128 天灰炎蛇ギドュニ・アルコラサビエド戦2

『ぐがががっ、いい加減にせぇいっ!! この木っ端精霊がっ!!』


 桜が続けて居た高次元を利用した攻撃に、堪らずにギドュニが翼を広げながら、雨氷の所為で壁に出来た透明な氷をバリン! と砕いて這い出て来た。出て来て直ぐにギドュニは地下室を見回し、配下の僧兵達が見当たらない事に気付く。


『むぅ!? 僧兵共の魂が感じられん。如何やら復活は無理の様じゃなぁ。全く最後まで使えん奴らよ!! かああああああああっ!!!』


 ゴオオオオオオオオオオッ!!! そう自分の配下を貶した口で、地下室全体に行き渡る様に灰色の炎のブレス撒き散らす!!


次元遷移ディメンショントランジション!!』


 灰色の炎が届く前に桜のアビリティが発動し、一瞬奇妙な幾何学模様の渦巻きが見えたと思ったら、ギドュニのブレス攻撃は既に終わっていた。

 如何やら今のは、桜がパーティーを一時的に別次元に遷移させた結果らしい。


『なっ、なな、なんじゃと!? どうやって儂のブレスを避けおったのじゃあぁっ!? ああっ、もしやまたもやそこの木っ端精霊の仕業か!!』


 まさかギドュニも、ブレス攻撃をスカされるとは思ってもいなかったのだろう。

 その原因を作った桜に対して、怒りを露わにする。

 そんな隙だらけのギドュニに、RWライダー達のアーツが叩き込まれる!


『がうがあっ!!』×6

『なに!?』


 ドゴドゴドゴンッ!! 驚愕するギドュニを余所に、オオカミ達が一斉に氷隕石を飛ばし、そのオオカミを足場にウサギ達がギドュニに向かて跳躍する!


『くあああっ!?』

『きゅっきゅっ!!』×6


 ドドドドドガアァ――――――ン!! キラキラと輝く無数の十字の光を足に纏う、ウサギ達の蹴りがギドュニの胴に炸裂する!!


『あべばあああっ!?!』


 ウサギ達のアーツによって派生した光の爆裂がギドュニの長い胴を仰け反らせる。

 そこに、光に紛れ『チャージダッシュバーニア』で、跳躍していたサレスがアーツを放つ!


『氷壊凍衝大切刃!!』


 シャリン!! バッキャアアアァァッ!! 冷気を纏った白刃が、ギドュニの横っ面を叩き切り、左目とその周辺を砕いた。


『ぎゃああああああああああああああ!!!!』


 ギドュニが絶叫し身悶えると、焼け付く様な黒い思念の波動が放たれ、翼からは灰で出来た羽が飛び散り、物に触れると燃え上がる!

 大ダメージ受けるとカウンター飛ばして来る奴か!

 チナの『氷天零下水域』のお陰で被害は少ないけど。でも、これはめんどいなぁ。


「にゅぅ、うるさいし鬱陶しいのじゃ!『凍打水龍連撃』なのじゃ!!」


 チナが『水遊浮歩』で空中を駆け、腕の動きから寒々しい水で出来た龍を纏う。

 ドゴゴゴゴゴゴゴオッ!! チナの小さな手足から繰り出される、高速の一撃一撃が重い音を響かせ、飛び散る水飛沫がシャリシャリシャリン!! と凍り付く。

 ドゴンッ!! バッキャシャアアアァァン!!! 水龍の顎と共にアーツの最後の一撃が放たれ、ギドュニの胴が砕け千切れる!!


『ぎゅがあああああぁぁぁぁぁあああああああっ!!!!』


 頭に響いて五月蠅いが、流石に胴が千切れて絶叫上げるのは仕方ない。千切れたギドュニは致命傷に見えるが、ボス討伐のアナウンスが無いので当然油断はしない。

 変化は直ぐだった。ギドュニの頭の無い胴体の傷口と背が盛り上がり、頭と翼がグチャメキメキっと生えて来る。こいつも増えるんかい!

 プラナリアの様に増えた蛇は、額の水晶こそないがギドュニと同じ翼の有る蛇だ。

 となると、元々頭が有る方は如何なったのか?

 答えは、左顔面が破損した巨大な蛇の抜け殻を残し、顔が元通りになって元気に復活した。だ。


貴様きっさまらあぁ――っ!! この儂を引き裂いた事後悔させてくれる!!』

『ウラヌスコールドレイン!!』


 恨み言を吐いているギドュニとその分裂体に、セレスティアラインを素早く矢に変え、ステラレインで『ウラヌスコールドレイン』を発動して射撃する!

 ガガガガガガガガッ!!! ビシバキピキパリミシィッ!!! 発射されると同時に無数に分裂し、本来の剣の形態に戻ったセレスティアラインが次々とギドュニ達に突き刺さり、天王星の名を冠する極寒の冷気がその体を凍り付かせて行く。


『がっがっがっがっ!? ぐあああああああああ!?! おのれえぇ――っ!!』


 ギドュニ達は凍り付く体を無理やり動かし、怒りを力に変え炎を噴き上げる!


