87 〈腐灰水源〉のフィールドBOSS 呪灰水粘腐源体 カアロット戦

 金銀財宝のプールの中身を回収した後、元の場所に戻って〈腐灰水源〉の湧出ポイントへ再び移動する。湧出ポイントが近づくと、呪物カースドエネミーの反応が前方の濁った水全てから出る。あっ、如何考えても、アレがフィールドボスだろ。ちなみに、幾ら白い霧で妨害されているとは言え、流石にこのクエストのエネミーである、呪物カースドエネミーの反応はもう覚えた。


「ふにゅ、地下に呪いの核が有るようなのじゃ」


「核が有るって事は、それを潰さない限り、ボスが倒せないってパターンになりそうだね」


「うみゅ。たぶん、しょうなると思うのじゃ!」


 取り合えず、ボスエリアと思われる手前で、バフをもりもり掛けて準備をする。

 今回は、敵の核が地下と言っても、水を通して繋がっている場所に有るので、エレアロードヴェインを持ち、『纏雷光』を使用して置く。

 ヴァジュラの専用アーツ『インドラ』は、発動時間20分クールタイム1時間と、ボス戦前に使って置くには微妙なので、使用して置かない。

 チナも『アイスバリア』,『雷気転変』,『竜気万丈』を使用した。

 ちなみに、『アイスバリア』は透明な氷の障壁を作り出して守る魔法で、『雷気転変』は自身の攻撃に雷属性を乗せるアーツだ。『竜気万丈』は、チナが前にも使った自己強化アーツで、竜の形をしたオーラを放出するエフェクトが出る。

 BFに入らずに、攻撃しようかと考えもしたが、ペナルティを受けそうな気がしたので、普通にエネミー反応の有る、濁った水の上に足を踏み出す。


¶フィールドBOSS 呪灰水粘腐源体 カアロットのBFに侵入しました。


 エネミー反応の有る水面が、ブルッ! と震えると、水面の至る所が盛り上がり、濁った水は様々な生き物達の姿を模る。熊や狼等の見た事無い物も居るが、概ねこのクエストで見た、動物系エネミーの姿を模っている、人も動物の括りなのか、人の形を模った物もいた。

 まあ、どんな形を取ったにせよ、こちらがやる事は変わらない。

 チナにアイコンタクトをして攻撃開始だ。


「『凍気氷霜』『氷結凍陣』『永久凍土』『グランドアイスバーン』『フリージングテイル』のアーツ五重発動なのじゃ!!」


 バァ――ン!! と、チナの尻尾が水面に叩き付けられると、青い稲妻と共に猛烈な冷気が襲い、辺り一帯を瞬間凍結させる。

 凍り付いた物は皆青く瞬く様に光っており、『雷気転変』の効果で雷属性の追加ダメージが、継続して入っているのが分かる。

 『雷鳴閃』,『電光水流』を発動。そして、ヌイエ・ベルジープの柄に手を掛け『神鳴轟雷』を連続発動。その雷撃ををエレアロードヴェインの支配下に置く。


『万貫轟雷閃!!』


 ゴッ!ゴッ! ドドオォ――――――ン!! エレアロードヴェインを振り下ろし放たれた雷撃は、凍り付き青く光る氷像と成った物達を貫き、フィールドボスであるカアロットの呪核にも痛撃を与える。


 ギリィギチギリィッ!! と凍り付いた水面が嫌な音を立て、まるで凍った水面が音を立て、ボスが苦しんでいるのを伝えているかの様だ。

 この様子を見るに、上手く氷を破壊せずに雷撃だけを貫通させ、しっかりとカアロットにもダメージが入っているな。

 後は変化が起きるまで、チナにカアロットの濁った水の身体を、どんどん凍らせて貰い。『万貫轟雷閃』を放つだけの簡単なお仕事だ。


 チナの冷気に、吐いた白い息が凍り付き、ダイヤモンドダストに成る位気温が下がると、ゴゴ!ゴゴ!ゴゴ!ゴゴッ!! と地鳴りの様な音が響き、カアロットのエネミー反応が、バトルフィールドを飛び出て外へ広がって往く。


 アレ? 凍らせてハメ殺すのも、もしかしてペナルティ発生するのか!?


 危険を感じたチナが『水流激壁』,『氷冷円舞』,『氷結凍陣』,『水天凪払い』,『グレイシャーファング』に、『竜撃砲・爆流氷河』を合わせたオリジナルアーツを発動する!


「いくのじゃ! わちのオリジナルアーツ、『氷天静河・氷獄竜牙』なのじゃ!!」


¶フィールドBOSS 呪灰水粘腐源体 カアロットがフィールド全域攻撃『フラッドロットイロージョン』を発動しました。

¶水竜神ブエナの分霊チナがフィールド攻撃『氷天静河・氷獄竜牙』を発動しました。


 おおっと! アナウンスが連続したぞ!

 この迷宮化領域に広がる全ての濁った水が、エルナ達を目掛け殺到して来る。

 黒い大津波にしか見えない、『フラッドロットイロージョン』。

 それに、チナが放つ、空間を凍てつかせる冷気を持つ氷の膜が、球状に一気に広がり黒い大津波に接触する。氷の膜は何事も無かった様に、エルナも黒い大津波も通り抜けた後。氷の膜の内側には、氷牙が荒れ狂い黒い水に殺到し圧迫する。

 黒い大津波はあっと言う間に凍てつき、殺到する氷牙に粉砕され、ギリィギチィ! と圧迫される。黒い大津波が立てていた、地響きの様な音は治まり、辺りは青白い氷が犇めき、ギチギチと音を立てるのみだ。

 見事に、カアロットの『フラッドロットイロージョン』に、チナの『氷天静河・氷獄竜牙』が、打ち勝ったと言う訳だ

 如何やら、『氷天静河・氷獄竜牙』の効果は、味方に悪影響を与えない様で、氷がミチミチに詰まった巨大な氷球に、完全に閉ざされて居るのに自由に動けるようだ。

 カアロットの『フラッドロットイロージョン』を何とかしたが、氷球は呪核の有る所までは届いていない為、戦闘は続行だ。


 チナの『氷天静河・氷獄竜牙』でエネミー反応が、ゴッソリと消えたのだが。

 如何やらカアロットが、自身の呪核から濁った水を大量に生成しているのか、地下のエネミー反応が急激に増大して往く。

 この氷球が蓋の代わりをして、カアロットの呪核が捉え易い間に、一気に仕留める事にする。


 エレアロードヴェインの形状を、回転機構を持った十文字槍に変形させ、極僅かな恒星の火炎を槍の穂先から放出する。穂先を回転させ超高熱の光円を描く。

 今回は『虹の女神の抱擁イリスエンブレイス』等を、掛ける必要性を感じないのでそのまま行く。


『螺旋流星焔滅煌!!』


 カアロットの呪核目掛け、『氷天静河・氷獄竜牙』の影響範囲外で増大する、黒く濁った水に向かって、恒星の火炎槍を構え超高速でダイブする!!

 直ぐに、黒く濁った水に到達し、抵抗させる暇も与えず消し飛ばして往く。

 呪詛が織り込まれた、呪いの塊の位置を明確に感知出来たので、そこに突っ込む。


 生き物を、死へと駆り立てる呪いを、呪詛で縛り怨嗟を溜め込む呪いの核。

 更なる死と苦しみを求めて藻掻く。

 それを跡形もなく消し去る為に、『螺旋流星焔滅煌』の火炎に、『星浄煌炎』の虹色の星炎を加え。


「消えろ――っ!!」


 エルナが持つ、虹色に輝く恒星の火炎槍で、呪核を貫く。


『ギィエェェェ――――!!!!』


 と呪詛と怨嗟に満ちた悍ましい声を上げ、ジュワッ! と跡形もなく消え去る。


¶フィールドBOSS 呪灰水粘腐源体 カアロットを討伐しました。

討伐報酬はギフトボックスに送られます。後程、ご確認ください。


 討伐アナウンスが流れる。なんかちょっと、メッセージが違う様な?

 まあ、兎に角まずは地上に戻ろう。


 地上に戻ると、チナが氷球を解除した様で氷球は既に無く、代わりに辺り一面濁った水の浸水の影響で、地面はヘドロ状に成り泥濘んでいた。


 迷宮化の所為で広範囲ではあるが、地面はチナの『水気掌握』と、ハーベストグリーブの『土壌改良』,『土壌浄化』に、エルナの『星浄星域結界』に、『星浄煌炎』を乗せて使用する事で、概ね正常化できたと思う。

 カアロットを倒すためにエルナが開けた穴は、チナに頼み『土壌生成』と『アースクラックプレス』を駆使して、疑似的な岩盤を作り上げ穴を塞いだので、多分大丈夫な筈だ。

 何でこんな事してるのかと言うと、迷宮化が解けた時問題を生じさせないためだ。

 迷宮化はダンジョン化と違い、元の空間が変質した物だから、迷宮化している間に起った事の影響を、諸に受ける。なので、〈灰呪泥園〉の時程でなくとも、後始末が必要と云う訳だ。

 まっ、こう云うのを専門にやる人達が居そうだけどね。

 でも、神の分霊とその巫女と言う立場を考えると、自分達でやるべきだよな。


 それにしても、やはりと云うか何と言うか。

 異変の元凶と思しき物を全部排除した筈だが、迷宮化が解除される様子がない。

 やっぱり、灰呪行僧とやらが、エーランブラム山の何処かに居るんだろうなぁ。

 そんな事を考えいていると、『きゅっ、きゅうっ!!』と言う鳴き声が頭に響く。


「Σわっ!?」


「Σのじゃ!?」


 ビックリしたぁ~。ウサギ達が、テレパスでこちらに何か伝えようとした見たいだ。エルナが驚いた所為で、チナもビックリしてキョトンとしてるじゃないか。

 可愛いから良いけど。

 さて、ウサギ達は何を伝えようとしているんだ?

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