124 灰呪の使徒 黒炎獄使ヘルカコルクス戦2

 燃え上がる黒灰の嵐がこちらに届く前に、守りを固める為にアーツを発動する。

 俺は『オーロラシールド』,『オーロラリフレクションベール』,『虹の女神の抱擁イリスエンブレイス』皆に掛け、桜は『ディメンションバリア』を、サレスは『コスモバリアシールド』を発動して黒灰の嵐を受ける。


 ゴウッッッ!!! 黒灰の嵐は、桜とサレスのアビリティの守りを何事も無かった様に擦り抜け、それだけでなくエルナのアーツの守りも擦り抜ける!


「あっつ!?」

「ふにょわ!? あっついのじゃ!!」

『アセンション!!』

「きゅうっ!?」

「キャン!?」


 黒灰が、纏わり付く様に貼りつき燃え上がり、瞬く間に皆火達磨になる。

 防御貫通? いや、これは防御無視攻撃か!

 しかもこれ、火傷のバットステータス付きだ。

 桜は、『アセンション』で回避できた見たいだが、こっちは大変不味い状況だ。

 『スターオーロラ・リジェネレーション』,『アステルイリスセラフィア』,『クリアステラリフレッシュ』を全員に掛け、エルナにはバットステータスLOCK対策で『クリアステラリフレッシュ』を多めに掛ける。

 黒灰の炎の嵐は直ぐに治まらず、俺だけじゃ無く神官帽を被ったウサギも、回復魔法を連発して皆を回復させ耐え凌ごうとしているが、このまま回復を続けて耐えのは明らかに厳しい。何よりこのままだと、『アステルリヴァイブ』位しか回復手段の無いサレスが落ちる。

 駄目元で『アバタースピリット・リザレクション』に、CEが触媒になる様に少しだけ混ぜ、サレスに対して通常回復効果を出せる様に期待して使用する。


『コスモアバター・リザレクション!!』


 銀河が渦巻く様に青い光が巻き起こり、サレスのCEゲージがグンっと回復する。

 おお! 回復できた! でも、リザレクション系だからクールタイムがちょっと長い、やはりこのまま耐えるのは厳しいか。


チナ:この黒灰の嵐も呪詛を用いた呪法なのじゃ。さっきわしが使った『氷天浄壁』

   で恐らく防げるのじゃ!

エルナ:チナほんと!? ならすぐにお願い!

チナ:任せるのじゃ!


 チナのチャットの文章、エナの分霊なだけあって賢そうに見えるな。

 いやまあ、チナは実際賢いんだけどね!

 あとエルナのロールアシスト、チャットの文章にも反映されてる見たいだなぁ。


「いくのじゃ!『あめの霊冷清めの力満ち、悪しき魔禍事鎮めし天の氷壁をこの地に齎さん! 『氷天浄壁』なのじゃ!!」


 チナは開いた口を焼かれても、熱がったり苦しそうな素振りすら見せずに詠唱を終え、『氷天浄壁』を発動する。キラキラと輝く美しい氷壁が、皆を黒灰の嵐から守る様に展開される。

 ジュワッ! と音を立て氷が溶けて行くが、黒灰が擦り抜ける事は無い。

 つまりこの氷壁は、ヘルカコルクスの必殺アーツに対処できるって事だ!

 ふぅ、これなら何とか耐えられそうだな。

 この後、ヘルカコルクスがこの攻撃を仕掛けて来るか分からないが、再使用されても対処できるだろう。

 それにしても、ブレスを吐く関係上、ドラゴンは口の中が焼かれる位平気なのかね?


 再度『氷天浄壁』を使う事に為ったが、黒灰の嵐が治まりヘルカコルクスの必殺アーツが終了する。視界が開けると失われた右上半身を、灰色の炎で代用したヘルカコルクスの姿が有った。

 ヘルカコルクスは、灰色の炎で欠損を代用しただけで無く、回復した上に強化されたのだと星覚のスキルから知る。


『ガアアアアアアアッッッ!!!!』


 ヘルカコルクスは灰炎と黒炎の二色の炎を噴き出し、第一の左腕?に残った剣と装備を失った腕を振り回してくる。こちらも応戦するが、口からブレスを吐くだけで無く、全身至る所から炎弾が発射され非常に厄介だ。


『カッカッカッガァッ!!『ジェットブラックインフェルノダウン』!!』


 サレスの記憶で、『ヘルブレイズダウン』と言うブレス攻撃が有ったが、それの上位互換か!?

 ゴウッ!! ボボボボボボボボゴゴオオオオオォォォォオオオオオオオ!!!!!

 ブレス攻撃を予期していたのだが、足元からジェット噴射の如く黒と灰色の二色の炎が噴き出す。くはっ! まさかのミスリード!

