146 〈呪霊灰山 4合目〉縛霊呪灰戦斧 ポリュクラッカ3

『クリアステラリフレッシュ!!』×4


 ドッ! と膨大な量の小さな星型の光が、様々な輝きを放ちながらエルナ以外の四人の周囲を埋め尽くす。装備汚染の状態異常が解除されて行く。しかし、サレスの自在大剣は折れてしまっているし、巨骸機構甲冑にもダメージが蓄積されている。


 ブオオオン! ゴガアアアッ! ポリュクラッカと黒い巨人が、『クリアステラリフレッシュ』の星型の光に近づくのを嫌がる様なそぶりを見せる。

 あ! もしかして普通に浄化攻撃が効く感じなのか!?

 ならば、取り合えずこいつでダメージを稼ぐ!


『煌炎浄化重爆撃!!』


 ゴッ!!!! ドゴォオオオ――――――――ッッ!!!! 黒い巨人の頭上に虹を纏った光球が出現し、大質量を伴った超加重の浄化の煌炎が爆ぜ黒い巨人とポリュクラッカを叩き付ける様に焼き払う!!


 グゴォガァアアアアアアアアアアアアッ!!!! 光球が爆ぜた後も、浄化の煌炎が黒い巨人とポリュクラッカに纏わり付き、メキメキと超加重で押し潰しながら焼き続ける。前と違って撒き散らされた炎にも大質量の超加重が付随している様だ。


 本来星撃系は、自身から直線的に発動するのだが。サレスの巨骸機構甲冑よりも背の高い敵に、効果的にダメージを与えるため発動地点と形態を変えて見たのだ。

 そして、それは如何やら上手く行った様である。


「あうっ!? あわわぁ……」


 『煌炎浄化重爆撃』を見たチエが、顔を青くしてブルブル震えている。

 あー。そう言えばチエは、エネミーとして現れた時に、『煌炎浄化重爆撃』で今のこいつ等と同じ様な目に遭ってたんだっけ……。もしかしてトラウマに為ってる?

 うん、ちょっと怯えた様なチエの表情が可愛かったりして。


 まあ、それはそれとして、この隙に装備汚染対策のアーツを作るぞ!

 多分俺の感覚としては、『クリアステラリフレッシュ』と『オーロラコーティング』を基準にしてアーツを作れば行ける筈だ。

 まあ、それでダメなら【星法】の権能で如何にかするしかないな。

 イメージとしては、『オーロラコーティング』に除菌,抗菌,殺菌,滅菌と、汚れを寄せ付けず綺麗な状態を保つ浄化効果を持たせる感じでやって見る。


『クリアオーロラコーティング!』


 試しにアステルエルアクシアに掛けて見た。

 アステルエルアクシアの星が鏤められた夜空から、徐々に夜明けに向かう空を思わせる青,蒼,白へと変わるキラキラのラメの様なグラデ―ションに、虹色の輝きが浮かび上がる。

 あれ? この弓って金属光沢って感じで、金属粒子がラメっぽく見える様な感じでは無かった筈だが? まあいっか。

 取り合えず、星覚から受ける感触では上手く出来たと感じる。

 それに、わざわざ装備個別で掛けなくても、個々人に『クリアオーロラコーティング』掛けるので問題なさそうだな。


『クリアオーロラコーティング!!』×5


 虹色の光が、パーティメンバー全員を覆い鏡の様キラっと輝く。

 うん、『クリアオーラコーティング』完了だ。


 ヴォオオオオオン!! ゴガアアアアァァァァアアアアアアアアアッッ!!!!

 ドンッッッ!!!!! ポリュクラッカが唸り黒い巨人が雄叫びを上げると、練り込まれた呪詛が衝撃と為って虹色の炎を吹き飛ばす。同時に黒い巨人の肩から背中が、ゴキゴキと変形し腕が二本増え六本腕と為る。

 『カースコピーインカーネイション』大戦斧から再び黒いオーラが立ち昇り、黒い巨人から体液を吸い上げ自身の複製を作り上げる。

 これで奴は六腕六斧に為ったか。面倒そうだなぁ。


 ゴォオオオオォォォオオオオオオオ!!! 『縛霊・呪灰黒泥』

 黒い巨人の全身から、真っ黒なヘドロの様な泥が滝の様に噴き出し、この霊木跡地の地面を隙間なく覆い尽して往く。

 ふむ。これは敵が第四フィエズに移行したな。


 泥が足に触れると、ビシビシッ! と『クリアオーロラコーティング』が泥と反応する。泥が何かしらの状態異常効果を持ち、『クリアオーロラコーティング』効果が削られているのだ。


