175 〈呪霊灰山 7合目〉自称修練場の管理人と出会う

 弾力の有る膜の様な感触を突き抜け、修練場に張られた結界の中に入る。

 外から見たときは全く分からなかったが、結界の中は中々の密度の霊気と星輝の輝きで満たされていた。


「わぁ~、この光は何ですか?」

「ほにゅ。これはなかなかなのじゃ」

「どうやらここは霊穴の様ですね~」


 桜が目をキラキラさせて、光を見て触ろうとしたりしている。

 チナとチエも、この光景に感嘆している様だ。


 ふむ。どうもここでは、霊気と星輝の光が皆にも見えているらしい。

 何故そう思うかって言うと。お堂に行くルートの霊脈の上でも、ここ程では無いが綺麗な光が立ち昇っていたのに、皆の反応は皆無だったからだな。


「にゅ、見た所。この結界が霊気を溜め込んで、尚且つ見える様にしてる見たいですね!」


 チエが答えを言うが。如何やら星輝は見えていない見たいだ。

 エルナが高密度に圧縮した星輝は見えるのにね。


「ふみゅ。密度のたかい霊気をちょくしぇつ見て感じる事ができる。たちかに修行にはピッタリなのじゃ」


 そう言えば『霊威』って言う5次スキルを、スキルクリスタルで習得できたけど。『自然一体』の5次スキル含め、本当はここで修業して修得する物だったのかねぇ?


 それにしても、7合目のここに来るルートには霊脈は流れて来ていなかった。

 結界の所為で、この状態を察知出来なかったとしても、如何してこんなにエネルギーが満ちているのだろう?

 すり鉢状の地形に霊穴であると言う事。それに、お堂の三神に聖火神ユアクスを祀っている事からもを考えると。エーランブラム山は休火山で、これは噴火口跡って事かな?

 それなら、地表面に出て来ていない山の内部を流れる霊脈のエネルギーが、火口から溶岩の代わりに流れ出て来ているって為っても、まあ可笑しくは無いかな?


「エーランブラム山って、もしかして休火山なのかな?」

「そうですね……ちょっと待ってください」


 桜が【次元干渉】の権能使って俺の疑問に答えてくれる見たいだ。


「私の『ディメンションセンシズ』感知した所。活発では無いとは言え、マグマ溜まりを確認できましたし、この山は休火山で間違いないですね」


「それじゃあ、ここは火口跡に作られた修練場って事だよね? 休火山なんて言ったって、火山は何時噴火するか分からないのに、修練場にしちゃう何てよくやるよ」


 これは、エーランブラム山が噴火する事も考えないとダメかなぁ。

 でも、ここはファンタジーな世界だし、火山の噴火も如何にか出来るのか?


「ふみゅ。火山活動を抑えるために、万霊神水を使った祭礼の神事するのじゃと、わちは思うのじゃ!」


 流石チナ。チナの言う通り神水を使って神事をするんだから、噴火を鎮める様な効果が有っても可笑しくない。ならそうなると、水雪神レースレーアの力で、エーランブラム山が噴火しない様に鎮めてるって事になるのかな。


「そっかぁ、なるほどね。チナ賢いっ♪」


 褒められて嬉しそうなチナを、「えいえいっ♪」撫で回してキャッキャウフフを堪能していると。こちらに人が向かって来るのを『星覚』のスキルが察知する。


 多分、ここの修行者の人だと思う。サレスがまだ、キンキラ金に光る機動仏尊に乗ってい居て非常に目立ってるし、自分達が結界の外の異変には関わって無いよと、ちょっとはアピールして置いた方が良いだろうか?

 そんな事を考えていると。


「あ~、皆さん。皆さんが危険な存在でない事を、こちらはちゃんと分かっていますよ」

「えっ!?」


 もう既に話し掛けられる距離まで来ていた、ここの上級修行者と思われる人物に先に話しかけられたのだった。


「皆さんの事は、6合目と7合目を隔てる力が消えて直ぐに、拝見させて貰いましたからね」


 おおっと、この人は千里眼でも使えるのか?


「ああ、そうですね。先に私の自己紹介をしておきましょうか。私は此処の修行者達から、修練場の管理を任されております。フロイドと申します。以後お見知りおきを」


 フロイドと名乗った自称修練場の管理人は、在り来りな服に元は白で有ったであろう簡素なローブを羽織っただけの出で立ちで、容姿はくすんだ金髪に色素の薄い碧眼の冴えない雰囲気のおっさんだ。

 あと、若干喋り方が胡散臭い。悪い人では無いんだろうけどな。


「エルナです」

「チナなのじゃ!」

「チエなのです!」

「桜です」

「サレスだ」


 相手が名乗ったのだから、こちらも名乗り返して置く。

 あ、サレスはまだ機動仏尊に乗ったままだけどな。


「取り合えず、立ち話もなんですからねぇ。私の小屋に来てくださいよ」


 すり鉢状の地形のへりに立つ小屋の中でも、一番大きい小屋に案内される。

 まあ、大きいと言っても、小屋である事には変わりないんだけどな。

 ちなみに、小屋は人が住むための物なので皆しっかりとした作りだ。


「少々お待ちを」


 フロイドさんはそう言うと、小屋の扉を開け室内にフッと息を吹く。

 するとパッと室内に明かりが灯り、小屋の奥に有る暖炉の中で炎が舞う。

 今の一息で、部屋の明かりと暖炉に火を付けたのだ。このおっさん、すげーファンタジーに出て来る魔法使いっぽいぞ。

 でも、明かりはまだしも、冬なのに何で暖炉に火を付けて無かったんだ?


「あのー、何で暖炉に火を付けて無かったんですか?」

「ああ、それは普段から修行のために使ってないからですよ。暖炉だけじゃ無くて、ランプも付けませんからねぇ」


 ほほぅ、そうなのか。もしかして、『自然一体』の修得やスキルLVを上げるためかな? 聞いて見よ。


「もしかして、スキル『自然一体』の修得のためですか?」

「おっ、お嬢さん良く知っていますねぇ。その通り、スキル『自然一体』修得と鍛錬のために皆やってるんですよ。もちろん、私もね」

「へぇー、明かりを付けないだけでも効果が有るんですか?」

「そうですよ。こんな小さな事でも『自然一体』の鍛錬には為りますからねぇ」


 もしかしたら、『自然一体』のスキルLVを上げる事を考えたら、『ナイトビジョン』使わない方が良いのかも。あ、待てよ。もしかして『自然一体』って、エルナ専用装備に有るパッシブ効果の『環境適応』上位互換か?

 って事は実はこの小屋も、『自然一体』の鍛錬を進めて行くと使わなくなるのでわ?


「ま、だからこれらを使うのは、ここに来て日の浅い修行者か。外からお客さんが来た時だけですよ」


 部屋の中を見回しながらそう語るフロイドさんと、部屋の様子から小屋自体もあんまり使ってないんだなと確信する。まあ、確信したからなんだって話だけどね。


 フロイドさんは、改めてエルナ達に視線を向け話をする雰囲気を作りだす。


「おおよそ予想は付きますが。皆さんは、今この山で起こって居る問題を解決しに来た、神の使徒様方もしくは冒険者と言った所ですかね?」


「えっと、そうですね。冒険者ですし、神の使徒? についても、多分完全には間違ってはいないです」


 では、フロイドさんと情報交換と行こうかね。

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