117 灰呪教徒達との夜襲戦
サレス視点
まだ無傷の灰呪教信徒が、俺の物言いに激昂して何事かを唱えだす。
『呪痕黒っ……グァッ!』『幽蒼燐b……グホッ!』『ギャアアアッ!!』
だが、俺が少し考え事をして居た間に、何時の間にかラビットウルフライダー達が、信徒に気付かれる事無く接近し、不意打ちを喰らわせる。ついでに、俺がアーツで轢いた信徒にも襲い掛かっていた。如何やらウサギ達は、隠密性が高いらしいな。
それに、信徒一人に対して2ユニットであたる様だ。
「そいつら、お前達だけでやれるか?」
「きゅっ!」
「ウォン!」
もちろん! と言う様な感じで、ウサギとオオカミが返事をする。
如何やら問題なさそうだし、俺はアーツで跳ね飛ばした奴らに追撃をするか!
『グラウンドコスモニードル!!』
まだ立ち上がる事が出来ていない信徒二人に、地面から生えた大量のコスモマテリアルの鋭い棘が、針山を連想させる様にブスブスと突き刺さる。
『うぎゃあッ!』『ゴホッ!!』
『グラウンドコスモニードル』が、良い所に刺さったのか信徒の一人が吐血する。
この二人はこれで、地面に縫い付けた様な物だし、簡単に止めを刺せそうだ。
それに、ウサギ達も数的優位を活かし、信徒に何もさせない様に立ち回っている。
これ、思ったよりも楽勝では?
『呪禍燐灰!!』『呪掌雷蛇!!』
灰色の燐光が渦巻く様に地面から立ち昇り、赤い稲妻が蛇の様に曲がりくねりながら駆け抜ける。
バチィィィッッッ!!! ドゴオオオオオオウゥッッッ!!!
稲妻で起爆した様に爆発し、同時に灰色の炎が巻き上がり俺達事周りを焼く。
「きゅあっ!」
「ギャンっ!!」
くそっ! 新手か!! 俺もウサギ達もダメージを受けちまった。
おまけに、地面に縫い付けた信徒二人が居なくなっているし、ウサギ達が相手にしていた奴らも姿が見えない。闇に紛れたか?
『きゅっうきゅ~る!』
神官帽ウサギが、直ぐに受けたダメージを回復するため魔法を発動する。
柔らかな緑色の光が広がり、ウサギ達とオオカミ達の傷を癒しゲージバーが回復する。と言っても、俺は回復しないんだけど。
でも、エルナが寝てるお陰か、エルナの自動回復の余剰が、何時もよりバンバン流れて来て、直ぐにゲージバーが回復してるけどな。
だからと言って、CEの能動的な回復手段が『コスモシェイヴスナッチ』だけしかないから、なるべくダメージを受けない様に立ち回りたい所だ。
一応、『アステルリヴァイブ』で回復出来る可能性が在る見たいだけどな。
『おのれ邪教徒と畜生共め! 許さんぞ!!』
『我らの使命を邪魔しおって! ただで済むと思うなよ!!』
闇の中から魔力の高まりを感じ、『直感』が危険を訴えて来る。
『『『『黒式合術 呪獄死灰炎門!!!!』』』』
『コスモバリアシールド×3!!』
黒灰で出来た地獄の門が俺を囲う様に四方に現れ、四つ全てから呪詛に塗れた黒炎を黒灰共に吐き出す。
ゴゴオオオオオォォォォオオオオオオウボオアアアアアアアアアッッッ!!!!!
吐き出された黒炎と黒灰は、次第に亡者の顔を模り叫び声を上げる!
咄嗟にウサギ達も含めて守る様に、三重展開した『コスモバリアシールド』の陰で、気持ち悪くなる様な呻き声を上げる亡者の顔をした黒い炎を防ぎ、黒灰もシャットアウトした。
三重の『コスモバリアシールド』が消え、辺りの気配を探るが追撃の術は無い。
それにこの術、さっきの五人が仕掛けた感じではない。となると、信徒達の新手かもしくは、初めから居て隠れていたのだろうか? そう考えを巡らせていると。
『きゅきゅっきゅっぷー!!』
ズンッッ!!! 魔女帽ウサギの鳴き声と共に重力場が発生し、意外と脆かったのか黒灰の地獄門が破壊される。
アアアアアアッッッ!!! 黒炎で出来た顔が呻き声を上げ消えて往く。威力と発動の速さは有るが破るのは簡単と云う、そんなタイプのスペルアーツか?
『グァアッ!!』『なにぃっ、くっ!』
魔女帽ウサギの重力魔法の効果範囲に、信徒達も居た様で巻き添えダメージを与えられた様だ。ラッキー!
『畜生の分際で我らの呪法を破るだと!?』
『このド畜生共め!』
闇の中で何かが動く気配を感じるが、サレスでは良く分からない。
だが、〇カ〇ターらしき物を付けたハンターウサギには分かった様だ。
獲物を狩るハンターの如く、目に鋭い光を宿し狙いを定める。
『きゅっきゅーぷる!』
ハンターウサギから放たれたのは、『イリスフェザーダンス』の虹色の羽だ!
