52 水プラズマってヤバいよね

 四体目の中ボスを倒すため、結果的に浮遊島をぐるっと回る形で、道を進んで行くとバーンテリオスとテラーバードが出現しなくなった。

 星輝による感知情報収集の訓練がてら、辺りの星輝から情報を読み取ってみる。

 星輝から感じられる事によると、どうも急激に寒くなっている様だ。

 更に進んで行くと、森の木々や地面の上に雪が積もる景色へと変わって往く。

 そうなると、寒冷地装備のテリオニアンと新たにテラーバードの亜種であるテーラーダウンバード。つまり、羽毛でふわもこに為ったテラーバードの二種だけが出現する様になった。


 程無くすると、四度目となる中ボスの居る広場まで来る。

 広場は雪に埋もれており、中心がこんもりと小高い丘の様に盛り上がっている。

 多分、雪が盛り上がっている所に居るのが中ボス何だろう。

 また、ワニなのかねぇ?


¶エリアBOSS フリージングゲーターのBFに侵入しました。


 BFに入ると、グオオオオオオオ! と言う咆哮と共に、広場中心の雪が爆発し雪煙が舞い上がる。雪煙の中、浮かび上がるシルエットは、やはりワニに見えた。


 雪煙の中心から魔力の高まりをを感じたので、念のため装備アーツ『アステルシールド』を自分とチナを守る様に発動する。

 アーツを発動すると、【星霊虹翼フロマエルアステリア】から、色とりどり光の粒を放出する、虹色の星の形をした半透明のバリアシールドが、自分とチナに前面に展開された。これは若干視認性が悪いのでは?

 あっ、そうか! 星輝の認識の仕方を変えれば問題ないのか!


 こちらのアーツが発動したのと、ほぼ同時に魔力を伴った猛烈な吹雪が、竜巻の様に渦を巻いて襲って来た。『アステルシールド』は、見た目的には前面にしか効果がなさそうだが、吹雪の竜巻が通過しても全くの無風状態だったので、実は全方位バリアシールドだった事を知った。


 先程の吹雪の竜巻の攻撃で、雪煙が晴れ中ボスの姿が見える。

 先制攻撃を繰り出してきた、中ボスのフリージングゲーターは、青白い色をしているがやはりワニだった。

 このボスのワニ縛りは何なんだろうね?

 そんな事を考えていると、チナが勢いよく飛び出して行く。


「この中ボスも、わちに任せるのじゃ!」 


 チナがそう言いつつ、フリージングゲーターに高速で接近し、両手に水を纏わせ拳を握り放電する。

 急接近するチナに向かって、フリージングゲーターは吹雪のブレスを口から吐き出すが、チナは軽いフットワークでそれを回避。

 纏った水が拳の高温の放電領域に流れ込み、水が一気に原子に分解されオーロラを思わせる光、つまりプラズマの輝きを見せる。


 そういえばチナは、以前から水関連ならサ行の発音が上手く出来ていたが、それ以外のサ行も少し活舌が良くなったみたいだ。成長を感じるよね。


「『水焔滅打』なのじゃ!!」


 チナの繰り出した拳からフリージングゲーターに向かって、プラズマの光がジェット噴射される炎の如く迸る、所謂プラズマジェットってやつだ。

 多分これは水プラズマって奴だろう、少なくとも熱プラズマに間違いない。

 その証拠にチナの拳から放たれた、プラズマジェットに触れたフリージングゲーターの体は、その部位だけ綺麗サッパリ消えていたのだから。

 水プラズマ含む熱プラズマの温度は、発生させるだけで摂氏一万度を優に超える超高温。触れた物は燃えるのではなく、まるで消滅したかの様に気化してしまうのだ。

 水プラズマは、水から直接プラズマを発生させると云う物で原理は簡単だ。

 水を高温の放電領域にぶち込み、水蒸気を経ずに一気に電離気体即ちプラズマにするというシンプルな物だ。しかも、水プラズマは、熱プラズマの中でも一番クリーンに、触れた物を分解する事ができると云うオマケ付きだ。


 この水プラズマは現実世界の技術に置いても、低コスト高威力でしかも携帯性抜群の、水プラズマトーチが実在する。サイズはグルーガン位の大きさで必要電力は一般家庭何処にでもあるドライヤーの1kw程度の電力と水があれば良いと云う代物。しかもこの水も実際は、ジュースやビール等でも問題ないと云うのが、ツッコミを入れたくなる所だ。もちろん、リアルで悪用されたらめちゃヤバい代物だ。

