121 幻夢蝶の告白
ぼんやりとした明るさを感じ、横に成ったまま目を開ける。
目の前には、こちらを愛おしそうに見つめる宝石の様な青い瞳。時折光の加減で、キラキラと紫色に変わる神秘的なその美しい瞳を、俺は思わず見つめてしまう。
『おはよう……は変かな? これは夢だから、おやすみなさいが正解なのかな?』
キラキラと白にも見える光る長い金髪が、その白く透き通る様なきめ細かい肌と、シルクの様な質感の寝巻の上をさらさらと流れ落ちる。
俺と同じ様に、横に寝そべっているのだ。
『ねぇ、シズル聞いてる? 目を開けたんだから、意識は目覚めてるよね……?』
綺麗に通った鼻筋、小さく形の良い唇を開き、俺に話しかけて来る。
ちょっと困った様な表情も、とても可愛く美しい。
俺は徐に手を伸ばし、少し赤くなっているその柔らかそうな頬をむにっと摘まむ。
『ひゃっ!? ひょっと! いきなりビックリするじゃない……///』
手に伝わって来るスベスベぷにぷにとした素晴らしい感触、そしてさっきより赤くなる頬。瞳をうるうるさせ、やけに近い距離で俺に話しかけて来る、芸術の様に美しくて可愛い美少女。うん、何か知らんけど目の前にいるのエルナだわ。
取り合えず手を離し、エルナと話して見ようか。しかし、なんか感慨深いなぁ。
『ええっと、確か俺はセーフティハウスで寝てる筈では?』
『うん、そうだね。私達はセーフティハウスで寝てるよ……えへへ』
エルナは、自分で息が掛かる様な距離に近づいて来て於いて、『やっぱり無理///』と頬を紅潮させながら少し離れて、恥ずかしそうにモジモジしている。
いや、可愛いかよ!! エルナさん、めっちゃくちゃ可愛いんだけど!!
もっと俺に近寄りたい、けど恥ずかしい! と言うエルナの感情が丸わかりだ。
やっぱ俺の理想を詰め込んだ、最高の美少女なだけあるわ。めちゃくちゃ可愛い。
エルナは俺との距離妥協点を見つけたのか、俺がログインする前に来ていたTシャツの裾を掴む事で落ち着いた様だ。
はぁ~、裾掴みとか最高かよ。
『それじゃあ、これは夢って事で良いのか?』
『そうだよ。ほら、私もこの子のお陰で意識がはっきりしてるんだよ』
エルナが裾から手を離し何もない空間を指差すと、そこには何時の間にか宝石出来た美しい蝶が優雅に羽ばたいていた。幻夢蝶の髪飾りアニマソムニア。〈腐灰水源〉で手に入れた装備で、夢幻の世界で持ち主を導く力を持つ、神器には一歩及ばない装備だった筈だ。あと普段から自分には見えない様にしているが、この蝶の幻影がエルナの周りを飛んでいるんだったか。
『この子は神器には及ばないけど、夢の中で持ち主を導く強い力を持っているの。だからこの体が眠りに着いている間は、私も意識が目覚めるんだよ。あとは……今私は何時も寝ている様な状態だから、この子のお陰で前よりも周りの状況を分かってるんだよ?』
『なるほど。だから、今日のお風呂であんなことが起きたのか』
『あっ、あれはシズルが私と仲良くなる前に、他の子と一線を越えない様にしただけだし……』
『いや、あれはアレで相当エロいし、如何かと思うんだが……』
『くぅ~~……///、だって……。は、恥ずかしかったけど、一番は何でも私にして欲しいんだもの……///』
エルナが、顔を真っ赤にして今日のお風呂の事を弁明する。
はぁ~~、ちょっとエルナさん! エロいし、可愛すぎませんかね!?
『まあ取り合えず、今のこれが夢だと言うのは分かったよ』
『うんうん。そう、これは夢だよ』
『で、この夢は朝まで続くのか?』
『そうだよっ、て言いたい所だけど。チナちゃんに起こして貰わないと、目を覚ますのは難しいかなぁ~?』
『ん? それってどう言う事?』
エルナがビシッ! と俺を指差す。髪を下ろしてるエルナも可愛いなぁ。
『シズル君! 今私達は、睡眠のバットステータスを受けてます!』
『お、おう!』
『しかも、このバットステータスは大神由来の物なのです。私達はバットステータスLOCKの呪いと合わせて、二種類の大神の力でバットステータスを受けてる状態になります!』
『ああ、紅月の大神のバットステータスLOCKと、今睡眠のバットステータスを齎している大神の力の二つね』
『そう! その二つの大神の力が、ちょっと私達に都合の悪い形に作用してしまって、私達は普通には起きられないんだよビシッ!』
エルナが左手を腰に当て、右手でビシッ! と指差しドヤ顔でポーズを決める。
うむ、可愛い。エルナ曰く俺が目を覚ますには、予め『スターリジェネ』を掛けて置き、チナがエルナを起こす魔法をかけるタイミングで、『ステラリフレッシュ』とアニマソムニアの『ドリームアウト』を発動する必要があるそうだ。
どうやってそのタイミングを知るのかと言うと、『星覚』のスキルの力で今何が起こって居るか大体分かるらしい。
他のスキルと組み合わせれば、かなり細かく分かる見たいだな。
それにしても、大神由来の睡眠のバットステータスなんて、何で受けてるんだろうな? カーベルカ―ロッタの介入とか?
