123 灰呪の使徒 黒炎獄使ヘルカコルクス戦

 黒く染まったドームの亀裂から、猛烈な勢いでドーム内に進入して来る黒炎を努めて冷静に見つつ、星覚のスキルが伝えて来る情報に従い、ヘルカコルクスの居る方に狙いを付け続ける。


 大丈夫だ。チナと桜それにサレスが、エルナをきっちり守ってくれる筈だ。


『ディメンションウォール!!』×3


 亀裂から噴き出る黒炎を退け、それから守る様に三重の『ディメンションウォール』が展開される。しかし、既にドームの亀裂は致命的なまでに広がっており、バリバリィッ!! と一気に崩壊し黒炎がドーム内に雪崩れ込む。

 すると、『コスモバリアシールド』を五重展開したサレスが、黒炎に向かって『ジュエルフラッシュバリアウォール』を展開しながら突進する!


『シールドチャージ・エクスプロージョンバッシュ!!』


 巨骸機構甲冑の巨体が瞬時に青白い光と共に加速。低い姿勢で亡者の念を纏った黒炎を突き破り、ドームの壁の直ぐ向こう側に居たヘルカコルクスを、下から吹き飛ばす様にち上げる。

 カッ!! ドゴォ――――――――――ンッ!!! 搗ち上げる瞬間大爆発が起こり、四本腕の巨鬼の骸骨が夜空に打ち上げられる!!

 お陰でちょっと水平に撃つのが躊躇われる雰囲気の、星輝増し増しのアステルエルアクシアの矢を撃つ事が出来る。


凍結惑星崩壊フリーズプラネットカタストロフィ!!』


 キィィ――――――ン!! シュバッ!!! 放たれた矢はその瞬間から真っ白な光となり、ヘルカコルクスを直撃する!!


『カッ!? …………』


 変化は劇的だった。アステルエルアクシアから放たれた光は、ヘルカコルクス本体とヘルカコルクスが生み出した黒炎のみならず、光の届く範囲の全てを凍て付く極寒の白に染め上げる。極寒の地で氷河が軋みを上げる様な音を立て、パーティメンバー以外の全ての物が、細かな氷の粒子を宙に舞い上げながら、ガラガラと崩れ去って行く。これ、敵が結界張って無かったらヤバかったかも。


 ヘルカコルクスが、上空で風化する様に崩れ去って行く中、二本目の左腕?に持っている宝珠が光を放つ。宝珠に亀裂が入ると黒炎が噴き出し、崩壊して往くヘルカコルクスを包み込み、まるで時間を巻き戻す様に、ヘルカコルクスの木炭の様な骨の体を再生して往く。


『カーッカッカッカッ!!』


 ヘルカコルクスが、真っ黒な髑髏の眼下に暗い灰色の炎を灯し復活の声を上げる。

 おい! あの宝珠復活アイテムかよ!?

 それに、あの宝樹亀裂が入った様だが、まだ使えるかもしれないぞ? 

 だとしたら、また復活されて面倒な事に為る前に処理するべきだ。

 そう判断した俺は、直ぐ様矢に『アイテムブレイク』のアーツの力を乗せ、宝珠へ撃ち放つ!


「追撃の『アイテムブレイクシュート』!!」


 放たれた矢は、黒炎を噴き出すを宝珠を見事に捉え、宝珠を強制的に星輝還元し光へ変える。


「良しっ!」

『カガァッ!? ガガアッ!!』


 宝珠を破壊されたヘルカコルクスは、直ぐに怒りを露わにし第二の右腕?に有るアイテムに力を集めて行く。掌サイズだったアイテムがどんどん大きくなって往く。

 ヘルカコルクスが使おうとしているアイテムは、エルナが装備する神山槍天ヴァジュラ・ブラフマシラスに似た作りをして居る。ってあれ金剛杵じゃん!? 不味いよっ!!


『ガガアアアッ!!『黒天雷火獄滅箭』!!!』


¶特殊イベントBOSS 灰呪の使徒 黒炎獄使ヘルカコルクスが、広範囲殲滅アーツ『黒天雷火獄滅箭』を発動しました。

このアーツは、世界に呪詛汚染被害を齎す非常に危険な攻撃です。戦闘後の呪詛の処理をお願いします。


 ええ? なんかお願い入ってるんですけど!? それよりも防御!!


「わちに任しぇるのじゃ!! 『あめの霊冷清めの力満ち、悪しき魔禍事鎮めし天の氷壁をこの地に齎さん! 『氷天浄壁』』なのじゃ!!」


 巨大化したヘルカコルクスの金剛杵が、黒雷を纏い放たれると同時にキラキラ輝く美しい氷の壁が空を覆う。

 ギャギャギャギャギャギャッッッ!!!! ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!!

