133 パーティメンバー追加のお知らせ

 お屋敷での急を要する用事が終わり、エイルさん達はやる事があるのか直ぐに何処かに行ってしまった。自分達も集落でやる事があるので、一旦外に出てからゲートを開いて戻ろうと思う。。


「そろそろ良い頃合だし、情報収集しに集落へ戻ろうと思うんだけど、良いかな?」

「にゅ、エルナちょっと待つのじゃ」

「ん? チナ、何かあるの?」

「うにゅ。エルナから預かった物を処分ちょぶんちようと思うのじゃ。だからエルナには、わちの神域とここを繋ぐ許可を出ちて欲ちいのじゃ!」


 ああ、例のサークレットか。処分すると言っても何で今何だ?


「良いけど、何であれを今処分するの?」

「ふみゅ、残滓とは言え大神の力を処理しゅるのじゃ。流石しゃしゅがに、相手のテリトリーでやろうとしゅるのは、普通に危ないのじゃ!」


 なるほど。例え結界の中とは言え、あの集落もその大神の影響下にある場所だ。

 それに、空間の亀裂の向こう側とは言え、その姿を現した事も大きい。残滓とは言え、そんな大神の力を処分しようなんて、実は口にするのも危なかったのかも。


 許可を得ると。チナは直ぐに自身の神域に向かった。

 暫く経つとチナが戻って来た。それも、なんか見た事ある大きな卵を抱えてだ。

 あの卵、電球の様に光ってるけど確かに見た事があるぞ?


「にゅ、もう直ぐ孵るから持って来たのじゃ!」

「ほぇ~、チナさん。その卵、すっごくおっきいですねぇ」

「ふにゅ! わち妹が生まれるのじゃ!」

「へぇ~、チナさんの妹さんですかぁ、きっと可愛いんでしょうねぇ~♪」


 チナと桜が卵の事を話しているけど……チナの妹ねぇ?

 う~ん、確か現実時間で昨日……妹……そうだ! 思い出したぞ、龍の卵だ!

 そう言えば〈腐灰水源〉で戦った龍蛇を、浄化ついでに『ディサイド オブ リーンカーネイト』で、龍として復活させようとしたら卵に成ったんだ!

 そっか、あの時の卵が孵るから持って来たのかぁ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

星霊姫の力により、龍鱗白蛇 ヌイエ・ベルジープが、神種へと転生進化します。

貴方の眷属神として、新たな生を受ける彼女に新しい名前を付けてあげてください。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 んんっ!? えっ、眷属神だと!?? しかも俺が名前を付けるのか!!?

 ええっと、名前かぁ~チナの妹? だから、チエとか? いや、安直過ぎるか?


 ピシピシッ!! 一際光が強くなると卵に一気に亀裂が入る。

 パア――――ン!! 亀裂から光が漏れ卵が弾け飛ぶ。

 光の中から、白銀に輝く美しい龍体が飛び出し、天高く飛翔する。

 銀の角と赤い瞳に金の輝きを宿すその龍は、自身の生まれ変わった喜びを示すかの様に、白銀に輝く美しい身体をくねらせ優雅に宙を舞う。

 白銀に輝く龍体がうねる度に、龍と同じ白銀の光の粒が世界に降り注ぐ。

 何か凄くおめでたい感じになったなぁ。


「うわぁ~! これは綺麗だね! それに何だかとってもおめでたい感じだよね!」

「ほんとですね~、光が雪みたいに振って来てとっても綺麗ですね! と言っても私、雪を見た事無いんですけどね」


 桜が雪を見た事無いって云うのはしょうがない。

 まあ、山を登って行けば見れるだろうけど、多分こっちの方が綺麗だと思うよ。


「うにゅ! めでたいのじゃ!」

「これ、正月とかにやって貰えないだろうか」


 チナもこのめでたくも、幻想的な光景に目を奪われる。

 ほんとそれなっ! サレスの言う通りお正月に是非やって貰いたいよなぁ。

 まあ現実世界では、まだ夏が始まったばかりだけどな!


