62 チナ先生のお宝チェック! その1

 空の青を映す、銀色の甲板の上に並べられた木の宝箱八つを、一気に開けていく。

 低レアの宝箱は、じっくり開ける必要ないからね。

 それで中身は、紙製のシート二枚,巻物二枚、宝箱いっぱいに入った色んな宝石と宝箱から大量に溢れ出た金貨、最後にクリスタルの像一つと云う結果だった。

 まあ、宝箱から金貨が溢れ出たのは驚いたけど。

 取り合えず、この紙製のシートから、チナ先生の解説を聞きましょうかね。


「チナ先生、こちらの紙は何なんでしょう?」


「うにゅ、エルナくんその紙は多分マジックシートなのじゃ! マジックシートは、そこに書かれている魔法を、無条件でおぼえられる凄い紙なのじゃ!」


「えっ? これそんな凄い紙なの!?」


「うにゅ、宝箱から中身とちては当たりの方なのじゃ。この紙にはアーツをおぼえるられる物あるのじゃよ」


 ふふん♪ と自慢げにチナが語る。

 やはりチナは、こう云った知識を豊富に持っているようだ。

 チナが言うには、マジックシート呼ばれるこの紙は、使用者がどの様な素質,スキルを持っていようが関係なく、使用者に紙に書かれた一つから三つの魔法を覚えさせる、使いきりのアイテムだとの事。

 もちろん、普通の物なら見ればどんな魔法が書いて有るのか分かる。

 ただし、スキルを覚える訳ではないので、その魔法を使用する際補正等が付いたりしない。そう、あくまで覚えるだけなのだ。

 このシートには、アーツ版とスペルアーツ版もあり、上位アイテムは本になる。どこぞの神器を思わせる、スキルを習得する効果持つアイテムも有るらしい。

 もちろんノーリスクだよ。


 それにしてもチナ、シートはちゃんと言えたのに活舌はまだまだ見たいだね。

 それは兎も角、チナが褒めて欲しそうなので撫で回し、満足したのでマジックシートの魔法を確認する。


「ええと、一枚目はロックブラストとロックフォール。二枚目はシードにグロウアップ・プラントね。魔法、私も覚えたいけど自分で作れそうだし使わないかな? それにロックブラストの魔法って、何となくチナが使った方が役立てそうじゃない?」


「うにゅ、わちの本霊は土魔法が使えるからのう。わちにも適性があるのじゃ。じゃが、わちにはしゅでに十分手札があるのじゃ、熟練度と効率をこうりょすれば、わちがおぼえるより、エルナがおぼえた方が良いと思うのじゃ。それに今は、エルナの手札を増やすことを、優先しゅべきだとわちは思うのじゃ!」


「なるほど、私が覚えた方が良いのかぁ~。それに、熟練度ねぇ……。熟練度っ!? え、熟練度なんてあるの!?」


「にゅ? なにをおどろいておるのじゃ?」


 という訳で、チナとソフィーちゃんから熟練度の話を聞きましたよっと。

 熟練度とはこの世界では、基本あらゆる物に存在しているらしい。

 魔法一つ一つにアーツ,スペルアーツ,オリジナルアーツはもちろん、スキルなんて既にLVが存在しているのに、スキル系統別熟練度なんて物が有るのだ。

 それは、権能とそのアビリティにも当然あるし、装備系統熟練度に属性別熟練度なんて物もある。

 熟練度によって齎させる影響はアーツ等のコスト減少,クールタイム減少,制御難度減少,適性上昇,効果上昇,アレンジ性能上昇等で、熟練度に上限は無く、これは所謂隠しステータスってやつだな。

 例えるなら、片手剣術スキルのアーツ『スラッシュ』を覚えた奴が、『スラッシュ』を使い続ける事で元の『スラッシュ』とは別次元の威力を発揮したり、或いは『スラッシュ』色々アレンジする事で、様々なオリジナルアーツを生み出せる様に為ったりすると云いう事だ。

 もっと分かり易く言うと、達人に成れるシステムって感じだな。

 ちなみに、JOBにも系統別熟練度が有り、現地の人達は全く別のJOBに換える事が無い為、あまり意識はされていないのだが、コスモプレイヤー達には影響が有りそうな話だな。


 しかしそうなると、俺がアーツを重ねて作ったオリジナルアーツや、クールタイムがめちゃ長いJOBアーツ何かも、使えば使う程より使い易く為るって事だよなぁ。

 コストの重いアーツも為るべく多用して、JOBアーツもクールタイムが終わったら直ぐに使う様にした方が良いのかねぇ?

 でも、エルナは無尽蔵に湧き出る星輝が有るから、手札を沢山持っている方が強くなる気がするんだよなぁ。

 でもやっぱり必殺技的な事を考えると、コストが重いのやクールタイムが長いアーツの熟練度の事は、意識はして置いた方が良いかな。


 あと、マジックシートはエルナに使用した。

 どこぞの神器の様な副作用なくて良かったよ。

 とにかく、宝箱の中身の確認の続きをしよう。


「それではチナ先生、この巻物は何でしょうか?」


「ふみゅ、エルナくん。これはスクロールなのじゃ、まきものに書いてある魔法をわずかな魔力で発動する事ができるのじゃ! 一回だけ切りの使いしゅての物が殆どじゃが、何度か使える物や使用回数せいげんのない物もあるのじゃ。わちの見立てじゃと、これは使い切りのやつなのじゃ。スクロールは強い魔法でなければ、だいたいハズレなのじゃ!」


 ほほぅ、チナ有能。頬っぺたむにむにする。

 それにしても、ただティアーズクロワに入れるだけじゃ分からない事を、チナはちゃんと教えてくれるよね。まあ、ソフィーちゃんが拗ねてるんだけどね!

 でもさ、さっき分かった熟練度の事とか考えると、こうやってチナとお喋りしてたらチナの活舌の特訓になるよね。たぶん。


「ふむふむ、ではチナ先生。この宝箱いっぱいに入っていた、色んな種類の宝石は如何なんです?」


「うにゅ、エルナくん。これはダンジョンの宝箱でお馴染みの宝石しぇっとじゃ! 付与,れんきん,かじ,細工,調薬に宝石職人と生産職に大人気の宝石の詰め合しぇなのじゃ! それに、わちも宝石はだいしゅきなのじゃ!」


 宝石を見てうっとりしながら、一生懸命喋ってるチナが可愛い。

 しかし、ただの宝石なんて、ファンタジー宝石が有る様な世界だと、あまり価値は無いのではないかと思っていたが、如何やらそうでもないらしい。どんな世界でも綺麗な物は皆好きって事かな。


「では、チナ先生。この宝箱を開けた途端、溢れ出た金貨は何なんでしょう?」


「ふにゅ、これは皆だいしゅきエア金貨なのじゃ! エア金貨は、一枚1万エアと5万エアの2種類の硬貨があるのじゃ。しゃらに、5万エアより上の額面は金板硬貨になるのじゃ!」


「へぇ~、そうなんだ。多分エア金貨持ってるんだろうけど、実際には見た事無かったから感慨深いねぇ~。ていうかこれ、物凄い金額になるんじゃ……」


「わちが見るに、大体1億エア位だと思うのじゃが、ダンジョンコアのランクを考えれば、安い方だと思うのじゃ」


 えっ? 1億エアで安いの? やっぱ、MMOの金銭感覚ヤバいな!

 それにしても、沢山のエア金貨を見たチナは、とても興奮している様子で、今にも金貨に飛び込みそうである。

 やっぱりドラゴンは、金銀財宝が大好きなんだなぁ。

 で、木の宝箱の最後の品は、クリスタル製の像……人形。いや、フィギュアかな?


「チナ先生、木の宝箱に入っていた最後の物は何なんでしょう?」


「うみゅ、エルナくん。これは英雄人形ヒーローフィギュアなのじゃ! わちらの世界で英雄の称号を得たものが、しゃまじゃまな材質の像としゅて、ダンジョンの宝箱から出て来るのじゃ。これを集めておるコレクターが沢しゃん居るのじゃ。しょれに、人形と云うのにも理由があってのう。レア度の高い物は、英雄の力を持ったゴーレムとしゅて使えるのじゃ」


 ほぇ~、これって趣味で集めるのも良いし、レア度の高い物を所持して置いて、いざと云う時の戦力にするのも有りな、かなり有用なアイテムて事か。


「おしょらく、わちの本霊も英雄人形ヒーローフィギュアとちてダンジョンから出るようになった筈なのじゃ」


 おおぅ、そう言えばエナは、英雄の称号を得たんだっけ、するとダンジョンの宝箱からエナのフィギュアが出るのかぁ~。

 人の姿をしてるやつか? それとも竜の姿? 或いは両方とも出るのかな?

 う~む、エナのフィギュアかぁ、ちょっと欲しいかも。


「え~と。それじゃあ、このドワーフのおじさんっぽい英雄人形ヒーローフィギュアは、どこの誰さんなのかなぁ?」


「うみゅ、残念ながらわちが知らない英雄なのじゃ。しょれに、しょの英雄人形ヒーローフィギュアは低レアなのじゃ」


 チナも分からないと言うので、ティアーズクロワに収納しして見たけど、ティアーズクロワでも結局なんて英雄なのか不明のままだったよ。

 どこの英雄かも分からないし、低レアだから戦闘にも使えない。只のクリスタル製ドワーフおっさん像という事かぁ。


 それに俺は気付いてしまったんだ。アイテム覧見てな。

 俺あのダンジョンで、経験値増加ポーション使ってねぇじゃん!!

 はあ~、次行こう、次!

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