 直ぐに星覚を集中して分析すると、この泥が侵蝕汚染と霊体拘束の二つの状態異常を引き起こすと分かる。アナウンスが無い事から、未知の状態異常では無い様だ。

 しかし、二つの状態異常のうち侵蝕汚染の状態異常が、非常に危険かつ厄介であると、輝花賢玉トゥインクルソファイアに蓄積された知識から流れ込んで来る。


 侵蝕汚染の状態異常は、HP,MP,SPの最大値の継続的減少及び、それらに纏わるスキルやアーツ,魔法などの発動不全を引き起こす、という非常に凶悪な状態異常だ。    

 泥のもう一つの状態異常、霊体拘束はそのまんまの意味合いの効果で、霊体を拘束すると云う呪いに近い状態異常だ。霊体状態でなければあまり危険は無い様だ。

 それにしても、装備汚染は装備品限定では有るが非常に厄介な状態異常だ。それに、この侵蝕汚染という凶悪極まる状態異常、この二つの状態異常のロックコンボが、ポリュクラッカの戦術と云う事らしい。

 まさに、相手に何もさせない様にするTCGトレーディングカードのロックコンボその物だ。


 ふ~む。にしても、ソフィーちゃんが直接答えないで、情報だけ送って来るなんてやっぱり何か忙しいのかね?


 『クリアオーロラコーティング』がガリガリ削られるので、虹翼を展開しフッと浮かび上がる。チナも『水遊浮歩』で足裏に水玉を出現させ既に地面から離れている。チエと桜は元々自由に空を飛べるので問題なしだ。

 サレスも、『コスモバーニア』を巨骸機構甲冑の足元から噴出し、ホバークラフトの様に浮かび泥に触れない様にしている。

 もちろん、『クリアオーロラコーティング』は掛け直し置いたぞ。


 こちらが泥に対応している間に敵も動き出した。

 グゴォオオオオオオッッ!! 『泥波衝斬』

 黒い巨人は器用に六つ腕の大戦斧を操り、泥で出来た斬撃をバンバン飛ばして来る。


 回避が難しいサレスに、『クリアオーロラコーティング』を掛け直しながら、泥の斬撃を躱しながら応戦していると、直感のスキルが危険を訴えて来る。


 ドッパンッ!! キリキリキリキリキリキリィッ!!!!

 突如、泥の中ら飛び出して来た泥人間が、泥塗れの斧で切り掛かって来た!

 咄嗟に『虹炎星弾』で迎撃したのだが、皆上手く迎撃出来た様だ。

 サレスは防御を固めてから反撃する事で対処したんだけどさ。

 まあ、巨骸機構甲冑は機敏では無いからしょうがないね!


 ふむ。黒い巨人が、木こり共と呪詛の集合体なのだから、この泥から出て来た辛うじて人の型を保った泥人間は、木こり事デリューションランバージャックの成れ果てって事なんだろうな。

 ちなみに、『虹炎星弾』は白炎系のアーツをちょっとバージョンUPした物で、他の白炎系アーツも全てではないが虹炎もしくは煌炎系にバージョンUPして居る。


 ゴォオオオオオオオオオオオッッッ!!!! 『泥瘴津波』

 あまりポリュクラッカに有効な攻撃が出来ないでると。黒い巨人が泥の津波を引き起こし、更に泥津波からの泥人間に強襲させて来る。


『ジュエルフラッシュバリアウォール!!』

『ディメンションエクスターミネイト!』

「『永久凍土』なのじゃ!」


 装備汚染の状態異常の解除で、使用可能と為った巨骸機構甲冑のアーツで津波を押しとめ、桜の『ディメンションエクスターミネイト』で、泥津波と泥人間達を吸い上げ次元放逐する。

 吸い上げ切れなかった泥津波を、チナの『永久凍土』アーツが泥人間事凍らせる。


『神鳴轟雷』

『煌炎浄化重爆撃!!』


 ゴアッッ!!!! 『黒泥天蓋』


 カッッ!!!! ドゴォゴォオオオオオ――――――――ンッ!!!!!

 神鳴りが瞬き轟音と共に、雷が降り大質量の浄化の煌炎が爆ぜる!!

