47 夜空を見て神話に思いを馳せてみる

 ログインっと。待機ルームで、温泉施設の飲み物やアイスを共有倉庫に詰めてからログインしたけど。プティサルーン浮遊大陸は丁度深夜の0時だ。

 この前ログアウトしたバーガーショップの近くに居るのだが、深夜だと云っても皇都の夜は明るい様だ。特に来訪者ギルドのある地区は、例の謎の物質が作用しているのか、地面と建物が発光していてメチャクチャ明るい。


 明るくて丁度いいので、現実準拠の昨日確認していなかった、ギフトボックスの中身をちゃんと確認する。クロニクルクエストのイベント報酬は、MVP報酬とイベント参加報酬の二つが入っており、まずは参加報酬を取り出してみる。

 ギフトボックスから取り出された参加報酬は、プレゼントボックスに入っており「過剰包装かよ!」と一瞬思ったが気にせず開ける事にした。中には、ポ-ションと思われる10本の液体の入った瓶と、説明の書いてある紙が入っていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

経験値増加ポーション

効果:服用から5時間、経験値1,5倍。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 これって、来訪者プレイヤーが貰えたって云う、ログインボーナスの経験値増加ポーションと同じ効果の奴かな? 転生者にも使える経験値増加ポーショはかなり有難いけど、運営が早よ強く成れって言ってる見たいだな。

 経験値増加ポーションは、アバター専用でBALV制限付きの奴なら、来訪者プレイヤーだと課金で手に入れられるんだよなぁ、ちょっと羨ましい。

 まあ、とにかく。これは、エナにパワーレベリングして貰う時にでも使うかな?

 ティアーズクロワに仕舞っておこう。


 では、MVP報酬の確認だ。正直あんまり期待してはいない。

 いや~だって、自キャラ発端で自分で解決ってねぇ?

 仕方ないとは言え、ちょっと如何なんだろうって思うよ。

 やはり参加報酬と同じで、プレゼントボックスが出て来る。プレゼントボックスの中身は、そこそこの大きさの盾とその説明の書かれた紙と一緒に入っていた。

 その盾は紅色をしており、つい最近見た事がある様な気がするなぁ。

 う~ん。確かこれって、エジェマの奴が戦闘開始前に投げ捨てて、全く使う事の無かった大盾と同じデザインじゃん。

 如何やら大盾では無いらしく、通常サイズの盾になっている様だな。

 エルナは使わないけど、シエルが使うのには良いかも知れない。

 でも、シエルが使うには色が微妙だなぁ。一応スペックも確認するかな。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

魔盾ルナティックアトラクト

フレーバー:狂える月の誘惑がお前達から理性と視線を奪うだろう。

装備アーツ 誘引挑発 狂騒誘発 自壊誘発

DEF+3420,RES+2760

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 これって強いのだろうか? 普通の装備の強さが分からないんだよねぇ、神器しか持ってないからさ。一応ソフィーちゃんに聞いて見るか。


『そうですねぇ。BALV900までは使えると思いますよ。あの、エジェマと言う騎士の強さから考えると、この装備は弱過ぎるとは思いますけどね』


 ふ~む。これってエルナ的には、ハズレ装備なのでは?

 いや、シエルが居るから使えるか?

 始まってまだ現実では、三日目であると云う事を考えれば、十分なのだろうけど。

 取り合えず、共有倉庫行だな。

 これよりも、良い物が手に入ったら使わないだろうけど。一応シエルが使う事を考慮して、装備のデザインや色を変える様なアイテムが無いか探してみる。

 転生者でも使える課金アイテムリストを探すと、幾つか使えそうなアイテムを確認できた。つけると見た目が変わる、所謂スキンってやつだな。

 これでシエルが使う場合も問題なしだ。


 さて、今やるべきなのは、BALVを上げるのとワープポータルで行ける場所を増やす事なのだが。こんな真夜中にログインしてしまった所為で、何をすればいいのか迷うなぁ。取り合えず、チナを召喚する。


「すぅ……すぅ……、うにゅ……もぐもぐ……うみゃ……」


 穏やかな顔して眠るチナは、時折口をもぐもぐさせて、幸せに満ちた表情を見せてくれる。正直何時までも見ていられるなぁ。


 じー、Σはっ! 思わずチナの可愛い寝顔に見入ってしまった。

 美味しい物を食べる夢を見ている様で、とても幸せそうだ。

 起こすの忍びないので、そっと送還する。


 さて、どうするかな? そうだ! 他のコスモプレイヤーがいるスタート地点の町まで、ポータルを使って移動できる様にしよう!

 えーっと、一番近いのは確か……。聖ステルシェリア王国、王都アステリズムね!

 良し! 早速、夜間飛行だ!

 あれ? これだけ見ると何か、ただ単に夜空を飛びたいだけに見えるな?