 ヘルカコルクスの必殺アーツに効果の無かった守りが、バチバチと火花を散らし身を守ってくれる。如何やら今度は仕事してくれた様だ。

 二色のの炎はヘルカコルクス中心に円形に噴き出しており、きっと遠目からは黒と灰色のマーブル模様の炎柱が見える事だろう。


 ガンバチィッ!! 一際大きく火花が散ったと思ったら視界がグルンと一回転し、地面に叩き付けられる衝撃が体に伝わって来る。 


「ふぐっ!?」

「ふにゃ!?」


 ガギンガッシャンッッッ!!!! 如何やら二色の炎が吹き荒れる中、吹き飛ばされたのは如何やら自分だけではないらしい。RWライダーの、「きゅぅ!?」「キャィン!」と悲鳴も聞こえる。ヘルカコルクスが炎の中で暴れているのだ。


 炎柱の外に弾き出され見えた光景は、予想通り極太の黒と灰色の二色のマーブル模様の炎柱が出現しており、それがこちらに向かって移動して来ていた。

 ヘルカコルクスは、あの炎柱の効果範囲を維持しながら移動する事が出来るのか!

 多少痛むが、反撃しないと訳にはいかないだろう! それに一度命中すれば、同じ場所に再必中するアステルエルアクシアの効果で、ヘルカコルクス本体に当てるだけならもう既に外す事は無いのだ。


次元氷結新星爆裂ディメンションフロストノヴァ!!』


 シュ――ン‼ バリィ――――――――ン!!!! 鮮やかな紫色の矢がスッと伸びる光線と為って、炎を物ともせずヘルカコルクスに氷の結晶の花を咲かせる!!


『ガガァッ!?』


 なので続けて二発目三発目と、ヘルカコルクスに撃ち込む。命中する度、ヘルカコルクスに氷晶の花が咲き動きが鈍くなる。同時に、地面から噴き出す二色の炎が弱まり徐々に鎮火して往く。お陰でチナ達の姿も見えて来た。

 チナは、炎の中で大暴れしたヘルカコルクスの攻撃で、相応のダメージを受けたのか、お返しとばかりにアーツを発動する!


「うにゅぅ、お返しなのじゃ!『竜撃砲・氷閃流刃』なのじゃ!!」


 チナの小さな口から、青いレーザー光線がズバッ! と叩き切る様に照射され、その線をなぞる様に氷柱が突き立つ。

 チナのブレスが炸裂する中、ヘルカコルクスの剣と拳で吹き飛ばされていたサレスも、巨骸機構甲冑を立ち上がらせ攻撃に加わる。

 桜も『ディセンション』で戻って来て直ぐに、『ディメンションスクラッチ』をお見舞いし、神官帽ウサギが星輝を使用の回復力激増の『エリアヒール』で皆を回復し、状況を立て直していた。

 そう言えば、ヘルカコルクスが振り回すあの剣も、必殺アーツとか使われたら厄介だし、使われる前に爆破して置くべきだな。

 パーティチャットに、ヘルカコルクスの剣を爆破すると書き込み射の構えを取る。うん、爆弾魔の爆破予告見たいに為ってるな。


「再撃の『イグジスタンス・バースト』!!」


 ヒュン! シュワ‼ ドゴゴオオオ――――――――ォォォオオオオッッッ!!!!

 動きの鈍ったヘルカコルクスの持つ剣に、命中効果マシマシのエルナの矢が外れる訳も無く、本日二度目の虹色の太陽が出現し大爆発する。

 うん、察していた皆はちゃんと爆発を回避してるな。


『ガガッガガガガガガアアアアアアアアアッッッッ!!!!!』


 爆発はヘルカコルクスの右半身を中心に、抉る様に消し飛ばし致命傷を与えたかに見えた。しかし、何時もこれで終わらないため、チナに『氷天浄壁』を何時でも発動できる様に待機して貰い、他の面々で攻撃を続ける。


『グガガガアアアアァァァァァアアアアアアアッッッッ!!!!!』


 その予想は大当たりした。ヘルカコルクスは雄たけびを上げると、既に体の一部として代用していた灰色の炎が、真っ黒な骨を燃料にするかの様に全身の骨から噴き出し、灰色の炎を四本腕を持つ巨鬼の骸骨の形に、無理矢理押し止めたとしか言い様のない姿となる。


