105 〈呪霊灰山 2合目〉WフィールドBOSS戦

 二体のフィールドボスと別にいる取り巻きのムカデ達が、霧の向こうでウゾウゾと蠢き、一斉にこちらに向かって突進して来る。

 向かって来るムカデの数は十二匹、ボスムカデはマザーの側から動かない。

 エルナの手の中に居る、桜を開放してチナに指示を出す。


「チナ! 完全竜化お願い!」

「わかったのじゃ!」


 チナは、エルナの指示に直ぐ反応して、その姿を見る間に巨大な竜の姿へと変える。敵が皆デカいから、チナが変身してもそんなに大きく感じない。

 うん、間違いなく大きな物体に対しての感覚がマヒしてるな。


「エルナさん、助かりました」

「うんうん。パーティなんだから当然だね」


 桜と軽いやり取りをした後。桜には、この領域で今までやって来た様に、『ディメンションキャプチャー』と、『ディメンションアイソレイト』を使って貰い、ムカデを為るべくボス戦から排除をしてもらおう。

 次いでサレスには、排除しきれないムカデの突進を止めて貰うため、巨骸甲冑の専用アーツ『ギガランパートセンチビート』を使わせる。


『ギガランパートセンチビート!!』


 専用アーツが発動すると、地面がまるでムカデが這う様に蠢きドドドオ――――ン!! と大きく隆起する。星覚スキルが伝えて来るそれは、まさに巨大なムカデの如き城壁の姿だった。


 桜が排除した二匹を除く十匹のムカデが、『ギガランパートセンチビート』によって作られた城壁に衝突する!

 ドドン!ドガン!ズガアアアッ!! とムカデが城壁に衝突し轟音を響かせる。

 そこに間髪入れず、ヒュンヒュン!ドンドン!! とマザーの種砲撃が飛来する。

 回避行動を取りながら、『次元氷結新星爆裂ディメンションフロストノヴァ』で、桜が隔離排除した個体含め攻撃し動きを封じる。

 『次元氷結新星爆裂ディメンションフロストノヴァ』は、ホーミングが効く『アステルイリスフェザーアロー』を軸に作ったアーツなので、移動しながらのエルナのぶっれぶれの射撃でも、命中してくれて助かるな。


 エルナがBFに、『次元氷結新星爆裂ディメンションフロストノヴァ』で、ムカデに紫の氷晶の花を咲かせ。

 そして、次元凍結により動けなくなったムカデに、チナがブレスで止めを刺す。


『『竜撃砲・氷閃流刃』なのじゃ!!』


 青くさめざめとしたレーザー光線が、竜の姿に変わったチナの口から放たれる。

 ズバッ!! と、身動き取れないムカデ達が切断され、切断面から鋭く尖った氷柱が爆発する様に生える。チナのブレスが、完全にムカデ達の息の根を止めた。

 う~ん。今のチナのブレス攻撃、再生妨害の効果が有りそうだ。

 まあ取り合えず、ボスムカデ以外のムカデは駆除で来たな。


 ムカデを駆除したと言っても、マザーからの種攻撃で花の呪物のエネミーが供給され、ボスのBF内に周辺の花園のエネミーが大量に流入して来ている。

 近くに着弾した種から次々と花の呪物が成長し、蔓による叩き付け攻撃をエルナに繰り出して来る。

 俺は攻撃を回避しながら、『ホーミングアロー』で改良済の、『ウラヌスコールドレイン』を連続で真上に放つ!

