122 目覚めと戦闘準備

 エルナに勢いで告白して、良い感じの雰囲気に為っていた所。

 グワンッ! 大きく夢の世界が揺らぎ、一瞬全てが灰色に染まった。


『今のは!?』

『外でちょっと拙い存在モノが出た見たい』

『それは、サレスが戦ってる奴らが原因か?』

『たぶん、そうだと思うよ』


 夢の中に影響が出る様な、強い力を持った何かが出現した見たいだな。まあ、十中八九大神が一瞬姿を現したとか、そんなんじゃないかと思うけどな。


『サレス君が私達を起こすためにウサギとオオカミのペアを送った見たいだから、そろそろ起きる準備をしなきゃね!』

『そうか、なら『スターリジェネ』を使って置かないとな!』


 『スターリジェネ』は夢の中に流れ星を降らせ夢を彩る。エルナと二人、星降る夢の空見ながら、チナが睡眠のバットステータスを直す魔法を使うのを待つ。


『チナちゃんが起きた見たい。そろそろだね』

『おっし! で、俺は如何すれば良い?』

『私が『ステラリフレッシュ』を使うから、シズルは『ドリームアウト』を使ってね』

『あ~、なるほど。起きるのは俺だけだからか』

『うん……、そうだよ』


 エルナは少し寂しそうに言う。エルナは目を覚ます事は出来ない。そう言う事だ。

 俺は再びエルナの頬に手を伸ばし、今度は摘まむのではなくゆっくりと撫でる。


『えへへ♡ シズルくすぐったいよ♪』


 Σぶふぉ!? ふぅ、頬染めて恥ずかしそうにするエルナが、可愛過ぎて死ぬかと思ったわ。


 ポタタっと急に雨がパラパラと降って来る。キラキラと日の光も無いのに輝き、触れると爽やかさを感じると共にスッキリとする。


『これがチナの魔法見たいだね。それじゃ、シズル行くよ! 『ステラリフレッシュ』!』


 『ステラリフレッシュ』が発動すると、様々な色の星型の光が夢の中に溢れ出す。雨粒と星の光が触れると、まるで曲を奏でる様に澄んだ音が響き光の波紋が広がる。


『エルナ! また次の夢で合おうな! 『ドリームアウト』!』


『うん! またねシズル……!』


 『ドリームアウト』の力で夢から離れて行くなか、夢は次第に闇に沈んで行く。

 そんな中、潤んだ瞳に若干の寂しさと不安を滲ませ、エルナは俺を送り出す。

 『そんな顔するなよ』とそう思うが、エルナにそんな顔をさせているのは俺だ。

 俺は、可愛い女の子をちゃんと笑顔にしきる事が出来なかったのだ。不甲斐ない。




 ぺちぺち、小さな手が軽く刺激を与える様に、エルナの頬を叩く。

 先まで見ていた夢を鮮明に思い出す。エルナと話したり勢いで告白した事をだ。


「……エルナ起きるのじゃ!」


 パッと目を見開き上半身を起こす。いきなり起きた所為か、「にゅおっ!」とチナが驚いているが。何故か急に恥ずかしくなって来た俺は、頬が熱くなるの感じつつ顔隠しながら身悶えるのだった。

 くぅ~、これはアレだ。さっきまで見ていた夢の、俺とエルナの感情が入り混じった物が一気に溢れて来たんだ! 告白した側の俺とされた側のエルナの感情のWパンチだ! めったくっそ恥ずかしいぃっ><///!!

 うん、暫くベットの上を転げ回ってしまったのは仕方ないと思う。


「ふにゅ、エルナ落ち着いたのじゃ?」


 俺の様子を冷静に見守っていたチナに話しかけられる。

 うん、さっきとは別の意味で恥ずかしい。


「ふぅ~。うん、落ち着いたよ」

「ふみゅ、しょとに、大神の使徒が現れた様なのじゃ」

「大神の使徒!? ちょっと待って、サレスとリンクするから……」


 サレスと情報共有した事で色々把握できた。

 何時の間にかパーティ枠が13に成って、ウサギ達や『メテオウルブズ』で新たに呼び出したオオカミ達と、パーティチャットで意思疎通出来たり、サレスの甲冑関連で色々出来たお陰でロボ化が進んでたり、チナが居ないからとサレスがちっとも演技してないとか、予想通り敵性大神がチラ見せして来たとかね。

 ちなみに、サレスはさっきを俺が感じていた感情で身悶えているだろうな!


