんだけど。
「にゅ。そんな事は無いのです。ここは主様の世界なので、主様の許可があれば簡単に神域化できるのです。イージーモードなのですよ!」
あ、簡単なんですね。ならお願いします。
ちなみに、神域化したからといって、島民が湖を利用出来なくなると言う事は無いのであしからず。
「では、神域を作らせて貰うのです!」
チエの身体から神力が解放され、ラパン湖全域とラパン湖の北の湖岸とその周囲をチエの神力が覆って行く。
『この世界の主であるエルナ様より、眷属神たる我チエ・ヌイエ・ベルジープにこの地が下賜された。たった今この時より、ラパン湖とその北側一部陸地を我とエルナ様の眷属達の神域とする!』
チエの宣言が、このアルケシオンと言う小世界に響き渡り、予めチエの神力で覆って置いた土地と空間に、チエの神力がゆっくりと染み込んで行く。
チエの神力が定着すると。チエの白銀の髪を思わせる様なキラキラとした光の粒子が、湖面はもちろん地面に草木,優しく吹く風からも零れだす。
¶【天壌の楽園アルケシオン】に【白龍神チエ・ヌイエ・ベルジープ】の神域が形成されました。
神域形成時の盟約により、コスモプレイヤーエルナの眷属が神域に出現する様になりました。
条件を満たした為コスモプレイヤーエルナが、称号【神域の支配者】獲得しました。
んんっ!? 称号獲得!? しかも【神域の支配者】って……。
う~ん。これはアレかな? チエに土地を下賜したとは言えチエは眷属だし、この小世界がエルナの物である事には変わりない。だから、実質的にはエルナが【神域の支配者】ですよって示す為の称号なのかな?
「ムン~!?」
「モモイっ!?」
湖面に浮かぶ小舟からムンモイ達の驚愕の声が聞こえて来る。
驚愕の理由は簡単で、湖面に差し入れた網に大量の魚が掛かって居たからだ。
いきなりの大豊漁にムンモイ達も驚いていたが、直ぐに大喜びに変わる。
これ、神域化の影響なんだろうなぁ。
「にゅ、バッチリ神域化できましたよ!」
チエがドヤ顔で満足そうに頷くと。
「きゅきゅ~!」
「わおーん!」
と割と聞き慣れた鳴き声と共に、地面から光が立ち昇り待ってましたとばかりに眷属のウサギとオオカミ達が次々と姿を現す。
「Σふゅっ、もふ天なのじゃ!」
大量出現したもふもふ達に躊躇なく突っ込むチナ。
う~む。もふもふ塗れで実に幸せそうである。
「後でチエ様のお社でも建てましょうか」
もふもふ溢れるこの状況を無視して、普通に話を進めるファタムさん。
何と言う強メンタル! クッ俺ももふりたくてしょうがないのに……!
「お~よしよし、良い子だ。Good Boy!」
「わふっ!」
って言うかサレス、オオカミをもふもふしてるし。内なる欲求の具現か!
桜はエルナの頭の上で、「ふぅ~、アレは天然の極上もふもふベットですね~」なんて言ってる。なるほど。密集してるとそう見えなくもない?
「エルナ様、次はチナ様の神域候補地に行っても良いんですよね?」
再びぼくっ子ファタムさんが、状況を無視して話を進める。
「! あっはい、そうです!」
俺のもふもふに寄っていた思考をファタムさんが引き戻してくれたぞ。
ニコニコ笑顔が眩しいっ!
「ささ皆、次の神域候補地に行くよ!」
「了解なのです!」
「まあ、何時でも眷属はもふれるしな!」
「私は何時でも大丈夫ですよ~」
チナだけは名残り惜しそうだったが、「チナも神域欲しいんだよね? もふもふは後でももふれるでしょ?」と言うと「うにゅ。しょれもしょうなのじゃ」と納得してくれた。
再びファタムさんが開いてくれたゲートを通ると、島主屋敷の敷地内に有ると言う湖の畔に出る。小さいと聞いていたけど、実際はそれなりの大きさの有る湖で、湖の底からレーベ山の綺麗な雪解け水がこんこん湧き出している。
湖の周りは木々に囲まれていて、湖面には木漏れ日が落ちキラキラと光が乱反射してなかなか綺麗だ。それに、島主屋敷の有る所よりも標高が高いのかもしれない。
その証拠に、小さいが中々水の流れに勢いのある川が、この湖から始まってる。
所謂、川の源流ってヤツだ。
俺的には、チナの神域に申し分ないと思うけど。如何かな?
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