89 ウサギ達の要石防衛戦

 村人たちの口から出て来た鬼達は、村人達を無視して要石に向かって移動を開始する。しかし、結界の効果により、内部に発生する『星浄』の光が、鬼達に纏わり付いて行動を阻害していた。

 鬼達が『星浄』の光に手間取っているその隙に、『ラビットボム』のウサギ達は要石を守る為に、行動を開始する。


※ここから、ウサギ達が会話しますが、鳴き声は割愛します。


「36号と107号は、先行して要石の周りに防御陣を引け、40号は結界内に現れた鬼の数を把握する為に情報収集だ。78号は、要石周辺を確認できる高所へ移動しだい狙撃を開始しろ。それと4号は俺と一緒に、要石へ向かう鬼共の足止めだ。分かったか?」


「ええ、ええ、了解ですともリーダー。早速、鬼共の数を調べてきますよ」

「私と107号が、陣地を構築するのか。了解した。直ぐに要石の周りを、落とし穴と地雷だらけにしようじゃないか」

「ふふっ、私が狙撃ですか。まあ妥当な所ね!」


「行動開始だ!」

「「「「「了解!」」」」」


 40号の姿と気配が、周囲の風景に溶け込む様に消え、36号と107号は、要石を守るため村の中心に音も無く駆け出して行く。78号は素早く跳躍し、村の家々の屋根を飛び渡り、狙撃ポジションへ移動する。

 そして、リーダーである1号は4号と共に、要石の近くに移動して来た鬼へ、奇襲を掛ける!


「さあて、この鬼共がどれ程の物か試してやろう」『星兎爆砕脚っ!!』


 『星浄』の光に纏わり付かれ、動きが鈍くなっている灰水鬼の背後から、首を狩る様に生贄1号のアーツが炸裂する!

 生贄1号の足が鬼の首へめり込むと、キラキラとファンシーな星を散らしながら、ドンッ!! と音を立て爆発する。


 光が消えると、首から上が無くなった鬼の姿が見え来た。

 鬼は倒れる事は無く。周囲が見えなくった事を不思議に思い、頭を掻こうとして掻く事が出来ず。そこで漸く、頭が無くなった事に気が付いた様だった。

 鬼が身体に力を込めると、首が盛り上がり頭が生える様に再生する。


「リーダー。如何やら此奴ら、人の形をしているだけで、姫達がこの村に来るまでに戦った呪物共と、同じ見たいですよ。倒すには呪核の破壊か、根こそぎ浄化するしかないですね。それに、姫の結界の力は、此奴らにとって毒見たいですね」


 4号は、1号と鬼の一連のやり取りで、あの鬼は呪物で有り倒すには、鬼を鬼たらしめている呪核の破壊か、根こそぎ浄化するしかないと見抜いたのだ。そして、エルナの結界のお陰で、思ったよりも楽に鬼共から、要石を守れそうだと言う事も。


「ふむ、呪核か。4号位置は分かるか?」


「呪核の位置ですか、鬼の身体の中で動き回ってますね。狙って当てられるのは、今の面子では78号位じゃないですか?」


 灰水鬼が、自分の頭を消し飛ばした敵を探しているが、ウサギ達に気が付く事が出来ずに、周りをウロウロしながら見まわしている。


「そうか。ならなるべく、範囲の広い攻撃で浄化しつつ、運よく呪核を破壊する事でも期待するか」


「まあ、それが良いでしょうね。我々に気が付く事も出来ないようですし」


 灰水鬼達は、攻撃を受けたにも関わらず、ウサギ達に気が付く事が出来ない時点で、彼等に一方的に殲滅される事が確定した瞬間だった。




 一方、要石防衛のため先行した36号と107号は、要石のある村の中心に到着していた。

 其処には、大量の『星浄』の光に苦しみながらも、十四体の灰水鬼が要石に攻撃を加えていた。


「鬼共め! もう要石に攻撃をしているじゃないか! 姫がお作りに成られた結界の要石を、あの鬼共如きに壊せるとは思えないが、実に不愉快だな!!」


「36号さんの言う通り、アイツ等直ぐに掃除しちゃいましょう」


 エルナによって体を作られた『ラビットボム』のウサギ達は、エルナの一部アーツやスキル等を選択し使用する事が可能だ。

 そして、36号と107号は、たった今『浄星燐』を選択し即発動。

 要石に殴り掛かっている灰水鬼達に、『浄星燐』の揺らめくキラキラの光がばら撒かれ、浄化の力を持った白く輝く星輝の炎が、灰水鬼達を瞬く間に火達磨にする。


「グガアアアアアアッ!!」


 幾ら灰水鬼が鈍くとも、浄化の炎で火達磨にされれば、悶え苦しみのた打ち回るしかない。

 その時、村の中心付近の家の屋根がキラッと光り、のた打ち回る鬼達に止めを刺す様に虹色の羽が突き刺さり、鬼が次々と消滅して逝く。


「78号の奴、流石の腕だな」

「ひゅ~っ♪ 体内で動き回る呪核を、狙撃で一撃とか78号さんヤバいですね!」


 要石周辺の鬼共が一掃されたので、36号と107号は防衛陣を構え、トラップを仕掛けて往く。


『ええ、皆さん。ちょっと、宜しいかな? 40号です。鬼共の数が分かったから報告しますよ。東に50体,西に37体,南に20体,北に69体,中央は1号や4号の倒した物と、78号の姐さんが止めを刺した14体含めて56体。全部で232体発生した見たいですよ』




「へぇ~、まだ200体以上鬼は居るのね。ふふっ、つまり的はまだまだいるって訳ね!」


 78号は、エルナから『イリスフェザーレイ』のアーツを借り、狙撃に使用していた。ホーミング性能を持つ『イリスフェザーレイ』なら、体内を動き回る呪核で有ろうとも、78号ならば撃ち抜く事は容易いのだ。ましてや、苦しみのた打ち回る鬼等物の数ではない。


 順調に鬼の数を減らしていたが、高所から狙撃して見ていた78号は、灰水鬼達が一ヶ所に集まって来ている事に気が付いた。


『こちら78号、鬼共が村の北側に集まって来ているわ。何かする気かも知れない』


 78号の懸念は当たっていた。

 灰水鬼達は、現状如何やってもウサギ達を見つけられず、一方的に攻撃され数を減らされるだけ。それに、最初に要石を攻撃していた仲間の灰水鬼から、要石の防御力と耐久力は非常高く壊せない。

 それから、灰水鬼達の取った行動は単純だ。1体1体バラバラで、及ばないのなら、此処に居る灰水鬼が一つに纏り、より強い鬼へと昇華すれば良いと云う訳だ。


 200体近くの灰水鬼が、一ヶ所に集まり液体へ姿を変える。新たな存在へ昇華する為、液体に成った身体と呪物としての存在の核、呪核すらも一つに融合させ、新たな鬼が生まれる。


¶変異呪物カースドエネミー灰水大鬼 渦目鬼が出現しました。


 変異呪物カースドエネミー灰水大鬼 渦目鬼の姿は、人型をしているが、その身体は頭部に当たる物が無く、その上途轍もなく巨大で濁った水その物だった。渦目鬼の表面は、まるで大雨で至る所で氾濫し、流れ渦巻き荒れ狂う川の様で、その身体の水の流れには、金に赤の虹彩を持った大きな目が幾つも垣間見えた。


『敵さんが、一体に纏ってくれる何て、面倒が無くて丁度良い。此方も要石の前で合流して、敵を待ち構えるとしようか』


 敵が一体に成った事を受けて、78号以外のウサギ達は合流して、要石の前で待ち構える事にした。

 渦目鬼は、遠くからでも見える程大きく為り、パワー重視の鈍足に成った事で、移動速度がかなり落ちていた。ハッキリ言って、エルナ達が来るまで持ち堪えれば良いだけのウサギ達には、めちゃくちゃプラスに働いていた。


「姫が来るまでの後少し、あの変異呪物の鬼を抑えれば我らの勝ちだ。分かっているな?」


「もちろん分かっていますよ、リーダー」

「当然、自爆もやむなしでしょ?」

「私達の最大の力は、自爆ですから当然だろう?」

「自爆しても、幾らでも復活できますもんね。俺達!」


『今回、私は狙撃だから自爆は無しって事ね』


「78号には悪いが、そうなるな」


 此処がウサギ達の今回の任務の最重要ポイントだ。最終戦前、ウサギ達は変異呪物と戦うと云うのに、何の気負いもなくやる気満々だ。

 そして、どのウサギ達も、自爆する事が素晴らしい事だと思っている。この戦闘で自爆をするのは確定で、「今から自爆するのが楽しみだ」とでも言わんばかりだ。


「いくぞ、『ラビットボムズ』。今回の任務の仕上げだ!」

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