66 アステリズムの冒険者ギルドで飛び級昇格した

 アステリズムの門を潜る時、アステリズムへ初めて来た冒険者はカードを翳すだけで入管の手続きが終わり、改めて冒険者カードは便利だと実感する。

 しかも、次からは素通りできる見たいだし尚更便利である。

 これなら気にせずに、来る途中の村や町に寄って、神殿のワープポータル解放しとけば良かったなぁ。


 王都の門を抜けると、アステリズムの街並みが見えて来る。神骸飛空船・スペシネイト、ブリッジのスクリーンモニターで見た通り、アステリズムには芸術作品の様な美しく綺麗な建物が立ち並び、大勢いの人が行き交っているにも拘らず不思議な清潔感を感じる。

 何故だろうと思いよく見て見ると、モニター越しに見た時建物が光っている様に見えた訳だが、肉眼で見ても光っている様に見える。星覚スキルが、建物から清潔さを保ち周囲を浄化する力が放出されて折り、常に王都アステリズムが清められていると云う事を、俺に教えてくれる。

 アンデット等の不浄なる者や邪悪な者達には、聖ステルシェリア王国の王都は超危険地帯だな。要するに王都アステリズムは、王都全体が一種の聖域に為っていると言う事だな。確かにこれなら、コスモプレイヤーのスタート地点としてベストだろう。

 納得できるな。


 王都に入る前から感じていたが、何か見られているよなぁ、気配薄くしているのに? ふむ。可愛い美幼女であるチナに視線が行くのは分かるけど。気配を薄くしているのだから、幾らエルナが超絶美少女だとしても、そこまで注目されない筈だが?

 あっ、そうか! 今エルナはなんちゃって巫女服姿だったなぁ。

 ジュナ皇国では神殿関係者の衣装だけど、聖ステルシェリア王国では違うのだろう。つまり、なんちゃって巫女服は目立つんだな。気配希釈を強めて置くか。


 気配希釈を強めたお陰で、エルナへの視線は減ったが、代わりのチナが視線を浴びている。冒険者らしき者達が「幼女キタ――!!」等と騒いでいる。


 むぅ、こいつ等がコスモプレイヤーなのか!? 現地民の可能性も有るが不審者には違いない! おのれロリコン共めぇ、チナをジロジロ見るな!!

 俺はチナへの視線をブロックしつつ、門の直ぐ近くにある冒険者ギルドに駆け込む。ギルドに向かう僅かな間にも……。


「くっ、何だあのやけに影の薄い娘は、彼女が邪魔で幼女が見えないぞ!」

「爬虫類系獣人幼女かわゆす……ハアハア……」

「あれ? あの子凄く影が薄いけど、金髪美少女巫女さんでは!?」


 などの危険人物達の発言が聞こえた。ふぅ、都会は危険な所だぜ。

 まあ、ギルドの中に居る人達も、あまり変わらない様だけどなぁ~白目。


 気を取り直して素材買取カウンターに行き、受付のお姉さんにダンジョンを攻略してきて、ドロップアイテムが沢山ある事を伝えると。お姉さんは、冒険者カードを確認をして、直ぐに専用の素材保管庫に連れて行ってくれた。

 ちなみに、受付のお姉さんの名前は、オピニア・エンルートさん。見た目は、ややカールした明るいパステルカラーの、グリーンの長髪を左分けにしている。ほわほわの雰囲気とおでこがキュートな、優しい水色の瞳をしたスレンダーなスタイルの、眼鏡お姉さん系美少女だ。

 白いブラウスの上から、差し色で右肩がキャメルカラーで一部チェック柄の入ったディープグリーンのベストを着ている。下は黒のタイトスカートに、肌色が透ける位の黒のストッキングに黒のパンプス。この落ち着いた色合いのベストとタイトスカートが、聖ステルシェリア王国のギルド職員制服のようだ。


「はあ~、流石はジュナ皇国の神様と巫女様ですね~。お二人でGランクダンジョンを攻略してしまうとは。しかもこのダンジョン、ネームドダンジョンじゃないですかぁ。これ、危険度5割増しですよ~」


