157 万霊水窟4
洞窟の奥に進む前に、装備者保留中の顔面粉砕メンタルクラッシャーが、使えるか確認する事にした。
PTメンバー全員に一回ずつ装備して貰い。恐らくデメリットパッシブ効果であろう、顔面粉砕衝動がどう作用するのか。そして実際の所、メンタルクラッシャーを装備して問題なく使えるのか調べて見た。
「う、うにゅ……な、なんだか……む、むずむずしゅるのじゃ……! (震え)」
顔面粉砕メンタルクラッシャーを、チナに装備させて見たのだが。チナの顔が青ざめ、どんよりとした負のオーラと共に、プルプルと震えだしなんだかヤバそうな目付きになる。
「チナ! 装備外して!」
「う、うにゅ!」
慌てて直ぐに装備を外して貰ったが、直ぐに何時ものチナに戻った。
如何やら、呪われたり後遺症が残る様な物では無いらしい。
兎に角、これはチナには扱えなさそうだな。
「うにゅぅ、これは危険なのじゃ」
「うん。そう見たいだけど……」
だからと言って、戦力UPの為にも確認をやめる訳にはいかないので、次はチエに装備して貰もらった。
「ん……!」
「はい! 装備外して!」
急にチエがピリッとした空気を纏う。そして、チエは何時ものアーツ発動時の雰囲気に為ったため、危険を感じたので速攻メンタルクラッシャーを外して貰った。
あれぇー? これ、本当に装備出来ないヤツなのでは!?
「次は私が装備して見ますね」
「う、うん。じゃあ桜、装備して見て」
「はい!」
チナとチエが無理なら、メンタルクラッシャーを使うのは無理かなぁ、と思いながらメンタルクラッシャーを桜に渡す。
桜がメンタルクラッシャーを持つと、大きさが一気に桜サイズに縮小され桜の手に装着される。
「これは……! 集中して居れば大丈夫そうですけど……。気を抜いたらダメそうです……」
意外な事に桜は、チナやチエよりも顔面粉砕衝動の影響が軽い見たいだった。
しかし、やはり気を抜いたら顔面を殴りたくなるし、戦闘なんてしたらフレンドリーファイアをしてしまう可能性が高く、装備は無理との事だ。
チナとチエは明らかにダメそうだったのに、何で桜は割りと平気そうだったんだ?
ふぅ~む。取り合えずエルナも装備して見るか。
メンタルクラッシャーを指にはめ、装備を意識するとシュルリとサイズが変わり、エルナの指にフィットする。
「むむ!」
装備すると何だか他人の顔が目に入ると非常にイライラして来る。
でも、少し時間が経つと急に治まる。これが何度も繰り返され非常に疲れる。
うん。これ、エルナは装備出来ないな。
多分だけど、顔面粉砕衝動が精神状態異常判定されて居るんだと思う。
そして、さっきの状態は、転輪星癒セレシエルフルエトワールの効果で精神状態異常が回復しては、メンタルクラッシャーの所為で再び精神状態異常になる。と云うのを繰り返して居るのだろう。
これを繰り返されると疲れるし、もしかしたら俺も、段々情緒不安定になって可笑しくなるかも知れないな。
「ふぅ~。それじゃあ、今度はサレスが装備して見て」
「応。分かった」
サレスサイズに、メンタルクラッシャー大きくなり装着される。
「ふむ。顔面粉砕衝動だったか? 何も感じないな」
「!? ほんと! ならそれは、サレスの装備決定だね!」
何と無く。桜がチナやチエよりも、メンタルクラッシャーを装備してても平気そうだったから、もしかしたらサレスなら問題無く使えるかも、そう考えていたのだが。
まさか、サレスには全く影響がないとは思わなかったぞ。
「うにゅ。しゃれすはしょれを着けて平気なのじゃ? 凄いのじゃ!」
「なんと!? 流石はサレスの殿! 主様の召喚騎士は伊達ではないのです!」
