134 〈呪霊灰山 3合目〉を抜ける
チナの因子を得て卵から孵った、元龍蛇のチエがパーティーに加わった。
チエが眷属神に成った事でアーツも増え、アビリティの『サモン コスモアポストロス』の無印版、アーツ『アポストロス』が使える様になった。
まあ、実質的にチエ専用のアーツだな。
あと、チエにも念のため行方不明の村人達の事を知らないか聞いて見た。
まあ、チエは〈腐灰水源〉に居たので、『多分、知らないだろうなぁ』と思いながら聞いて見たが、やっぱり知らないらしい。
「くっ、主様! お役に立てず申し訳ありません!」
チエが『無念』と云う様な顔して、凄い勢いで頭を下げる。
いやいやチエさん、そんな重く捉えなくて良いからね?
「あ、うん。チエ大丈夫だよ。ダメ元で聞いて見ただけだし、気にしなくて良いよ?」
「そうですか……悔しいですが、わたしが知らなかったのは事実! なので他でお役に立って見せます!」
「そうそう、そんな感じで良いと思うよ」
「はい! わたし頑張ります!」
切り替え早いし物凄い気合いだな。
ちょっと空回りしないか不安に思ったけど。
まあ、大丈夫だろう。
アルケシオン島から戻り、朝から修行する集落の人達から直ぐに情報収集行った。
「Σエ、エルナ殿そちらの御方は!?」
昨日エルナ達を案内してくれた、この集落のリーダーと思われる修行者が、チエを見て驚いている。
「この子はついさっき神に成った、うちの新しいパーティーメンバーですね」
「はい! この度、エルアクシア世界の神々の末席に加えていただきました! チエ・ヌイエ・ベルジープと申します! 皆さんよろしくお願いします!」
「なんと!?」
「新たな神が誕生しただと!?」
物凄い勢いで礼をし自己紹介するチエを見て、朝の修行に取り組む修行者達は驚愕の声を上げる。
ほぅ、チエはエルアクシア世界に所属する神の一柱なのか。エルナの眷属神と言うから、エルアクシアに所属してないかもと思ったのだが、如何やらエルナがこの世界の中心である星の化身である為、自動的にエルアクシアに属する神に成った様だな。
「おおぉぉ! エルアクシアに新たな神が生まれるとはなんとめでたい!」
「今日は素晴らしい日だ!」
「新しい神が、まさかのロリ神様だと!? 幼女神様との邂逅に続き何と素晴らしい!!」
相変わらず怪しい発言をする人がいるけど、これなら落ち着いたら直ぐに話を聞けそうだ。まあ正直、情報が得られるとは余り期待していなかったんだけどな。
意外な事に集落の修行者達から、パープシャル村の村人達が何度かこの集落に訪れていたと言う証言を得られた。もちろん、今回の異変が起こってからの事だ。
で、村人達は何しに訪れたのかと云うと、皆ギドュニに会いに来たと言うのだ。その目的はギドュニから洗礼を受ける事で、洗礼を受けた後は皆山頂を目指して集落を出て行ったらしい。
その時は、全く不思議に思わなかったらしいが、よくよく考えて見れば可笑しな事で、元々パープシャル村の村人がこの集落に来た事は今まで一度もない上に、そもそも村人達に知られているかどうかすら怪しいのにだ。
ここの人達はギドュニの幻覚に掛かっていた位だし、思考誘導位受けていても可笑しくないので、まあしょうがないだろうな。
でだ、おそらく村に現れた灰呪行僧の治療を受けた人達は、洗脳か精神汚染を受け治療の際に受けていたのだろう。ここの修行者達よりも強くな。
あと、おまけに七合目にもここより小さいが集落が有ると云う事を教えて貰えた。
一通り話を聞いた後、現実時間で午後1時を回っていたので、昼食を取りにログアウトするのだった。
ちなみに、集落のリーダの人から名前を教えて貰った。
エベロイと言う名前なんだってさ。
急ぎ現実で昼食を終え再びログインする。
