162 万霊水窟9 熱砂半裂ギブシンサラマンダー4

 『私は砂であるエルソアレイア』の効果でギブシンサラマンダーの身体が砂に変わり、ギミックなのかどんなに取り除いても無くならない地面の砂と混ざって行く。


砂は我が意のままとなるアレイアヴォンタージ


¶『砂は我が意のままとなるアレイアヴォンタージ』の効果により、フィールドBOSS 熱砂半裂ギブシンサラマンダーの行動が万霊水窟全域に影響します。お気を付けください。


 んんっ? 万霊水窟全域に影響するって言うのは、別PTが居る訳じゃ無いから良いけど。これってもしかしなくとも、『私は砂であるエルソアレイア』が継続したままなのでは?


『グルォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオゥゥゥッッ!!!!! 『全てを平らげる貪欲なる捕食グリードエイトアッププレデイション』』


 こちらが動く前にボスが先に動き、ホール全体の地面がグッと一気に盛り上がる。砂がギブシンサラマンダーの口をかたどり、ホール全体を飲み込む流砂の大口が開く。

 ホールの入口は既に砂の下で、当然の如くこちらに逃げ場等無い。

 うん。これは丸呑みコースまっしぐらだね。

 あれに飲み込まれたら、即死なんて事は無いよな?


次元遷移ディメンショントランジション!!』


 流砂の大口に飲み込まれる前に、桜の『次元遷移ディメンショントランジション』が発動しPTの丸呑みENDを回避する。

 流石は桜。高次元宇宙精霊の権能の力は伊達では無いな。


「桜、助かったよ!」

「ふふふっ、当然の事ですから気にしなくて良いですよ♪」


 さて、元の次元に再び遷移する前に、先程のギブシンサラマンダーの攻撃で砂に埋もれたであろう、ホールの空間を確保するためにアビリティを発動して砂を排除せて置く。


『マイクロブラックホール!!』

「はい、飛ばします!」


 桜の権能【次元干渉】を使いエルナが発動した『マイクロブラックホール』を、ギブシンサラマンダーの砂で満杯の元の次元空間に出現させる。


 グォオオオンッ!! と物凄い勢いで、大量の砂が『マイクロブラックホール』の中に消えて行く。エルナ達が戻れるスペースが、ホールに出来た所で元の次元に遷移する。


「今の状態なら、これがもっと効くはずなのじゃ! 『凍風衝波 竜気氷晶』!!」


 ビシビシィッ!!!! 戻り際直ぐに、チナが『凍風衝波 竜気氷晶』のアーツを放ち、極冷の突風を纏った氷霧の竜がホールの砂を凍り付かせる!


『グォッ!?』


 しかし、この攻撃に対するギブシンサラマンダーの反応は、やや鈍い様に感じる。

 チナも手応えが微妙だったのか訝し気な顔している。


『飛閃神霊光波刃』


 凍り付きながらも不気味に蠢くホールの砂地に、チエが必殺アーツの光を宿したグランディオリギュムを冷静に投げ放つ!


 フォオオオン!! シュッ!!ズドォ――――――ン!!!! 凍り付きながらも蠢く砂に、グランディオリギュムが突き刺さり光が爆ぜる!


『グォガガッ!?!』


 むむ!? ギブシンサラマンダーは、必殺アーツを受けたと云うのに反応が鈍い。


「むぅ、効き目が今一なのです」


 だよなぁ。神力,霊力込みの攻撃何だから、精霊系のエネミーであるギブシンサラマンダーに効く筈なのに、効果が今一つって云うのは何か有るよな?


 チエの必殺アーツの光が治まり際、『チャージダッシュバーニア』で加速したサレスがホールの地面に飛び込む様に、顔面粉砕メンタルクラッシャーの専用アーツの一撃を叩き込む!


尊厳粉砕の一撃ディグニティスマッシュ!!』


 ドゴォォッッッ!!!!! 気が狂いそうな気持ち悪いサイケデリックな光を纏ったサレスの拳が、ホールの砂地の地面に叩き込まれると蠢く砂の動きがピタッと止まる。


『グォガッ……、ガガッ……、ガッガッ……!?!?』


 砂が一旦動きを止めた後、砂がまるで痙攣する様にビクッビクッ! と動く。

 うん。今のサレスの攻撃バッチリ効いた様だ。流石、尊厳粉砕は伊達じゃないな!

 きっと元のオオサンショウオの姿だったら、色々酷い事に為ってたに違いないな!

 しかし、今の攻撃はメンタルクラッシャーの力で、ギブシンサラマンダーの精神に直接攻撃したから効いたのかな?


