127 天灰炎蛇ギドュニ・アルコラサビエド戦
敵を見たチナは、小さな手足を大きく使い、円を描く様に体を動かす。冷気がチナに集まり冷たい風が吹く。炎蛇の熱など物ともせず、地下室の気温がグンと下がる。
「初手強撃なのじゃ!『凍風衝波 竜気氷晶』!!」
ヒュ――――ゴウッッッ!!! ビシィッッッッ!!!!
チナが小さな拳が突き出すと、氷霧の竜が強烈な突風と共に地下室に吹き荒れ、魔法陣の中心に有る炎を消し去り、敵はもちろん天井に壁も床も氷で覆われる。
『ぎぃやあああああああ!! この小童何をするぅ!!』
チナの地下室で有ると云う事に気を使った強烈な攻撃は、しっかりギドュニに効いた様だ。復活した信徒達にも効果は抜群で、体は凍り付き周り漂っていた人魂もシュンと音を立て消えた。
『僧兵共何をしておる!! お主らも甦った分働かんかぁぁ――っ!!』
ゴウッッ!! と怒声と共にギドュニの体の炎が火勢を増す。
『gうnsmのtmい……!』
ギチギチと凍った体を無理矢理動かし、甦った信徒達は一番近くに居た相手に攻撃を仕掛け、内二体は階段近くに居たエルナに向かって来る。
最初にRWライダー達が倒した信徒達だ。
セレスティアラインを抜き、自分に向かって来る信徒に対応しようと構える。
『あぁ~~!! それしても寒くて敵わん!! 儂に相応しい場へと変えてくれる!!』『生を終え、地を彷徨い、天にも獄にも行かぬ者達が目指す清めの火葬場。灰灰の呪界へ至る魂と体を焼き焦がす呪福を齎す灰の煉獄よ! 今此処に顕現せよ!!『
¶特殊イベントBOSS 天灰炎蛇ギドュニ・アルコラサビエドが、領域顕現
エネミーに優位な環境が構築されますので、お気を付けください。
詠唱を終えると、ギドュニは直ぐに壁に潜り姿を隠す。
地下室の床の至る所から灰色の炎が噴き出し、チナのアーツで作られた氷晶が溶け、灰が地下室の空気を汚染する。更に床の炎が、復活した信徒達に燃え移り、信徒の凍り付いた体を溶かしその動きを加速する!
急に加速した信徒達の動きに少し慌てたが、セレスティアラインで二人の信徒から繰り出される錫杖の一撃を受け流す。
「『誘引挑発』『タウント』!! こっちを向け死にぞこない共っ!!」
サレスのアーツが、エルナに攻撃した信徒二人のヘイトを取る。サレスに強制的に敵愾心を植え付けられた信徒二人は、エルナに対する追撃の動きが止まってしまう。
当然その隙を逃す筈も無く、『星浄』,『煌気』,『星冷刃』,『星光波刃』,『双星刃』の四つのアーツと、『コスモフリーズクラッシュ』のアビリティを同時発動だ。
『煌波氷浄星砕刃!!』
虹の極光を纏った二振りの蒼刃が閃き、虹の極光が凍て付く光の刃と為って信徒二人を切り刻む。切り刻まれた信徒二人は瞬時に凍結粉砕され、後には元は信徒だった細かく砕けた氷塊が残った。
如何やら『煌波氷浄星砕刃』は、直接切る事も飛ばした光の刃のみで切る事も出来る、粉砕効果の有る凍結系近~中距離のオリジナルアーツに成った見たいだ。
うん、中々良いアーツが出来たんじゃないかな?
