106 〈呪霊灰山 2合目〉WフィールドBOSS戦 死の抱擁

『なんかエルナが、ヤバい物を使ったのじゃ!!』


 いやいや、チナさん。別にそんなヤバくないでしょ。単なる劣化模倣だし、味方に悪影響は皆無なんだし、確かに侵蝕領域とか付いてるのは危なそうだけどさ。

 しかし、アナウンスの空白部分は、多分『大神カーベルカ―ロッタ』だろうね。

 なんかカーベルカ―ロッタに認識されたらしいが、お陰で【死の黒翼】って権能が増えた見たいだし、まあ多分悪い事にはならんだろう。


「大丈夫だよ、チナ。パーティに悪影響は無いから問題ないよ!」


『しょう云うことを、いってる訳では無いのじゃが……』


 チナは納得いかない様子だが、桜が慌てた様子で話し掛けて来たので、そっちに耳を傾ける。


「エルナさん。捕まえたムカデにも、エルナさんが使った力の影響が出てる見たいです!」

「おお! ほんとに!? それなら今回のボス戦は、もう勝ったも同然だね!!」


「違うんです! かなりのダメージが入って倒せそうなんですけど、物凄い暴れっぷりで隔離次元空間が破れそうなんです!」

「ええ!? それって、マザーも暴走して大暴れしそうなのに、そこにボスムカデも加わりそうって事!?」


 『夢幻死呪聖域デスナイトメア サンクチュアリ』が効いて、戦闘が思ったより早く終わりそうなのは良かったが、折角隔離したボスムカデが出て来てしまうのは頂けない。

 如何するか考えようとした所で、ビシッ!!ビシッ!! と何かにひびが入る音が耳を振るわせる。


「あっ、もう破れます!」


 バッキャアアアアアアアアアアアン!!! 大暴れしながら隔離次元空間を破り姿を現したのは、宝石の様にキラキラとした外殻に覆われた、100mを優に超える巨体を持った超巨大オオムカデだった。胴の厚みも7mは有りそうだ。

 桜の隔離を破ったボスムカデをよく見ると、その巨体は現在進行形で黒羽に蝕まれ、苦しさと恐怖のあまり暴れ回っている様に見えた。


「はぁ~、遭遇したムカデは皆大きかったけど。このムカデ、本当に物凄い大きいね~」


 うん、思わず声が出てしまうほど、本当にデカいムカデだ。

 外殻は金属や宝石などの鉱物が折り重なった物の様で非常に頑丈そうだ。

 しかし、一部は黒い羽に蝕まれ、簡単にダメージを与えられそうに見える。

 現状マザーが根を引っ張り出し、動き回りながら暴れる様に為るには、まだ時間が掛かりそうだし、先にボスムカデを仕留める事にしよう!


「取り合えず、ボスムカデを先に仕留めようか!」


『うにゅ、しょれが妥当なのじゃ』

「流石にあの大きさを相手にするのは、私でも骨が折れそうですね」

「私が為るべく、動きを止める様にしますから!」


 チナとサレス、それに桜は直ぐにボスムカデに応戦する。

 そうだ! フィールドボス二体を倒すんだから、流石にこれは経験値増加ポーションを使う案件でしょ! あ~、また忘れてたよ。これはもう完全に、モブエネミーの経験値分損してるわぁ勿体無い。それでも使って置くんだけどさぁ。

 経験値増加ポーションを使用すると、経験値量増加のアイコンが表示される。

 ほほぅ、アイコンに効果時間が表示されるのか、これは便利だな。


 おっ、そうだ。カーベルカ―ロッタのコスプレ解除して置くか。

 アレ? 服は戻ったけど、髪や目,羽の色が元に戻らないし、光輪も消せないぞ?

 う~む。権能【死の黒翼】が力を発揮している間は、如何やらこのままの様だな。

 なら、カーベルカ―ロッタのコスプレを続けるか。その方が、『夢幻死呪聖域デスナイトメア サンクチュアリ』の効果が高く為りそうな気がするしな。

 と言う訳で、再び服装をカーベルカ―ロッタのコスプレ状態に戻し、既にボスムカデに応戦しているチナ達に加勢する。


 ボスムカデにチナがブレスを放ち、サレスが『コスモシェイヴスナッチ』を使い、巨骸甲冑と比してもデカい金棒である轟砕鬼頑で殴りつけ、桜が『ディメンションスクラッチ』で削る。

 黒い羽の侵蝕で苦しんでいる所に、チナ達の攻撃でダメージを受けたボスムカデは、全身を一瞬眩く光らせると全方位に向かって、鋭く大きな礫を爆発する様に撒き散らす。


¶フィールドBOSS 霧の守護者 プレアディドテラセンチビートが広域攻撃『ハードオーア・フラッシュブラスト』を発動しました。


 度々、ボスムカデが仕掛けて来ていた、礫攻撃の高威力広範囲版だ。

 しかし、『夢幻死呪聖域デスナイトメア サンクチュアリ』の、強化効果と回復効果のお陰で問題なく凌げる。


 俺は色が黒くなった以外、元の双剣の形状に戻ったセレスティアラインで、アーツを繰り出すが。やはり熱の発生に気を遣うと、高威力のアーツが使い難い。

 なので、今度は近接凍結系攻撃を作ろじゃないか!

