176 フロイドさんから情報を得る

「なるほど。エルナさんは、冒険者ギルドの依頼でパープシャル村の異変解決のために来た冒険者で合ってるんですね? その上、使徒でも有ると?」


 こちらの事を、一通りフロイドさんに話し終えて最初に聞かれたのがこれだ。


「ええ、そうですね。冒険者は私だけです。それに、フロイドさんの言う神の使徒? に当て嵌まるのも多分私だけですね」


 そう、冒険者はエルナだけなのだ。チナは契約分霊で、エルナのギルドカードに記載はされていても冒険者と言う訳では無いし、サレスと桜は所謂仮初の身体で有る召喚体だ。チエは神の本霊だけど、別に冒険者ギルドに登録している訳では無いからね。

 それに、神の使徒に関しては、エルナ以外は当て嵌まらないからな。なんせエルナは神の分霊所か本霊を従えているし、その上大神カーベルカ―ロッタに使徒認定されている可能性が非常に高い。

 まあ、神を従えてたら所謂神の使徒とは違うだろうけど。現状エルナは、大神の使徒可能性は大だし多分間違ってはいないから大丈夫だろう。うん。


「それにしても、今エーランブラム山で起こっている事は、異界の大神を信奉する者達の侵略なのですよねぇ? 皆さんが幾ら特殊なパーティーだと言っても、これは小規模パーティー一組でやる様な依頼では無いですよ? 良く此処まで来れましたねぇ」


 フロイドさんの見立てでは。今のこの事態は少なくとも、Aランク以上の冒険者が200人位はは必要なんじゃないかと眉をひそめて言う。如何やら心配されている様だ。


「ああそれは、私達以外にこの依頼を受けられそうな冒険者が誰も居なかったと言うのも有りますけど。最初は村の周辺の異常の解決だけで、山に登る予定は無かったので……」


「それで、捜索者が居るから山に登って来たと言う訳ですか……」


 まあ、村周辺のイベントやボスの強さから、単体パーティーのクエストでは無い可能性は感じていたんだけどなぁ。

 山の道中の敵はそれ程脅威では無かったけど……って、1合目は霧の花園から既にヤバかったな! それにボスも、一部を除いてレイド仕様としか思えないヤツばっかりだったしなぁ。


「確かにフロイドさんの言う通り、もう一パーティーがやる様な依頼ではない気がしますね」


「ですが、冒険者ギルドには人員が居無いと。これはもう、ホーンリアから騎士団を派遣して貰う可きなのでは……? いや、しかし……」


 こちらの話を聞いてフロイドさんが考え込んでしまったが、こっちも依頼達成のために情報が欲しいので気にせず聞く事にする。時間は有限、時は金なりだ。

 それに、騎士団の要請とかはエルナ達が如何こう出来る案件事じゃ無いからな。


「フロイドさん。私達がここに寄ったのは、行方不明の村人達の情報が得られるかもしれないと思ったからなんです。何か情報は有りませんか?」


「Σあっそうですね。すみません」


 考え込んでいたフロイドさんが、ハッと

 おっ村人来てたの!? って……ん? 近くまで?

 近くまでって事は、修練場には着て無いのかよ!


「デリク……。ああ、此処の修行者の一人なんですが。彼がこの7合目に岩壁が出現する前、結界の外で村人達に会ったと言うのは聞いています」


 ほほぅ、壁が出来る前ね。時間経過で強化されたって事がよく分かるな。


「その話、詳しくお願いします」


 村人達に修行者のデリクさんが会った時には、既に様子が大分可笑しく為っていた様で、真面な話が出来る様な状態では無かった様だ。

 直ぐに村人達の異常を察知したデリクさんは、村人達が暴れて逃げださない様に動きを封じた上で、取り合えず浄化しようとしたらしいのだが。村人達は、奇怪な笑い声を上げながら拘束の魔法を躱した上に、デリクさんに反撃をして来たそうだ。

 で、そのまま戦闘に為るかと思われたが、村人達は直ぐに何処かに逃げてしまったらしい。うん。行方不明の村人達、完全に妖怪化してません?


