136 〈呪霊灰山 5合目〉滝の裏に宝物庫を見つける

 ボス戦も無く5合目に来てしまった。3,4合目と変わらず灰が積もり、標高が上がって来て気温が下がった所為か、今までよりもやや肌寒さを感じる。と云っても直ぐに慣れたけどな。

 まあ、それも当然だ。環境適応の力を持つ装備を複数身に着けてるんだからな。

 Σあっ! もしかしたら、悪臭にも環境適応の力が効果を発揮したのかもな!

 と、そんな事を考えていると。チナが、周囲の匂いを嗅ぐ様に鼻をすんすんする。


「ふみゅ、早い水の流れとお宝の気配を感じるのじゃ。多分、水量の多い渓流なのじゃ」

「チナ、それほんと?」

「うみゅ! 間違いないのじゃ!」


 如何やらこのフィールドにも、宝物化したオブジェクトがある様だ。

 それに、星覚の感知領域を広げると、このフィールドは谷の様に為っているらしく。チナの言う通り、渓流には結構な水量が流れている見たいだ。水は山の西側に向かって流れており、水源もパープシャル村近くの水源や、村近くを流れる川の物とは別物だ。


「それでチナ、お宝は何処に有るのかな?」

「うにゅ! お宝は渓流ぞいに集まってる見たいなのじゃ!」

「すると登山ルートは外れちゃうよね~」


 ふむ。先に渓流に沿ってお宝を回収するか、それとも6合目までのルートを先に確認するか? どうしようかなぁ。


「でも、お宝はGETするんですよね?」

「それは、もちろんそうだよ!」

「ならば、先に宝を手入れましょう主様!」

「わちも賛成なのじゃ!」

「俺も良いと思うぞ? 宝箱を可能な限り開けるのは探索の基本だし、後に回すと気になるだろ?」


 なるほど。確かにサレスの言う通り、そこにお宝があると分かっていて後に回すのは、気に為ってしょうがないかもな。

 それに、皆お宝を先に手に入れるのに賛成の様だし、サレスも頷いている。


「うん。良し! 先にお宝GETしよう!」

「なのじゃ!」

「おー!」×2


 山道を外れ、渓流のある方に森の中をゆっくり降りて行く。降る途中、4合目でも見たゾンビ達がゆらりと姿を現す。多少は強くなっている様だが、『星浄煌炎』で瞬殺なので特に描写する事もなかった。


 水量を感じさせるザアッと云う水音が耳に届く。川岸にはゴロゴロと中大の石が転がり、灰が積もっていなければきっと綺麗な光景が見えただろう。

 今は灰塗れで残念な景色が広がっているけどな。


 チナが早速川岸に降りると灰被りの石を割る。

 パアッと光が立ち昇り赤い水晶が出現する。

 また色は違うが、その赤い水晶がスキルクリスタルだろうと見当がつく。

 それに、星覚でもスキルクリスタルの判別が出来る様に為ってる見たいだしな。


「にゅ! 水晶なのじゃ!」

「ほいっと」


 チナが水晶を差し出して来たので、受けとって直ぐに水晶を確認する。

 やはりスキルクリスタルで、中見は『流転流導』と云う感覚系スキルだった。

 6次スキルだったので、エルナや桜は使えない。使用できるチナとチエは、エルナが使うべきだと言い。『流転流導』は『魔導神脈』同様、暫くティアーズクロワの肥やしになる事が決まった。


 チナが言うには、お宝は川の上流にいけば行くほど有るらしく渓流を遡って行く。

 川の中からエビやカニ、虫や魚のエネミーが襲い掛かって来るが、水竜であるチナと元龍蛇のチエが、パーティメンバーに居るのだ。

 そんじょ其処らの水棲生物が相手になる訳もない。当然奇襲も完封だ。

 お宝を回収しながら進んで行けば、次第に沢登りと為って行く。

 まあ、沢登りと言うには川幅も広いし水量も多く、ちょっとエナとの水遊びを思い出すな。

 Σあっ、上流に向かってるんだから結局6合目に近づいてるじゃん!

 となると、登山ルート通らなくても大丈夫だったか。


 ゴウゴウと大きな水音が聞えて来ると大きな滝が見えて来る。

 チナがその滝を指差し。


「にゅにゅっ! あの滝裏に宝物庫があるのじゃ!」


 と興奮しながらチナが叫ぶ。前回と違ってチナは興奮しているけど、勝手に飛び出しはしなかった。うんうん、チナもちゃんと成長してるな。

 ここの宝物化したオブジェクトは全部川沿いに有る訳だし、終着点に宝物庫が在っても可笑しくないよな。


「宝物庫と言うと、やっぱり守護者とか番人が居るんだよね?」

「うにゅ! あのでっかい滝壺に番人が居るのじゃ!」

「主様! 姉様の言う通り、あの滝壺におっきなお魚さんが居るのですよ!」

 

 滝壺に降り注ぐ飛瀑の飛沫で大きく波立つ水面の下、二人の言う通り滝壺の主と思われる非常に大きな魚の影が見える。うん。間違いないアレが宝物庫の番人だろう。


 さて、番人に挑む前にこの渓流で手に入れた他のお宝を見せて置こう。

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笑う紫魂髑髏

対象の魂と肉体に継続ダメージを与える攻撃魔法魂を蝕む魔炎ソウルイロージョンを発動する魔道具。

魔法発動時、笑い声と共に紫色の炎が目と口に灯る趣味の悪い不気味な紫髑髏。

こんな見た目だが別に呪われてはいない。

1度使用する毎に5分のクールタイムを要する。


風邪引き鶏

文字通り対象を風邪にする風邪引きの息コールドブレスの魔法を発動する羽帚型の魔道具。

魔法を受けると咳,鼻水,頭痛,発熱,悪寒等の状態異常をランダムで発症する。

1度使用すると20分のクールタイムを要する。


砲撃水銃

攻撃魔法アクアレーザーキャノンを発動する水鉄砲型魔道具。

MAX継続照射30秒。クールタイムは使用秒数の倍。


暗影の日傘さ

ダークインパクト,シャドウニードル,ポップダークシールドの魔法を発動できる漆黒の日傘の魔道具。

クールタイムはそれぞれ、ダークインパクト5秒,シャドーニードル10秒,ポップダークシールド20秒。


救命のペンダント

1日三回までオートガードを発動するペンダント型魔道具。

どんな攻撃にも発動してしまうので、名前ほど効果を実感できない微妙なマジックアイテム。当然、許容外のダメージで壊れる。


癒しの小瓶

HP6000,SP1600回復するポーションを作り出す魔法の小瓶。

8分で小瓶一杯になる。


風霊の城

小さなお城のミニチュア型魔道具。風属性強化フィールド魔法エリアルフィールドを展開する。

効果時間は2時間で、クールタイムは8時間。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 手に入れたのはこの七つの魔道具だ。魔道具は、装備品の様にステ補正が付く訳でも無いから、ちょっと微妙なんだよなぁ。かと言って、売るのは勿体無いと思うんだよな。なので確実に当たりだと言えるのは、最初に手に入れたスキルクリスタルだけだな。


 それじゃあ、宝物庫の中身を期待して番人に挑みますか!

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