 放たれた矢は、極寒の冷気を纏う流星と為って降り注ぎ、辺り一面を凍結させて行く。ホーミングが効いて、矢はパーティメンバーを器用に避けていた。

 良し! これならフレンドリーファイアは避けられるな


 エルナの『ウラヌスコールドレイン』で、近場の敵を片付けたが、一息つく間もなく。再びボスムカデから、礫のブレス攻撃と思われる物が発射される。

 しかしこれは、展開済みの『ギガランパートセンチビート』の城壁により、略粗ほぼほぼ防ぐ事ができた。


『ディメンションエクスターミネイト!!』


 桜がマザーの種攻撃を防ぐ可く。空に虚空の大穴を開け、種砲撃を吸い込ませる。

 『ディメンションエクスターミネイト』の虚空の大穴は、マザーに蔓攻撃を躊躇わせる効果も有り、漸く本当に一息付く事が出来た。

 余裕が出来た今のうちに、『アステルリヴァイヴ』をエルナから順に、パーティーメンバーに掛けて行く。バフも掛け直し、アビリティ『オーロラチャージ』,『ドラグーン』ついでに、乱戦に備えて『ステルス・パーセプション』で認識阻害も掛けて置く。これは直接狙われない様にする為だな。


 桜がもう一度、『ディメンションエクスターミネイト』を発動し、今度はこちらが接近しながら攻撃する番だ。


『ウラヌスコールドレイン!!』


 先ずは、ボスのBF内に流入して来た花園のエネミー達を、『ウラヌスコールドレイン』を連発して再び足止めする。


「『ディメンションキャプチャー!!』、『ディメンションアイソレイト!!』」


 ボスムカデ相手に桜が、これまでムカデ相手に使って来たコンボを仕掛ける。

 『ディメンションキャプチャー』で次元拘束しても、完全に動きを止められない様だったが、その後の『ディメンションアイソレイト』で、しっかりと次元隔離する事が出来たので問題ない。ただ、桜はボスムカデを隔離してる間、このままだと他に何も出来無さそうだ。


次元氷結新星爆裂ディメンションフロストノヴァ!!』


 隔離されたボスムカデの居る次元空間に、『次元氷結新星爆裂ディメンションフロストノヴァ』を五発撃ち込む。これでボスムカデも次元凍結で少しは大人しく為るはず。これで桜が他にリソースをけるだろう。

 それに、スリップダメージも入るし、マザーの方に少しは集中出来る筈だ。


 それにしても、熱が発生しそうな攻撃をすると、危険な事になりそうだから、そう云った攻撃が出来ないんだけど。やっぱり、エルナとしては非常に戦い難い。

 『星浄煌炎』,『炎浄煌気』は、熱が出てる訳では無いので平気だが、『極光虹翼爆裂閃煌』とかは熱が出てるから、多分使えないよなぁ?

 あ、『螺旋流星焔滅煌』なら、種が破裂する前に消し飛ばせるから行けるか?

 でもこれが行けるなら、『極光虹翼爆裂閃煌』でも、種が破裂して成長する余地も無く燃やせそうだよな? あ~でもそうか。発動後熱が、別の花の呪物の種を破裂させるから、やっぱりダメだ。

 『螺旋流星焔滅煌』の方は、なんか行けそうな気がしたけど。アーツ発動の準備段階で、不味い事になりそうな気がして来たので、やっぱり無しだな。

 と為ると、もっと強力な凍結系攻撃アーツを増やすか、別の属性の強力な攻撃アーツを新しく作らないとダメかね?


 チナ達が、マザーと流入して来る花園のエネミー相手に今も応戦している。

 良し! 取り合えず先ずは、モブがどんどん追加されるのを何とかするか!


 イメージするのは、エルアクシアに住まう唯一の悪性アライメントの大神、【囚われ繰返す夢幻死呪の御主カーベルカ―ロッタ】の、無限の死を齎す悪夢の呪いと、死のエネルギーで無限復活し、復活する度に自己強化するヤバい能力だ。

 最近扱える様に為った属性的にも、真似る位は出来る筈だ。


 真似るのだから虹翼を展開、虹翼に闇属性の力を多く流し、カーベルカ―ロッタの黒翼を再現しようと思う。虹翼が暗めの色に成るが真っ黒に為らない。なので、神話のエピソードから推察できる、カーベルカ―ロッタが得意そうな属性を加えて行く。

 先ずカーベルカ―ロッタは、夢幻と死呪の大神に属しているので、魂,呪,死の属性は得意だろう。それと、死のエネルギーを有効活用する様から、浄化,祝の属性が得意なのも間違いない。それに、復活能力から生命属性も間違いなく得意分野のはず。

 それらの属性を加えると、虹翼がまるで闇色に輝いている様に、見事なまでに真っ黒に染まっていた。うんうん、これは良いんじゃないか。

 如何せなら、服装や見た目も近づけて見ようかな?