 そんな事があって、何か起こるかもと念のため修練場の結界を強化して置いたら、7合目と8合目を隔てる様に巨大な岩壁出現したって訳だ。


 ちなみに、7合目までは霊気エネルギーがメインの霊脈だった物が、8合目以降は霊気の割合が減り星輝が多くなり龍脈へと変化する様だ。これは、如何考えても敵さんが龍脈から得られる星輝を独占するために敷いた壁だよなぁ。


「あれ? でもそうなると。何で7合目に上級修行者の修練場が有るんです? 8合目より先の方に有る方が修行になりそうですけど?」


「ああ、それは簡単ですよ。此処の火口跡に、霊穴が開いていると言うのも理由の一つですが。8合目以降は、力を付けた超越者あるいは神格を得た者が修行をする領域だからですよ」


「えっ!? それじゃあ今、8合目より先に凄い人達が居たりするんですか!?」


 如何やら8合目より先は強者の修行場と言う事らしい。

 だとしたら、強力な助っ人が居るかも!?


「ああいえ、今は8合目より先で修行をしている者は居無い筈です。それに、仮に8合目より先に修行者が居たのなら、侵略者に霊場であるこの山を此処まで好き勝手にさせないでしょう?」


 ですよねー。そんな強者が居たらこうはなって無いよなぁ~。

 しかも、相手は侵略者だからな。

 修行に来ている超越者なら、良い修行相手&神に成る為の功績作りになるとメッチャ頑張るだろうし、神ならこうなる前に確実に星霊宮に援軍を求める筈だからこうは為らんよなぁ。


「そうですよね~、そんな都合よく強い助っ人が居る訳ないですよねぇ~」


 わかっちゃいるけど、ガッカリしちゃうのは仕方ないよね。


「ああ、助っ人ですかぁ。皆さん強そうですが、確かにもっと人数が欲しい所ですよねぇ」


「そうだ! フロイドさん! フロイドさんが事態解決のために一緒に来て貰えたりしませんか!?」


 フロイドさん凄腕の魔法使いっぽいし、修練場の管理人何てしてるんだから弱くは無いはず!


「ええ、私ですか!? 修練場周りの餓鬼を討伐する位ならできますが。皆さんの話す様なボスとの戦いは、多分足手まといにしかなりませんよ? それに、私には修練場の管理が有りますしねぇ」


 申し訳ないと言う顔した後。「いや、ほんと良く此処まで来れたもんですよ。しかも、そのまま事態の解決までやる心算じゃ無いですかこの人達……」と、ちょっと小声で愚痴っぽく言うフロイドさん。

 愚痴っぽくなるのも当然で、フロイドさんも他の修行者の人達も、ボスには歯が立たないから此処に留まるしかなかったのだ。つまり、自分達では状況を変えられなかったのである。そりゃ悔しいし愚痴っぽくもなるわな。

 うむ。本当に助っ人は期待できない様だな。


 まあそれでも、フロイドさんが小声で言う通り、自分達が受けた依頼だし当然このまま事態の解決をする心算だ。助っ人や仲間は、最小限の方がクエスト報酬の期待できるって言うのも有るしね。


 ちなみに、他の修行者の人達も、強化した結界の維持に力を割いているので自由に動ける者は少なく、実力的にもエルナ達について行ける様な者は居無いとの事。


「ですが。エルナさん達が此処までのボスを倒してくれたお陰で、如何やら下山する事は出来そうですからねぇ。此処から数人の使いを出して、ホーンリアの領主様に騎士団の派遣を要請をしましょうか」


「あっ、それは助かります! 騎士団の伝手なんて私達にはないですから」


 ちなみに、フロイドさんはBALV2131の超越者何だって。いや、超越者なら強いのでは? って思うかもしれないが。現状神に成れず、LVキャップを外して早く神に成ろうとしているから、超越者に為っているのであってそれ程強くはないらしい。

 【神魂神体】をまだ使えず、竜化してないチナの方が何倍も強い見たいだ。

 それじゃあ、確かにエルナ達にはついて来れないよなぁ。


 それから、もし村人達を発見&確保したらここで預かってくれると約束してくれた。もちろん、村人達自身が危険な状態でなければだけどね。

 騎士団の派遣を要請してくれる見たいだし、俺達の攻略が失敗した場合の保険が出来た様なもんだ。これでちょっとは安心してエーランブラム山の攻略が出来るな。

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