双牙火炎瘴蛇灰滅ツインフレアバイパーアッシュドライブ!!』


¶特殊イベントBOSS 天灰炎蛇ギドュニ・アルコラサビエドが、必殺アーツ『双毒蛇・火炎灰滅ツインバイパー・フレアアッシュドライブ』を発動しました。


『死ねえぇぇ――い!!』×2


 二体の有翼の蛇が瘴気の炎その物となり、黒い煙を全身から吐き出しながら、螺旋を描く様に高速で飛翔する!


「桜さっきのやつお願い!」

「はい!『次元遷移ディメンショントランジション』!!」


 桜の『次元遷移ディメンショントランジション』で、別次元に一時的に移動してギドュニの必殺アーツをスカさせ、戻って来て直ぐに恐らく毒であろう煙を『星浄煌炎』で焼き払う!


『なあぁ!? またしても木っ端精霊の仕業か!! それに何故毒の煙を焼き払える!? 小娘えぇぇ――!!』


 ギドュニの必殺アーツを躱し、こちらのターンとばかりに一斉攻撃を仕掛ける!


『きえぇぇ――!! 儂を舐めるなぁ――!! 『蛇視・痺締縛呪』!!』


 ギドュニ達の蛇眼が怪しく輝くと、桜とRWライダー達の動きが止まる。半透明の灰色の蛇が、桜とうちのもふもふ達を締上げ身動き出来ない様にしているのだ。

 エルナとチナそれにサレスは、ギドュニの蛇視に耐性が有った様で効果が無かった。なのでその攻撃は、こちら全員が動かなくなる心算で炎を吐こうとしていたギドュニ達にカウンター気味で命中する。


『ぎゅばごはっ! ががあああっ!?』

『ひぎぃっ! がががが!?』


 分裂体はチナに顎を蹴り上げられブレスが暴発、ギドュニ本体はエルナとサレスのダブル『コスモフリーズクラッシュ』で凍結粉砕のダメージ受け動きが止まる。

 この隙に、桜とうちのもふもふ達の状態異常を回復して置こう。


『クリアステラリフレッシュ!!』


 大量の色とりどりの小さな星型の光が、半透明の灰色の蛇を桜達から排除して行く。


『ちぃぃぃっ! 儂の蛇視を受けて動けるとは! じゃが動けん奴らは灰にしてくれる!!』


 ギドュニ本体の額の水晶が明滅し、急激に力が高まる。

 これはギドュニが老婆姿の時に、水晶から放った光線アーツの予兆に違いない!


無慈悲なる超過光マースレスオーバーレイ!!』

『オーロラリフレクションシールド!!』


 カッ! ギドュニのアーツの発動に、こちらのアーツの発動が間に合った。

 しかし、ギドュニの額の水晶から放たれた光は、前の直線レーザー攻撃とは違い拡散する様に地下室全体に放たれる。俺は慌てて『オーロラリフレクションシールド』に、『コスモバリアシールド』を加え全方位に対応しようとしたが、若干間に合わずRWライダーのペア二組が光に焼かれ一瞬で灰になる。


「Σきゅっ!?」

「Σがうっ!?」


生贄40号:ええ、すみません姫。任務を失敗してまうとはお恥ずかしい。

      今回の失態は次に生かしたいですねぇ。

生贄38号:あの蛇婆やってくれたわね! 悔しいけど今回は此処までね。

軍狼3番:ああっ! 初任務失敗とは悔しいです!

軍狼4番:任務失敗無念!


 パーティーチャットに、倒されたスカーフ巻きと魔女帽のウサギとオオカミペアが、コメントを残しパーティメンバーから外れる。

 Σあっ、召喚体だからやられると直ぐに消えちゃうのか!

 しまったなぁ。『アステルリヴァイブ』を掛けて置けばよかったな。


『けっけっけっ! 畜生四匹とは言え、漸く灰に変えてやったわい!』


「むにゅう! わちもふもふに何て事を! 許せんのじゃ!!」


 チナさん、如何やらうちの動物さん達がやられておこの様だ。

 チナから青白いオーラが立ち昇り竜の形を取る。これ見て俺は万が一に備え、ギドュニの光線に対処出来る様に『ドラグーン』を起動し、武器と仮定した水晶に『アームドブレイクシュート』を撃つ準備をする。


「わちの怒りを受けるが良いのじゃ!!『竜気・絶氷瞬結』!!」


 ゴオアアアアアアアアアアッ!! チナから放たれた荒れ狂う竜のオーラが咆哮を上げ、絶対零度の冷気を纏いギドュニに襲い掛かる!


『分身よ! 儂を守れえぇぇぇい!!』

『シャアアアアアアアッ!!』


 危険を感じたギドュニが分裂体を盾にする!

 メキイィィッッッ!!! ゴッシャアアアアアッッッッ!!!! 荒れ狂う竜のオーラが、一瞬でギドュニの分裂体を氷像に変え打ち砕く!!