 では早速、現在の状態を生かし、権能【死の黒翼】の力を込め、『星冷刃』,『星光波刃』,『双星刃』,『彗星双刃』,『Wウィングバッシュ』,『フェザースマッシュ』の、アーツ六重発動でどうだ!


『黒翼氷閃乱舞!!』


 死の冷気帯びる黒き光を纏い、エルナは飛翔し黒き彗星となる。

 凍える黒い光を纏う双剣が、ボスムカデを容赦なく連続で斬り裂き、黒翼に変わった虹翼とその羽で、更に追撃を掛ける。

 そう! これはコンボ攻撃だ。しかも、羽の追撃が入っている間に、再び斬撃を入れる事で、何度もコンボを繰り返せる奴だ。


 ボスムカデが、『黒翼氷閃乱舞』を受けた個所は、凍結する供に黒く変色し、ボロボロと崩れて行く。

 ギィギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!! 更に大暴れするボスムカデだが、暴れるせいで余計に崩れて行く。

 これはかなり効いてるな。良いぞ! このまま一気に止めを刺そう!

 それにしても、『黒翼氷閃乱舞』はすんごい悪い奴が使いそうな、エフェクトが発生する攻撃だよな。


 良し! 止めは、『虹の女神の抱擁イリスエンブレイス』を、権能【死の黒翼】で改造した即死攻撃にしよう!


 ボスムカデは、自身を終わらせる力を感じ取り、強烈な灰色のオーラを放出する。

 力が高まりドンッ!と地面が爆ぜると。ボスムカデは、『ステルス・パーセプション』の認識阻害が有るにも関わらず、エルナを目指して跳躍する!


¶フィールドBOSS 霧の守護者 プレアディドテラセンチビートが必殺攻撃『テラセンチビート・ヘビートレインバーンラッシュ』を発動しました。


 跳躍したボスムカデは、100mを優に超える巨体をくねらせ、まるで宙を泳ぐ様に猛烈なスピードでエルナに向かって飛んで来る!!

 しかし、慌てる事は無い。既にこちらも準備は出来て居るからな。


死の天使の抱擁サリエルエンブレイス


 エルナの黒く染まった虹翼が、天を覆い尽さんばかりに広がり、空中を突進して来るボスムカデを包み込む。

 ボスムカデが放っていたオーラがフッと消え、空中突進の勢いも唐突に無くなり地に墜ちる。

 ドゴオオオオオッ! 巨体が地面に叩き付けられ消えて往く。

 正しく死の抱擁により、ボスムカデは死んだのだ。


¶フィールドBOSS 霧の守護者 プレアディドテラセンチビートを討伐しました。

討伐報酬はギフトボックスに送られます。後程ご確認ください。


『うにゅ、明らかにエルナから、【囚われ繰返す夢幻死呪の御主】の力を感じるのじゃ……大丈夫なのじゃ?』

「チナ、全然大丈夫だよ!」

『ほんとなのかのう?』

「へいきへいき!」


 【死の黒翼】からカーロッタの力を感じて、チナがエルナを心配するのは、まあしょうがないのかな? IFO公開設定資料には、アライメントが悪性なだけで、性格は善良その物って書かれてたんだけどなぁ?


「チナさん。取り合えずボスを一体倒せて、良かったじゃないですか」

『ふにゅ、まあしょうなのじゃが……』


 そうそう、取り合えずフィールドボス一体目を倒せたから、OKなのでは?

 チナはまだ気にしてる様だけど、ボスはもう一体居るんだよ。

 当然、ボスがまだ居るからBFは解除されて無いし、チナには気持ちを切り替えて貰わないとな。


「チナ殿、その話はボスを倒してからでも、遅くはないでしょう。BFもまだ、健在なのですから」

『ふ~みゅ、たしゅかにしょれもしょうなのじゃ!』


 良し良し、チナも気持ちを切り替えてくれた見たいだ。

 それにしても、【死の黒翼】権能はチナ的に何か問題を感じる見たいだな。

 やっぱり、大神関連の権能だからかね?

 しかし、『死の天使の抱擁サリエルエンブレイス』は、ボスを倒しただけじゃなくて、ボスの必殺攻撃も無効化したのかね?

 IFOならボスが倒されても、発動した攻撃の力は消えないで、そのままだろうし、そうとしか思えないな。もしかして、これが何かヤバいとか? 違うか。

 ソフィーちゃんなら、チナが何を気にしているのか分かったり?


『予想は付きます。でもそれは、やはりフィールドボスを倒してからでも、全く問題ないと思いますよ?』


 ふむ。ソフィーちゃんには予想が付いているのか。

 でも、チナ程心配してない様だし、多分本当に大丈夫なんだろう。


 ちなみに、『黒翼氷閃乱舞』と『死の天使の抱擁サリエルエンブレイス』はアビリティに登録されていた。

 『黒翼氷閃乱舞』の名前は、そのまんま技のイメージにピッタリだと思う。

 『死の天使の抱擁サリエルエンブレイス』の名前をサリエルにしたのは、死の天使の中でも一番カ―ロッタの力のイメージに近いと思ったからだ。

 それに何か、死の抱擁って響き良いよね。


 さあ、次はマザーだな!

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