98 コスモアバターの変化とフィールドBOSS 山門の鬼 僧鬼山坊主戦 前

 パーティを組んだ後、まずはご厄介に為っているクードさんに、サレスと桜の事を紹介した。それと、エーランブラム山に登頂する前に、冒険者ギルド進捗状況を報告して置こうと思う。ちなみに、クードさんの奥さんのアキナさんが、お弁当を作っていてくれたんだよね。楽しみだね。


「オピニアさん、パープシャル村の異常事態の元凶の内、三つは排除で来たんですけど。行方不明になった村人達と、そもそもこの事態の原因である例の修行僧は、エーランブラム山に今だ隠れて居そうなので、探しに行ってきます」


『なるほどぉ~。状況は分かりました~。エーランブラム山に探しに行くと言う事は、連絡は暫く無いと考えて良いんですね~?』


「そう言う事ですね」


『でわ~、1ヵ月位は余裕を見て、気長に連絡を待つ事にしますね~』


 とこんな感じで、冒険者ギルドへの連絡を済まし、エーランブラム山に向かって出発するのだった。ちなみに、冬山登山でアレコレ考えたが。エルナの専用装備には、環境適応能力が有るのだから、一々気にする必要なかったと気が付いたんだよね。

 チナは言わずもがな、サレスも桜も平気そうだしね。


 村を出発し、〈霧中白思の山道・奥道〉を、進み戦闘を繰り返していると、コスモアバターの変化に気が付く。

 まず、CEがめっちゃ上がっている事から、俺のリアルアバターのCLVが上がっているのは間違いないのだが。このコスモアバター、エルナが呼び出したからなのか、エルナのスキルとアーツの一部が使えるようだ。

 いや、エルナだけでは無く未だ一度もログインしていない、シエルのスキルとアーツらしき物も使用できる見たいで、リンクスキルとリンクアーツと表示されている。

 うん、何となく騎士を名乗って大丈夫だと思った理由はこれだね。

 しかも、ただ使えるだけでは無く、スキルを使用するとスキルLVが上がって行くのを感じる。現に、エルナのスキルLVが上がってるしな。つまりこれは、シエルでプレイする前に、シエルのスキルを鍛えて置けるって事なんだよなぁ。

 コスモアバター、マジ優秀。

 ちなみに、使えないスキルやアーツは、エルナと多分シエルの星輝や権能関連の物のようだ。エルナは問題なくCEを使えるけど、コスモアバターは星輝を使えない見たいだ。まあ、エルナがコスモアバターを、星輝で強化するのは大丈夫みたいだけどな。


 それにしても、コスモアバターが盾と剣を構えホバーの如くスーッと移動し、関節などお構いなしに手首を回転させ、剣で攻撃を捌いたりするのを見ると。

 あ~これ、ロボットだよなぁ~としみじみ思う。そんな事を考えていた所為か、『コスモアーマー』が若干メカっぽい形に成って来ている気がするし、何よりもコスモアバターには痛覚が無いから、無茶が出来るんだよなぁ。

 そもそも痛覚の無いコスモアバターが、変幻自在のボディで『コスモアーマー』何て装備したら、そりゃロボみたいになるかぁ~。俺は健全な男子大学生だし、ロボは男のロマンだからな!

 ちなみにチナも、コスモアバターのロボ感に何か感じたのか、サレスに懐いたようだ。


 昨日と言うか、現実時間で深夜コスモアバターと桜で確認だけした、エーランブラム山の登山口らしき場所までやって来た。

 エルナのスキルが、コスモアバターが認識した様に。いや、『星覚』含む他のスキルが作用している所為か、寧ろそれ以上にハッキリと、山門とその手前に居座る人型の呪物を認識できた。


¶〈霧中白思の山道・奥道〉フィールドBOSS 山門の鬼 僧鬼山坊主のBFに侵入しました。


『ここから去れ、去るならば追わぬ、去らぬのなら……命を置いて逝け』


 霧の中から、そう話し掛けて来たのは、身長5mの巨体に一つ目二本角の、僧兵姿の金棒を持った鬼だった。

 うおっ! こいつ喋るぞ。帰るなら見逃してくれるらしいが、当然山に用が有るので戦闘開始だ。


『タウント!』


 サレスが『コスモブレード』の剣で、『コスモシールド』の盾をバンバン叩き『タウント』のアーツで挑発する。


『ぬう! 貴様儂を挑発するか! 生意気な!』


 山坊主はサレスの挑発にまんまと引っ掛かり、サレスに向かって突進する。

 そんな隙を、こちらも見逃す筈も無く。サレス以外の三人で、山坊主に同時攻撃を仕掛ける。


「『竜撃砲・水刃閃』なのじゃ!」

「『ディメンションスクラッチ』です!」

『イリスフェザーダンス!!』


『ぬぅ! 小癪な!』


 こちらの同時攻撃に対して山坊主は、金棒で『竜撃砲・水刃閃』をいなし、『ディメンションスクラッチ』を避けたが、『イリスフェザーダンス』の弾幕に、ホーミング効果が有るのを見切れなかったのか、そこで漸くダメージを与えられた。

 おいおい。此奴、もしかしてかなり強いのでは? 初撃を確実に命中させたくて、『イリスフェザーダンス』を使ったからダメージ与えられたけど。

 まず、チナのブレスをいなすとか普通にヤバいし、桜の『ディメンションスクラッチ』は、危険な攻撃だと感じて避けた見たいだ。感が良くて腕も有る、厄介なタイプの敵だ。しかも、しれっとダメージが回復してるし。


『小娘がぁっ!』


 ヘイトを取ったエルナに山坊主の意識が向くが、サレスがホバー移動しながら『タウント』を掛け、『シールドバッシュ』で山坊主をぶん殴る。やっぱロボだなぁ。


『ぬう! 貴様またもや!』


 『タウント』と『シールドバッシュ』で再びサレスにヘイトが向き、山坊主が憤怒の形相でサレスに金棒を振り下ろす!

