90 灰水大鬼 渦目鬼戦

 ウサギ達が灰水鬼から要石を守る為に、懸命に戦っているのを感じつつ、村の結界の境までたった今戻って来た。

 神具に戻して居たチナを再び呼び出し、一緒に村の結界の中へ入る。


¶セーフティエリアが変異呪物カースドエネミー灰水大鬼 渦目鬼のBFへと変化しています。

大変危険ですので、ご注意ください。


 おっと、いきなりアナウンスか。如何やらクエストエネミーの灰水鬼が、ボスエネミーに変異してしまった見たいだ。

 村の中心の方に見える、やたらとデカい濁った水の身体をした首の無い巨人が、灰水大鬼 渦目鬼なのだろう。渦目鬼の身体は、今にも雨で氾濫しそうな激流の川を思わせ、激しい流れは渦目鬼の身体の至る所に渦を巻く。その流れや渦の合間に、金と赤の虹彩を持つ大きな目が無数に垣間見え、ぎょろりと周囲を見渡している。

 そんな渦目鬼の周りは、結界により発生している『星浄』の光が群がり、そこにファンシーな星型の光の爆発や、虹の羽の軌跡が花を添える。その様はまさに、ファンタジーショーと云った様相を為している。


「ふにゅ! 随分と派手なのじゃ!」


「そうだね。何かショーを見ている気分にさせられるよねぇ」


 あのファンシーな爆発や、何処かで見た事のある虹色の羽は、ウサギ達がアーツを駆使して戦っている証拠だろう。

 ウサギ達が頑張っているのだから、急いで要石の所に向かってあげないとな。

 村の中を移動中、村の人達が倒れていたが、結界の効果で『星浄』の光と癒しの力が村人に集まり、鬼が現れる時生じた穢れの浄化と、奪われた生命力回復していたので、村人達は後回しにして大丈夫だと判断した。


 村の中心にやって来ると。思った通り、エルナのカラーリングを思わせるもふもふ達が、渦目鬼と交戦状態であった。

 ウサギ達がエルナ達に気が付くと。


「きゅーっ!」

「Σきゅっ!?」

「きゅきゅう~♪」

「きゅっきゅーっ!!」

「きゅぅきゅぅ♪」


「きゅっきゅ~っ!!」


 接近戦を挑んでいるウサギ達も、虹色の羽で屋根の上から狙撃しているウサギも、鳴き声でエルナ達にアピールして、とても嬉しそうだ。

 だが、そこからウサギ達の行動が変化する。

 エルナ達が来るまでは、堅実な戦いをしていたウサギ達が、屋根にいるウサギを除いて一斉に渦目鬼に向かって駆け出す!

 屋根の上にいるウサギが敬礼し、渦目鬼に向かって行くウサギ達を見送る。


「Σええっ!? 何であの子達、いきなり突撃してるのっ!?」


 渦目鬼の懐に入り込んだウサギ達は、恐れる事無く荒れ狂う水流渦巻く、渦目鬼の身体にダイブする。


「きゅっきゅー!」

「きゅきゅ~♪」

「きゅぅきゅきゅー♡」

「きゅっ!!」

「きゅきゅきゅ~♪」


 一羽だけ、覚悟完了見たいな鳴き声の奴がいたが、それ以外は皆嬉しそうな鳴き声を上げ、渦目鬼の身体の中に飲み込まれていった。

 数舜遅れて、『きゅきゅーっ!!』,『きゅっきゅ~♡』と云うテレパスが届き、最高ーっ!! とか幸せ~♡ と云う様なニュアンスが伝わり、渦目鬼の濁った水の身体の中から、虹色の光がキラキラと漏れ大爆発する。

 ズゴゴオオォォオオオオ――――ッ!!! ザッサァ――ッ!!

 いや、お前ら自爆大好きかよっ! どう考えても自ら進んで自爆してるじゃん!!

 しかもお前ら、自爆で絶頂してるだろっ!! Mなの? ドMの変態なの!?


 ちょっと取り乱したが、渦目鬼の身体が弾け飛び、雨の様に降り注いで来た。渦目鬼の身体の雨に、何となく当たりたく無いので、『アステルシールド』で雨を避ける。チナも嫌だったらしく、「汚い雨なのじゃ……」と嫌そうな顔しながら、透明な球体バリアを張って雨を避けていた。

 ちなみに、チナが張った水球バリアは、まんま『アクアバリア』と言う魔法だそう。

 そうそう、何故かエルナのアーツである『ラビットボム』のアーツが、微変化して『ラビットボムズ』に成ってたんだよなぁ~。何でだろ?


 飛び散った渦目鬼の身体は、ぶるりと震えもぞもぞと動き出す。

 如何やら渦目鬼は、あの爆発でも倒せていなかった様だな。

 まあ、身体が飛び散っている今なら、防御力も下がっているだろうし、『星浄煌炎』で可能な限り焼き払おうか。魔力変換・属性で風属性と【風水賢技フロエリーズアルス】の風と水を操る力で、威力を上昇させ範囲を拡大。更に渦目鬼の体の動きを、水の力で干渉して封じ、【星法】の力で更にイメージを加え強化する。