 黒い稲妻と為った金剛杵が、チナの作り出した氷壁に衝突すると、何かが擦れる様な不快な音が響き、星明りを隠す黒炎の大爆発が起きる!!

 ミシミシィッ!! と氷壁が軋むが、この攻撃は受け切ったと捉えて良いだろう。


 ドンッ!!! バリィ――――――ンッッッ!!!!

 再びの衝撃で氷壁が砕け、ヘルカコルクスが地面に着地する。黒炎で確認できた居なかったが、ヘルカコルクスは金剛杵の後を追う様に降下して来ていたのだ。

 当然の如く手元に真っ黒な金剛杵戻っている。アレは破壊しないと駄目だろ!


「追い撃ちの『アームドブレイクシュート』!!」


 武器破壊を狙った矢は、寸分違わず黒い金剛杵を捉え、命中するかに見えたが咄嗟にヘルカコルクスが錫杖で打ち払う。


『カッカッ!!』


 矢を打ち払い、如何だと言わんばかりにその髑髏に笑みを浮かべるが、直ぐに怒りの感情を露わにする。それもその筈、矢を打ち払ったヘルカコルクスの錫杖が、星輝の光を残し消え去ったからだ。

 まあ、別にアーツの効果は、矢が刺さらなくても発動するのだから当然だよな。


 そんな怒りを露わにしているヘルカコルクスに、エルナを除くパーティーメンバー全員が一斉に攻撃を仕掛ける。


「『グレイシャーファング』なのじゃ!」

「私も行きます!『ディメンションスクラッチ』!!」

『氷壊凍衝大切刃!!』

「きゅっきゅ!」×6

「がう!」×6


 無数の氷の顎が、ヘルカコルクスに噛みつき動きを鈍らせた所に、耳をつんざくな音を立てヘルカコルクス事次元が引き裂かれ、サレスの震える様な冷気を纏った白刃が追い打ちを掛ける。そこに、ウサギ達の放った虹色の光線と、オオカミ達が飛ばした光る隕石が殺到する。

 ガキガキッ!!ギリギャリィイッ!!シャンビシィッ!!

 ドドゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

 皆の繰り出す攻撃が轟音を立てる。


『ガガアアアッ!?!』


 ヘルカコルクスの硬い身体に、凍結攻撃が入る事で脆くなるのか、他の攻撃が効き易くなり着実にダメージを与える。チナ達にアーツの追撃をさせまいと、ヘルカコルクスが反撃を始め攻防の応酬が始まる。


 しかし、ウサギの光線は分かるが、オオカミの光る隕石攻撃は何だろう?

 『メテオウルブズ』なだけに、隕石の固有のアーツなのかね?

 まあ何にせよ。あの金剛杵を破壊しないとな。確実に破壊する為にアレを使うか。

 対象を間違えると経験値が無くなるけどな……ってちょっと待てよ?

 そうだ忘れてた! 経験値増加ポーション使わないと! こいつ大神の使徒に為った見たいだし、多分こいつからなら経験値確実に得られるだろっ!

 やっべー、危うく使うの忘れる所だったぜ。ふぅ~、直ぐに経験値増加ポーションをティアーズクロワから取り出し使用する。良し! 使ったぞ。

 パーティーチャットに、これからヘルカコルクスを爆発させる旨を伝え合図を送り、皆は爆発に巻き込まれないと信じ、『ドラグーン』を発動して矢を射る!


「爆撃の『イグジスタンス・バースト』!!!」


 触れた物その物を燃料にして、瞬時に爆発させるアーツの力を矢に乗せ撃ち放つ!

 チナ達に応戦していたヘルカコルクスは、目敏く自身に向かって来る矢に気が付き、迎撃しようと黒炎のブレスを吐く。しかし、『ドラグーン』の効果で矢はブレスを回避し、ヘルカコルクスが持つ黒い金剛杵に命中。金剛杵は、瞬時に膨大なエネルギーを秘めた爆弾に変わり、ヘルカコルクスを押し潰す様に、虹色の太陽が出現し大爆発を起こす!!

 シュン! ドゴオオオ――――――――――――――オオオオォォォッッッ!!!!


『ガガガガガッ!!! カアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!』


 黒い金剛杵を爆弾に変えての攻撃は、ヘルカコルクスの上右半身を消し去ると云う結果を齎していた。


『怨敵復讐我意得痛烈無常辛酸苦痛我痛持怨敵与!』


 ヘルカコルクスが大ダメージを受けながらも、呪詛の黒炎を滾らせ念仏の様に何事かを唱える。


¶特殊イベントBOSS 灰呪の使徒 黒炎獄使ヘルカコルクスが、必殺報復アーツ『獄罰 無常痛烈黒怨炎灰』を発動しました。


 アナウンスと共に、ヘルカコルクスから大量の黒い灰が溢れ出し、黒灰は猛烈な勢いで燃え上がり、嵐の様に吹き荒れ襲い来る!!

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