 粉砕された分裂体が、氷霧を巻き上げ一時的にギドュニの姿を隠す。と言っても、こっちは『ドラグーン』でロックオン済みだ。


『けっけっけっ! 小童死ねえぇぇぇい!!』


 不意を突いた心算のギドュニが、額の水晶を明滅させ力を高める。

 やっぱりあの光線を撃って来るか! 当然狙いはギドュニの発言通りチナだろう。

 俺は準備して置いた『アームドブレイクシュート』をステラレインから撃つ!


『アームドブレイクシュート!!』

無慈悲なるマースレス……がっ!? なにぃぃぃっ!?!』


 ゴガッ!シュバアァ――――ン!! 水晶の力が解き放たれる前に矢が突き刺さり、武器破壊の力の影響で発射直前の力が暴発し、ギドュニの頭で炸裂する!!


『ぼがばああああああぁぁぁぁぁぁああああああああっ!!!!』


 暴発した水晶の力はギドュニの頭を吹き飛ばすが、直ぐに胴の肉が盛り上がりグッチャァっと頭が生えて来る。

 Σうっわ、ギドュニしぶとい! 本体の頭も再生するのかよ!


『かぁぁ――っ! 何と言う事をっ! 御方から頂いた大神器を壊しおってぇぇぇっ!!』


 あの水晶、やはり大神由来の物だったか。

 まあ、反射出来なきゃ全滅必死なあの光線の威力を考えれば、妥当な所だよな。


『もう良い! こうなったら、この集落丸ごと贄にしてくれるわぁっ!!』


 ギドュニから瘴気を纏った灰色の炎のオーラが地下室の床に流される。

 『氷天零下水域』の影響で氷に覆われた魔法陣がギドュニのオーラで満たされる。

 

『ひゃっひゃっひゃっ! 起動せよ!!『儀式大呪法 灰灰呪身火葬呪界贄送り』!!』


¶灰呪教信徒達が集落に仕掛けた大呪法、『儀式大呪法 灰灰呪身火葬呪界贄送り』が発動しました。

完全に発動した場合、集落がこの世界から消滅します。

当然その場合は、自動的にイベントクエストは失敗となります。


 グオォォ――――――ン!! 魔法陣が唸りを上げ光を放つ。

 ビシッ!! 同時に世界に亀裂が入る音がする。

 恐らくは、呪界に繋がる穴を強制的に開こうとしている音だ。

 クエスト強制失敗させる仕掛けとか、最優先で止めるしかないじゃん!


『さて、儂はそろそろお暇させて貰うかのぅ。ひゃっひゃっ!』


 ヤバそうな物を発動して置いて、自分が逃げる為の呪文を唱えるギドュニ。

 いや、逃がす訳ないでしょ!


「チナ、桜! ギドュニを逃がさない様にして!」

りょなのじゃ!『氷棺凍結』なのじゃ!」

「はい!『ディメンションアイソレイト』!」


 氷の棺がギドュニを囲い閉じ込め、不可視の次元断絶壁がギドュニの空間的な繋がりを完全に断つ。


『なあっ!? 己ら余計な事を!!』


 発動した呪法はギドュニにとっても危険らしく、慌てて逃げる為の呪文を転移系からゲート系に変更した様だ。それでも多分、詠唱が終わるタイミングで桜が『ディメンションキャプチャー』を使って、逃がさない様にしてくれるだろう。

 ギドュニが手間取っている間に、俺はギドュニが発動した呪法を止める為、魔法陣の効果を消し去る様に星輝を込める。何でも爆破出来る様に為った過程で、アイテムの効果を狙って消す事も出来そうな気がしたから行ける筈だ。


『エフェクトブレイク!!』


 バチバリィッ!! ギドュニの流し込んだオーラと魔法陣の力を、エルナが流し込んだ星輝が一気に消し去る。力の消失と共に魔法陣その物がスゥ―っと消えて往き、世界に亀裂が入る音も聞こえなくなった。


『Σなっ! 馬鹿な!? 何故陣が消えたのじゃあぁっ!?! 儂の大呪法が失敗したと言うのかあっ!!!』


 ギドュニが思わず呪文詠唱止め驚愕する。この隙は致命的だ。

 呪文詠唱をやめたギドュニは、流石にもう逃げられないだろう。

 俺はアステルエルアクシアを展開し、止めを刺すために矢を放つ!


次元氷結新星爆裂ディメンションフロストノヴァ!!』


 紫の閃きが、次元隔離された上に氷棺閉じ込められ、驚愕で取り乱しているギドュニを貫き、紫色の宝石の様な氷晶がチナの作り出した氷棺の中で花開く。


『ぎぃやあああああああああぁぁぁぁぁぁ………………!!!!』


 ギドュニの断末魔の絶叫が、次第に弱くなり聞こえなくなる。


¶特殊イベントBOSS 天灰炎蛇ギドュニ・アルコラサビエドの討伐に成功しました。

突発強制イベントクエスト『真夜中の夜襲』の達成に成功しました。

突発強制イベントクエスト報酬は、天灰炎蛇ギドュニ・アルコラサビエドの討伐報酬と共にギフトボックスに送られます。

コスモプレイヤーエルナの称号、【大いなる力に抗う者】が【大いなる力を打ち砕く者】に変化しました。


 ふぅ~、漸く終わったかぁ。

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