140 〈呪霊灰山 6合目〉まで来たけど
「にゅいにゅい!」
ニュイがバイバイと云った感じで、可愛く手を振りながらチナが開いたゲートの向こうに消えて行った後。滝裏を出て直ぐに、登山道に戻らずに6合目に向かって移動を開始した。登山道に戻らなくても、5合目の境は直ぐだと星覚のお陰で分るからだ。それにもう、チナのお宝センサーが反応してないってのも有るけどな。
¶〈呪霊灰山 5合目〉から〈呪霊灰山 6合目〉に侵入しました。
おっと!? またボスが居なかったぞ?
お陰でスルっと6合目に来てしまった。どう云う事だ?
この山は、侵略者達が侵攻の橋頭保にする為に迷宮化した筈だ。
なのに、こんなにスンナリ進めるのは可笑しいよなぁ?
「ふにゅ、お宝は無さそうなのじゃ」
しかも、6合目にはお宝が無いらしい。残念だ。
6合目の風景は、木の背の高さが明らかに低く成っていて、そろそろ森林限界が近いと云った所だろうか。まあ、先に進むだけだが。
探索開始して直ぐに此処のエネミーに遭遇した。ダンジョンで恐鳥類のモンスターに遭遇したけど、ここで遭遇したエネミーも鳥だ。具体的に言うと5~6mは有る巨大なライチョウだ。
ちなみにライチョウとは、現実世界に居る標高の高い高山に住む飛ぶのが苦手な丸っこい可愛い鳥の事だ。日本にもいる。このエネミーもこんなにデカくなければ、可愛いですんだのだろうけど。実際のライチョウの12倍以上のデカさだもんな。
クアアアアアアゥ! ライチョウが鳴き声を上げると青白い稲妻がパーティーを襲う。ライチョウって霊鳥の言い間違い見たいな物で雷とは関係ないはずだけど!?
パアアアンッ!! パアアアンッ!! サレス以外は稲妻を避け、サレスは新しい装備の大盾フォリンクラルムで受け切った。
「ふにゅ!」
チナが回避ついでに接近し、蒼い小太刀エグゼラフィスルで切り付ける。
スパッ! 何の抵抗も無く刃が通り、巨大ライチョウの首を撥ねる。
ライチョウの首が落ち、ドチャっと地面に血が広がる。エネミーだからしょうがないけど、何か可哀想だな。と言っても、しっかりドロップは回収するんだけどね!
ライチョウはこの後、何度もエルナ達を強襲して来た。それも当然で、ライチョウの方がここら辺の木よりも背が高く、直ぐに此方に気が付いて攻撃して来るのだ。
ライチョウは、雷だけでなく霊気の力によるブレス攻撃や嘴や翼の羽撃き攻撃など、群れでやられると多少は厄介だったけど問題なく倒せた。
6合目と7合目境が近づいて来たが、やはりボスの気配は感じ無い。
ゴンッ! 「いったぁ!?」痛みで思わずしゃがみ込む。
くぅ~……、どう考えても見えない壁にぶつかった、そうとしか思えないぞ。
「エルナ、大丈夫なのじゃ?」
「主様、平気なのです!?」
チナとチエが直ぐに心配してくれる。
「ん~、これは結界でしょうか?」
「恐らく何かのギミック、多分ゲーム的仕掛けが在るんだろうな」
桜とサレスは、エルナがぶつかった見えない壁についての考察をしている。
え? 二人は心配してくれないの? 酷くない?
まあとにかく、流石に7合目にはスンナリ行けない見たいだな。
先程、エルナがぶつかった辺りを探る様に手を伸ばす。
見えないが、ペチペチと叩くと硬質な感触が手の平に返って来る。
これも有る意味境界だし、アニマソムニアが有るから力技で先に進めそうにも思えるが。感触からして、複数の障壁が行く手を阻んでいると感じられた。
この感触からして無理やり破ろうとすると、何か面倒な事に為りそうな気がするなぁ。無理やり破るのはやめて置こうかな。
「にゅ、エルナどうするのじゃ?」
「そうだねぇ~。サレスの言う通り何か仕掛けが有る見たいだし、注意して仕掛けを探しながら戻るしかないかな?」
「そうなりますよね」
ひと先ず戻る事にしたが、仕掛けのヒントが何にも無いんだよなぁ。
まあ多分、3合目の集落の修行者達から何かヒントが貰えるんじゃないかと思うんだけど。どうだろうか?