 素材保管庫内、俺達が持ってきた山の様に積まれたダンジョンドロップの前で、冒険者カードに書かれている事が、事実であるか確認の為に討伐報酬の一部を見せる。

 オピニアさんは、眼鏡型のマジックアイテムで自身の鑑定能力を高めているらしく、この支部では一番の目利きのようだ。少なくともこの時点で、JOB教授クラスの知識と鑑定士のJOBに就いてる可能性が高い。つまりオピニアさんは、めっちゃ優秀なギルド職員だ。


「こちらの手甲と、双頭刃式の槍剣は、間違いなく神器ですねぇ。こんな物が手に入る、巫女様達が攻略したダンジョンは、間違いなくGランク以上のダンジョンすねぇ~」


 Gランク以上のダンジョン、それもネームドダンジョンの完全討伐と為れば、冒険者ランクの大幅UPは確実との事。

 ダンジョンコアの事も聞かれたので、正直に答えて置いた。


「飛空船ですかぁ。やっぱり、ラストドロップって本当に凄い物が出るんですね~。手に入れたダンジョンコアを、飛空船の強化に使ってしまうのは仕方ないですねぇ。冒険者ですものね~」


 オピニアさんは、手を胸の前で合わせうんうんと頷く。


「それにしても、このボスモンスターのドロップと、他のモンスターとのドロップの落差、流石はネームドダンジョン悪質ですね~」


 そうなのだ。オピニアさんの言う通り、スペシネイトダンジョンはやはり悪質なダンジョンだったのだ。フィールド型ダンジョンで、通常モンスターのランクがC中位~Bランク下位の、LV701~1050までのギリギリ対処できるモンスなのに対して、中ボスはプレデター・フォレストカイマン以外は皆Sランク下位~中位、つまりLV1801~2600までのモンスばかりで、確実に殺しに来てるとの事。

 もちろん、ダンジョンボスとコアモンスターはそれ以上だ。

 脱出には攻略がほぼ必須なのに、ここで強くなって中ボスを倒すと云うのが、そもそも難しく。ダンジョンボスを倒すのは困難極まるとしか言えない。


 ダンジョンとは、世界の歪みにを解消する為に出現し、いずれは討伐される為に活動する世界の仕組みだ。つまりダンジョンは、攻略され討伐できる様に為っているのが当然なのだ。そして、攻略が困難な悪質ダンジョンは、所謂イレギュラーな物で、そう云う危険なダンジョンを、ネームドダンジョンと言うのだ。

 ちなみに、プレデター・フォレストカイマンはAランク上位、LV1650以上のそいつらが9体いたので、脅威度は普通にSランク越えだ。


 チナと話して売る事を決めた、スペシネイトダンジョンのモンスタードロップは、全部で2億5564万8800エアとなった。

 流石にこれだけのエアを、ギルドが直ぐに用意できるわけ無く。

 如何せならと、オピニアさんが冒険者カードを使った、預金サービスを利用しないかと勧めて来たので、手持ちの分と合わせて3億エアを預ける事にした。

 預金サービスを利用すると、冒険者ギルドと提携しているお店でカードの支払いができる様になる。冒険者カードが、所謂デビットカードに為るためとても便利だ。

 それに、沢山金貨を持っているのは、落ち着かないから丁度良いな。


「それでは水竜神の巫女エルナ様、あなたのこれまでの功績とジュナ皇国の最高位の巫女の一人である事を加味して、冒険者ギルド聖ステルシェリア王国王都アステリズム、東大門支部は異例では有りますが、あなたをAランク冒険者と認定します。わ~、パチパチ~♪」


 オピニアさんが昇格の事を言い終わると、わ~パチパチと口に出しながら拍手してくれる。うん、オピニアさん可愛いな。

 おおっと! いきなりAランク冒険者に昇格したぞ。

 しかも、三段飛ばし飛び級昇格だよ。


「本当は、Sランクの認定をしたいのですけどぉ。それは、うちの支部だけでは決められない事なので~、すみません」


 そう言うと、オピニアさんが頭を下げる。

 オピニアさんが言うには、Sランク認定には複数の支部の推薦がいるとの事。

 ちなみにGランクは、神格を持っていれば直ぐ認定されるんだけどね。


 さて、エルナの専用装備以外に、星輝を上手く込められる様に為るために、練習用に壊しても構わない。丁度良い、アイテムと装備を買いに行きますかね。

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