104 〈呪霊灰山 2合目〉二体のフィールドBOSS

 『カレイドファンタズム』のお陰で、迂闊に戦闘出来ない〈呪霊灰山 2合目〉を安全に探索できる。と言っても、『カレイドファンタズム』内なら、戦闘しても多分大丈夫だと思うけどね。

 ここのフィールドボスを倒せば、完全に山の霧が晴れると思うんだよな。

 フィールドボスの居る所は、やっぱりムカデが沢山巡回している所が怪しいかな?


 星覚スキルの感知範囲を広げ、ムカデが巡回している方へ足を向ける。

 霧の中、ムカデに向かって進んでいるので、当然ムカデの移動進路に入る。接近してきたムカデに、桜が新しく作った捕獲専用アビリティ、『ディメンションキャプチャー』発動する。

 猛スピードで移動接近するムカデの動きがピタっと止まる。

 ムカデの動きが止まったのは、『ディメンションキャプチャー』によって、ムカデが次元拘束されたからだ。

 身動きできないムカデに、桜は『ディメンションアイソレイト』を発動する。

 ムカデの姿が通常空間から消え、隔離次元空間に囚われる。これで神隠し完了だ。

 先に拘束してあるお陰で、こちらに楽に引き寄せられ、直ぐに『カレイドファンタズム』の効果圏内に持って来る事ができた。

 後はエルナが、『次元氷結新星爆裂ディメンションフロストノヴァ』を、隔離されているムカデに撃ち込み、チナとサレスが軽く小突いて討伐完了だ。


次元氷結新星爆裂ディメンションフロストノヴァ!!』


 キィィイン! と放たれた矢が紫色に輝くレーザービームとなり虚空に消える。

 隔離次元空間内では、あっと言う間にムカデが凍り付き虫の息だ。

 チナが、「行って来るのじゃ」と素早く飛び込み、速やかにムカデに止めを刺す。

 うん。ムカデ討伐はルーティンが出来たし、もう楽勝だな!


 次のムカデに向かって移動中、少し桜のEEの消費が気になったので聞いて見ると。


「EEは、HP,MP,SPのどれか一つでも、回復する効果を受ける事で、回復する見たいですね」


 と答えてくれる。如何やらEEは、文字通りHP,MP,SPの要素を一つにした物の様だ。0になれば死ぬし、色んな行動で減少して、休めば回復する。桜にポーションを使用して貰い、実際に確認したので間違いないだろう。


 ついでに、CEの方もポーションを使って見た所。

 エルナに使う事で一応回復はしたのだが、サレスに使っても回復はしなかった。

 回復魔法を使って見た場合は、やはりエルナに掛けると、CEが一応は回復する。

 サレスには、直接回復魔法を掛けてもCEは回復しないと、ポーションと似たような結果だ。サレスが直でCEを回復する方法は、アイテムなどを強制変換して取り込む以外ないようだな。

 ちなみに、エルナに使って一応回復したと言うのは、エルナのHP等の余剰回復分がCEの回復に為っていると、そう感じるからだ。

 あと、何気にポーション初使用で、飲んでも掛けても使用でき、ちょっと甘い水と云った感じだったな。


 ムカデを駆除しながら探索を続けているのだが、チナの反応を見る限りこのフィールドにもお宝は無さそうだ。

 なんでこんな事を思うのかと言うと、星覚スキルで3Dマップは出るけど、ずーっと霧の中で景色は変わり映えしないし、戦闘もルーティンが完成したムカデの駆除だけ、かと言って迂闊に戦闘なんてしたら袋叩きに合う。

 つまり暇なのだ。せめて、お宝位無いのかと思うのが、人の心と言う物だよね。


¶フィールドBOSS 霧の花園主 グランドイスロフォージュマザーのBFに侵入しました。


 おおっと!? すっかり気を抜いていたからビビったわ。

 しかし、BFに入ったのに、ボスらしき反応が星覚スキルに出て来てないぞ?


 ヒュゥゥゥ――――――ゥゥン!! ズドン!!!!

 何かが飛んでくると、俺達の近くの地面が大きな音を立てて土を巻き上げる!


「Σわわっ!? 何が起こったの!?」


 思はず声を上げてしまうが、まあしょうがないよな。


「にゅぅ、おしょらくぼしゅの長距離攻撃なのじゃ!」


 チナのその言葉を裏付ける様に、ヒュンヒュンと風を切る音と爆発音が連続で続き、地面の土を大量に巻き上げる。最初に何かが着弾した場所から、此処に来るまでに見た、イスロフォージュチャイルドの、成長個体と同じ物が姿を現す。

 如何やらこれは、フィールドボスが種を砲弾の様に飛ばして来た見たいだ。


「ボスは、こちらの居場所が大体分かるって感じ見たいだね。飛んで来たエネミーには、ちょっかい掛けないでボスにこのまま近づこう! 走るよ!」


「りょなのじゃ!」

「わかりました!」

「心得た」


 皆にどう動くか確認してから、種が飛んで来る方に向かって、移動を開始する。

 『カレイドファンタズム』使って無かったら、多分種攻撃直撃した上に強制戦闘で足止め、それのエンドレスで地獄耐久に突入するんだろうなぁ。

 そんな事を考えつつ、種が飛んで来ては、土煙を上げるBFを駆ける。


 種攻撃の弾幕が濃く為って来ると、漸く星覚スキルの端にボスらしき物が映し出される。

 うん、めっちゃデカい。これはもう花じゃなくて完全に木だわ。

 しかも、幹の直径は25m以上ある。単純計算で幹回り80mも有る巨大植物は木で良いだろ。

 それにその木の周りには、此処に来るまで駆除して来たムカデ達と、同じ大きさの物が何匹も居る。その内の一匹なんて、1合目で倒したムカデより明らかに大きい。

 まさかまさか、フィールドボスが二体とかないよね?


 ボスへの接近に伴い、サレスに巨骸甲冑ツァディドギガセンチビートを装備させる。更にパーティーメンバー全員に、被弾も考慮して、『オーロラシールド』,『オーロラプロテクション』,『オーロラリフレクションベール』,『虹の女神の抱擁イリスエンブレイス』を掛ける。


 あ、サレスに巨骸甲冑装備させるの早かったかも、ガン!とかゴン!とか種攻撃を弾いてはいるけど、攻撃が当たってるわ。まま、サレスだし大丈夫でしょ。


 霧の中だと言うのに、接近する事で辺りが暗く成り、グランドイスロフォージュマザーが、如何に巨大か良く分かる。

 そして、その根元に這い回る、無数の大きな影も視界に捉えると。


¶フィールドBOSS 霧の守護者 プレアディドテラセンチビートのBFに侵入しました。

二体のフィールドBOSSのBFが重なり非常に危険です。戦闘の巻き添えを受けたくない人は直ちに避難してください。


 アナウンスが流れて直ぐに霧の向こうで、長い何かが立ち上がりその先端が一瞬フラッシュする。


 ズガガガガガガガガガガッ!!!! 猛烈な勢いで、キラリと光る鋭角な礫が、雨霰とエルナ達に横殴りに叩き付けられる!


「くぅ、いったいなぁ! 防御を固めてて良かったよ」


 うわ~、結構ダメージ受けてるよ。

 にしても、もうムカデの射程範囲なのか、こっちも反撃しないと駄目だな。


 フッ! と、既に暗かった周囲が更に暗くなる。

 咄嗟に桜を掴んで、その場から全力移動する!


「ふぁ!?」


 ドッガアアアァァァ――――――ン!!! たった今、エルナ達が居た場所が、爆弾が落ちた様に爆ぜる。

 爆風で霧が晴れ、何が起こったのか分かる。

 直径4mは有ろうかと云う、巨大な植物の蔓が、あの場所を打ちつけたのだ。

 パーティーメンバーのHPバーのゲージが、ムカデの攻撃の被弾前と変わっていない事から、チナとサレスも攻撃を躱した様だ。


 おいおい。これ、普通にフィールドボス二体とも、強力なんじゃね?

 オマケにモブエネミーがこっちに移動してきてるし、これはかなり厄介そうだな。

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