 空を飛ぶにしても、こんなサイバーチックな場所から飛んだら、人も多いしUFOに間違えられそうなので、別の地区に移動する。

 やはり皇都は全体的に明るく。街灯の明かりに高層建築の窓明かり。何よりも、皇都の至る所にある大きな樹が優しい光で周囲を照らしている。

 いいねぇ、めっちゃファンタジーしている光景だ。

 人通りもそれなりに有るが、この位の明るさなら、スキルやアーツを駆使すれば周りに気付かれずに、空を飛ぶ事ができるだろう。


 極光の虹翼を展開し、その身に夜気をを感じながら夜空へと躍り出る。

 空には星々がキラキラと輝き、大小ある青の月と金の月が地上を照らしている。


 間隔を空けて幾つか見える赤い星は、嘗て存在した赤の月の欠片を集めて作られた衛星で、【八星聖域守護結界ルージュ オブ アミュレット】と呼ばれる六柱の大神が協力して作った物だ。

 当時救援に来ていた【支え踏み成す霊気立つ巨界の巌】大神アーカムルーガが、宇宙空間に散らばった赤の月の欠片を八つにまとめ、同じく救援来ていた【無窮の空踊る空界への軌跡の羽】大神テンスタファリオンが、八つの小さな衛星と成った赤の月の欠片の衛星軌道を定めた。

 そして、守護結界を得意とし亜麻色の髪との瑠璃色瞳の淑女の姿をしているとされる、【困難を打破する救済の守護者】大神ルルシュナミリオン。

 彼女を中心に、彼女の上司で黄金の全身鎧の老将姿をした【勝利と秩序為す聖域の黄金】大神セグオンラーグ。

 彼女の同僚で、大神としては非常に珍しい昇神をした【白盾掲げし鉄騎の守護者】大神クレンクレンシュ。

 この世界の始まりの六柱の一柱である、【深き安寧の眼】闇眠神ミクシェの母。

 特殊な領域の力を持ち、幼い女性平安貴族の様な姿をしているとされる、【癒し饗す花天月地の理想郷】大神ユーシェルオウカ。

 この四柱が、八つの衛星を核にした惑星領域クラスの聖域守護結界。

 即ち、【八星聖域守護結界ルージュ オブ アミュレット】を展開し、この星を守っている。


 ユーシェルオウカと云えば、エルナとも縁のある大神だ。

 創天の意思が曾お祖母ちゃん自称しているが、ユーシェルオウカはエルアクシアの母たる神の一柱、暗眠神ミクシェの母だ。なので、ユーシェルオウカはエルアクシアの祖母にあたる為、正真正銘エルナの曾お祖母ちゃんと云える。


 ちなみに、【八星聖域守護結界ルージュ オブ アミュレット】という名称は当初は付いていなかった。後の転輪神ルージュネアの功績とその見た目から勝手に、エルアクシアの人々が呼び始めた呼称である。

 理由は「俺達の星を守るあの紅い星の結界。ルージュネア様っぽいし、あの人最近凄い加護をくれる様になったから、【八星聖域守護結界ルージュ オブ アミュレット】とか良いんじゃね」見たいなノリで呼ばれ始めたとか。


 ついでに、この赤の月の欠片は当然地上にも降り注いでおり、それが大陸と幾つかの島々に成っている。この時、そのまま地上に落ちたら、地上が滅んでいたであろう最大の欠片を、地上に居たエルアクシアの神々が、力を合わせ協力しこれを受け止めたのは、なかなか熱い展開である。

 この大陸や島々の創生には大神が関わっており、当時救援に来ていた四柱の大神のお陰で、この星に馴染んだとされる。

 大陸は、最も付き合いの長い異世界の大神で狼の姿をした、【歪み行く深淵の底にて芽吹きし者】大神クラクルイユ。

 これまた古い付き合いで、エルアクシアの神々が救援に行った事のあるイルカの姿をした異世界の大神で、【水面煌めく海遊回天の大海流】大神テルマーテルマー。

 この二柱が、地上に落ちた目ぼしい欠片を集め大陸にした。

 幾つか落としたものが、島に成ったのはご愛敬だ。なんせワンコとイルカのした事だしな。でも、この赤い月の欠片は宇宙由来のエネルギーの所為で、このまま放置して置くと問題が起こる。

 なので、猫の姿をした【心夢灯りが満たす幻界の導き手】大神ミーテムミールと、天女の姿をした【言祝ぎの音響く幽玄なる山水】シュテムルミスト。この二柱が惑星エルアクシアに、赤の月の欠片で出来た大地が馴染む様に、祝福した事でレッドムーン大陸と月降り諸島が出来たとされる。


 ちなみに、この時集められなかった赤の月の欠片は、【天の忘れ物】と呼ばれる事になる。【天の忘れ物】は周囲に特殊な影響を与え、所謂魔境と呼ばれる様な場所を生み出す事になったらしい。


 そろそろ、神話に思いを馳せるのをやめて、夜空の遊覧散歩と行きますか!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る