「エルナお帰りなのじゃ!」
「主様お帰りなのです!」
「ただいま、二人共♪」
チナとチエが元気に出迎えてくれ、嬉しくてニマニマしてしまう。可愛いなぁ。
エルナがログアウトした事で、送還されたサレスと桜を呼び出した後。そのまま山頂を目指して、登山と言う名の迷宮領域の探索を続ける事にした。
「主様! ちょっと待ってください!」
「ん、チエどうかしたの?」
「はい! 集落を出る前に、主様が持つわたしの力を宿した、その護神刀を強化して置きたいのです!」
「へぇ~強化ね。えっとこれの事だよね?」
龍蛇之護神刀を帯状態のステラレインから抜いてチエに渡す。
「そうこれです! わたしは正真正銘龍神となりましたので期待してください!」
「すごい自信だねぇ。でも、そんなにパワーUP出来るの?」
「ふにゅ、チエはただ神になっただけでなく、下位神の階位も得たのじゃ。
チナの言葉からチエは種族も変わり、髪としてもランク一つ飛ばしでパワーUPした事が分かる。更にチナ曰く、チエはエルナの眷属神であるため、強化された護神刀は特別な神器に為るらしく、めっちゃ強力になるのは確定だそうだ。
「それでは行きます!」
チエが気合を入れると神々しいオーラが立ち昇り、穏やか且つ荘厳な雰囲気が辺りを包み込む。エナから少しだけ感じた事がある神力だ。
チエが自分から溢れた力を纏め上げ、龍蛇之護神刀に繋げ力を流し込む。
力が流し込まれるにつれ、少しずつ形が変わって往く。
パァ――っと光が弾け、生まれ変わった護神刀が姿を現す。
「主様、出来ました!」
チエから護神刀を受け取りよく見る。護神刀の鞘には銀箔で龍が描かれ、水晶玉に彫られて居た龍蛇も龍に変わり、全体的に豪華になっていた。
見た目は確認したので、ティアーズクロワに収納して如何強化されたのか確認だ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
白龍神之護神刀チエ・ヌイエ・ベルジープ
フレーバー:眷属神と成ったわたしの力を主様に捧げます!
身に着けた者に白龍神チエの力と最大の加護を齎す守り刀。
チエの成長に伴い強化及び進化する。また、主であるエルナが存在する限り、チエとこの護神刀が失われる事は無い。
パッシブ 白龍神之守護 富貴福沢 白龍天雷閃刃
専用アーツ 紫電一閃 神鳴轟雷 天雷龍刻斬 天雷白龍閃 雨嵐神鳴 虚空閃
神鳴絶域 閃雷轟天
VIT+4520,DEF+7200,INT+23450,MAG+7860,RES+8430
AGI+26200,LUK+23900,AUR+6890
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
うおっ! めっちゃ強くなったな! ステ補正の種類も増えたし、元々補正が付いていたのは爆上がりだ。当然の如く専用アーツと必殺アーツが増え、必殺アーツの『雨嵐天雷・瞬閃』が『雨嵐神鳴 虚空閃』にバージョンUPした見たいだ。
でも、極め付けなのは成長装備って事だな!
白龍神之護神刀チエ・ヌイエ・ベルジープは、ずっと使い続ける事が出来そうだ。
ん? なんかフレーバーテキスト見ると、チエは龍蛇の頃より幼く為ってる気がするんだが、もしかしてこれもチナの因子の影響か?
「ふふん♪ どうですか主様!」
チエがドヤ顔しながら褒められ待ちの態勢だ。うむ、可愛いじゃないか。
「チエ、偉いぞ~♪」
得意気な顔をしたチエの頭を撫で回す。銀の輝きを帯びた真っ白な髪に、ワシャワシャと指を通すとサラリとした感触が気持ち良い。うむ、これは良い物だ。
「えへへ~♪」
チエも褒められご満悦の様子だ。撫でられるのも気持ち良さそうにしている。うん、次もチエは撫で回してやろう。決定だ!
