125 集落に潜む灰呪教徒を見つけ出せ!
集落の奥まったこの場所には、広場が有り森が広がっていたのだが。
今は真っ白に凍てついた灰の平原が広がっている。全て更地に為っているのだ。
この光景を見ると『
「ふぅ~、これで集落の人達も困らないよね」
「ふにゅ、ちかち、夜中に起こしゃれて、いきなり大神の使徒と戦闘になるとは思わなかったのじゃ」
そうだよなぁ。流石にあの状況は無いわぁ~。
いや、だってさ。さっきの状況は、俺達セーフティハウス事吹き飛ばされても、全く可笑しくないからな。それにまだ、灰呪教信徒が張った結界が残って居る。クエスト達成のアナウンスも無い。つまり集落の中にまだ敵が居るって訳だ。
「Σあっ、そうですよ! サレスさん、何で直ぐに私達を起こさなかったんですか! 後そのロボから降りてください!」
桜に言われてサレスが巨骸機構甲冑から降りて来る。
「で。どう言う事なんですサレスさん?」
ジト目で桜がサレスに詰め寄る。
「いやほら、最初は夜狩りに出る心算だった訳だし? それに、イベントクエストが起こったのは俺も驚いたけど、ウサギ達や新たに召喚したオオカミ達も居るし、大丈夫かな~って?」
サレスは完全に演技をして居ない。何時もの俺が心の中で思っている様な語り口だ。うん、外見に似合わないので、やっぱり少しは演技して欲しいと思う。
「何を言ってるんですか! 元々この山は敵地ですよ! 何が起こっても可笑しくないんです!」
「お、おう……」
桜ちゃん激おこです。いや~、女の子は怒ると怖いなぁ~。チナも「桜はちっこいのに、怒ると怖いのじゃ……」と、ちっさい声でエルナに言って来る位だ。
だって、桜は何時の間にか、自身の持つ幾つかの武器を宙に出現させて、サレスに突き付けて居るんだからな! 特に、ギガヴァインウィップの鞭本体を分割させてうねうねさせるのは、サレスに触手プレイでも敢行するつもりなのだろうか? 全身鎧の謎物体の触手プレイ何て誰得だよ! これがスキル次元戦闘術か……何てな!
「サレスさん! 反省してください!」
「おう、分かった反省してるよ……」
「む……、ほんとですか!?」
いや、これは反省してない。きっとまた夜中に、夜狩りに出かけるに違いない!
そんなやり取りをして居ると、ウサギとオオカミ達がサレスの周りに集まって来て、「きゅ~きゅ~!」「わふわふ!」とまるでサレスを虐めないでと、擁護するかの様な態度を示す。パーティーチャットでは、サレスは皆を守るために共に戦った仲間だと、動物達に擁護されている。
くっ、自分の事だけど動物を味方に付けるなんて! サレス汚い!
「むぅ~、しょうがないですね。動物さん達に免じて今日の所はこの辺で許して上げます」
「はい! 本当に反省したから、今度は直ぐに皆を起こすよ!」
やっぱり、夜狩りには行くんじゃん! まあ良いけどさ。
あと、サレスにはやっぱり多少は演技して貰う事にした。
だって、サレスの見た目と俺の素の喋りが合ってなさ過ぎるしね。
それと、サレスが先にオオカミを呼び出して居た事は、チナと桜の新たなモフモフ達に対して向けられる視線から、長くなりそうなので触れない事にした。
敵の結界が、何の変化も無く展開されている所を見ると、敵には結界の中の状況を知る術がないのだと分かる。まあ、結界を破られたら流石に気が付くだろうから、結界を破る前に灰呪教信徒を捜す為の情報を得ようと思う。得る方法は簡単だ。ウサギとオオカミに、『コネクト・アバタースピリット』を使えば良いのだ。
動物達とリンクして得た信徒達の情報と、実際に戦闘をしたヘルカコルクスの情報も併せて、星覚のスキルに情報を読み込み学習させる。これでバッチリな筈だ。
「それじゃ、結界を壊したら直ぐに、集落内を捜索して隠れてる信徒達を見つけるよ。良いね?」
「ふにゅ、わかってるのじゃ!」
「もちろんです!」
「了解だ」
「きゅっ!」×6
「うぉふ!」×6
さて、結界を壊す方法だがこれも簡単だ。星輝還元現象を利用した単なる力技だ。
結界に許容量の星輝を流し込んで行けば。ほら、御覧の通りあっと言う間に星輝の輝きを残して結界は消滅した。直ぐにウサギ達がオオカミを駆って駆けて行く。桜は、『ディメンションセンシズ』と言うアビリティを使い。エルナには、群狼の尾レギオンテイルの専用アーツ、『インクリースウルブズ』を使い集落を捜索させつつ、星覚の感覚を集落全体に広げて往く。サレスはエルナの護衛だ。
サレスは捜索とか得意じゃないしね。それにしても、『インクリースウルブズ』で増えた犬耳犬尻尾のエルナ可愛いなぁ。
ちなみに、集落の人達にこの騒ぎを聞かれたら、創天の意思から神託が有ったと言えばいいだろう。修行者達の集落なのだし、アナウンスの事を知ってる人も多いだろうしな。何よりエルナは創天の巫女らしいから大丈夫でしょ。
生贄40号:姫。敵を発見しました。
エルナ:Σえっ、ほんと!? 早いね!