 しかし、アーツが決まる前に黒い巨人から噴き上がった泥の天蓋が、こちらのアーツの威力の大部分を防いで居た。


 あの黒い巨人のヘドロ見たいな体液の泥、防御にも使えるなんて本当に厄介だな。

 でも、狙うべきは武器であるポリュクラッカの本体なんだよ。

 もっと武器にとかに有効なダメージを与えられるアーツが無いと厳しいよなぁ。


 う~む。為るべく『アームドブレイク』を使わず、尚且つポリュクラッカと武器で打ち合わずに有効打を与えられるアーツ。一応は有るが爆発させてしまうからなぁ。

 Σあっ、爆発させないで消し飛ばすと言うアーツも有るが、上手くやらないと爆発させるより被害がでそうなんだよなぁ。

 流石に、パワースポット見たいな場所を破壊して、上手く元に戻せるか自身は無いし。やっぱり新しいアーツを作るか、既存のアーツを改良した方が良いかな。


 ポリュクラッカに有効打を与え様と考えながら戦っていると、ゾワッと嫌な気配が高まる。


「くっ! 『コスモヴァレイション・バリアウォール』!!」


 サレスも嫌な気配の高まりを感じ、宇宙の神秘の力を秘めし青く輝く巨壁をパーティーを守る様に出現させる。


 グゴォガァアアアアアアアアアアアッッ!!!! 『六腕六斧・無双粉砕暴風旋』

 黒い巨人は全身から泥を噴き出しながら、六腕を自在に伸縮させ渦を巻く様に六本の大戦斧を振るう。六本の大戦斧が起こす渦巻く風の暴威は、自身が噴き出す泥と周囲の泥を巻き上げ、まるでミキサーが物を粉砕する様に暴れ回る!!


 ドガガギャガガギャヤギャガガギガガガガギガガガガガガガ!!!!!

 泥の嵐と大戦斧の乱舞が、サレスが作りだした青い巨壁に高速で打ち付けられ、分厚い壁をガリガリと削って行く。

 まるでかき氷が削られる様に、青い巨壁がガリガリと削られて行く。

 『コスモヴァレイション・バリアウォール』がこんなに脆い訳が無い。

 明らかに、装備汚染以外の何かしらの破壊効果が乗っているとしか思えない。

 まあ気休めかも知れないが、『コスモヴァレイション・バリアウォール』に『クリアオーロラコーティング』を掛けて置く。


『クリアオーロラコーティング!』


 パァっと虹色の光が広がり、『コスモヴァレイション・バリアウォール』を覆い鏡の様にキラっと輝く。

 ガリガリとかき氷の様に削られていた、青い巨壁から硬質な金属音が響く。

 如何やら為す術なく削られていた、『コスモヴァレイション・バリアウォール』の強度が著しく上昇した様だ。

 おおっ! 『クリアオーロラコーティング』気休めどころじゃない効果が出るぞ!


 良し! 今のうちに『オーロラチャージ』も使って星輝を一気に溜めるぞ!

 今一番、ポリュクラッカ以外に被害を出さずに有効打を与えられそうなのは、『極光虹翼爆裂閃煌』を爆発しない様に集束させたまま終わらせるアーツだと思う。

 主に装備のステ補正のお陰だが、『極光虹翼爆裂閃煌』を爆発させないで集束させ切るくらい、今のエルナなら出来る筈だ。双翼の方で良いかも知れないけど、制御が難しそうだし、先ずは片翼でやって見るべきだろうな。


 虹翼にガンガン星輝を溜め込みながら、アーツのイメージをしっかり固めて行く。

 バチバチと虹翼がスパークし、キイィィ――――――――ン!! と高音が響く。


 どうもこの音、エルナの星輝チャージが限界だから鳴っている訳では無いらしい。この音、世界がこのまま星輝を使うと世界に被害が出るよ、という合図らしい。

 つまりこれは、今のエルナがきちんと制御出来る星輝量の限界を示しているのだ。

 ちなみにこの情報、さらっとソフィーちゃんが知識だけ俺に流して来たのだ。


 強度が上がったとは言え『コスモヴァレイション・バリアウォール』は、既にかなり削られていた為そろそろ壊れそうだ。それにしても、敵のアーツの発動時間。めっちゃ長いな! 止められるまで終わらない系か?

 皆も、壁が破壊された直後に放つアーツの準備をして居る。

 ビシビシ! ビキィッ!! 壁に亀裂が入り、その亀裂が大きく広がって往く。 

 さあ、このフィエズで終わるか分からないが、決めに行くぞ!

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