69 丁度良い場所に移動してアーツの練習を開始した

 練習に適した場所を探すために、冒険者ギルドに戻ってきましたよっと。

 戻って来て直ぐに、オピニアさんを見つけたので、アーツの練習に丁度良い場所を聞いて見ようと思う。


「オピニアさん、ちょっと良いですか?」


「あらあら? 巫女様達は、もうお買い物はお済なんですか~?」


「はい、お陰様で。オピニアさんが言ってた通り、品揃えも良くてちゃんと買い物できましたよ。でも、アイドルのライブ中継が見れるとは、思いませんでしたけど」


「あっ! 見ました? あのお店。コンサートやフェスの、ライブ中継を流してくれるんですよねぇ~。他にも、お店で色々と自前のイベントを開催したりして、楽しくて良いお店なんですよねぇ~」


 ほうほう、なるほど。あの店は品揃えだけでなく、来店客を楽しませるサービスにも力を入れているのか。オピニアさん、あのお店にかなり行ってそうだなぁ。


「ええ、ライブ中継も、少し見ただけとは言え、楽しかったですよ。それでですね、オピニアさん。私達アーツの練習をしたいんですけど、何処か良い所知りませんか? それに、買ったアイテムと武器の性能も試したいんですよねぇ……」


「アーツの練習ですかぁ……。巫女様達くらい力を持つ人達が、アーツの練習をできるような所と言いますとぉ。少し遠いですけど、北にあるサンクエネム草原が、丁度良いんじゃないでしょうか~。飛空船が有れば、直ぐに行ける距離ですからね~」


 流石に、来訪者コスモプレイヤーが、沢山訪れている王都周辺には、Aランク冒険者が気軽にアーツを練習できる様な所は無いらしく、少し遠い場所を勧められた。

 どんな所なのか詳細を聞くと。サンクエネム草原とは、この国の冒険者と商人達が、一攫千金と名誉を得るため目指す場所の一つ、エネム大森林の入口として知られる場所だそうな。近くには、冒険者と商人達の町ビィトが有るとの事。


「本当は、王都の南に広がる、レーム草原でも良かったんですけどぉ。創天様に導かれてきた、新しい来訪者さん達の一部の人達が、少々困った感じの人達でしてぇ。巫女様達が絡まれたりしたら、国際問題に為ってしまいますからね~。ですので、少々遠いですが。サンクエネム草原で、アーツの練習をされるのが良いと思いますよ~」


 如何やらゲーム開始と同時に訪れた、コスモプレイヤーの一部の人達が、王都の住人達に迷惑行為を行っているらしい。 必ず一定数、そう云う人達が出るんだよなぁ~、MMORPGの性ってやつだろうか。

 でも、教えて貰えて良かった。今のエルナって、来訪者コスモプレイヤー達から見たら、絶対何かのイベントやクエストに、関係あるキャラだと思われるだろ。

 なんせ中世ヨーロッパ風のファンタジー都市に、なんちゃってファンタジー風とは言え、日本人にお馴染みの巫女さんが突然現れたんだぞ、俺だって自分がそうでなきゃ絶対そう思ってたぞ。だから、オピニアさんの配慮には感謝だな。

 それに、変な奴に絡まれて面倒な事に巻き込まれたくないしなぁ。

 あ、でも俺って、他のコスモプレイヤーの様子を確認しに来たんだっけ?

 いや……違うな……そうだよ! 取り合えず、ワープポータルを使える様にする為に、アステリズムに来たんじゃん! 神殿行かなくちゃ!


 オピニアさんに神殿の場所を聞き、無事ワープポータルの登録を済ませ、飛空船に乗り込み

 でも、先にビィトの町の神殿に行った方が良いかな?

 ワープポータルの登録も、折角行くのだからして置きたいしな。

 そう言えば、ワープポータルで移動したら飛空船はどうなるんだ?

 ついて来るのか?


『多分、一緒について来ると思いますよ、シズル様。それにもし、一緒の移動が無理だったとしても、ティアーズクロワに、入れてしまえば良いのですよ』


 確かに、なら気にする必要はないか。

 移動を開始してから10分も経たない内に、ブエナの町より大きい堅牢な壁に囲まれた町が見えて来た。

 ビィトの町の周囲は、東西と南の王都へ続く大きな街道と、北側には背の高い草が茂る、サンクエネム草原が広がる。サンクエネム草原には、エネム大森林へ向け突っ切って進む道が有る。エネム大森林へ続く道を逸れれば、広くて背の高い草が茂るサンクエネム草原は、人目に付き難いしアーツの練習をするのに持って来いだ。

 これなら結界を張れば、人が練習の巻き添えに為ったり、近寄って来たりする事も無いだろう。


 町に降り立った俺達は、ここの近くでアーツの練習をしに来ただけなので、冒険者ギルドには寄らずに神殿に直行し、ワープポータルの登録を済ませた。

 神殿に行って戻って来る間に、さっと町を見て来たが、皆ギラギラしており活気に満ちていた。名誉と一攫千金を目指す冒険者も、良い物を仕入れて一山当て様とする商人も、そして彼ら目当てにこの町に住む人達も、皆ここに自分達の求める物がると信じ、それを実現しようと気炎を吐いている。人々の希望と欲望のエネルギーが、町全体に渦巻き、それが更に人を引き付ける、そんな町だと強く印象付けられた。

 取り合えず、エルナがビィト町で本格的に活動するのは、先の話だと思う。うん。


 エネム大森林への道から逸れ、サンクエネム草原に入ったら翼を出し、人があまり居ない場所まで、察知系スキルを駆使しながら、飛んで移動する。

 人が居ない事を確認したら、背の高い草が邪魔なので、精霊魔法で精霊さんにお願いして、草を何とかして貰う。何時もの様に「お願い☆彡」とすると、広範囲に渡り背の高い草が、まるで編まれる様に倒れて行く。

 あ、これ知ってる、人工的にミステリーサークル作るやつだ。

 でもこれは、精霊の仕業だから、本物のミステリーサークルって事で良いのかな?

 とにかく、アーツの練習に丁度良い広さの広場ができた。

 なので、その範囲をカバーする様に、プラネセーズリンリー専用スペルアーツ、『星域結界』と『静星隠し』を展開した。これで準備万端だ。


「まじゅは何から試しゅのじゃ?」


 チナが可愛いお目々をクリと輝かせながら聞いてくる。


「やっぱり沢山買ったスクロールからかな? スクロールを使って実験したいしね」


「ふにゅ、安くてたくしゃん買ってあるから無難なのじゃ!」


 早速、ウォーターボールのスクロールを取り出す。

 先ずは、普通に使おう。普通に使って見ないと、実験の検証の使用が無いしな。

 スクロールの使用方法は簡単だ。

 スクロールの丸まった紙を開き、使いたいと思うだけで良いのだ。


 手に開いたスクロールを持って、スクロールの使用を意識すると、スクロールに書かれた魔法陣が発光し、直径40cm程の水の球が形成され、前方に発射される。

 バッシャン! と草原の背の高い草に当たるが、正直言って当たったのが遠くの草で、威力がどの程度かよく分からなかった。

 ちなみに、使ったスクロールはシュボッ! と音を立て燃え尽き消えてしまった。

 取り合えず、よく分からなかったので、もう一枚スクロールを使用して、ミステリーサークルを思わせる地面に向かって、水球を発射する。

 ドッパン! と、水球と一緒に地面に倒れている草と土が弾け、地面を抉った。

 うへぇ、現実世界の人間なら、普通に殺せそうな威力だよこれ。

 何はともあれ、ウォーターボールの威力は分かったので、今度はスクロールに星輝を流して使用して見る。

 手に持ったスクロールに、星輝が流れる様に星輝を誘導して、星輝がスクロールに入った所で発動。スクロール全体が発光し、直径4mは有るキラキラ光る大きな水の球が形成され、暴れる様に前方に発射される。