 グワッシャァンッ!! とサレスが叩き潰される。潰されてビックリしたが、コスモアバターで有るお陰か、全然平気だと言う事が把握できているので、気にせず山坊主に攻撃を仕掛ける。


「『星虹龍』行きなさい!」

「Σのじゃ!? しゃれしゅは平気なのじゃ!?」


 エルナがサレスを気にせずに、山坊主に攻撃した事をチナが驚いて居る。

 おっと。チナはサレスが、精霊的な存在だと知らないんだったな。それに、サレスの名前チナは言い難そうだな。


「うん。サレスは精霊っぽい存在だから、あの程度は大丈夫!」

「にゅ! わかったのじゃ!」


 話してる間に、エルナの放った『星虹龍』が、山坊主に巻き付き動きを封じていた。身動き出来ない山坊主に、桜は巻き付いた『星虹龍』を避ける様に、頭を狙って『ディメンションスクラッチ』を発動する。


『ふんっ!!』


 山坊主は、不快な音を響かせ発動した『ディメンションスクラッチ』を、驚異的な跳躍力で避ける。あの巨体でなんっつー身軽さだよ!


「『竜撃砲・爆流氷河』なのじゃ!」


 宙に浮いたのを隙と捉えたチナがアーツを放つが、山坊主は空気を蹴り『竜撃砲・爆流氷河』をも躱してしまう。

 おいおい! 『星虹龍』が体に巻き付いてるのに、あんなに躱すか! これで回復能力も有るとか、此奴マジでヤバい奴じゃん!


『グラウンドコスモニードル!!』


 いつの間にか復活したサレスが、着地を狙って地面をコスモマテリアルの大きく鋭い棘で埋め尽くす。

 これは流石に、『星虹龍』が巻き付いてるのも有って、山坊主は上手く躱せずグサグサッ!! と棘が刺さる。


『ぐぬぅ! 舐めるな!『怪撃 山鳴らし』!!』


 山坊主の放った金棒の一撃が、強烈な振動波を放ち、地面から生えた青い棘を粉砕する。反響音が響き渡り、継続ダメージが発生して、パーティー全員にダメージが発生する。その所為か『星虹龍』も消えてしまう。これは良くない。


「チナは『氷棺凍結』を、桜は『ディメンションBOX』を使って動きを止めて!」


「わかったのじゃ!」

「分かりましたエルナさん!」


 エルナも『イリスフェザーダンス』を三連射して、続いて『ラビットボムズ』で2ダースほどウサギ達を召喚。

 ウサギ達には、山坊主の隙を突いて、体に取り付いて貰い自爆する事を指示する。「きゅっきゅきゅ~♪」とウサギ達は快諾。


『タウント!』


 サレスが再び挑発し、山坊主の注意を引く。あ~それにしても、サレスにルナティックアトラクト、装備させて置けばよかったよぉー!!

 流石に戦闘中は共有倉庫使えねぇし、サレスにルナティックアトラクト、絶対装備させるわ!


「『氷棺凍結』連続発動なのじゃ!」

「『ディメンションBOX』範囲拡大です!」


 山坊主に、チナの三つ目の氷棺が決まり、桜の範囲拡大発動した『ディメンションBOX』に、仕込んで置いたウサギ達ごと閉じ込める。同時にエルナの極光の虹翼を展開し、両翼に星輝をチャージする。


『ディメンションクラムプルロール!』


 桜が山坊主とウサギ達を纏めて、『ディメンションクラムプルロール』で丸め潰す。それに合わせて、二十四羽ウサギ達が起爆する。

 ズドドドドドドドドッドオォォォオオオン!! とファンシーな光の大爆発が、『ディメンションBOX』内で乱舞する。

 ちなみに桜は、『ディメンションBOX』中に山坊主と一緒に、ウサギ達が入っていた事を知りません。うむ。桜に残酷な事をさせてしまったな。


『グゴガアアアァァアアアア!!!』


 さあ、準備していたアーツで更に追撃だ!


『極光虹翼爆裂閃煌!!』


 星輝がチャージされ、高エネルギーを放出する右の虹翼を、山坊主に叩き込む!

 瞬間、強烈な閃光でホワイトアウト。視界が戻ると、極彩色の超高熱の太陽が出現し、超高エネルギーの光の濁流を撒き散らしながらBFを蹂躙する!


 光が収まると。角度と威力の調整、それと『ディメンションBOX』のお陰か、地面に穴を開けずに済んだ。代わりに平らに結晶化した地面に、真っ黒に焼け焦げた山坊主が倒れている。アナウンスが無く、大きく響く鼓動と共に山坊主の身体から、強烈な呪詛の力が噴き出す様子から、まだ戦闘が終了していない事を確信する。

 如何やら、第二ラウンド開始のようだな。

 開幕一番左の虹翼で、もう一発『極光虹翼爆裂閃煌』をお見舞いしてやる!

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