177 時間が有るのでアルケシオン島へ行く事にした

「今から麓に降りパープシャル村からホーンリアへ連絡を入れ、アスハイト公爵に騎士団を派遣して貰えたとしても、少なくとも一週間は掛かるでしょうねぇ」


 一週間。フロイドさんが言うには騎士団が来るまでにそれだけ掛かるらしい。

 IFO内では一週間は9日間だったよな。結構時間が掛かるなぁ。

 騎士団が来た頃には攻略が終わっている可能性も在るが、それでも騎士団を呼ばないと言う選択肢は無いだろう。相手は世界の侵略者なんだし、自分達が失敗した時の保険の意味も踏まえると余計な。

 まあ、それまでは俺達だけで何とかするって感じだな。


「……まあ、無事に麓まで降りられる保証は有りませんけどねぇ」


 ぼそっとフロイドさんが不安を口にしている。


「私達が麓までお送りしましょうか?」

「いえ、こちらは気にせずエルナさん達は村人達の捜索を続けてください。出来れば事態の解決までして貰いたい所ですねぇ」


 ふむ。不安要素は有るけど、多分何とかなるって感じなのかね?


「大丈夫なんですよね?」


「ははっ、腕利きの修行者達でPTを組ませて行かせるので多分大丈夫でしょう」


 なんだか頼りないなぁ~。


「ふ~む、分かりました。それじゃあ、騎士団の事はよろしくお願いしますね?」


「ええ、もちろんですよ」


 情報の交換はこんな所だろうか。

 まあ、騎士団が来るのか気になるけど。

 当然、理想は騎士団や他のコスモプレイヤーが来る前に、完全攻略する事だけどな。


「ふみゅ。お話ちはおわったのじゃ?」


 フロイドさんとの話が終わってのチナの第一声がこれである。

 情報収集何かは完全にエルナ役割に為ってるんだよなぁ。

 チナはフロイドさんと話をしている間ずっと、チエと一緒にカーロット帽をボール代わりにして床をコロコロ転がっていたのだ。

 もちろん、二人共とっても可愛かったけどな。

 ちなみに、桜はエルナの頭の上で寛いでおり、サレスは置物と化していた。


「うん。もう終わったよ」


「ふにゅ。しょれで、わちらはこれからどうしゅるのじゃ?」


 どうするかねぇ? 折角安地に来たんだし、一息つきたい所だよなぁ。

 ふ~む。アルケシオン島にでも行って朝までゆっくり過ごすか?


 そうだ。アルケシオン島と言えば、エルナの個人所有の神域っぽい物に成る訳だけど。エルナが許可を出せばチエの神域が作れたりしないだろうか?

 称号に【白龍神チエ・ヌイエ・ベルジープの主】とあるし、チエはエルナの眷属なのだから何かそれ位出来そうだよな。行くか。


「それじゃあ、朝までアルケシオン島で過ごそうか」

「ふみゅ! バカンスなのじゃ!」


 バカンスって。チナ、朝までだからそれ程ゆっくり出来ないぞ。

 あ、それに今丁度IFO内で2月になった見たいだな。

 なんて思ってると、チエにクイクイと袖を引かれる。


「主様! わたしの第二の生誕の地に行くんですね!」


 第二の生誕の地って……。

 Σああっ、卵が孵化したのがアルケシオン島だからか!


「楽しみなのです!」


 チエはアルケシオン島に行けるのが相当嬉しいみたいだ。

 実質生まれ変わって、神に成ったのがあの島だったから特別って事なのかね?

 うむ。にぱにぱ笑顔がとっても可愛いぞ。


「アルケシオン島ですか……?」


 あっと、アルケシオン島の事はフロイドさんは知らないんだったな。


「エルナさんが所有する小世界の事ですよ。フロイドさん」


 桜がエルナに代わりフロイドさんへ説明する。


「なるほど、創天様からのご褒美で島を貰ったんですか。いいですねぇ~、南の島でバカンス。私も暖かい南の島で、ゆっくり過ごしたいですねぇ~」


 頭の中で想像を膨らませているんだろう。目を瞑りしみじみと言うフロイドさん。


「おっと、いけませんね……。私は修行中の身……でも行きたい……しかし……ああっ……!!」


 なんか悶えてるし、フロイドさん疲れてるのかなぁ~?

 物凄くアルケシオン島に行きたそうだけど、この山で一体どれだけの期間修行してるんだろうね? 悩ませるのも悪いし直ぐに行こうか。


「じゃ、島に行こっか」

「うにゅ!」

「はいなのです!」

「行きましょう」

「そうだな。とっとと我々が行けば、彼が悩む事もあるまい」


 悶えるフロイドさんを横目にアルケシオン島へ移動するのだった。




 開いたゲートを通って出た場所はアルケシオン島の島主屋敷の玄関だった。


「御島主様、お連れの方々、お帰りお待ちいたしておりました」


 そう声を掛けて来たのは、綺麗なお辞儀でエルナ達を出迎えてくれた美しい銀髪銀眼のメイドさんだ。確か、島主屋敷とその敷地を管理しているシルキー三姉妹の長女スフィー・ベルさんだったかな?


「ただいま、スフィーさん」


 ハッと息を呑む音が聞こえ。


「……はい! お帰りなさいませ御島主様!」


 スフィーさんは感極まった様子で、目をウルッとさせ涙を流しながら改めて挨拶を返して来る。

 おおぅ!? ビックリしたぞ!? いきなり感極まって涙を流すとは、今のやり取りの何かがスフィーさんの琴線に触れたのか?


「えっと、スフィーさん大丈夫?」


「……っ! お見苦し姿をお見せしてしまい、申し訳ありません御島主様!」


 スフィーさんは慌ててエルナに謝って来る。

 どうも、あまりにも嬉しくて我慢できずに泣いてしまったらしい。


 何でもスフィーさん始めこの屋敷のメイドさん達は、こう言うやり取りを島主とするのが屋敷妖精として生まれてからずっと夢だったらしいのだ。

 なるほどね。屋敷の主に使えるために生まれ長らく待ち望んだ初めてのご主人様。まあ、しょうがないのかな?


「それで御島主様。本日はどの様にいたしましょうか?」


 暫くして漸く落ち着いたスフィーさんが、今度は隠し切れないそわそわ感をだしながら、すまし顔で今日アルケシオン島でどう過ごすのかを聞いて来る。


 うん。スフィーさん頑張ってすまし顔してるけど。エルナ達をお世話したくて、うずうずしてるのが思いっ切り伝わって来るんだよね。

 落ち着いた佇まいの中に、少女のあどけなさを残した清楚美女メイドが期待の眼差しでこっちを見て来るんだよ? そりゃ可愛いよね!


「そうだねぇ、エルアクシア側が朝に為るまでゆっくりしようと思うんだけど……」


 サッとチエの肩を掴んで、スフィーさんの前に出す。


「Σにゅっ!?」

「この子の神域を島に作りたいんだけど出来るかな?」


 まずは、アルケシオン島に自分の物じゃない神域を作れるか聞いて見ないとね?

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