148 壊れた装備を直した
ポリュクラッカを倒した後。セーフティエリアと為った霊木跡地から、戦闘中にばら撒かれた大量の黒泥はもちろん、元々周囲の森や地面に積もっていた灰も姿を消していた。
代わりに、切り株の周りは柔らかな下草と花が咲き乱れ、辺りの森の木々も青々と葉を茂らせる。頂上を回った太陽の陽光が、穏やかに霊木跡地一帯を照らしていた。
うん。ボス戦の環境破壊のダメージを、自分達で直さないと行けないのかと思っていたのだが。積もってた灰も消え、元の自然環境も復活している見たいだし、特に何かする必要は無さそうだな。
遠目に巨大化したままの折れた自在大剣見た後、目を逸らしていたサレスの巨骸機構甲冑の方に目を向けると。丁度片膝をつき、動きを止めた巨骸機構甲冑からサレスが出て来る所だった。
戦いを終えた巨骸機構甲冑は、両腕がエクストラアームごと腕半ばから砕け、機体の至る所に亀裂が入り傷だらけ痛々しい姿だ。泥などの汚れは、セーフティエリア化の際に綺麗に消えた様だが。
まあ、パーティーを守った名誉の傷だし、プラモのジオラマとして見ればこれはこれでカッコイイのだが。これからも使って行きたいこちらの身としては、直ると分かっていても思わずため息が出てしまうのはしょうがないよな。はぁ~。
それに、ボロボロなのはサレスの巨骸機構甲冑だけではない。
チナとチエの装備も、宝物庫で手に入れた物以外は傷だらけだ。
桜の武器もポリュクラッカを攻撃していた物はボロボロで、攻撃を誘導するために使ったルナティックアトラクトなんかは、最初に喰らった一撃が良くなかったのかパックリ割れていた。
何故かエルナの装備は傷も無く全部綺麗なままなのだが、これが装備を問題なく直せると感じる理由なのだろうけど。
「戦闘で大剣とロボの両腕が、ポッキリ折れてしまったんだが。……これ直せるのか?」
もう一人の俺であるサレスも装備破壊のショックは隠せない様だ。うん分かるよ。
「うにゅぅ、手酷くやられたのじゃ。
そう言うチナの様子は、クマさんフードの上に乗ったカアロット帽から大量のジェルがこぼれ全身グショグショだ。しょんぼり顔が可愛い。
「はぅ……、手に入れたばかりのクマさん装備がもうボロボロなのです……」
新品だったチエのクマさん装備も、ぬいぐるみ部分から綿がこぼれたり切り傷が付いていたりしてなかなか酷い。
「私の装備も、あの斧に触れた物は殆ど壊れている見たいですね……」
と桜が呟く。
あれ? もしかしてうちのパーティーの装備、
うわぁ、めっちゃやばかったじゃん!
基本、装備でステ盛ってるんだから、これは相当ヤバかったのは間違いない。
どう考えても、ポリュクラッカはうちとは相性最悪だったとしか思えんよなぁ。
「まま皆、取り合えず装備は直せると思うから、そう気を落とさないで、ね?」
「主様それは本当ですか!?」
「う、うん。『直観』のスキルが星輝と【星法】の権能を使えば行けるって……」
「ふにゅ。
ちびっ子達がエルナに詰め寄り期待に目を輝かせる。
う……、これは失敗できない感じに。
「直るのならそれに越した事は無いのですけど……、エルナさんは生産職と言う訳で無いんですよね?」
「だよなぁ。アレなんて、両腕が折れ砕けてるのに直るのか?」
桜とサレスは、本当に直せるのかちょっと懐疑的だ。
まあ、そりゃそうだよな。
「うにゅ。『直観』が働いているのなら、大丈夫なはずなのじゃ!」
「主様は、わたしを転生させちゃう位凄いのですから、きっとできるのです! ですよね主様!」
「え? う、うん!」
と云う訳で、何やら失敗できなそうな雰囲気だが、装備を直そうと思う。
エルナの初期装備に、何故か標準搭載されている不壊と自動再生の効果を星輝で読み取り、権能を用いてその効果を再現する事で直せると云うのが、如何やら『直観』の判断の様だ。
更に云うのなら、初期装備では無いのに天翼炎蛇之霊衣オフィツァルウクルや群狼の尾レギオンテイルが、無傷なままでいる理由と原理を再現できると尚良い取った所かな?
となると。星輝を流して能力を読み取るのにベストな装備と言えば、輝花賢玉トゥインクルソファイアことソフィーちゃんしかないよな。
と、こんな事を考えて居ればソフィーちゃんの方から話しかけて来そうなのだが。
『……』
あれ? 反応ないな?
ソフィーちゃん? もしもーし?