『星浄煌炎・封絶旋風!!』


¶コスモプレイヤーエルナが広範囲フィールド攻撃『星浄煌炎・封絶旋風』を使用しました。


 アナウンスが流れると、村に虹色に輝く炎の嵐が吹き荒れ渦を巻く。

 『星燐』系のアーツなので、燃やすモノとそうでないモノを区別でき、渦目鬼と村人に残る穢れや呪いだけを封縛し燃やす。

 虹色の炎の嵐は、巨大な竜巻へと姿を変え、バラバラに飛び散ったままの渦目鬼を、より激しく燃やし続ける。


『ギイィィイヤアアァァァアアアアッ!!!!』


 悍ましい声を上げ苦しむ渦目鬼に、大きなダメージを与えはしたが、如何やらまだまだ健在のようだ。『星浄煌炎・封絶旋風』の効果が終わると、直ぐに集合して元の首なし鬼の姿となる。

 そう言えば、フィールド攻撃さらっと使えてしまったな。

 まあ、元々できそうな感じだったから、驚かなかったけど。


 渦目鬼は、時折垣間見せていた自身の無数の目を全て見せ、その金と赤の虹彩輝く無数の目に力を凝縮し、その瞳を赤く染め上げる。


¶変異呪物カースドエネミー灰水大鬼 渦目鬼が無差別広範囲攻撃『呪眼赤界・赤視炎灰』を発動しました。


「にゅぅ!? いかんのじゃ!! 『氷棺凍結』五重発動なのじゃ!!」


 無差別攻撃であると云う事に直ぐに反応したチナが、氷の棺に敵を閉じ込めそのまま凍らせるアーツ、『氷棺凍結』を五重発動する。

 アーツによって、五つ重ねの氷の棺が作り出され、渦目鬼を閉じ込める。

 氷棺が赤く光り、ジュバアァァァッ!! と内側から猛烈な勢いで溶けて行く。


「『氷棺凍結』を三回追加なのじゃ!!」


 更にチナが氷棺を重ねるが。渦目鬼の攻撃が終わる気配が無いので、氷棺に閉じ込められている渦目鬼に、『煌炎浄化重爆撃』を叩き込む!


「くらえっ、浄化爆殺っ!」『煌炎浄化重爆撃っ!!』


 ゴッ!! ドゴオオオォォォ――――オオオッ!!!

 超加重の質量を持った浄化の煌炎が、渦目鬼を氷棺事叩き潰し炸裂する!

 浄化の力を持った虹色の爆炎が、渦目鬼を容赦なく焼き尽くす!


 炎が収まると。金と赤の虹彩が特徴の無数の目が集まり、一塊と為った渦目鬼の呪核らしき物が残って居た。

 その眼塊は、まだ活動を終えてはおらず、猛烈な呪いの念を放出する!


¶変異呪物カースドエネミー灰水大鬼 渦目鬼がフィールド全体攻撃 ラストカース『災禍・大眼流渦大氾濫』を発動しました。


 うわぁ、こいつ最後の悪あがきに、広範囲攻撃使って来やがったよ!

 呪核である眼塊が、濁った水を生み出しながら、空中へ回転上昇する。

 しかし、呪核が宙に浮いてくれたのなら、対処は容易い。

 なんせ此奴が、空中に浮かび上がってくれたお陰で、村に被害を出す事無く『螺旋流星焔滅煌で攻撃できるからな!

 やり方は簡単だ。カアロットの呪核を消し去った様に、『螺旋流星焔滅煌』に『星浄煌炎』を加えて、呪核を貫けばお仕舞いだ。


 エレアロードヴェインを構え形状変化、『螺旋流星焔滅煌』のアーツを起動し、極僅かな恒星の火炎を、更に絞ってから『星浄煌炎』の虹色の炎を加える。

 元が浮遊島に風穴を開けて落とすアーツだし、元のままの攻撃範囲だとやっぱり村に被害が出るから、しっかりと範囲を絞ったぞ。

 それとこれも二回目なので、オリジナルアーツとして名前を付けておこう。


 渦目鬼の呪核は、『災禍・大眼流渦大氾濫』を強制終了可能な、高威力アーツの発動の高まりを感知。渦目鬼の呪核は、本来ならこの村を破壊し尽くし、水底に沈める事が容易に出来る水の暴威を、エルナただ一人に向ける。水の暴威は水竜巻と成り、棒が振り下ろされる様に、エルナに向かって落ちて来る。

 俺は落ち着いて、虹色に輝く恒星の火炎を噴き出すエレアロードヴェインを構え、渦目鬼の呪核に向かって超高速で飛翔する!


『螺旋流星焔浄滅煌!!』


 『災禍・大眼流渦大氾濫』の力を凝集した、水の暴威を消し飛ばしながら、呪核に向かって空を駆け抜け天に昇る!


『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アアアァァァァアアアアッ!!!!』


 空に虹色の炎の軌跡を描き、呪核は怨嗟の声を上げながら消滅した。


¶変異呪物カースドエネミー灰水大鬼 渦目鬼が討伐されました。

緊急クエストの達成に成功しました。

緊急クエスト達成報酬は、灰水大鬼 渦目鬼の討伐報酬と共にギフトボックスの送られます。後でご確認ください。

緊急クエスト達成により、パープシャル村のBFが解除され、再びセーフティエリアと成ります。


 うっし! クエスト達成! 後は村人達の回復と壊れた建物の修復かな?

 建物の修復は、ティアーズクロワの専用アーツ『リバース』で何とかなるでしょ。

 いやあ、それにしても、『螺旋流星焔浄滅煌』は、浄の一文字を付け足しただけ何だが、浄化力プラスで威力も『螺旋流星焔滅煌』より上がってる見たいだし、ちゃんとオリジナルアーツとして登録されてたね。


 それじゃあ、事後処理をした後、ギフトボックス確認をしようかな。

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