 カーベルカ―ロッタの服は、黒のボディスーツの様な服の上に重ねて、赤いラインの入った黒いドレス。これはソフィーちゃんに頼んで、神器達を形状変化させればバッチリだろう。

 髪は黒に赤メッシュ、左目は黒。前髪に隠れて不明とされていた右目は、ソフィーちゃん情報で、緋色だった事が分かった。なので、オッドアイになる様に、光と闇の属性力を操って染める。

 そして、頭上の赤く光る光輪は、光の属性力と星輝で作って見た。

 髪型は、神話ではツインテールだった様だが、まあ変えなくても良いかな。

 これで、エルナのカーベルカ―ロッタスタイルの完成だ。

 ちなみに、何でカーベルカ―ロッタの力を、真似様と考えたのかと云うと、サクッとモブエネミーを片付けるなら、即死系かなと思ったからで大した理由はない。


『にゅ、エルナの気配が変わったのじゃ?』


 コスプレしただけなのに、エルナの気配が変わったのか?

 なら、これからやる事も上手く行きそうだな!


 コスプレの為に使った属性力に空間属性、それに折角使えるのだから次元と宇宙の属性力も加え、カーベルカ―ロッタの力の模倣をイメージして、権能【星法】で纏め上げる。


夢幻死呪聖域デスナイトメア サンクチュアリ


¶           に認識されました。

¶コスモプレイヤーエルナが           の介入により権能【死の黒翼】を発現しました。

¶コスモプレイヤーエルナが侵蝕領域『夢幻死呪聖域デスナイトメア サンクチュアリ』を発動しました。

大変危険ですので、半径4㎞圏内からの避難をお勧めします。


 一瞬何も起こらなかったので、『失敗した―!』と思ったのだが、アナウンスが来た直後効果が発揮された。

 空に皆既日食を思わせる黒い太陽が現れ、エルナに向かって黒い光が降り注ぐ。

 黒い光がエルナの虹翼に触れると、無数の黒い羽が舞い散る様に現れ、エルナを中心に黒い光と供に円形に広がって行く。

 黒い光に触れたエネミーは、その場から動かなくなり、急に藻掻き苦しみだす。

 次いで黒い羽に触れると、エネミーが黒い羽に猛烈な勢いで侵蝕され、無限に続く死の恐怖に悲鳴を上げ、黒い羽だけを残し消え去る。

 明らかに、マザー及び花園が生み出す呪いの霧よりも、『夢幻死呪聖域デスナイトメア サンクチュアリ』の力の方が上回っており、霧が見る間に消えて往く。


 黒い光に照らされ黒羽が舞う中、藻掻きのた打ち回り、挙句死の恐怖に悲鳴を上げながら、消えて逝くエネミー達。名前の通り、ちょっとした悪夢も良い所である。

 黒羽が増える度に、パーティーメンバー全員に、ステータス上昇補正が入りHP,MP,SPが回復する。


 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオオ!!!!

 物凄い地響きと揺れが辺りを襲う。発信源の方を見ると、霧が晴れ姿が見える様に為ったマザーが、声なき声を上げ地面から自らの根を引き抜く姿が見えた。

 あ、これマザーにも、バッチリ『夢幻死呪聖域デスナイトメア サンクチュアリ』効いてますね。

 まあ、流石に死んではいない様だけどさ。

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