ちびっ子二人も物凄く驚いている。
まあ、そりゃ驚くはな。自分達が全く扱えなさそうだったんだし。
「う~ん。サレスさんは何で影響を受けて無いんでしょう? チナさんやチエさんよりも、サレスさんの耐性が高いとは思えませんし……。そう言えば、私もサレスさん程では無いですけど、お二人よりも影響が少なかった様に思えますね」
「共通点は、サレスと桜は召喚体って所だね」
「Σあ、なるほど! そう言う事ですか!」
桜もサレスも、元は待機ルームのリアルアバターが本体だ。
リアルアバターなのか、それとも待機ルームそのモノなのかは分からないが。何らかの形でコスモプレイヤーユーザーの保護が適用されて、精神状態異常の影響が軽減されているのかも知れない。
そう考えると、サレスは静流とエルナを介して顕現している様な物だ。つまりそうなると、ユーザー保護も実は二重に働いていて、それが影響している。って事なのかもな。
「まあ、少し他の武器が持ち難いが。問題無く使える見たいだし、メンタルクラッシャーは俺が使おう」
「うんうん。決定だね♪」
まあ、何にせよ。サレスがメンタルクラッシャーを使えて良かった。
サレスが装備してくれたお陰で、エルナはメンタルクラッシャーのステ補正の恩恵を、デメリット無しで受けられるんだからな。
これで二重に大幅にパワーUPって訳だ。
メンタルクラッシャーのパッシブ効果、精神粉砕がかなり有効に働いて戦闘が少し楽になった。お陰で前よりも順調に洞窟を進む事ができ、漸く星覚のスキルが洞窟の最奥と思われる巨大空間と、その手前にそこそこ広い空間が有る事を認識した。
ただまあ、最奥の巨大空間に進むには、手前の空間で待ち受けているエネミーを倒す必要が有りそうだけどな。
『コノサキニハ ダレモトオサナイ』
『ココヲシシュセヨトノ メイレイダ』
そこそこ広い空間で奥へと進むのを阻む様に、砂で出来た二体の騎士型エネミーが立ち塞がる。
立ち塞がる騎士型エネミーは、一体は大盾と長剣を持った人型。そして、もう一体はランスと小盾を持ち、下半身が馬の形をしたケンタウロス型だ。
¶
!? こいつ等は、この洞窟の中ボス的な扱いか!
『ジンキヲモトメルモノヨ! ジンキヲエタケレバ ココニサンシュウセヨ!』
『コール! オブセッションゴースト!!』
直ぐ様、辺りに白い煙が漂い、煙の中に無数の顔が浮かび上がり、足元の砂が蠢き夥しい数の砂の手が生えて来る。
そう。大盾持ちの砂霊騎士が、道中散々戦った煙幽霊とサンドハンドを大量に呼び出したのだ。
『スナゾコニネムルトモガラヨ! ワガコエニコタエヨ!』
『リビングデット! サンドマミーソルジャー!!』
サンドハンドを押しのける様に砂が盛り上がり、骨に皮が貼り付いただけにしか見えない、砂まみれのミイラの手が突き出て来る。
今度はケンタウロス型の砂霊騎士が、初見となるエネミーであるサンドマミーソルジャーを、砂底から呼び寄せたのだ。
このサンドマミーソルジャーはマミーと言うが、一般的な包帯が巻かれたミイラのイメージと違くて、皮が貼り付いた砂まみれの骸骨と云った感じの姿で、剣と盾を装備したスケルトンソルジャーと言った方がしっくり来る。
そこそこ広かった空間が、砂霊騎士が呼び出したエネミーであっと言う間に満杯になってしまった。
ふむ。それにしても、モブを召喚するタイプの中ボス二体か。
これは、無限召喚されて面倒な事に為る前に、ちゃっちゃと倒してしまいたいな。
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