「状況は把握したよチナ。桜を起こして外に行こう!」

「うにゅ! 行くのじゃ!」


 寝巻から一瞬で、なんちゃって巫女装束にチェンジして、全身装備で身を固める。

 寝る前に、モフる為に呼び出して居たウサギ達も、ここで返して置く。

 『ステラリフレッシュ』を使い、目を覚ました寝ぼけ眼の桜を頭に乗せ、急いで外に出て安らぎの別荘を仕舞う。折角のセーフティハウスを、使徒との戦いで壊されたくないからな。


 セーフティハウスを仕舞い周囲を見回すと、ドンドン!!と音が響く中、青く輝くコスモマテリアルのドームが周囲を覆い、サレスがバッチリ守りを固めている事が分かった。


「サレス。このドームはどれくらい持ちそう?」

「今の攻撃なら20分は持ちそうですが。そうは行かないでしょう」

「まあ、そうよね。所でサレス」

「ん? 何かなエルナ殿?」

「パーティチャットで、サレスの今までの喋り方が無理してるって、チナも知ってるから演技はもう意味がないよ?」

「え? マジ!?」

「そうだよ」


「しゃれしゅ、無理をしなくても良いのじゃ。もっとフランクに行くのじゃ!」

「ふゆ?」


 チナは全然気にして無さそうで良かった。

 如何もサレスとリンクした感じ、サレスには全くロールアシストシステムが効いて居ない様だ。だから、演技する気が無いと、まんま現実の結城 静流になってしまう見たいだ。

 なので、もうサレスの演技はあんまり気にしなくて良いだろう。面倒だしな!

 あと、桜はまだ寝ぼけてる様だな。可愛い。


 まあ、何にしても時間が有るのは丁度良い。

 このドームが破られた瞬間に、強烈な一撃を見舞いしてやれるからだ。

 先ずは、寝ぼけている桜を指でツンツンする。

 指をでツンツンされてイヤイヤする桜を、『可愛いなぁ』と思いながら見つつ、桜に『ステラリフレッシュ』をもう一度使う。


「ふにゃ!? あれ? 外?」


 光の粒子がパァッと舞い上がり、桜も流石にビックリして完全に目が覚めた様だ。

 桜に状況を説明してから、俺はパーティメンバーに全員バフをもりもり掛けて行く。ウサギとオオカミはペアに為っていて、二匹でパーティー枠一つを使っている様だし、ウサギとオオカミって一々云うのもアレなので、サレスが最初に自分で言っていたラビットウルフライダー、RWライダーの呼称で統一しよう。

 その方が面倒が無いからな。


 さて、後は特大の一撃を浴びせるために、力を込めて行こうか!

 『オーロラチャージ』で星輝の放出と蓄積量を増し、使徒が居る方に弓を構え矢を番える。更に、無限生成されるステラレイン製の矢に、『イグジスタンス・バーストボム』を使用する。それと、追加の装備でDEXが一万近く上がっているのと、ユニゾンアビリティの『ディメンションブラックホール』や、『次元氷結新星爆裂ディメンションフロストノヴァ』を沢山使ったお陰か、もっと強い複合アビリティが出来そうだ。

 だから、『コスモフリーズクラッシュ』,『プラネットリング』,『スノーボールプラネット』,『アステルイリスフェザーアロー』に氷,空間,次元,宇宙の属性を乗せ、星界煌弓アステルエルアクシアに星輝をチャージして行く。

 自然と虹翼が展開され、初めて虹翼を出した時の様に、キィィ――――ンッ!! と音を立て更には、光がスパークする。アステルエルアクシアも、同じ様に音を上げ光がスパークし出す。

 おおっと!? これ以上はヤバそうな感じだぞ!!

 星輝のチャージはここまでにして、後は保持して置こう。


 ビシィッ!!!! 弓への星輝のチャージをやめて直ぐにドームに亀裂が入る。

 如何やら開戦が近い様だ。


¶特殊イベントBOSS 灰呪の使徒 黒炎獄使ヘルカコルクスが、超高威力広範囲攻撃『獄罰 黒炎呪禍死屍苦灰』を発動しました。


 アナウンスが流れた次の瞬間、青く輝くコスモマテリアルのドームが黒く染まり、亀裂から亡者の念を纏った黒炎が、猛烈な勢いで噴き出して来たのだ!!

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