無数に発射される虹色の羽は、闇に傷痕を付ける様に虹色の軌跡を描き、闇に紛れて接近する信徒達を何度も貫く。
『ぎゃあああっ!!』『ぐあああ!!』『や、やめろおおお!!』『糞がっ! 纏わりつくなあああああっ!!』『ひ、ひげりゃぷっ!!』
悲鳴が上がると、今まで姿が見えなかった信徒達の姿が、スウっと浮かび上がる。
いやこれ、ホーミング弾じゃん! あっ、でも最初に狙いを定めないと、ホーミング効果が働かないから、見えているのは確かか。
しかし、この五人を支援している信徒は、ハンターウサギの射程外だったのか、虹色の羽が五人以外を狙う様子はない。って言うかこれはもう、ハンターじゃ無くて射撃……、いや狙撃ウサギだな。
まあ、それはそれとして、近くに居ないのなら丁度良い。
『イリスフェザーダンス』で、強制的に踊らされている信徒達を攻撃するだけだ。
金棒の『怪身 怪力鬼双』を発動し、自在大剣のパッシブ効果で大剣を巨大化。
ウサギとオオカミにしゃがむ様に指示を出し、『マスグラビティブレード』に『グレートバッシュ』,『ワンハンドフルスイング』のアーツを三重発動。
五人の信徒達を薙ぎ払う様に切り払う!
『大重刃斬・円!!!』
ブオオオン!! ゴオオオオオオオッ!! と不穏な音を立て大剣が振るわれる。
ズド――――――――――ンッ!! 大質量を伴う重力の刃が信徒達を薙ぎ払う!!
信徒達は大剣に薙ぎ払われ、木っ端の様に吹き飛ばされ呻き声を上げる。
こいつ等まだ倒せないのか。随分しぶといなぁ。
するとまた夜の闇の中で気配が動く。さっき支援攻撃をした敵信徒が動いたのだ。
『『『『護法合呪 炎骸鬼カコルクス』』』』
先程の地獄門に似てはいるが、頑丈そうに黒光りする黒灰の門が形成され、何かがじわじわと出て来る。
召喚魔法か! 召喚体が出てくるのに時間が掛かりそうだ。さっき薙ぎ払った信徒達は、まだ倒れている。この召喚を行っているのは、魔法で援護して来た新手の信徒達で確定だな。
俺はパーティーチャットを使って、スカーフを巻いているウサギとオオカミのペアに、未だ姿を現していない信徒達を見つけるよう指示を出す。
パーティーチャット、多分ウサギ達にも使えるだろ。
「きゅっきゅきゅ!」
「ウォン!」
生贄40号:ええ、了解しましたよ。サレス殿!
軍狼4番:任務了解!
スカーフウサギとオオカミが、鳴き声を上げるとチャットに文字が表示される。
おおっ! パーティチャットだと言ってる事が分かるぞ!
良し他にも指示出して置こっと。
サレス:狙撃ウサギは、40号?達が敵を見つけたら、そっちを優先して攻撃してく
れ。
生贄78号:狙撃ウサギとは私の事ね。私にピッタリだわ。了解したわ!
軍狼24番:我は、射撃サポートが出来んから、回避に専念しよう!
78号?が、きゅうきゅう鳴き、軍狼24号がウォフっ! と鳴きながら了承した。パーティーチャットで、ウサギ達オオカミ達との意思相通が出来る様に為り、しっかりとした受け答えが成される。
こんなにしっかりしてるけど、見た目はプリティーなウサギさんとオオカミさんなんだよなぁ。
サレス:他の皆は俺と一緒に、召喚体が出て来る前に見えている敵を減らそう!
生贄1号:サレス殿、任務了解した!
生贄38号:私達はこのまま灰呪教徒をやれば良いんでしょ? 任せなさいな。
生贄11号:攻撃は自身無いですけど頑張ります!
生贄105号:……任せろ!
軍狼1番:眷属になって初任務、頑張ります!
軍狼3番:負けられない戦いがそこに在る!
軍狼114番:僕らをあんな物に縛り付けていた奴らに復讐だ!
軍狼422番:……時は来た!
チャットにコメントが流れると、皆直ぐに動き出す。
あっ、やっぱりこのオオカミ達、レギオングレイの核に囚われて、呪詛と怨嗟でぐちゃぐちゃに混ぜられていた魂なのね。
早速、スカーフウサギの40号と軍狼4番は姿を消し、ハンターウサギの78号は射撃を開始する。他のウサギとオオカミのペアも、近くに倒れている信徒に速やかに襲い掛かる。
俺も自在大剣を肩に一時的にマウントし、ダメージを受けて直ぐに喚く癖に、中々倒せないしぶとい信徒達を、確実に仕留める攻撃を繰り出す事にした。
俺は仲良く近くに倒れている信徒二人に向かって、『コスモバーニア』で加速移動しながら、サレスの右腕にサードアームを装着し、巨腕と為った右腕で『コスモシェイヴスナッチ』を発動する!
「削り飛ばしてやる!!」
起き上がってきた信徒二人を、巨腕と為った右腕で掌で薙ぎ払う!!
ヴヴァシャアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!
一瞬抵抗する様な感触が有ったが、直ぐにそれは無くなり、信徒二人はサレスの右手に削り取られる様に体が消失した。
『ぐああっ!! 消え……』
『ヒィッ! 食われ……』
残った部分も消え、後に残ったのはサレスに吸収されなかったCEの残光だけだ。
これって人を食った事になるのかね? ちょっと気分が悪くなるが致し方無い。
パッと召喚門の有る方を振り向くと、真っ黒な木炭で出来た様な人型の体の一部が、門から迫出て来ていた。真っ黒な木炭の様な体は高温らしく、その内側から熱気を孕む赤い光が見える。
如何やら召喚門から、中々のデカ物が出て来そうだ。
召喚体が完全に出て来るまで時間は有るし、こちらも一段巨大化するか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます