96 エーランブラム山の登山口を確認したあと帰る事にした

 〈霧中白思の山道〉を、パープシャル村の方へ引き返しながら、俺と桜はエネミーとの戦い方を模索していた。


 俺は『コスモリアライズ』を利用して、『カウンターコスモニードル』,『コスモブレード』,『コスモバレット』,『コスモシールド』,『コスモアーマー』のアビリティを開発した。

 『カウンターコスモニードル』については、フクロウのアンデットに襲われた時に、『コスモリアライズ』で撃退した方法をアビリティ化した物だ。

 他には『PKサイコキネシス』とCEを使って、『コスモハンド』,『コスモブレイズ』,『コスモフリーズ』,『コスモレイ』,『コスモバリア』と、複合アビリティを作り、作ったアビリティはコスモだらけに成っている。


 桜の方は『アセンション』を攻撃の回避に使い、『ディセンション』で相手の攻撃を弱体化したり。『ディメンションテレポート』と、『ディメンションゲート』を応用して、次元を引き裂く攻撃アビリティ、『ディメンションスプリット』を作ったり。『ディメンションスペース』の応用で、次元をクシャクシャに丸め込む『ディメンションクラムプルロール』に、対象を隔離する事ができる『ディメンションBOX』を作った。

 ちなみに、『ディメンションスプリット』は、【次元移動】のアビリティの応用で作ったが。まあ予想はしていたが、『ディメンションスプリット』は【次元移動】のアビリティでは無く、【次元干渉】のアビリティとして登録された見たいだ。


 大体戦闘のコツが掴めて来た所で、パープシャル村の入口まで戻って来た。

 まだまだ暗い夜の中、時間的にもまだ行けるので、今度はエーランブラム山の登山口まで行って見ようか。


 桜に『ディメンションバリア』を張って貰い、霧が立ち込めるエーランブラム山登山口に向かう道の先へ、足を踏み入れる。


¶迷宮化領域〈霧中白思の山道〉から〈霧中白思の山道・奥道〉に侵入しました。


 おっと、まさかの別領域か!

 む。霧については、桜の『ディメンションバリア』がしっかり効いている見たいで、半径2m以内に入ってきた霧がスゥーッと消える。

 夜目はある程度効いたが、霧の先は見通せない。しかし此処で、『ESP』,『直感』,『直観』,『シックスセンス』の、四つのアナザースキルが複合的に作用し、霧の中がかなり正確に認識できる様になる。アレ? これ普段の時も使えるな。

 桜は、【次元移動】,【次元干渉】の権能に慣れて来たのか、霧の影響を受ける事無く周囲を把握できる見たいだ。

 奇襲を受けた時は、権能を索敵に使っていなかったんだよな。


 まあ、そんな訳で、夜の闇と霧に覆われた山道を進んで行く。

 そうそう、エネミー探しながら移動している時に気が付いたんだけど。

 コスモアバターも、桜のEEアバターと同じ様に、宙に浮いて移動で来たんだよな。しかも、その方がデフォだったらしくて、めっちゃ楽に移動できるんだよね。


 霧の中俺も桜も、山犬か狼らしき生き物の群れが、此方に悟られない様に、跡を付けて来ている事に気が付いた。

 こちらが追跡に気が付いた事を、相手は気が付いていない。つまり、此方が奇襲を仕掛けるチャンスと言う訳だ。

 桜に敵の群れが通る場所に、目立たない様に変化させた『ディメンションゲート』を設置して貰い、俺達の前に現れる様に開いてもらう。


 ゲートを潜った群れは、突然俺達が目の前に現れた事に戸惑う。ここで此奴等が、呪いで変異した山犬の群れだと分かる。

 山犬が戸惑っている所に、『カウンターコスモニードル』を、カウンターじゃない普通の攻撃として使用する。


『グラウンドコスモニードル!』


 グッ ズドドドドドドスッ!! 地面からコスモマテリアルの大きく鋭い棘が、大量に一気に生え山犬の群れを串刺しにする。

 いやぁ~、これやって見たかったんだよね。ゲームやアニメで良く見る、地面から棘とか針見たいに鋭い石が生えて、敵を攻撃するお約束の技ね。

 さて、もちろんこの攻撃だけで、山犬の群れが全滅する訳は無く、『グラウンドコスモニードル』で仕留められなかった個体や、範囲外だった物もいる。


「『コスモバレット』連射!」

『ディメンションスプリット!』


 俺は『コスモバレット』連射してばら撒き逃げようとする山犬を仕留める。

 桜の『ディメンションスプリット』はギリィイッブチザシュッ!!! と言う音を立て、俺の攻撃で生き残った山犬を空間事引き裂いて行く。

 うん、スプラッタだわ~。それに、やっぱり桜の攻撃は威力過剰だな。


「サレスさんやりました!」


 桜は自分が俺の役に立っている事の方が重要な様で、スプラッタ姿に為った山犬の事は気にも留めていない様だ。しかも此奴等、ドロップに変わらないのかよ。


「うん。桜は良くやったよ」


 ドロップに変わらない犬の死骸なんて、共有倉庫に入れるのはちょっと嫌なので、『コスモブレイズ』で焼却して先に進む事にした。


 その後も何度か、呪物と思わしきエネミーと戦い、登山口と思われる場所に辿り着いた。

 何故分かったのかと言うと。明らか強い力を持った人型のエネミーが、山門の様な建造物の前に居座っているのが、アナザースキルの力で把握出来たからだ。

 多分、ここがボスエリアなんだろう。

 流石にボス戦は、何が有るか分からないから、村に戻った方が賢明だな。それに、コスモアバターの、宇宙の闇が人の形をしているとしか形容できない怪しい姿を、朝になってパープシャル村の人達が見たら騒ぎになりそうだしね。


「登山口にボスエネミーが居るっぽい事も確認したし、今回はもう村に帰ってログアウトしようか」


「そうですね。あまり夜更かしして、サレスさんの体調が悪くなったら行けませんから!」


 さて、村に戻っている最中なのだが、【コスモジェネレーター】が発動してからずっと感じている事がある。

 それは、戦闘中も含め常時そう感じているのだが、それはCEについてだ。

 CEゲージの見た目は減ってはいないのだが。感覚としては、常時かなりのCEの消耗を感じているのだ。

 俺はエルナの影響で発現した、【コスモジェネレーター】と言う強力な権能が有るから、問題なくコスモアバターでログインして、IFO内で活動出来たけど。

 このCEの消耗具合からして、これって普通に他のユーザーには厳しくないか?

 もしかしたら、今の俺の自キャラの状況だと、コスモアバターだけでIFOにログインするのは、想定外の利用法だったのかも知れないなぁ。


¶迷宮化領域〈霧中白思の山道・奥道〉から〈霧中白思の山道〉に侵入しました。


 霧が無くなった〈霧中白思の山道〉に戻って来ると、東の空の水平線から太陽が少し顔を見せていた。

 もしかしたら、もう村人達は起きて活動しているかもしれない。このままの姿では、怪しどころかエネミー扱いされても可笑しくないので、念のため『コスモアーマー』のアビリティで騎士甲冑を作り出す。

 コスモアバターを、普通の人の姿に変える事は出来るが。今の俺では、直ぐに元の姿に戻ってしまう。なので、『コスモアーマー』の騎士甲冑で、コスモアバターの全身覆い隠せば、万一村人に見られても、エーランブラム山へ修行のため訪れた、騎士とか冒険者で誤魔化せる筈だ。


「どうだ、桜? ちゃんと騎士っぽく見えるか?」


「サレスさん、ちゃんとカッコイイ騎士様に見えますよ!」


 カッコイイかは兎も角、桜の反応も悪くないし、ちゃんと騎士に見えている様だ。

 と言う訳で、青鎧の騎士姿に成った俺は、桜と村の結界を通り抜けるのだった。


 村に入ると。村の家々から聞こえる生活音で、村人達が起床しているのが分かる。

 幸い村人達は、まだ外に出ていない様なので、このままログアウトする事にした。


「一眠りしてから、エルナでログインだな。今回の影響がどう出るのか楽しみだな」


「サレスさん、私もちゃんと冒険したいです」


「そうだなぁ~。俺の眷属だからなのか分からないが、エルナの大神の呪いも平気みたいだもんな。桜は戦力として申し分ないし、パーティーに入れられると良いんだけどなぁ。そう言えば、『次元跳躍ディメンションジャンプ』を使えば、もう自力でログインは出来るんだよな?」


「『次元跳躍ディメンションジャンプ』は確かに、ログイン出来そうですけど。ん~、如何でなんでしょう? 試して見ないと分かりませんね」


 小さな桜がコテンと首を傾げる姿が、とっても可愛いなぁと思いつつも。


「まあ、そうだな。やって見ないと分からないか。取り合えず、ログアウトするか」


「はい!」


 俺は桜の元気な返事を聞きながらログアウトするのだった。

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