 ちなみに、太陽の表面温度が摂氏六千度と云われているのだから、水プラズマのヤバさは推して知るべしだ。あと、水プラズマと水中プラズマって言う名前が似てる別の技術が有る、ややこしいよね。


 そんな訳でフリージングゲーターは、チナの『水焔滅打』と言う名の水プラズマの暴威により、あっさりと撃破されるのだった。

 いやぁ~、どう見てもオーバーキルだな。


 あっ! 水プラズマってよく考えて見たら、エルナでも【雷鋼輝槍エレアロードヴェイン】を使えば簡単にできそうだぞ。

 なんせエレアロードヴェインは、雷と電気を帯びた水と鉱物を操る力がある訳だし、槍そのものが水プラズマ発生装置としてまんま使えそうだ。

 そもそも雷がプラズマ現象の一種だし、ちょっと練習すればできるかもな。


¶エリアBOSS フリージングゲーターとの戦闘に勝利しました。


 アナウンスが有ると山頂では、先ほどの水蒸気噴火を上回る量の大量の水蒸気が発生していた。如何やら、ダンジョンのギミックが起動した様だな。

 まあ、それは良いとして、チナが誇らしげな顔でどやーっと仰け反り、「わち凄いでしょ」って感じでエルナを見上げる。

 これは、本霊であるエナも良くやる褒めて褒めてアピールだ!


「ふっふーん♪ わちは水や氷の力をもつ相手にも強いのじゃ!」


 如何やらチナは自分は色々出来るし、同属性や氷属性の相手にも自分は優位な攻撃ができるよ! って事をアピールしたかった様である。

 そして、エナと同様チナも「わちをほめるのじゃ」と絶賛アピール中なので沢山褒めてあげる事にした。


「チナ、さっきのアーツ凄かったよ~。中ボスを瞬殺だもんね!」


「そうなのじゃ! わち、凄いのじゃ!」


 偉い偉いと、たっぷりとチナをなでなでし、可愛い成分と癒しを充填した後。

 中ボスのドロップアイテムや宝箱は既に回収済みなので、山頂以外のまだ行っていないルートをパパッと調べて、取りこぼしが無い様に宝箱を回収した。

 ちなみに、フリージングゲーターのドロップアイテムは、水プラズマ攻撃でフルボッコのオーバーキルだった所為か、寂しい量に為っている様に感じた。

 まあ、しょうがないかなぁ。オーバーキルとかドロップに影響しそうだしな。


 山頂へのルートを進むが、特に新しいモンスターが出て来る事も無く、山頂に来る事ができた。山頂へ至るルートは三つ有ったので、そちらの方も回った。

 このダンジョンの全ルートを巡るのは、時間が掛かりそうに思えるが、瞬殺可能なモンスターに、エルナとチナのAGIの高さを利用して超特急でルートを巡り、実は簡単に把握する事ができていた。

 山頂には、カルデラ湖が形成されており、豊かな水を湛えていた。

 恐らくは、中ボスを達を倒して往くなか作動していたダンジョンのギミックが、このカルデラ湖を出現させる為の物だったのだろう。

 山頂に行ける様になってから、山頂をちょくちょく見に来てたら、カルデラ湖が作られて往く様子を見れたのかもしれない。ちょっとは観て見たかったな。

 地形と云えば、プレデター・フォレストカイマンの、BF周辺の森が再生していなかった。やはり何かあるのだろうか?


 ちなみに、全ルート巡っている間にスキルやアーツを習得する事ができた。

 まず、例の星輝を利用した感知に関連した物で『星覚』と云うスキルを習得した。

 これのお陰で、星輝から様々な情報が得られる様になった。

 更に星法を使う事で、星輝を溜めたり込めたりする事をアーツの様に使用する事で、ある程度自動でやってくれるアビリティ『オーロラチャージ』も習得。

 水プラズマ関連のアーツも、練習したら思った通り割と簡単に修得できた。

 同じく星法で、水プラズマを利用した魔法かアーツを作ろうとしたら、魔法系の判定になった様で、初の自前スペルアーツを習得できたりした。


 そんな訳で、山頂にあたるカルデラ湖の外縁を見て回ると。

 碑石とカルデラ湖に降りていける道を見つけた。

 碑石には「戒めは解かれ、島の本当の姿を知る資格を得た。後は、この先に居る守護者を倒すのみである。」と書かれていた。

 あれ? カルデラ湖が出現した、今の状態こそが島の本当の姿じゃないのか?

 う~む? まあ、ダンジョンボスを倒せば何か分かる事だろうし、取り合えずカルデラ湖に降りて見るか。

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