112 エリアBOSS 贄求める灰群狼 レギオングレイ戦 前

 こちらに向かうに連れ、数をネズミ算式に増やして行く灰色の狼達。

 当然このまま数が増えて行くのを、黙って見ている訳にはいかない。

 丁度今、桜が使った『ギガサイクロンウィップ』の効果で、雨が降り雷が発生している。今ならヌイエ・ベルジープの必殺アーツ、『雨嵐天雷・瞬閃』を使えば威力増し増しに為りそうだし、それに天雷の型とは別の型も使って見たかったのだ。

 護神刀に手を掛け、鯉口を切り僅かに鞘から刀身を見せる。


『雨嵐天雷・瞬閃!!!』


 『ギガサイクロンウィップ』の効果により、既に豪雨と言っていい雨が降る中、『雨嵐天雷・瞬閃』の力が加わり、滝の真下に居るのかと錯覚する程の猛烈な豪雨となる。暴風もより強さを増し、雷も激しく瞬き轟音を響かせる。発動したのは瞬閃の型だ。


 白雷がエルナを含む広範囲に一斉に落ちる。視界が真っ白に染まった次の瞬間、全てがスローモーションになる。全ての雨粒が、白い稲妻の光で幾重にも複雑に重なり繋がり駆け巡る雷道を為す。一振りの雷の刃と為ったエルナは、雨粒を繋ぐ雷道を全てを切り裂きながら縦横無尽に駆け巡る!!


 木々も狼達も全て切り裂き元の位置に戻ると、スローモーション所か時間が止まっているんじゃないかと思えた、時間の感覚が正常に戻り、全て動き出す。

 カッッッッ!!! ドッゴッッッ――――――――ゴゴオオオォォォン!!!!!

 感覚が戻ると同時に轟音が響き、森の木々共々灰色の狼達がズタズタに切り裂かれ、灰混じりの血煙を噴き上げる。


 うわっ何これ!? 一瞬ザ・〇ール〇かと思ったよ!!

 もちろん、嫌いじゃないよ。凄いカッコイイしね!


 ガアアアアァァァァアアアアアアッッッ!!!!

 流石に、今のエルナの攻撃は堪えたのか、一匹だけ倒れていない灰色の狼が、苦しさ混じりの咆哮を上げる。


 咆哮を上げたのは意味が有った様で、それは劇的な効果齎した。

 灰混じりの血の跡から、次々と血濡れの狼達が湧き出て来ると言う形でだ。

 そして、灰色の狼がまた一歩踏み出すと、当然の様に新たな灰色の狼が現れる。


 あぁ~、もしかしてこのボスは、色んな方法を駆使して増殖して来るのか?

 そうだとするなら、これ物凄く面倒で厄介なんだけど?


「『ライトニングスパーク』なのじゃ!」


 チナも今の状況を有効利用する様に、スペルアーツ『ライトニングスパーク』を発動する。上空の雷を巻き込み、紫電が走り狼達に命中する。

 パンッッッ!! バチバチィッ!! 閃光が走り衝撃と共に火花が散る。


 キャイン! キャイン!! と狼達が悲鳴を上げる中容赦なく追撃を加えて行く。


『フラッシュショットバースト!!』

『スチームブラストカノン!!』


 桜とサレスは、早速討伐報酬で手に入れた銃火器装備で攻撃をする。

 【鉱石散弾フラッシュオーアブラスト】の弾丸がばら撒かれ、【爆裂砲撃スチームシードシェルランチャー】の火砲が狼達を吹き飛ばす。

 俺もステラレインの自動迎撃ONにしたため、ステラレインから自動で矢が発射され、狼達を射抜いて行く。


 ガアアアウフッ!!

 それでも、数は力と言わんばかりに、狼達の接近を許してしまう。

 灰色の狼はある程度こちらに近づくと、口から灰噴き出し周囲にばら撒く。

 その灰からは、最初にエルナ達に襲い掛かって来た、オオカミ達がその姿を現す。

 さっきの、経験値に為らんオオカミは、こうやって生まれるのか。


 早速狼達が群がって来るが、サレスがルナティックアトラクトの、『誘引挑発』に『タウント』を使い狼達を惹きつけ、大剣と金棒の二刀流で薙ぎ払う。


『怪撃 山鳴らし!!』『マスグラビティブレード!!』


 サレスは続けて、山坊主が使ったアーツを繰り出し狼達の動きを止め、重力波を纏い加えて大質量と化した【自在大剣ヴォリュマステラセンチビート】で、纏めて狼達を吹き飛ばす!! まるで、無双ゲーの様な爽快感だ。


 こちらも戦力を増やすため、『虹の戦乙女イリス オブ ワルキューレ』のアーツを発動。エルナの虹翼から戦乙女達が姿を現し、直ぐ様狼達の掃討に掛かる。

 しかし、この戦闘、灰色の狼に効率良くダメージを与えないと、終わる気がしないな。何せ灰色の狼の一部は、血濡れ狼と灰から生まれたオオカミに攻撃を任せ、微妙に攻撃し難い近距離と中距離の間を、ウロウロしながら増殖しているからだ。


「『ボルカニック・ラーヴァバイト』なのじゃ!!」


 溶岩で出来た巨大な顎が、狼達を飲み込み地面に溶岩の川を作る。流石チナ! 溶岩なら、灰や血から狼が増殖しないって訳ね!

 ならば、ラーヴァフロシュアとスキル溶岩操作の力を使って、溶岩地帯を作り上げてしまおう。うちのパーティーなら、足場が溶岩地帯に為っても誰も困らないしな!


『ラーヴァスポット!』


 ボコボコボコボコッ!! ドッパァン!!! 地面からあっと言う間に、煮え立つ溶岩が湧き上がり狼達を足元から襲い、更に勢い良く噴き出す事で、熔岩が上からも襲い掛かる!!


『ディメンションウォール!』


 桜が、狼達の居無い空白地帯が出来たのを逃さず、『ディメンションバリア』の省エネ版で、パーティの周りを囲い一息つく間を作り出す。


「ふぅ~、無限増殖とは恐れ入ったね~」

「溶岩攻撃が効いて良かったのじゃ」


 『虹の戦乙女イリス オブ ワルキューレ』の戦乙女が消えた後、『ディメンションウォール』越しに、溶岩プールの周りをウロウロしながら、無尽蔵に増え続ける灰色の狼達の姿が見える。

 こいつは、完全に数で相手を擦り潰すタイプのエネミーだ。さて、如何した物か?


「取り合えず、『ディメンションエクスターミネイト』で、吸い出せるだけ吸い出しちゃいましょうか?」


 おお! 桜の『ディメンションエクスターミネイト』なら、増殖を気にせずにエネミーを排除出来そうだ!


「桜、それお願い!」


「はい!」『ディメンションエクスターミネイト!!』


 直ぐ様、『ディメンションエクスターミネイト』の効果により虚空に大穴が開き、狼達が掃除機に吸い込まれるゴミや埃の如く、穴に吸い込まれて行く。

 いや~、これは強いなぁ~。面倒な敵が、こんな簡単に排除できるんだからな。


 しかし、そう簡単にボスが倒せる訳もなく。増殖した狼達が、何匹かの灰色の狼を中心に、一纏りに為る様に集まり、融合して往く。

 ですよね~。そりゃそう簡単には終わらないよなぁ~。

 まあ要するに、次のフェイズに移行したって事だよな。


 アオオォォォォォ――――――――ォン!!!

 融合して色が混じり巨大化した狼は、『ディメンションエクスターミネイト』の吸引力に耐え、今度は巨体となった自身と同じサイズの狼達を、一歩踏み出す毎に増やして行く。


「ええ!? あの狼、あのサイズでも増殖するの!?」


 体高7mは有ろうかと言う狼が、目の前で次々と増えて行くのだ。

 思わず声を上げてしまったのは、まあ流石に仕方ないよな。

 いやだってこれは、幾ら何でも面倒&厄介過ぎるだろうに……。

 エネミーの増殖速度が、どう考えてもマザーの比じゃないんだぞ! 酷くない!?

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