『それで今、サレス君が外で戦闘してる見たいだけど、私達は何にもする事無いから暇だよ』
『え? サレス今戦闘してるの!?』
『うん。サレス君は、夜狩りをする心算だった見たいだけどね』
『心算だったと言う事は、バットステータスは襲撃か何かの前準備だった?』
『そうだよ。サレス君が起きて無かったら、今頃私達は今回のエピッククエスト失敗してたよ』
ほほう! サレスは、エルナにINしている俺が眠ている状態でも、独立して活動できるのか! これは良い事を聞いたな。
でも、何でサレスには、睡眠のバットステータスが効かなかったんだ?
やっぱりコスモアバターだからかな?
『と言う訳で、チナちゃんに起こして貰うまでやる事も無いし。暇だからシズルも一緒に、チナちゃんと桜ちゃんの夢でも覗いてみる?』
『おいおい。チナと桜の夢を覗くなんてそんな事出来るのか? それに俺も誘うとか、如何考えても他の子と仲良くなる手助けだと思うんだが、良いのか?』
『う~ん。だってやる事無いし暇なんだよ? それに私は、シズルが他の子と仲良くなるのが嫌って訳じゃないんだよ。ただ一番は私が良いなってだけで……。それにほら、男の人は初体験の人が一番印象に残るって言うじゃない? ならシズルの一番で在りたい思う私としては、シズルの初めては全部私が貰わないとって思う訳なのよ! ふんす!』
うん、エルナさんめっちゃアグレッシブやん。その内俺、押し倒されたりしてな!
まあ、俺は女の子が積極的なの、別に嫌いじゃないがな!
あ、ちなみに夢を覗くのは、アニマソムニアを使えば簡単に見れるみたいだ。
『それにシズルの感じてた通り、私は可愛い女の子が大好きだからね~♪ 私を一番に優先してくれるなら、ハーレムも全然有りだよ?』
『いや、流石にハーレムには為らんだろ。それに俺は、美少女達のキャッキャウフフの光景を、近くで見れれば良いだけだし、ハーレムを望んでる訳じゃ無いぞ?』
『ええ!? でも、私を入れてもう三人もお嫁さんが居るのに?』
『それはあれだよ。俺の願望が入ってしまった結果と言うか……不可抗力と言うか。それに、俺がエルナ達以外に、直接会う事は無いと思うんだが?』
『と、シズル容疑者は自供していますが?』
『いや、俺は容疑者じゃないし、本当にハーレム願望は無いぞ?』
『ふ~ん? でも、シズル。私達の称号や加護の事を考えると、多分時間の問題だと思うのだけど?』
『確かに称号に、好感度が高く為るとか、好意を抱かれ易くなるとか有るけど。そんなにか?』
『Σあっ、そっか。紅月の大神の呪いの所為で、今は実感し難いんだ。ならしょうがないね』
『それは呪いが無くなれば、実感する様に為ると言ってる様に聞こえるが?』
『そだよ』
その後エルナと一緒に、チナと桜の夢を覗いたりしたんだが、二人の夢は寝る直前のもふもふの影響か非常に平和な夢だった。
『あの……シズル、その……手を握っても……良いかな?』
エルナはそれまでの明るい態度を急に改め、チラっとこちらを見て躊躇う様に聞いて来る。手を握りたいとか、エルナはほんと可愛いな。
『え? お、おう……もちろん良いぞ』
エルナは緊張しながらも、おずおずと俺に手を伸ばして来て、本当に俺が存在するのか確かめる様に、ゆっくりと俺の手に触れる。
最初は、緊張の所為かぎこちない感じで俺の手に触れて来ていたが。次第に、俺の手の温もりを確かめる様に、指を絡めて来た。
理由は分からないが、ホッと安心した様にエルナの緊張が解けたのを感じだ。
まあ、エルナの顔は今も真っ赤で、めっちゃ可愛いんだがな!