「Σふにょっ! もったいないのじゃ!」


 そう言うと、チナが素早く水流を繰り出し、キラキラのウォーターボールを、絡め獲る様に包み込み見る間に圧縮し確保する。水ってIFOでは圧縮できるんだ。

 なんて見当違いの事を思いながら。


「ええっと、何でチナはそのウォーターボールを確保したの?」


「ウォーターボールの水が、星輝水だったからなのじゃ!」


 星輝水? そう言えば、そんな名前の水が、水筒に入ってたな。


「その星輝水って言うのは、あんな風に使うのが勿体ない物なの?」


「ふみゅ、星輝水はへたな霊薬よりよっぽど効果のある万能薬なのじゃ」


 星輝水とは、水にある一定濃度以上の星輝が溶け込んだ物で、飲み過ぎなければ部位欠損含む、大抵の怪我や病気が治る代物だ。星輝を別のエネルギーに変換できる者にとっては、強力なブースターやエネルギー補給に為るとの事。

 更にソフィーちゃんが補足で、星輝水も星輝が消費されない状態で摂取し続けると、エルナが装備を壊してしまうのと同じ事が起きるとか。

 えっ! それってなんか普通に怖くない?


『と言っても、星輝水は摂取する者が、自分で取り過ぎかどうか判断できるので、問題が起こる事は早々ないです。だから、心配する様な事には為りませんよ』


 なるほどね。自分で飲む分には分かるのか。人に無理やり飲まされなければ安心できるって事かな?

 しかしこれ、万能薬を簡単に作れるって事だよな。

 う~む、星輝を軽く流してこれかぁ~。

 取り合えず、スクロールを使ってやって見たい事を、一通り行う事にする。


 星輝を軽く流して、スクロールに保持されるのか。スクロール使用の際に、星輝がしっかりと溜め込まれる様に込めてから、使用する事と。使用前に、それをして置いて保持されるのか。

 やって見た結果、星輝を軽く流して置いたスクロールには、星輝が保持されていた。使用の際しっかりと星輝を溜め込んで、スクロールを使用したら発動はしたが、巨大な星輝水の球が、大爆発した。


「またエルナが爆発させたのじゃ!」


 そう言いつつチナが星輝水を回収した。また爆発って、俺が爆弾魔見たいじゃないか。なんかちょっとショックなんですけど……。

 そうそう、星輝を使用前にしっかり溜めて置こうとしたら、スクロールはパラパラと光に為ってしまった。つまり無くなってしまったのだ。

 これが、装備が壊れる時に起こる現象のなのかと、ソフィーちゃんに聞いて見た。


『そうです。星輝還元と呼ばれる現象です』


 これって、現実世界の事に例えると、分子分解とか原子分解とかって言う、そう云った現象ですよねぇ~、分かります。

 ソフィーちゃん曰く、対象となる物の星輝許容量が限界に達すると、星輝飽和状態になる。この状態に為ると、エルナ以外の人にも星輝飽和した物が、光って見える。

 そして、星輝飽和した物に更に星輝が加わると、星輝飽和した物の構造が解けて星輝に変換される様に為る。そう、元々星輝から生まれた物が、元の姿に戻る様に。

 故に、これを星輝還元と言う訳だ。

 はぁ~、これ思ったよりヤバい現象なんですけど。星輝コントロール、ガチで出来る様に為らないと不味いヤツじゃん。


 あ、そうそう星輝を軽く流して、スクロールを強化するのは、オリジナルアーツに成ったよ。まんま『アイテムブースト』って言うアーツで、他のマジックアイテムとかにも使えそうだ。

 取り合えず、今度は使い捨てじゃないアイテムも同じ様にやって見ようか。

 まずは、星輝還元現象を起こさない様にね。

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