それじゃ、場所を教えてくれる?
直ぐに行くから!
生贄1号:流石は40号、一族切っての密偵だ!
軍狼4番:うぉふ! 40号さんのパートナーになれた自分も誇らしいです!
40号。頭にスカーフを巻いてるウサギが、早くも信徒の居場所を発見したらしい。この復活させた森の広場から、意外と近くの家に潜んでいた見たいだ。
むぅ、エルナの星覚の感知より早く見つけるとは。40号やるな!
40号に教えて貰った場所には、こじんまりとした古びた家屋が有り、家屋からはあまり生活感を感じられなかった。
家屋の中は、星覚の感知能力のお陰で、詳細な3Dマップとして認識できた。肝心の討伐対象である灰呪教信徒は、上物である家屋に一人。そして、隠し階段から行ける思ったよりもかなり広い地下室に、六人信徒が潜んでいる事が把握できた。それに人質とかそう言うのは居ない見たいだが、この広い地下室は明らかに怪しいよな。
何にせよ。建物の中を丸裸に出来るとか、星覚のスキルはやっぱり有能だよね!
ちなみに、分身を消費して発動するレギオンテイルの専用必殺アーツが、気には為ったけど分身は解除して置いた。幾ら広い地下室とは云え、分身を突入させるには狭いからな。
さて、敵も結界が破られた事は既に把握して居る筈だ。
そして、まだ敵がこちらにに気が付いていないのなら、奇襲を仕掛けたい。
その方が早く決着がつくだろうしね。
エルナ:まずはウサギ達だけで家屋に潜入、それから制圧もよろしく。
生贄1号:お任せを!
チャットで1号とやり取りした後、直ぐに音も無くウサギ達が家屋に浸入する。
直ぐに「制圧完了。」と短くチャットに書き込まれた。うん、仕事が早いな!
戸の鍵等は、先に侵入したウサギ達が既に解錠しており、俺達は家屋にスンナリと入れた。
ウサギ達は一階の寝室に居た信徒を昏倒させ、隠し階段を出現させる為の仕掛けも発見していた。仕掛けを動かさなかった理由は、信徒達がまだこちらの潜入に気付いていないからだ。階段の仕掛けを動かしたら、流石に気付くだろう。
まあそれにこの感じだと。まだこちらに、自分達の居場所が見つかって無いと、信徒達は思いっきり油断していると見た。絶好の不意打ちチャンスだな!
それと、昏倒している信徒には、『イグジスタンス・バーストボム』を掛けて、何時でも爆破できる様にした。何かしたらボン! だ。と言う訳で、放って置いても大丈夫だ。う~む、でもなんか凄く悪い奴に成った気分だな。
ウサギ達がベットの仕掛けを動かし、ベットがスライドして床に隠し階段が現れる。ウサギ達は再びオオカミ達に騎乗し、躊躇なく地下へ続く階段に飛び込んで行く。エルナ達も直ぐに後を追う。
「ぎぇ――っ!! 何だいこの畜生共は!? お主ら早よ排除せんか!!」
「ははっ 直ぐに排除いたします!」
後を追うと叫び声と戦闘音響いて来る。急いで階段を一気に降りると、直ぐに大きな空間が広がっており、手前の床の上には既に二人信徒が倒れていた。
RWライダーの不意打ちが成功した様だ。
地下室の様子は、階段の直ぐ近くには神殿の様な柱が有り、床には魔法陣が描かれていて中心には炎が灯りかなり怪しい。儀式場だろうか?
肝心の残りの信徒達は、錫杖と各々違う武器を携帯しており、四人の内三人はうちのモフモフ達が既に戦闘中だ。最後の一人は左手に水晶玉、右手に数珠を持った尼僧姿の老婆で、濁った灰色の目を見開き怒りを露わにしていた。
恐らくこの老婆が、この集落に潜む灰呪教信徒のリーダーだろう。
「己らぁ! 僧共や結界を破っただけで無く、ここを嗅ぎつけて来おってぇ! これだから現世の者共は好かんのじゃあっ!!」
そう怒鳴りながら老婆は数珠を放り投げる。数珠は空中でバラバラになり床の至る所に転がる。
「起きよ! 死樹呪兵共っ!!」
メキメキィッ!! バラ撒かれた数珠一つ一つが膨張し、非常に不気味なトレント風木人兵が、まるで床から木が生える様にメキメキと音を立て次々と出現する。
うっわぁ!? これじゃあいきなり乱戦確定じゃないか!?
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