 取り合えず、実質スタン状態の砂と一体化したギブシンサラマンダーに攻撃を加える。タコ殴りにした結果、メンタルクラッシャーのアーツと桜のスキュンレスツェカリアのアーツは効いている。と言っても、拘束系は上手く決まらないし、チナとチエの攻撃はあまり効いてる感じがしない。

 それに、単に効き難く成ってるだけじゃ無くって、こいつの耐久力がアホみたいに上がってる所為で、相対的に効いてる感じがしないのかもな。


 そんな感じで、余り手応えを感じられない状態で攻撃に続けて居ると。

 流石に時間経過もあり、スタン状態が解けてしまう。


『ブゥォオオオオオオオオオゥゥゥッ!!!!』


 スタン状態から解放されたギブシンサラマンダーは、怒りを露わに咆哮を上げる!

 地面の砂がギブシンサラマンダーの怒りを示すかの様に、熱を帯びた真っ赤な光の輝きを放つ!


灼熱砂爆嵐バーニングサンドバーストストリーム


 真っ赤に焼け煮え立つ溶岩の如き輝きが、ホールの外の砂にまで広がって行く!!


あめの霊冷清めの力満ち、悪しき魔禍事鎮めし天の氷壁をこの地に齎さん! 『氷天浄壁』なのじゃ!!』


 咄嗟に、チナが高速詠唱して発動した『氷天浄壁』が何とか間に合い、透き通る様な美しい氷壁が、真っ赤に灼熱する溶岩如き砂の地面とエルナ達を隔てる。


 ジュォヮッ!! バアァァ――――――――――ン!!!!!

 ジュゴゴゴゴゴゴゴォオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!

 『氷天浄壁』が、『灼熱砂爆嵐バーニングサンドバーストストリーム』の溶岩の如き赤い光に染まり、溶かされながらミシミシミシィッ!! と軋みを上げる。


「チナ、ナイスだよ!」

「ふにゅ。わちはエルナ守護神しゅごちんだから当然なのじゃ!」


 チナの氷壁が爆熱の砂嵐を防いで居る間に、如何したらギブシンサラマンダーにもっとダメージを与えられるのか考えるべきだな。

 精神もしくは魂に作用する物で、エルナが攻撃を通すだけなら『クリアソウルバニッシュメント』や『霊炎命滅インビジブルディスピアー』が有るけど、それだけじゃ厳しいよな。

 ギブシンサラマンダーの耐久力を考えれば、出来ればチナとチエの攻撃もしっかり効かせたいのだが……。


 とそんな感じで、エルナの装備品専用アーツを見て居たら気が付いた。

 アレ、もしかしたら、パワーUPしたアニマソムニアの新しい専用アーツ『脱魂』を使えば、ギブシンサラマンダーの『私は砂であるエルソアレイア』を強制解除出来るんじゃないか?

 当然、分離出来たら元の状態になる訳だから、攻撃の危機も良くなるしタコ殴りに出来るよな?


 早速、氷壁の向こうで荒れ狂う爆熱の砂嵐に『脱魂』を仕掛ける。

 桜を思わせるピンクに光る花びらが、花吹雪となって氷壁を擦り抜ける。

 花吹雪はギブシンサラマンダーが一体化している、荒れ狂う爆熱の砂嵐の砂の中にスルリと入り込む。

 砂に入り込んだアニマソムニアの花びらを通して、瘴気が燻ぶるドロドロと灼熱した砂だと、ギブシンサラマンダーの魂を認識する事ができた。

 良し行くぞ! 砂からこのギブシンサラマンダーの魂を引っこ抜く!


『脱魂!!』


 グワンッ! と荒れ狂う爆熱の砂嵐が一瞬ブレる様に二重に見え、砂嵐の動きが一気に鈍くなる。

 むむっ、今の『脱魂』は、魂を少しズラせただけの様で失敗だ。

 う~ん。如何やらパワー不足で、上手く魂を引っこ抜けなかった見たいだな。

 ギブシンサラマンダーの魂を引っこ抜くには、もっと力を込める必要が有りそうだ。良し、今度は星輝を込めて『脱魂』だ!


『グルガァアアアアアアアアアアッ!!!! 『火炎窒息毒赤風ラハブカンクシムーン』』


¶フィールドBOSS 熱砂半裂ギブシンサラマンダーが、広域蹂躙型必殺アーツ『火炎窒息毒赤風ラハブカンクシムーン』を発動しました。


 んなっ!? こいつ、今の失敗『脱魂』に危機感覚えて必殺アーツ使って来やがったぞ!?

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