『かぁ~~!! ほんとに使えない奴らだねぇ!! 折角甦らせてやったと言うのに、直ぐに死におって!!』
ん? 如何やらサレスのアーツは、他の信徒のヘイトも取っていた様で、ギドュニ以外の信徒は既に再び倒し終わった見たいだ。
ちなみに他の信徒三人は、チナが『氷冷円舞』と『竜爪凍刃』再び凍結させながら切り裂き、桜が先も使った次元戦闘術のアーツ『マルチレイヤ―アタック』に、ギガヴァインウイップの『インパクトブロウ』で滅多打ちにし、RWライダー達が止めを刺して倒した様だな。
『まあ良い。再び甦らせれば良いだけじゃて、ひゃっへっへっ!!』
『灰灰の化身にして大いなる鬼神よ! 彷徨う汝が信奉者に再び新たなる灰灰の器を与えよ!『再転灰魂鬼兵』!!』
ギドュニは壁に潜ったまま姿を見せずに、先程信徒達を復活させた呪法とは微妙に違う物を使い、信徒達に新たな器を与え甦らせる。
『ひっひっひ、また直ぐにやられては敵わんからのう』
『無念無残の怨嗟の念を、憤怒激昂復讐の力と変え、死の代償を払わせよ!『狂怒激昂呪怨力』!!』
ギドュニの呪法が、信徒達に暗く濁った赤いオーラを纏わせ瞳に狂心を宿らせる。
『ついでじゃ、手駒を増やすとしようかのう!』
『我、天灰炎蛇ギドュニ・アルコラサビエド連なる眷属共よ! 我が呼び掛けに応え参集せよ!『眷属召喚 火葬炎蛇』!!』
地下室の至る所に魔法陣が出現し、ゴウゴウと炎を猛らせながら夥しい数の炎蛇が這い出て来た。直ぐにサレスが、『コスモフリーズクラッシュ』を連発して炎蛇と信徒達を凍結粉砕した。でも、強化信徒は当然の如くそれでは倒せなかったけどな。
それにしても、折角倒した信徒達が強化復活した上に、新手のエネミーを召喚するとか勘弁して貰いたいよなぁ。見た限り信徒達を完全に倒すには、壁に隠れるギドュニを倒すか信徒達の魂を滅ぼす位しないと無理そうだ。でなければ、ギドュニが呪法で信徒を復活させ、延々とゾンビアタックを繰り返して来そうだからな。
おまけに、ギドュニが新たに召喚して来た蛇も、幾らでも追加召喚出来る見たいで今も召喚され続けて居る。う~む、非常に厄介だ。
「ふにゅ、おにゅしちょっと調子に乗り過ぎなのじゃ。場の支配はわちがもらうのじゃ!」
現状のままでは埒が明かないと察したのか、チナがギドュニの領域を如何にかする心算の様だ。『水輪の聖域』でも使うのかな?
『触れる物を全て凍て付かせる零下の水流、天より降り注ぎ全てを氷に閉ざす氷雨の空、氷点を越えて尚水の在り様を失う事無し。今此処に凍て付く水が支配する零下の水域を為せ!『氷天零下水域』!!』
¶水竜神ブエナの分霊チナが、領域『氷天零下水域』を展開しました。
ギドュニの灰色の炎と空気を汚染する灰の領域は、地下室に降り出した凍てつく雨と、床から湧き出る零下の水流に、瞬く間に駆逐されて往く。
おお! 新しい領域魔法か! 差し詰め、これは領域展開返しってやつかな?
チナの展開した『氷天零下水域』は、敵領域を駆逐するだけで無く、ギドュニが召喚し続ける蛇達も自動で凍結処理してくれる。
『なにぃ!? 儂の領域が塗り変えられたじゃとぉ!!』
「ふにゅ、おにゅち程度の領域なじょ、わちの敵ではないのじゃ!」
召喚蛇の対処はこれで良いとして、今度はギドュニが強化復活させた信徒達を如何にかする必要があるよな。今のうちに新しいアーツを作って置こうか。
あと、ここからでは分からないけど、きっとチナはドヤ顔してるんだろうなぁ。
『そうか、小童貴様! この世界の神じゃな! 小癪な邪教の神風情がががっ!?!』
壁の中に潜み、姿の見えないギドュニが突如苦しみだす。
『な、何が起こっておる!? ぐぎゃあああああああ!?!』
「あなたの存在する次元を捕捉しましたよ。ギドュニさん?」
あ、そっかぁ。桜の次元干渉や次元戦闘術って、壁にダメージを与えない様に攻撃とか出来るんだぁ。これはもう勝確でしょ!
良し! 今のうちのギドュニ以外の信徒達を倒してしまおう!
スペルアーツ、『クリアソウル・ピュリフィケイション』から治癒の属性エネルギーを抜き、次元,空間,死の属性エネルギーを追加。更に、ヴァジュラの
『クリアソウルバニッシュメント!!』
カッ!! ドゴオオオオオオオオッ!!!! 眩い光が一瞬視界を覆い、サレスとRWライダー達が相手をして居た信徒達を、黄金の炎が焼き焦がす。
『あg@vaG@ぃboWa!?!?!!』
黄金の炎と云う形を取った、魂に直接ダメージを与える高次元浄化消滅攻撃が信徒達の魂を焼き散らし、まるで繰糸が切れた様に信徒達がバタバタと倒れて行く。
良し! これで体を処理すれば、ギドュニが死体を有効活用する他の術を持っていても、信徒達が蘇る事は無いだろう。
それに、消滅と言っても星輝還元した訳じゃ無いから、多分信徒達を倒した分の経験値が入って来る筈だ。後はギドュニを倒すだけだな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます