107 〈呪霊灰山 2合目〉WフィールドBOSS戦 霧の花園主 前

 ドッゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

 ボスムカデを倒し一息ついたタイミングで、まるで空気を読んだかの様に、マザーが自身の根を一気に引き抜く。


 広範囲に張り巡らされた根が、一気に生き抜かれた事で、天地がヒックリ返ったかの様に、土が津波の様に押し迫る大規模な地滑りが起こる。

 しかもこれ、アナウンスされない事から、マザーは只根を引っこ抜いただけで、攻撃でも何でもないって事だ。


 皆急いで、BFの上空に退避して、地滑りをやり過ごす。

 『巨骸甲冑の所為で飛べないかも』と、思っていたサレスも、無事空中に避難できた。万一サレスが飛べなくても、チナが持ち上げて飛ぶつもりだったようだけどな。


 土煙が舞う中、さっき叩き付けられた蔓よりも明らかに太く長い、マザーの根が大きく広がり蠢いている。マザーの根は、主要な五本の根を中心に幾重にも枝分かれしており、アレが一本振り下ろされるだけで、広範囲を打撃するであろう事が、見て取れた。


「うっわ~……。これはあの根っこを潰さないと、下に降りられないよ」


『うみゅ、しょうじゃな。根っこが有ると再生しゃいしぇいして来そうなのじゃ。しょれに、上空も安全とは言えんのじゃ』


「攻撃が、種砲撃だけとは限らないですからね」


 桜の言う通り、遠距離攻撃が種砲撃だけとは考えられない。それに、俺もチナに同意見で、あの花の根っこを残していたら、何度も再生しそうだと感じる。


「私も、この装備で飛行を続けるのは厳しいですから、根を取り除いて地上に降りたいですね」


 うわ……。確かにサレスがバーニア噴いてると、CEの減りがヤバいな。とにかく、マザーの根を集中攻撃するのがベストだな。


「それじゃ、皆でマザーの根を攻撃するよ!」


『うにゅ!』

「はい!」

「承知」


 現状、近づいて攻撃するのは難しいので、遠距離攻撃をするしかない。

 何故かと言うと。マザーの身体のアチコチを黒い羽が蝕み、死の恐怖に狂乱したマザーが未だ暴れ続けているからだ。お陰で土煙が凄くて、下に降りる気にならない。


『ディメンションスプリット!!』

『『竜撃砲・氷閃流刃』なのじゃ!!』


 チナと桜が根を切断する為の攻撃を放つ! 

 桜の『ディメンションスプリット』は、ミチミチミチィイッ!! とマザーの根を引き裂き、チナのブレスは青いレーザー光線となり、ズバッ! とマザーの根を斬り裂き氷柱を生み出す。

 サレスには、『コスモメテオバレット』を、現実の彗星の同じ様に、氷出来てる物と考え、『コスモブレイズ』の部分を『コスモフリーズ』変え、より凍てつき氷る様にイメージを固めた。新しく作ったアビリティ、『コスモコメット・フリーズバレット』を使用する事にした。

 CE大丈夫かな? いや、上空にいる時は、装備を収納して置けば問題ないか。


『コスモコメット・フリーズバレット!!』


 『コスモメテオバレット』と見た目は同じ、青い流星がサレスの手から発射される。しかし、見た目は同じでもその青い光には、猛烈な冷気が宿っており『コスモメテオバレット』とは真逆の物だ。

 氷隕石は強烈な冷気をばら撒き、ドゴオオ――――ン!! 着弾しマザーの根を打ち砕く。着弾地点から猛烈な冷気の衝撃波が広がり、広範囲を凍てつかせ一気に霜が降りる。


「おお、凄いね!」

『なかなかの威力なのじゃ!』

「流石、サレスさんです!」


 思わず声を上げてしまったら、何かサレスの攻撃が褒められる流れになったぞ?

 まあ、悪い気はしないけどね。


 それよりも、エルナの権能【死の黒翼】が発動している状態で、遠距離攻撃をするのだから、それを生かした物を新しく作るべきだろう。

 アステルエルアクシアを展開すると、やはりこれもカーベルカ―ロッタイメージの、黒色をメインに赤色へグラデーションするカラーリングで、ラメ加工されているのか光の加減でキラキラする。

 うん。暗い色合いの筈何だけど、なんか派手だな。


 弓を展開して少し悠長にしてた所為で、俺が攻撃する前にマザーの方が先に攻撃を仕掛けて来た。


¶フィールドBOSS 霧の花園主 グランドイスロフォージュマザーがBF全体を対象とした超広範囲攻撃『オムニディレクショナル・バーストシードシェル』を発動しました。


 オオオォォォオオオオオォォォォォオオオオオオオオッ!!!!

 マザーが叫び声を上げ、その巨体をブルリと震えさせると。

 ドドドドドドドドドドドドドドッ!!!! 凄まじい轟音を響かせ、マザーの至る所から巨大な種が、全天全方位に放たれる!!


 桜が直ぐに、自在大盾 百足長尺を、自分とエルナを守る様に球状に展開し、更にチナとサレスを含む様『ディメンションバリア』を張り、追加でに内側から『ディメンションBOX』を、守りを固める形で展開する。

 サレスを操るもう一人の俺も、『コスモシールド』と『コスモバリア』を合わせた、使い捨てのコスモマテリアルのバリアシールド。

 『コスモバリアシールド』を、自身とチナを守る様に多重に展開した。


 マザーが撃ち込んで来た巨大種子は、猛烈な勢いで『ディメンションBOX』の次元空間壁に衝突し、蒸気を噴き上げ大爆発する。

 それが何度も連続し、ギリギリビキィッ! と『ディメンションBOX』が早速悲鳴を上げる。

 サレスの視界からその様子を見て、この砲撃がどれだけ続くのか分からないが、これが続くのは不味いと言う事は直ぐに分かった。

 この攻撃を止める為にも、強力な攻撃をお見舞いしてやろう!


 『アステルシャインアロー』,『ホーミングアロー』,『フェザースマッシュ』,『星輝集束』,『星脈集束』,『クリティカルサイト』のアーツ六重発動に、権能【死の黒翼】とそれに付随する属性力を込め、漆黒の輝きを放つ矢を形成する。

 桜に射線を開けて貰い、死の力を纏った漆黒の輝きを放つ矢を射る!


『黒翼死閃矢翔!!』


 シュパァ――ン!! 黒い閃光と為った漆黒の矢が、黒羽の軌跡を残しながら獲物を目掛けて飛翔する。

 サレスの視界を借りて、放たれた矢の行方を見る。

 矢は種の弾幕を回避し、蔓による殴打も避け、マザーの根の主軸の一本に突き刺さる。矢が突き刺さった場所から、矢の漆黒の輝きが乗り移るかの様に、マザーの根に死を齎す黒が広がって往く。

 マザーが苦しそうに身を捩ると、矢が刺さり黒く変色した場所から、まるで命が噴き出す様に黒羽が勢い良く舞い上がった。


 ギリギリギリィッ!! ゴオオオオオオォォォォオオオオオオオオオオッ!!!!

 マザーは巨体を軋ませ、命が流れ出す苦しみで大絶叫する!!


 取り合えず、マザーの砲撃を止める事ができたな。

 『黒翼死閃矢翔』が当たった根っこは、見る間に枯れ果てて往くが、幹の様な茎や他の根に広がって往く様子がない。

 この様子を見るに、如何やらマザーを倒すには、まだまだ時間が掛かりそうだ。


 後三本は、根っこを潰さないと下に降りる気にはなれないし、このまま上空からの遠距離攻撃を続行で良いかな?

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