「じゃあ引き返すとするか」
「はい! 主様戻りましょう!」
サレスとチエに促され、元来た道を戻って往く。
一応星覚の認識範囲を広げ、注意しながら山を降りて来たのだが、やはりノーヒントでは難しい。念のため、5合目の登山道を登って見たけど、やはり分からない。
結局、4合目と3合目の境まで降りて来る事に為った。
いや、だってしょうがないんだよ。山だから登山ルート外れたら広すぎるんだよ。
「あれ? エルナさん! あの場所変化が有る見たいですよ!」
桜が何かに気が付き、3合目に続く道の先を指差す。桜の指差すの方向へ意識を向けると、チエと鬼熊が戦った周りが崖のボスエリアに、鬼熊と共に消えた筈の巨石が現れ再び道を塞いでいた。え? もしかしてここのボス復活してる?
このクエで今まで討伐成功アナウンスが有って、復活したボスは居無かったのに?
まあ、唯一変化を感じ取れた所だし、行くんだけどさ。
¶エリアBOSS 道塞鬼熊 黒鉄力のBFに侵入しました。
アレ? てっきりクマ復活したのかと思ったら、復活した訳じゃ無くて別クマ?
前のクマが出現したのと同じ様に、巨石がぼんやりと光その岩肌に波紋が広がる。
岩の中から頭頂部に一本の角を生やし、黒光りする毛並みと異常に発達した前肢が特徴的な巨大な鬼熊が姿を現す。立ち上がった姿は前の鬼熊と同じ位だ。
グアオオオオオゥッ!! 鬼熊が雄叫びを上げると、その発達した前脚にオーラを漲らせ爪が鋭く伸びる!
おうおう、やる気満々だな。あの鬼熊の前脚、もう脚じゃなくて完全に腕だな。
にしても、前の鬼熊はチエに瞬殺されたんだが。この鬼熊はどんなもんかね?
という訳で先制攻撃だ!
『アステルフェニックスレインボウ!!』
エルナが構えた星界煌弓アステルエルアクシアから放たれた矢が、虹色に輝く星の炎を宿した不死鳥へと姿を変え鬼熊へと襲い掛かる!
シュバ!! ドゴオオオオオオオオオッ!!!! 不死鳥は矢として鬼熊の右目に突き刺さり、同時に爆発する様に虹色の星炎が炸裂しそのまま炎が鬼熊を飲み込む!
『シュヴァルツアームブリンガー』グオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!
鬼熊は炎の中で雄叫びを上げながら、異常発達した黒い腕を振り回し大暴れする!
荒れ狂う様に振り回される黒腕が、漆黒の暴風と為って不死鳥の炎を消し飛ばす!
炎を消した鬼熊は、右目に矢が刺さったまま此方に突進してくる!
『シュバルツベアシュトルメン』グガアアアアアアアアアアアッッッ!!!!
アーツを発動した鬼熊は、周囲を巻き込む漆黒の暴風を纏い、エルナに猛烈な勢いで突進する!!
『カバーリング!!』
エルナと鬼熊の間に、サレスがフォリンクラルムを構えて割り込む。
『静止鏡面!!』
次いでサレスは、鬼熊と接触する前に更にアーツを発動する。
グアアアッ!? 接触した瞬間。先程までの勢いがピタリと止まり、鬼熊は戸惑った声を上げる。
『オーラバーストシールドバッシュ!!』
サレスは鬼熊が戸惑うその隙を逃さず、突進を受け切ったフォリンクラルムにオーラを纏わせ、鬼熊をぶん殴る!
ドゴオオオオオンッ!!!! オーラが炸裂し迸ると同時に、フォリンクラルムから漆黒の暴風が吹き荒れ、鬼熊の巨体を錐もみ回転させながら吹き飛ばす!
グガアアアァァァァアアアアアッッ!!! ドゴンッッッ!!!! 山側の崖の壁面に鬼熊が綺麗に減り込む。うわ、めっちゃ吹き飛んだなぁ。
これは、フォリンクラルムのアーツ『静止鏡面』で勢いが殺され、パッシブの『水底の月』が漆黒の暴風を飲み込んで、最後にフォリンクラルムで攻撃する事で、フォリンクラルムが取り込んだ漆黒の暴風を、パッシブ『波紋鏡面』が増幅して吐き出したって事かな?
多分、『静止鏡面』を使わずに攻撃を受け切ったら、突進の威力も上乗せ増幅して最後の『オーラバースとシールドバッシュ』に乗ったんだろうなぁ。
うん。流石はダンジョン産の神器より良い物なだけの事は有るな。
ちなみに、崖に減り込んだ鬼熊は、動けないのを良い事に家のちびっ子達にフルボッコにされている所だ。ご愁傷さまです。
¶エリアBOSS 道塞鬼熊 黒鉄力を討伐しました。
討伐報酬がギフトボックスに送られます。後でご確認ください。
おっし! ちゃんと倒せてるな。
ここのエリアボスの仕掛けは気になるが。
取り合えず、7合目に行く為のヒントを得るため、集落に戻ろうか。
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