57 ネームドダンジョンコア〈見えざる浮遊山林・スペシネイト〉戦 前

 首長竜の口が見えた。そう思った瞬間、その光景が周囲の夕空と共にぐにゃりと捻じ曲がり、空間の歪みが光を屈折させたのだと理解する。そして、既に自身がその歪みの中に在り、この攻撃が避けられない事も分かってしまう。

 『アステルシールド』,『オーロラシールド』,『オーロラプロテクション』のアーツを発動。『超煌気』,『超星身』も先のアーツと一緒に掛け直しをする。


 歪んだ空間がギュリギュリギュリギュリィイ!! 軋みを上げて元に戻って往く。歪みに閉じ込められた力が解放される!


 物凄い衝撃が全身に襲い掛かり、バァ――――――ッ!! と言う破裂音が後から聞こえて来る。衝撃により錐もみ状態で吹き飛ばされる中、キーン!! という猛烈な耳鳴りと、体の中をめちゃくちゃに掻き回され、二日酔いや乗り物酔いを最悪にした気持ち悪さと吐き気が俺を襲う。


「うっ……ゴフッ!」


 口から星輝の様にキラキラと光る紅い血大量に吐き出す。錐もみ回転している所為で派手に血を撒き散らす事に為ってしまった。

 虹翼で制動を掛け停止する。痛みと視界がぐわんぐわんと揺れる中、自分の上手く手足が動かない事から、半分以上削れたゲージバーの下を確認すると、ダメージデバフの酔い,出血,骨折のアイコンがLOCK付きで表示されていた。

 対処法は分かっているので、まずは『アステルセラフィア』で回復し、『スターリジェネ』を掛け『ステラリフレッシュ』を連発する。

 『ドラグーン』のお陰で、ダメージデバフを解除するまでの間、木のミサイルの追撃に対処でき、無事回復した所でチナが声を掛けて来た。


『エルナ、大丈夫なのじゃ?』


「うん、大丈夫だよ。ダメージデバフへの対処は初めてじゃないしね。そう言うチナは大丈夫だった?」


『わちは竜じゃからのぅ、あの位の空間しゃくれつなら大丈夫なのじゃ!』


 流石は竜と言った所で、チナはダメージは受けていたが、ダメージデバフは受けていなかった。俺はチナに『アステルセラフィア』と『アステルシールド』,『オーロラシールド』,『オーロラプロテクション』を掛け、自分とチナ個別に『オーロラリフレクションベール』と『星域結界』を展開する。

 取り合えず、『オーロラリフレクションベール』と『星域結界』を守りに追加したので、先程の攻撃を受けても大分マシになる筈だ。

 ちなみに、『アステルリヴァイヴ』の効果時間は、効果を発揮しなければ半日と非常に長いので、掛け直す必要はない。


 間違いなく、木のミサイルに気を取られていると、先程のチナ曰く空間炸裂攻撃をまた食らう事に為るだろう。

 見た所木のミサイルは、ある程度撃墜すると新たに生えて来る様だ。

 つまり、ダンジョンコアである首長竜の浮遊島に直接攻撃して、次のフェイズに移行しないとキリが無いと云う事になる


 『虹の戦乙女イリス オブ ワルキューレ』と『星虹龍』を使用し、エルナとチナに向かって来る木のミサイルを戦乙女と龍に対応させ、ダンジョンコアの空間炸裂攻撃に気を付けながら接近する。

 こちらの射線が開けた所で、島に向かって攻撃開始するが、島の周りに突如として巨大な竜巻が発生。巨大竜巻がこちらの射線を塞ぐ様にうねり動き、チナのブレス攻撃以外がまともに島に命中していない様だ。

 如何やら、島へまともにダメージを与える為には、あの巨大竜巻を潜り抜け、島の上空から攻撃するしか無さそうだ。例の空間炸裂攻撃はブレス攻撃見たいだし、実は島残って居た方が良かったのか? でも、残ってたらそれはそれで大変か。

 モンスターと木のミサイルの密度がヤバい事に為るもんな。

 とにかく、竜巻を打ち抜いて島に接近だ!


『白炎星撃!』


 パッ! と光が走り衝撃と共に白い爆炎が撒き散らされる。

 ドガガガガアアアアアァァァァァアアアアッ!!

 爆音が遅れて響、竜巻を消し飛ばす。竜巻の後ろには、木のミサイルが島を守る様に並んでいたらしく、並んだ木々が壁の如く立ち塞がる。しかし、先程のエルナの攻撃の影響で大きな穴が出来ており、今現在も白い爆炎が燃え移り、穴がより大きく為る様子が見て取れた。


 俺は竜巻と木々の壁が復活する前に、急いで島の上空にチナと一緒に飛び込んだ。


 島の上空に来て、『これで漸く島に攻撃ができるぞ』と思っていたのだが。直ぐに島その物であるダンジョンコアが不気味な鳴動始める。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ! ドッゴオオオオォォォォォオオオオオオオオオ!!!


 デスデイノと戦った島のカルデラ湖後が噴火したのだ!


 猛烈に噴き上がる噴煙に、火山雷が発生し火山弾が俺達に飛んでくる。おまけに木のミサイルが火山弾に触れると、燃え上がる癖に撃墜される事無く、ファイアーツリージャベリンと言った様子で、パワーUPして襲ってくる。


「『星燐』由来の炎で問題なく落とせるけど、いちいち相手にしてられないし、島ごと焼き払って元から断つ!」


 生活魔法の要領で、魔力を風と火と雷の属性エネルギーに変換し虹翼に大量に流し込む。エルナの極光の虹翼が放電現象を伴うジェットエンジンの炎の様になる。

 即興だが両翼で『白流雷火・虹翼爆閃』をやる下地は出来ている。いくぞ!


『白流雷火・双翼虹波爆風閃!!!!』


 虹を纏った白く光る風が、同じ色彩の炎と雷を迸らせ、ダンジョンコアである首長竜の浮遊島全域に駆け巡る。

 カッ! 島全体が眩しく輝いたかと思うと。


 ドゴォッ! ゴゴンッ! ゴゴォオッ!! ドガアアァァァアアアアアア!!!!


 轟音と共に虹の色彩を纏った白い炎雷の爆柱が壁の如く立つ。その壁の如き爆柱は、視界を埋め尽くさんばかりに広がり、更なる爆発を引き起こす!!


 スガガガガガガガ!!!! ドッゴオゴゴオオオオオオオ!!!!!


 虹の色彩を纏った白い炎の放つ荒れ狂う雷が、島を抉るたび更なる爆炎が噴き上がり、爆炎からまた雷が生じ島抉る。まさに無限爆雷と言った有様だ。


 バア――――――!!!! ドゴゴオオオオ――――――――――!!!!!!


 炎雷の最後の大爆発が起こり、炎と雷は綺麗サッパリ消え失せ、無残に焼け焦げボロボロになった首長竜の島の姿が見える。


『エルナはやっぱり、いつも爆発させてるのじゃ!』


 チナ、その言い方だと俺がまるで爆弾魔みたいじゃないか。

 いや、まあ実際そう見ても仕方ないんだけどさぁ。


¶『おのれ! 良くも此処まで我が身体を傷付けてくれてたな! 許さんぞぉ!!』

警告:ネームドダンジョンコア〈見えざる浮遊山林・スペシネイト〉がダンジョン崩壊全域攻撃『ダンジョンコンプレッション・バーンディストーション』を発動しました。


 ええぇっ! ダンジョン崩壊攻撃だと!?

 んな攻撃して、ダンジョンコアは平気なのか?

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