『お待たせしてすみません、シズル様。何か御用でしょうか?』
やはりソフィーちゃんは何か忙しい様だ。
取り合えず、ボス戦で壊れた装備の修復と云うか復活のため、ソフィーちゃんの本体から不壊や自動再生の装備効果を読み取らせて欲しいとお願いする。
『なるほど、そんな事に為っていたんですか……。分かりました。取り合えず、こちらの方でサポートしますので、星輝を流してください』
OKが出たので、ソフィーちゃんの本体であるトゥインクルソファイアに星輝を流す。『星覚』のスキルで流した星輝から、不壊と自動再生の効果が如何云う物かを読み取り把握して行く。
不壊は物質としての存在の格を大幅に引き上げ、格下の物質の影響を受けない様にすると云う物らしい。これは『クリアオーロラコーティング』や他の防御系アーツの強化に使えそうだ。そもそもヴァジュラの専用アーツに、金剛不壊って云うのが有るんだから当然かな?
それに、星輝をもっと上手く扱える様に為れば、後から装備に不壊を永続エンチャントする何て事も出来る様になりそうだ。
自動再生の効果は、人の遺伝子の如く装備その
当然、自動再生する効果をその装備が持っていたとしても、壊れた装備の再生には相当なエネルギーが居るため、再生のためのエネルギーを意図して継続的に込めないと直ぐには完全再生しないのが普通の様だな。
ちなみにエルナの場合は、エルナから供給される無尽蔵の星輝お陰で、自動再生の効果が最速且つ効率良く発揮され直ぐに完全再生する様だ。
そして、他の装備が無傷だった理由は、トゥインクルソファイアの他の神器の意思を纏め総体意思として顕現できると云う物が、何かしら作用した所為の様だ。意思を纏めるだけじゃなくて効果も纏められる? もしくは一つ纏ってるから神器同士の効果が影響し合うとか? と、まあそう云う感じらしい。
この理解する事が出来た自動再生の装備効果に、トゥインクルソファイアの持つ、神器の意思の顕現に纏わる効果の要素をふわっと取り入れ、回復魔法を掛ける様な感じで使える様に【星法】の権能で再構築。
良し。取り合えず、一番簡単に直せそうなチナのカアロット帽に掛けて見るか。
ちなみに、不壊の効果は直すのに要らなかったから入れて無い。
『マテリアル・リジェネレーション!』
キュワワァっと白い光の粒子がエルナから放出される。
放出された白い光の粒子は、チナのカアロット帽にドンドン入り込んで行く。
するとクマさんフードの上に乗っている、萎んだスライムジェリーが光りながら膨らんで行く。
光が治まった所で、お饅頭の形に膨らんでぷるぷるに成ったカアロット帽を、徐にツンツンして見るとぷるぷるとゆれる。
うむ。装備アーツを使ってもいないのに勝手にジェルが出てくる、と云う様な様子も無い。念のため、ティアーズクロワに収納して確認して見たが、やはり完全に直っている見たいだ。
「うん。成功したみたいだね」
「ふにゅ!
カアロット帽が上手く行った様なので、チナの他の装備もドンドン直して行く。
もちろん確認のため、ティアーズクロワに一度収納して見たが問題なかった。
「主様! 今度はわたしのクマさんも直してください!」
と言う訳で皆の壊れた装備を直して行く。
巨骸機構甲冑も、メキメキと腕が生えて来てしっかり直ってくれた。
自在大剣の持ち手の方に『マテリアル・リジェネレーション』掛けたら剣身が生えて来たので、折れた剣身の方にも『マテリアル・リジェネレーション』試しに掛けて見ると、持ち手部分がニョキニョキと生えて来た。
いやいや、二本に成ってるじゃん! これは装備複製チートか!?
そう思ったが、二つにパックリ割れたルナティックアトラクトは増えなかった。
多分、自在大剣の持つパッシブ効果『量積自在』と、『マテリアル・リジェネレーション』が上手く噛み合った所為なんだろう。
まあ、巨骸機構甲冑で使える武器が二本に成ってラッキーと思って置けば良いか。
そうそう、『マテリアル・リジェネレーション』が出来る様に為ったお陰で、アイテムと装備のブーストとブレイクのアーツをある程度纏める事が出来た。アイテムと装備のブーストは『マテリアルブースト』。もちろん、星輝還元を引き起こさない様に制御してだ。アイテムと装備のブレイクは、まんま『マテリアルブレイク』と『マテリアルブレイクシュート』。
ちなみに、『ファイナルバーストアタック』は名前は変わっていないけどパワーUPしてるね。使うかどうか分からんけどな!
「それにしても、こう言っちゃあ何だが、やっぱエルナ能力はチート臭いよなぁ~」
俺が思っていたけど、考えない様にしてた事をサレスが小声で言う。
おい、サレス! それは言っちゃだめだろう!
まあ、言ったのはもう一人の俺なんだが。
「サレスさん! IFOにチート何て存在しませんよ!」
はい。ですよねー。IFOにチートは無いですよねー。
なんせ元々、IFO管理しているスパコンとIFO自体がヤバいからね!
それに桜は、LDバイザーに内蔵されているFUTURE VISION社製のAIだからね。
当然「不正はなかった」的な感じに為るよねぇ。
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