58 ネームドダンジョンコア〈見えざる浮遊山林・スペシネイト〉戦 中

 アナウンスと共に島周辺の空間が歪む。

 その歪みはあっと言う間に、首長竜の姿をした島全域及び、俺達は島から弾き出される事に為った。ダンジョンコアは、俺達を島から弾き出しただけで無く。

 至る所に空間の歪みを作り出し、その歪みのエネルギーを開放する空間炸裂攻撃を、あらゆる角度から仕掛けて来る。ブレス攻撃より威力は低そうだが十分脅威だ。

 島を覆う空間の歪みは島を守っていて、巨大竜巻と木々の壁より遥かに厄介だ。

 しかし、これがダンジョン崩壊攻撃なのだろうか?


 幾度か空間の歪みを貫通して、島にダメージを与えたがあまり効いていない様だ。

 そんな攻防をしていると、エルナの直観と星覚のスキルが異常を伝えて来る。

 ダンジョンを構成する空間が、どんどん圧縮される様に縮小していると云うのだ。


 なるほど。これがダンジョン崩壊攻撃か!

 時間が経過する毎にダンジョンがどんどん狭くなって、最後にはあの島の空間の歪みと挟まれてぺしゃんこに為るってやつかな?

 いや、バーンって名前に付いてるし、最後は爆発するのか?

 そうなるとこれも、空間炸裂攻撃の一種って事になるなぁ。んでもって、ダンジョンコアは自前の空間操作能力で、生き残る算段な訳か。って言うかこれって、時間制限バトルじゃん。

 となると、俺達ができる事は、押し潰されて爆発するのを耐えて、あの島を落とすのか、潰される前に敵のHPを削り切って倒すか。このどちらかしか無い訳だ。

 耐える事は『アステルリヴァイヴ』が掛かってるし、出来るだろうけど。

 エルナは為るべくデスしない方が良いからなぁ。これは潰される前に、首長竜の島ことスペシネイトを落とすって言う、王道ルートしか無いな!


 アビリティ『オーロラチャージ』とアーツ『煌気』,『超煌気』,『星身』,『超星身』を掛け直し、更に『星輝集束』,『星脈集束』を使いアーツとしての『星煉』。まだ使った事は無いが、ブーストって言う位なので『アステルブースト』も使用して、バフ増し増しの超強化状態エルナの出来上がりだ!

 ちなみに、『アステルブースト』はエルナの周囲円柱状の範囲内に、『アステルシールド』の様な半透明の星型の光が幾つも現れ、光線へと変わりエルナに吸収されると云うエフェクトで、とっても綺麗だった。

 それに、『アステルブースト』はチナにも使って上げられそうなので、使用してチナをちゃんと強化して置いた。チナに『オーロラチャージ』も掛けられそうなので聞いて見たら、『オーロラチャージ』の星輝の無限チャージは、星霊以外は耐えられないと言われ。


『エルナはわちを爆弾にしゅる気なのじゃ?』


 と更に言われた。う~ん、星輝ってやっぱり爆発する物なのかねぇ?


『シズル様、エルアクシア様の星輝の扱いを見た限り、その様には見受けられませんでしたよ?』


 おおぅ! ビックリしたな! 唐突に俺の思考を呼んだソフィーちゃんが話しかけて来た。


『忘れられない様に、こうして時折話し掛けさせて貰いますね』


 うん。これはソフィーちゃんが寂しかったのか、それともダンジョンに飽きたのかどちらだろうか?


『どちらもですよ。チナ様とばかり喋ってますし、他の神器を使って戦闘のサポートをしていますが。ソフィーちゃんにとっては、簡単な事なのでとても退屈なのです』


 つまり、寂しい&ダンジョンに飽きてしまったらしい。

 あと相変わらずソフィーちゃんって言う所のテンションが可笑しいし、なんか口調も変わってるよなぁ。

 まあ、ダンジョンコアの攻略も、これが最終フェイズだろうし我慢してね。

 それにしても、エルアクシア神は星輝爆発させてないのかぁ。

 なんか使い方が違うのかねぇ?

 取り合えず、押し潰される時間も迫ってきているし、バフ増し増しの超強化状態で攻撃開始だ!


 手数を増やす為、『虹の戦乙女イリス オブ ワルキューレ』と『星虹龍』使用する。

 エルナの超強化状態が影響したのか、戦乙女ワルキューレ達は造詣が細かく衣装が豪華になり、虹龍は明らかに巨大化している。

 戦乙女は、『イリスフェザーレイ』や『イリスフェザーダンス』を思わせる虹色のレーザーで、虹龍は同じく『白炎星撃』を虹色にした様な光ブレスで、スペシネイトの守りである空間の歪みを攻撃する。

 エルナの超強化の影響は、彼女らの攻撃にもしっかり出て居た様で、スペシネイト守りを貫通して、島に攻撃が通っていた。


 俺とチナも戦乙女や虹龍に負けてられないと、俺は『アステルシャインアロー』を中心としたアーツの六重発動を連発したり、チナは竜撃砲系のブレスのアーツを連発して、スペシネイトにダメージを与えて行く。


¶『おのれ、おのれっ! 許さん、もう許さんぞっ!! 全て破壊してくれる!!』

警告:ネームドダンジョンコア〈見えざる浮遊山林・スペシネイト〉がダンジョン崩壊最終攻撃『ディストーション・パイルズマウントクラッシャー』発動しました。


 悲報。ダンジョンコア戦の最終フェイズはこれからの様です。

 いやいやいや、既に時間制限バトルに突入しているのにまだ何かあるのかよ!


 直ぐに変化が現れる、スペシネイトの作り出す空間の歪みが暗い赤に染まって往く。しかし、それだけでは無い。このダンジョンは、夕空が続いているから確かに風景に赤を感じさせるのだが。ダンジョンの空……いや、空間そのものが暗い赤に染まって往く。

 ダンジョン全域の空間が歪み、可視光で最後まで見える赤の光が残った結果、この様な光景が映し出されているのだと予想が付いた。

 変化まだ続き島を守る空間の歪みが、ハリネズミ……いや、ウニそれもガンガゼの様に尖り伸びて往く。

 変形が終わると、ガンガゼフォルムの空間の歪みに、猛烈なエネルギーの収縮が起きている事を、星覚のスキルが教えてくれる。


 これは非常に不味い。エルナの直観が働かなくても、これが危険だという事が分かる。『ディストーション・パイルズマウントクラッシャー』と云う、この攻撃名からも嫌な予感しない。


 『オーロラチャージ』で溜めた星輝を使用して『アステルシールド』,『オーロラシールド』,『オーロラプロテクション』,『オーロラリフレクションベール』に『星域結界』を急いで展開し直す。

 チナにも、なる早で守りの強化をお願いする。


『分かったのじゃ! とっておきの奴を使うのじゃ!』


『祖は流水にして清流、天を巡り暴流を為し、地に沈みて静浄し湧き上がる、天地を廻る水天の御手よ。悪しき禍払いし水天の聖域を築け! 『水輪の聖域』』


 不安を誘う暗く赤い世界が、何処までも澄み渡る大きな水玉に飲み込まれる。水玉の中は青空と太陽の光が射し、至る所に無数の小さな水玉がゆっくりと流れながら漂っており、それが陽の光でキラキラと輝いていてとても癒される。

 物凄く危険な状態だとあんなに思っていたのに、優しく強い力に守られ身も心も洗い癒され元気になる。ダンジョン内であるにも関わらず、今確かにここは聖域と化したのだった。

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