『えへへ、ほんとうにシズルは此処に居るんだね。嬉しいなぁ♪』
『急に如何したんだ?』
エルナは、本当に嬉しくて仕方がないと、俺の手を握りながら顔を綻ばせている。
俺の手を握って一体何が幸せなのかと、そう思わなくもないが。エルナが幸せなら、それで良いかなと思えてくるから不思議だ。
『私はね。シズルの事だけはずっと覚えてたんだよ。あの大神の力で封印されて、1000年の間に他の事は殆ど忘れちゃったけど。シズルの事だけは、ずっと忘れずに覚えてたんだよ』
『……そうか』
1000年……いや、本当は本人も覚えてないだけでもっとかも知れない。
その時間を身動き一つ取れない真っ暗な闇の中、ソフィーちゃんは側にいたのかも知れないが、恐らく認識する事は出来なかっただろう。つまり一人だ。
『私は、シズルの為に生まれて来たって事は、ずーっと覚えてたんだから! だから私は、本当にここにシズルが居てくれて嬉しいんだよ!』
1000年の忘却と孤独。それは、現実世界を生きる人間の俺には、全く想像する事が出来ない途轍もない時間だ。だが、記憶も無く真っ暗な闇の中で、1000年一人閉じ込められていたら、心が壊れて廃人に為っても可笑しくはないと、流石にそれは想像がつく。そして、エルナを封印した者達の目的の一つも、そうだったのではないかとも。
その封印の間、エルナの心の支えに為っていたのが、俺結城 静流の記憶だったと言う事なんだろう。そして、その忘却と孤独を、エルナに味合わせてしまったのは間違い無く俺だ。他の転生者の掲示板の書き込みを見ればそれは容易く理解できる。
余計な設定を考えてしまったのだと。
俺自身も、キャラクタークリエイト時の記憶はないが、エルナに対して非常に申し訳ない気持ちになって来る。ちょっとその時の自分をぶん殴ってやりたい。
あ、でもこうなって無いと、エルナと人格統合されてこうして話せなかったのか。
寧ろナイス余計な設定だった? う~む、難しい所だなぁ。
『シズル、そんな顔しないでよ。私は今とっても幸せなんだからっ!』
『そうか……、そうだな! 今が、そしてこれからが大事だな!』
『そうだよ! 私は、私の大好きな本当の結城 静流に、漸く会えたんだからねっ!!』
はい!! もう絶対に幸せにします!! いやぁもう、エルナを幸せにしないとか絶対ないわ!! マジ可愛い!! マジ天使!! マジ尊い!! エルナ
『エルナ、今お前は幸せかもしれないが、これから先も俺が絶対幸せにしてやるよ!! 絶対にな!!』
エルナは言葉詰まらせ、きゅっと胸を押さえる様に腕でを組む。
ポロポロと白く輝くダイヤモンドの様な雫がエルナの瞳から零れ落ちる。
え! 涙!? 俺エルナを泣かしたの!?
思わず告白しちゃったけど、もしかして俺の臭いセリフがダメだったか!?
『んっ……そっかぁ……嬉しいなぁ……夢みたいだよ……えへへ』
喜びの涙に濡れても尚彼女は可愛くて美しい。そして、俺に笑顔を見せてくれる。
Σはっ!? 心臓止まってたわ。
これ、告白の返事はOKって事で良いんだよな?
『夢見たいか……、確かに今俺達は夢を見てるけど。この夢は現実だぞ?』
『うん、そうだったね。ここは夢の世界だったよ。でも、全部本当だよね?』
『ああ、エルナを絶対幸せにするからな!』
『うん!』
Σあっ、そう言えば俺は、エルナに直接好きとは言ってない!
でもまあ、アレは間違いなく告白だしきっと通じてるよな?
いや、こう云う事はハッキリ伝えて置かないと駄目だよな!
『さっきのあれは俺の告白で、俺はエルナの事ちゃんと好きだからな?』
『わ、わかってるよ///。これから幸せにするって言われて、勘違いなんてしないよ!』
よかったぁ、ちゃんと告白成功してたわ。
頬染めて恥ずかしそうにしてるエルナが、めちゃんこ可愛いぞ!!
仮想世界で初彼女が出来たわ! いや、もう既に嫁何だっけか?
まあなんにしても、俺はもうIFOやめる事が出来なくなったな。
何せ! 俺はこれから先ずっと、エルナを幸せにしないと行けないからな!!
しかし、将来的には肉体を捨て、現実世界からIFOに移住するしかないよな?
まあ、IFOは元々FUTURE VISION社が、そう云うコンセプトで作った電子世界だろうし、多分何とか為るだろう。でも、実際何時になるか分からないから、出来るの事は現実世界で金を貯めて置く位しかないけどな。
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