「龍神様がまるで、私達の世界を祝福しているみたいです!」

「あの龍神様は、島主様が連れて来てくださったのでしょうか?」

「まさか島主様を迎えたこの日に、アルケシオン島で新しい龍神様が誕生する何て、これは素晴らしい吉兆に違いないですね!」


 などと、メイドさん達の話し声が聞こえて来た。

 そう、何時の間にか島主屋敷のメイドさん達が皆空を見上げていたのだ。

 この小世界の主である島主が現れ、そこに新しく生まれた龍神が、まるでこの世界を祝福するかの様に喜びの舞を舞うのだ。そりゃもうメイドさん達は大興奮である。

 きっと他の島民達も、ここに居るメイドさん達と同じ様に、この空を見上げて大盛り上がりしてるに違いない。なんせ光が降って来るんだし、酔っぱらって居たとしても、流石にこれに気が付かない訳無いだろう。


 白銀の龍が一際大きく輝くと、その身を幾つもの光の玉に姿を変え消えてしまう。

 ふっ、と星覚が反応する。その反応に視線を下に向ける。

 幾つもの光の玉が、エルナの目の前で集まり、段々人の形へ変わって成って行く。

 そこに居たのはチナやエナよりも明らかに身長が高く、小学校高学年もしくは中学生位の雰囲気を持った着物姿の美少女だった。髪は、銀の輝きを帯びるサラリとした癖のない真っ白な長髪に、光の加減で色が変わる花びらの髪飾りが鏤められ、清楚さと華やかさを演出する。そのやや釣り目がちな赤い瞳には、金の虹彩が射し確かな意志の強さ感じさせる。やはりアルビノなのか肌も白い。

 身長は、年の感じから見るとやや低めの144㎝位だ。スタイルは、赤と銀の刺繍が施された白い着物姿の為分かり難いが、全体的に華奢な感じが伝わって来る。お陰で見た目は、強い精神力を持っているけど、それに体がついて行かない病弱で儚げな美少女に見える。

 ちなみに、足元は右近下駄で帯に小太刀を差しているな。


「主様!」

「Σにゅ!?」


 おおっと!? いきなりムギュッと抱き着かれて驚く。

 ん? あと何でチナが羨ましそうにしてるんだ?

 まあ兎に角、主様と言って抱き着て来たその子は、エルナを抱きしめながら緩んだ顔してとても幸せそうだ。まあ、当然悪い子では無いよな。

 だって、さっきまで空を舞っていた龍神様だろうしなこの子。


「ええっと、自己紹介して貰って良いかな?」

「Σはっ、はい! すみません主様! わたし、主様と姉様に助けていただいた、元龍蛇で現在白龍神のチエ・ヌイエ・ベルジープです! 主様の眷属神となりましたので、どうぞよろしくお願い致します!」


 うん、この子見た目の印象と全く違うぞ! 間違いなく元気っ子キャラだ!

 あ、これってもしかして、チナの要素が元気っ子だったとか? それは無いか。

 にしても、俺が付けた名前、元の名前に付け足されるタイプだったか。


「うにゅぅ、姉のわちにも抱き着いて良いのじゃよ?」

「Σはうぁっ!? 分かりました! 直ぐに姉様を抱っこします!」


 慌てた様子のチエが、「姉様~♪」と言ってチナを抱っこする。

 何だか微笑ましい光景だなぁ。

 あと、チナが羨ましそうにしてたのは、折角出来た妹が自分の方に直ぐに来てくれなかったから見たいだな。


「エルナさん、なんか賑やかになりそうですね~」

「そうだね~」

「確かにな~」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

¶コスモプレイヤーエルナが、称号【昇神星壇の化身】,【神を従えし者】,【白龍神チエ・ヌイエ・ベルジープの主】を獲得しました。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 おおっと、称号獲得のアナウンスか!

 称号【神を従えし者】は、チエが眷属神に成ったから分かる。

 でも、称号【昇神星壇の化身】の獲得理由は何だろ?

 エルナの無尽蔵の星輝の所為なのかな?

 う~ん。それに星壇って、エルナが行かないといけない場所だよねぇ?

 もしかして、称号GETしたから、もう行かなくても良いとか?

 ま、そんな訳ないか。


「主様!姉様!サレス殿!桜殿! 改めましてこの不肖チエ・ヌイエ・ベルジープ、不束者ですがどうぞよろしくお願い致します!」


 抱っこに満足したチナから解放されたチエが、勢い良く礼をして改めて全員に挨拶をする。サレスと桜の事はチナに聞いたようだな。


「はい!チエさん、よろしくお願いしますね!」

「ああ、よろしく頼む。チエ殿」

「うにゅ! わちはチエの姉じゃから任しぇるのじゃ!」

「それじゃあチエ、改めてよろしくね!」


 しかし、チナの方が姉なんだけど、完全にチエの方が姉に見えるなぁ。


「はい!」


 チエは目をキラキラさせ元気よく返事をする。うむ、元気っ子も可愛いな!

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