¶特殊イベントBOSS 灰呪の使徒 黒炎獄使ヘルカコルクスが、最終必殺アーツ『獄罰 炎転灰獄』を発動しました。


「『氷天浄壁』なのじゃ!!」


 発動待機している間チナが、たっぷりと力を注ぎ再々度の発動となった『氷天浄壁』は、より厚く美しく澄み渡る様な氷壁を作り出す。

 そんな氷壁が作られる中、灰色の炎の体と為ったヘルカコルクスは、火勢を上げ巨大化して往く。


『ガッガアアアアアアアァァァァァァアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!!』


 雄叫びと共に、ヘルカコルクスの灰炎の体が捻じれ渦巻いて行く。

 捻じれ渦巻くと同時に、空気を吸引するかの様に猛烈な突風がヘルカコルクスに吹き込み、灰色の火炎旋風と化す。

 ヘルカコルクスに引き込まれた木々が、灰色の炎に触れると瞬く間に灰に変わり燃え散る。星覚スキルがあの灰色の炎には、灰化のバットステータスを与える効果が有ると、エルナに知らせて来る。


「はぁ~、流石にアレには手が出せないな。氷壁が破られたら、『コスモフリーズクラッシュ』か『コスモコメット・フリーズバレット』を直接叩き込むしかないか?」


「あの炎は、『ディメンションエクスターミネイト』で吸い込めるでしょうか?」

「うにゅぅ、たぶんしゅこちは効果はあると思うのじゃ……」


 如何にも攻めずらい状況になってしまった。時間経過で終わる攻撃とは限らないし、攻撃を入れたいが明らかに氷壁の外は危険だ。

 全状態異常耐性が有ると言っても、ヘルカコルクスが最初に使って来た必殺アーツでバットステータスを受けてるから、あの炎のバットステータスは確実に通るだろう。出来れば喰らいたくないなぁ。

 と言う訳で、氷壁が破れると同時にフルアタックする事に決めた。

 エルナが使うのは、最初にヘルカコルクスを一回倒したであろう『凍結惑星崩壊フリーズプラネットカタストロフィ』だ。最初と同じ様にフルパワーで撃ってやる!


 矢を番え星輝を溜めていると、灰色の火炎旋風と為ったヘルカコルクスが、周囲の物を灰に変えながら次々と吸い込み、全て燃え散らかしながら直進して来る。

 チナが展開した氷壁に触れると、普通なら氷が解け水に為る所だが、灰化のバットステータスは伊達では無く、瞬く間に灰色に変わり燃えて往く。

 うわっ!? 思ったよりも早く氷壁が破られそうだぞ!

 意識して早く星輝をチャージして行く。最初に『凍結惑星崩壊フリーズプラネットカタストロフィ』を使った時の様に虹翼が自然と展開され、光のスパークと共にキィィ――――――ンッ!! と云う高音が響く。

 アステルエルアクシアにも、同様の現象が起こり射撃準備は万端だ。

 あとは射れば当たる。


 バボシュ――ッッッ!!! 氷壁の全ての氷が灰に変わり燃え上がる!

 エルナ達を守る氷壁は灰となり燃え散り、引着込まれる様な突風と灰色の炎が乱舞する!!


『ディメンションエクスターミネイト!!』

「『竜撃砲・爆流氷河』なのじゃ!!」

『コスモフリーズクラッシュ!!』

「きゅう!!」

「がう!!」


 桜の『ディメンションエクスターミネイト』が、突風と炎の勢いを一瞬だけ弱めたが、次元の穴が灰色に侵食され燃え散る。チナのブレスも、サレスにRWライダー達攻撃も、皆灰になり燃え散った。

 はあ~、マジか!? 同時にとか言って置いて、ちょっと皆と攻撃のタイミングがズレちゃって、攻撃しないで見てたら皆の攻撃が無効化されてるじゃん!!

 あ~、もう! 今のを見て急に効くかどうか自信が無くなったけど、アレは食らいたくない!! もう撃つしかねぇ!!


「行っけぇ――!!『凍結惑星崩壊フリーズプラネットカタストロフィ』!!!!」


 キィィ――――――――ン!!! シュバァ――――――――――ン!!!!!!

 アステルエルアクシアの弦から手が離れた瞬間、真っ白な光が荒れ狂う灰色の炎を照らす。全てが一瞬にして極寒の白に染まり、灰炎の体と為ったヘルカコルクスにも、等しく同じ結果が齎される。時が止まったかの様な静寂の後、シャリシャリパラパラと氷の粒子を舞い上げながら崩れ落ちて往く。


¶特殊イベントBOSS 灰呪の使徒 黒炎獄使ヘルカコルクスの討伐に成功しました。

特殊な条件を満たして討伐に成功した為、通常の討伐報酬と特別討伐報酬がギフトボックスに送られます。後でご確認ください。


 ん? これだけ? こいつイベントボスなんだよね?

 何でイベントクリアアナウンスされないの!?

 もしかしてまだ、イベントクエスト達成条件満たしてないのか!?

 ああ~~、マジかぁ~。

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