にしてもやっぱり、チエは見た目と性格が、全く合ってない感じに為ってるよな。
いやだって、今の表情物凄くチナっぽいからなぁ。
やっぱりこれはもう、チナの因子の影響って事で間違いないだろう。
って言うかチナの因子強いな!
「思わぬパワーUP出来たし3合目攻略しよう!」
「うにゅ!」
「はい!」
「了解した」
「任せてください!」
五人パーティーと為った俺達は、灰が積もって真っ白な登山道を、遭遇するエネミーを瞬殺しながら分かれ道まで戻り、今度は4合目へと続くルートをサクサク進で行く。順調に進んで行くと広場が有り、その先の山頂へと続く道は巨石に塞がれていた。広場の周囲は崖に成っていて迂回は出来ない様だ。
まあ、内のパーティーは皆空を飛べるから関係ないけどな。
で、この如何にもボスが出ますよ。と云う様な雰囲気の広場に足を踏み入れると……。
¶エリアBOSS 道塞鬼熊 赤銅丸のBFに侵入しました。
はい! 予想通りボスのBF侵入アナウンスが流れて来たな。
アナウンスに応じる様に、巨石がぼんやりと光その岩肌に波紋が広がる。
波紋で波立つ岩肌からズンズンっと音を響かせ、赤銅色の毛並みを悠然と見つけながら、額に一本角を持つ巨熊が姿を現す。
グオオオオオオオオオオオッ!!
鬼熊は二本足で立ち上がり、その立ち上がった姿は優に16mを超え、やる気満々と云った様子で雄たけびを上げる。
ふふん、良いだろう。とっとと倒してやるぞ!
「主様! 少し宜しいでしょうか!」
「ん? チエ何かな?」
「この熊はわたしに任せて貰えませんか! 主様にわたしの力を見せて置きたいのです!」
なるほど。確かにここに来るまで、エネミーは全て瞬殺だったから、チエがどの位強いのか今一分かっていない。
とは言っても、チエ一人にボスを任せて大丈夫なのだろうか?
そう思って、チナの方をチラリと見ると。
「にゅ、問題ないと思うのじゃ。
「姉様……!」
ええっ!? うちのパーティーでチエが一番強いの!?
そっかぁ、でもそれならチエに任せても大丈夫なのかな?
「分かったよ。チエに任せるね!」
「はい! 主様任せてください!」
チエの赤い瞳が、キラキラと嬉しそうに輝く。いや~、チエ可愛いなぁ。
「主様見ててください! あんな熊、わたしが瞬殺して見せますよ!」
おお、瞬殺とは大きく出たな。
グガァ!? グオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!
侮られたと思ったのだろう。
鬼熊は物凄い怒気を発し、体毛と同じ赤銅色のオーラを滾らせる!
鬼熊の力が、場の空気を重苦しいモノに変えて往く。
それを見て、チエも自身の神力を開放する!
チエの発した神力は、鬼熊の発した力を軽く凌駕し場の空気を再び塗り変える。
Σグオッ!?
そりゃ鬼熊も自身の力が一気に霧散すれば驚きもするだろう。
そして、それだけの隙が有れば、チエが一撃入れるのは容易いのだった。
『神鳴雷導千連斬』
カッ!! ドン!! ゴロゴロゴロゴロ!! 雷が鬼熊に落ちた。そう思った瞬間、鬼熊の体はバラバラに切り裂かれ、消し炭へと変わる。まさに瞬殺だ。
おおっ!? 宣言通りの瞬殺か!?
でもまだ、油断してはいけない。
何せ何時も通りなら、ボスはこれで終わらずに復活して来るからだ。
それに、炭に成ったのなら余計にな。
¶エリアBOSS 道塞鬼熊 赤銅丸を討伐しました
討伐報酬がギフトボックスに送られます。後でご確認ください。
マジかぁ、ボスが復活しなかったぞ!?
マジの瞬殺じゃん! チエつっよ!!
「主様! どうでしょうか?」
そう聞いて来るチエの顔は、褒めて貰える事を既に確信してる顔だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます