115 修行者達の集落で簡易セーフティハウスに泊まった

 桜が集落の周りに展開していた、『ディメンションバリア』を解除してから、集落の結界に足を踏み入れる。

 霧は無くなった後も無くならなかった、〈呪霊灰山〉の領域内の漂っていた呪いの気配が消え、自分達が安全な領域に入ったという事を実感する。


「止まれ!」


 武装した修行者らしき人達が、結界を抜けて来た俺達を待ち構えていた。


「お前たちは何者だ? 外には強力な力を持った悪霊の集合体が居た筈だぞ!」


 砂漠の民の民族衣装っぽい服装で、目元だけしか分からないリーダーらしき人物が、ある意味当然の質問をして来る。


「私達は、アステリズムの冒険者ギルドから依頼を受けて、パープシャル村の異変を解決するために来たんですけど……」


「パープシャル村の? そうか、この迷宮化現象は山全体に及んでいるんだな?」

「そうです。途中で集落が有ると分かったので、集落の状況の確認と情報収集。それと、休息のために立ち寄りました。あと、外にいた悪霊の集合体は倒しましたよ」


「なに! それは本当か!?」 

「ほんとなのじゃ! わちが保証するのじゃ!」


 集落の人達は、チナの姿を見て直ぐにその正体に気付き、その言葉を聞いて安心したのか、武器を下ろしてくれた。


「おお! 世界に認められた神の分霊が仰るのなら間違いない!」

「我らの力では、結界を張るのが精々でしたから助かりました。感謝します!」

「おお神よ! これで安心して修行を続けられます!」


 武器を放り出して、チナに対して祈る集落の修行者達。

 うん。これ傍から見ると、幼女を崇めるヤバい人達にしか見えないな!

 話を進めるため、取り合えずリーダーと思われる人に話しかける。


「色々聞きたい事はあるんですけど。取り合えず、今日はもう休みたいので、明日お話を聞かせて貰えませんか?」


「もちろん、構いません。もうあの悪霊が居ないのなら、我々は問題なく修行の継続が出来ますから。それと、お休みになる場所は如何しますか?」


 流石に、今から集落の人の家に今から押し掛けるのは迷惑だろうし、簡易セーフティハウスを使おうと思う。


「簡易セーフティハウスを持ってますから、設置できる適当な広い場所に案内して貰えますか?」

「もちろん、構いませんとも。寧ろ我が家に招きたい位ですが。残念ながら、この集落の家は見て分かる通り、修行のため最低限寝泊りできるだけの物です。皆さんが、宿泊用のアイテムを持っているのなら、それに越した事は無いのですよ」


 休息のため、簡易セーフティハウスを設置できる場所に案内して貰う途中、ちょっと気になった事があるので聞いて見る。


「そう言えば、食糧とか大丈夫なんですか?」


 パープシャル村には、備蓄と緊急用の転送装置が有るから、まだ食糧問題が起こって居なかったが。この集落は大丈夫なんだろうか?


「ふふ、食糧の事ですか。ここエーランブラム山に修行しに来る者達は皆、星から湧き上がり世界を満たし形作る力、星輝をほんの少しだけ摂取する事で、食事の代わりとしています。星輝はほんの僅かと言えども、世界の源とされる力ですから、十分腹は満たされるのですよ。


 ほほぅ。星輝を摂取するって、まるで霞を食べる仙人見たいだな。


「そう言えば、何時もよりも星輝の量が多い様な?」

「へ、へぇ~そうなんですね」


 しかし、話を聞く限り、エルナが基本食事不要な理由は、星輝の影響だった見たいだな。ご飯の代わりになる物が、自分の内側から無尽蔵に溢れ出て来るんだし、そりゃお腹空かないわな。


 集落の奥間所に有る、ちょっとした広場に為っている場所に案内された。このスペースは、集落の家に空きが無い状態で、新しい修行者が来た場合に備え、新しい家を建てる予備スペース何だそうな。

 早速、簡易セーフティハウスを呼び出すマジックアイテム、安らぎの別荘のマジックベルを取り出す。リンリンとベルを鳴らすと、まるで最初からそこに在った様に、スウっと二階建てのしっかりとした家が出現する。


 ええっ? これで簡易セーフティハウスなの!? ガチの家じゃん! 


「ほほぅ、これはこれは、中々良い物をお持ちですね。では、私はこれで失礼しますよ」


 そう言うと案内してくれた人は、集落の中心の方へ帰って行く。

 Σあ、そう言えばあの人の名前聞いて無いな。まあ、声の感じで多分男だと思う。

 あと、リーダーっぽかったし、明日聞けば良いか。


 呼鈴によって出現した安らぎの別荘の中に入ると、家の中の空間は外観より広くて、空間拡張されているのが分かる。

 一階は、リビングダイニングキッチンに広々としたユニットバスとトイレ、それと二部屋の寝室。二階は四部屋の寝室とトイレが有る6LDKだ。

 備え付けのベットが六床しかないから、宿泊可能人数が6人と言ってるだけで、寝室一つ一つが割と広くてもっと多く泊まれそうだ。

 リビングも広いし、そこも使えばもっと行ける。

 つまり、広々使うなら6人と云う設定なのだろう。

 流石、緊急クエストの達成報酬なだけあるな。


 食事は、このクエが始まってから色々考えさせられるので、待機ルームにいる桜本体にお願いして、チャージしてある資金でショッピングモール施設を購入して貰う。

 それから、現実世界の食材と調味料を共有倉庫を通じて調達した。

 後はエルアクシアの、手持ちにあるタスクボアの肉を使って料理を作り、チェリーベリーとアプリンをデザートにして食べた。

 まあ、料理って言ってもステーキバーガーだけどな。

 タスクボアの肉、やっぱ美味かったわ。


 ちなみに、ショッピングモールを購入した理由は、この施設だけで色んなショップのアイテムを網羅できるからだ。

 その分お高いが、細々施設を買うよりは良いだろう。

 しかし、共有倉庫を使えば、現実世界の商品をエルアクシアで売って、エア楽々稼げそうだよな。共有倉庫の仕様を知っていればだけど。まあでも、やったらやったで直ぐに模倣されて、コスモプレイヤー同士の価格競争に為って、あっと言う間に捨て値で取引されそうだけどな。

 少しは、クールタイムが有る見たいだけど。施設を買いさえすれば、幾らでも手に入る訳だしな。


 さて、折角お風呂が有るのだから、入らない訳にはいかない。

 バスタオルやシャンプーにリンス,ボディソープなども、ショッピングモールのお陰で簡単に準備できたし、ゆっくり湯船につかってきますか!


 姿鏡で、俺至上完璧なエルナのプロポーションを堪能した後、掛け湯をしてチナと桜一緒に湯に浸かる。バスタブは広くてチナ小さいし、桜はフィギュアサイズなので、全く狭くなくゆったり浸かれるのだ。ふぅ~、骨身に染みるぜ。

 チナは、目を細めて気持ち良さそうに鼻歌を歌っている。エナは、結構発育の良いロリ巨乳気味の体つきをしてるが、チナは完全につるペタボディの幼女なんだよな。

 やっぱりこれも、分霊としての個体差なのかねぇ?

 桜は自分が高次元宇宙精霊に進化した時に、背中に出現させていた後光の様な金色の光線の輪を、浮き輪の見たいに使って広い浴槽を泳いでいる。実に楽しそうだ。桜も俺が作っただけあって、実に素晴らしいプロポーションだな!

 うんうん。実に良い仕事したな俺。


 顔下半分を湯船に浸けながら、チナと桜を眺めていたら急に視界が塞がれる。


 Σうおっ! なんだ何が起こった!?

 慌てて顔を触ろうとすると、動いたのは右手だけで自分の視界を塞いでいるのは、反応の無かった左手だったのだ。


 なにぃ!? なんで左手が俺の視界を塞いでいるんだ!?

 わちゃわちゃと、一人慌ててると。


「エルナは何してるのじゃ?」

「さあ? 分かりません」


 チナと桜の、のんびりした会話が聞こえて来る。


 Σはっ、落ち着け俺。チナと桜が、のんびりしてるんだから危険はないんだ。

 心を落ち着かせると原因が分かった。

 うん。これ、エルナさんの仕業ですね。


 エルナから伝わって来る意思は、『他の子よりも先ずは、私の姿を脳裏の焼き付けるべき』と、『でも、私は二人をじっくり見るんだけどね。私も美少女好きだし!』と言う思いだ。いや、お前は見るんかい!

 如何やら左手は、『PKサイコキネシス』のスキルで動かされているらしい。

 『PKサイコキネシス』の発動感知すると、左手を引きはがそうとしていた右手に、何かが巻き付く。頭に巻き付けていたタオルが、右手を拘束したのだ。

 左手が右目を塞ぐのを止めるが、目を開いているのに何も見えない。

 む! これはスキル『ESP』と『自己意識・同調分割統合』を使って、俺には見えない様に視界のチャンネルを切り替えたな!

 何と言う無駄な器用さだ。エルナから『他の女の子の裸は、シズル君にはまだ早いよ! 私の裸で満足しておきなさい!』と言う意思を感じる。

 エルナ的に自分も好きだから、別に他の子の裸を見たりイチャイチャするのは、ダメでは無いと云うのが何となくわかる。

 ただ、まず自分を一番目愛でろと云うのが、エルナの意識から感じられるのだ。

 まあその後も、左手で片目を隠しカッコつけたポーズを取りながら、右手は頭に巻いたタオルに拘束されたまま湯船につかり続けた。中二病かな?


 体を洗う時は、首が動かない様に『PKサイコキネシス』で固定され、ショッピングモールで調達して置いたボディスポンジが、同じく『PKサイコキネシス』で操作され体を洗われた。生活魔法の『クリーン』や『リフレッシュ』で済ませても良いけど、如何せ風呂に入るなら体を自分で洗いたいと思い、用意していたボディスポンジで、まさかこんな風に洗われるとはなな。正直めっちゃ擽ったかった。

 髪も、エルナが『PKサイコキネシス』で洗ってくれたから、それは楽ちんだったけどな。


「エルナは器用なのじゃ!」

「それ、私も出来そうです! 私サイズのスポンジを用意してやって見たいですね!」


 チナと桜は、特に疑問も覚えずに感心していた。俺の印象どうなってんの?

 しかしこれ、傍から見るとどんな羞恥プレイだよって感じだよな。

 良し! 後でプレイ動画を絶対見返そう!


 風呂上りフルーツ牛乳を一気飲みした後、再び眠ったエルナの意識の事を考える。

 今回のエルナの行動から、やはりエルナの性格は転生者という事で、俺の性格をベースにキャラ制作時の俺の願望を受け、星霊姫として育てられた事で形成された物なのは、間違いないだろう。要は、エルナは俺と同じで美少女好きって事になるな。

 エルナは俺の願望通り、最高に綺麗で可愛い美少女となる様に、生まれて来た訳だが。そこに、俺なら如何してもキャラ制作時に考えてしまうであろう、『俺の事を大好きだと良いよなぁ』と云うもう一つの願望が、エルナに刷り込まれた状態で育って来たとしか、思えないんだよなぁ。

 つまり、エルナは結城 静流である俺の事を何でも知ってる上に、俺の事を大好きな状態で育って来たって事になる。だからエルナが俺に好かれる様に、可愛い女の子として生きて来たのが、ロールアシストシステムにしっかり反映されているし、思考も完全に女性の物と成ってる訳だ。

 まあ、今記憶は封じられているけど。現状エルナの状態は、俺への好意や関連性はそのまま残って居るって感じだな。

 だからなのかエルナは、自分が一番なら別に他の美少女と仲良くするのは全然OKで、寧ろ嬉しい位に感じる。ただ今はエルナ自身が、自分で言うのは何だが、大好きな俺にアプローチはもちろん、イチャイチャする事も出来ない状態だ。

 なので。嫉妬と言うには随分可愛い、『ずるいっ! 私もシズルとキャッキャウフフでイチャイチャしたい!』と云うのが、エルナの正直な気持ちではなかろうか。

 だから、自分より仲良くなりそうな事は、邪魔をするんだろうなぁ。


 そろそろ寝ようと寝室に行くと、同じ部屋にチナと桜も普通について来る。


「いっしょに寝るのじゃ!」

「私も一緒が良いです」


 ふむ。二人はちっこいし、ベットのスペースも殆ど取ら無いから、問題ないか。

 寝る前に『ラビットボムズ』で、ウサギ達を呼び出して皆でもふる事にする。新しい召喚タイプのアーツと思われる、『メテオウルブズ』も気なるが、今日は別に試さなくても良いだろう。さあ、もふもふタイムだ!




「ふぁ~~~っ、あふぅ」

「ふにゅぅ~……」

「すぅ……すぅ……」


 もふもふを堪能した後。良い頃合になると、眠気からか大きな欠伸を噛み殺す。今日は疲れたのか眠気を感じるなぁ。

 チナも眠いのかうつらうつらとしているし、桜はウサギのもふもふベットでもう夢の中だ。今日はウサギ達もお眠の様だ。

 本来エルナは、睡眠を必要としないが。迷宮化領域を三つも越えて来た訳だし、疲れて眠気を感じても可笑しくは無いだろう。

 チナと桜をウサギ事ベットの上に乗せ、布団をかぶり寝る事にする。

 それじゃ、おやすみなさい……。

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