132 天壌の楽園アルケシオン2
島の中央に有ると云う島主屋敷への移動は直ぐだった。
なんせ、エイルさんの持つ管理者権限で、ゲートを開くだけだったからだ。
エルナの島主証章でも同じ事が出来るので、次からは自分達でゲートを開いて島主屋敷に移動できる。
島主屋敷は、この世界の主の為の屋敷と云うだけあって、かなり立派な建物だ。
ざっと見た所、屋敷は五階建てかな? 屋敷と言うけどちょっとした宮殿だよな。
それに住むのは島主、つまり君主みたいなもんだし間違ってはいないだろう。
それに、敷地もかなり広くて、遠目に門扉が小さく見える位だ。
って言うかこの島自体かなりデカいな。これ、セーフティエリアなんだよなぁ?
小世界とは言え、広過ぎませんかね?
「こちらが、エルナ様のお屋敷になります。この島主屋敷は、シルキーの三姉妹が取り仕切っておりますので、お屋敷に滞在中の間は快適にお過ごしいただけると思いますよ」
エイルさんが言い終わるタイミングで、屋敷の扉が開き銀髪銀眼の美女メイドが一人出て来て一礼する。
「島主様とお連れの方々、長らくお待ちしておりました。僭越ながら、わたくし共姉妹でこの島主屋敷の敷地を含む全てを取り仕切らせていただいております。長女のスフィー・ベルと申します。以後お見知りおきを」
そう名乗った彼女は、今にも透けて消えてしまいそうな白い肌、すっと通った鼻筋に銀色の瞳が映える涼やかな目元が印象的な、少女から大人の女性に為ったばかりと云う空気感を持つ綺麗系美女だ。
服装は、綺麗な銀髪を後ろで纏める様にモブキャップを被り、ロングスカートのビクトリアンスタイルのメイド服に身を包んでいる。身長はエルナより若干高い位で、全体的に出来るメイドと云った雰囲気だ。
「あ、私はエルナです。縁あってこの島の島主になりました。スフィーさん私の方こそ、よろしくお願いしますね」
「ふにゅ、チナなのじゃ! エルナの守護神なのじゃ!」
「サレスだ。エルナ殿の召喚騎士だ」
「桜です。サレスさんの契約精霊です」
うむ。元気よく手を挙げて挨拶するチナは可愛いなぁ~。
「では、島主様とお連れの皆様、どうぞお屋敷の中へ」
スフィーさんに導かれ屋敷の扉を潜ると。玄関は広いエントランスホールになっており、扉の両端から一直線にメイドさん達が整列してエルナ達をお出迎えてくれた。アレだよ。お金持ちとか権力者を、使用人がレッドカーペットとかの端に並んで出迎えてくれるヤツだよ。
見た所、男の使用人とか執事は居ないっぽいなぁ。そう思っていると、スフィーさんが二人のメイドさんを紹介して来る。おそらく彼女の妹達だろう。
「初めまして島主様方♪ わたくし、この島主屋敷で主に屋敷の管理を行っております。次女のエフィー・ベルと申します。よろしくお願いしますね♪」
そう名乗ると。エフィーさんは、他のメイド達と違って優雅にカーテシーをする。
ちなみに、エフィーさんの見た目は姉と同じ銀色の輝きを宿した悪戯好きそうな瞳に、モブキャップから伸びる緩やかなウェーブのハーニーブロンドの長髪が印象的な、お姉さん系美少女と言った所だ。
身長は大体150㎝代後半で、服装は姉と同じヴィクトリアンメイドスタイルだ。
次に挨拶して来た娘は、アッシュブロンドのショートヘアに、この三姉妹の特徴で有ろう銀色の大きな瞳が目を引く。服装はやはり姉達と同じモブキャップに、ヴィクトリアンメイドスタイルで、背は桜の本来の身長より少し高い位かな?
「エルナ様とお連れの皆様、私はこの島主屋敷で主に庭の管理を行っております。三女のユフィー・ベルと申します。庭の散策等ご用命の時は、何なりとお申し付けください」
と、ユフィーさんはニッコリ微笑む。
う~む。何故か分からないけど、幼馴染的な何かを感じるぞ? 不思議だ。
「エルナ様、三姉妹との顔合わせも終わりましたので、島主の間へと参りましょう」
「ん? 島主の間? そこに行かないといけないの?」
「はい。あと20時間程でワタクシ達島主代行管理者は、アルケシオンの管理システムの大部分を操作出来なくなります。ですので島主様であるエルナ様が、島主の間で管理権限手続きの諸々をしてくださらないと、とても困った事に為ってしまいます」
「ええっ!? 大変じゃないですか!」
エイルさんから話を聞くと。エイルさん達は、そもそもこの小世界の管理の為に生まれて来たので、最低限の管理権限は維持されるが、島主代行の管理権限は一度アルケシオンの所有者と為ったエルナに集約される。こうなると、エイルさん達は最低限の管理維持しか行えない為、早急にエルナに管理システムを把握してもらう必要があるとの事。また、エイルさん達に引き続き島主代行管理者を務め欲しい場合も、島主の間で代行管理者として再任命する必要があるので、やっぱり島主の間には行かないといけない。
そして、姿を見せていないエイルさん天使姉妹の残りの三人は、エルナが直ぐに帰ってしまった場合に備えて、管理システムの調整を綿密に行う必要が有るため、こちらに来れなかったと云う話だ。
移動しながら話していたので、何時の間にか目的の島主の間に着いた様だ。
「こちらです」
島主の間は屋敷の最上階に在った。見立て通り五階建てだったな。
扉を開け島主の間に入ると、中は神殿の様な作りに為っていて奥には祭壇も有る。
てっきり、執務室の様な場所だと思っていたのだが、如何やら違った様だ。
祭壇の後ろには、白い石で出来た大きな樹を思わせる様なオブジェが有った。
そのオブジェの中心には、中に沢山の気泡の様な物がゆらゆらと浮く、透明な青い水晶玉が収まっていた。
「ふにゅ、わちらの世界の星壇みたいなものなのじゃ?」
「星壇が、世界にアクセスできる場所と言うのならそうです」
星壇は確か、種族進化や神への昇神など行うために、絶対に行かないといけない場所だ。そして、紅月の大神の呪いが具現化した紅い鎖を破壊する為に、エルナが絶対に行く必要がある場所だ。
「エルナ様、祭壇の前にお立ちください」
エイルさんに促され祭壇の前に立つ。
左胸に付けた島主証章が光を放つと、祭壇の後ろのに有る白いオブジェに、虹色の光の筋が幾つも走り白いオブジェが色付いて行く。オブジェ中心に有る水晶玉に、光が集まり水晶の中で増幅しながら乱反射する。限界を超えた光が島主の間に溢れると、アルケシオン全体を映し出すホログラムが展開された。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
〈天壌の楽園アルケシオン〉小世界管理システムが起動しました。
島主エルナに完全に管理権限が委譲されました。
このまま管理設定に移行しますか?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
もちろんYESだ。と言っても詳しい事は分からないし、今までアルケシオンを管理して来たエイル達に問題が有るとは思えないので、島主代行管理者に再任命する。
「エルナ様、拝命謹んで承ります」
「ふぅ~。エイルさん、これでもう大丈夫かな?」
「はい。これで一安心です。もし、エルナ様がこの島で何かしたい事があれば、遠慮なくワタクシ共に仰ってください。可能な限り実現できる様、努めさせていただきます」
これでアルケシオンの急を要する用事は無くなった。
それに、丁度時間的にエルアクシア世界は朝になっている筈だ。
修行者達から情報収集しないといけないし、そろそろ戻るかな?
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