45 異次元世界テラの来訪者とは
応接室に通されると、総理事と思われる人物は既にこちらに来ていたらしく、エルナ達が部屋に入ると歓迎す様に迎えてくれた。
その人は、快活そうな笑顔をこちらに向けていた。
三十代前半に見える堀が深めのイケオジと云った風体に、真っ白な白髪に金色の髪がメッシュの様に混ざった短めの頭髪。
相応に年を重ねた顔の右側に、額から頬まである縦に長い十字の古傷が有り右目に眼帯をしている。眼帯の無い左目は、灰色がかった青色をしていて、服の上からでも分かる筋肉質な体には、覇気が満ち生命力に溢れている。
そして現実世界に居そうな、ワイシャツにスラックスと云った服装をしていた。
ファンタジー世界なので、この服装は違和感がバリバリだ。
「やあ! エルアクシアの友よ、歓迎しよう! 私は来訪者ギルド総理事、エルムンド=バーガスト・G・エルムと言う。この来訪者ギルドの代表をやらせて貰っている者だ。君たち、宜しく頼むよ!」
「あっ! えっと、私はエルナです。冒険者と巫女やってます。よろしくお願いします?」
「ふむ、わしはエナじゃ。一応このジュナ皇国で、神をやっておるのじゃ。よろしゅうな」
「チナなのじゃ! よろしくなのじゃ!」
総理事の自己紹介に、思わず釣られて俺もエナも自己紹介してしまったぜ。
チナはって? チナはちゃんと挨拶が出来て偉いし可愛いよねぇ~。
「さてと、挨拶もした処で、君たちは我々テラの来訪者の何が知りたいのかな?」
「私はテラと云う世界の事も、あなた達テラの来訪者の事も、何も知らないので全部教えて貰いたいのですが。でも、今一番知りたいのは、つい最近エルアクシアに沢山やって来た、テラの来訪者達の事ですね」
「なるほど、良いですよ。全部お教えしましょう。別に隠す様な事は、一つもありませんからね」
さてさて、どんな話が聞けるのかね?
「新たに、この世界に来た我々の同胞の話をするには、我々の世界である異次元世界テラの創世神話から、話した方が無理がないでしょう」
異次元世界テラの起源の根本は、やはり創天の意思が大元にある様で、そこは共通しているとの事。では何が違うのかと云うと、俺達が今いる次元世界は大神が世界を作り大きな流れを生み出す次元である。
一方異次元世界テラは、創天の意思が世界の大部分を作り、オーバールーラーと呼ばれる十二体の大神に似た超常的存在に、管理を任せている。なのでこちら側とは、独立した異なる次元世界であると云う事らしい。
うむ、完全に俺の知らない世界の話ですな。
しかし、異次元て云うのは別ストレージ? いや、別サーバーの事かな?
それに、創天の意思が世界のの大部分を作ったと云うのは、やはり現実世界のプレイヤーに関係するからだろうな。
「ふむ。わしらの居る次元、創天想域とは別の次元領域の様じゃのぅ」
むむ! 如何やらエルアクシアを含む、こちら側の世界が在る次元の事を創天想域と言うらしい。丁度知りたかったから、ナイスだエナ!
「我々の世界テラは、星々輝く宇宙と言う名の星の海を渡る船を駆り、星々を巡る冒険が心を熱く駆り立てる、素晴らしい世界なのだが。世界創世の頃より我々が行く事のできない場所があるのだよ。そこは、創天の意思の命によりオーバールーラーの盟主、【異次元宇宙の管理者イシェド】様の保護下にあるアースと言う惑星だ。その惑星はもちろん、そこに住む人達も伝説の上の存在と云う認識だったのだよ」
アースね。もしかして、地球の惑星シミュレーター、模倣地球の事かな?
「まさに、未開拓の保護惑星であるアースが保護されている理由は、そこに住む人達アース人を保護する為だったのさ。彼らは皆後天的に、特殊な能力が目覚めるらしくてね。その能力は何でも、自分だけの完全に独立した世界を作り出せると云う物で、その特殊性から創天様の勅命により保護される事に為った様だね。そして、今沢山この世界に来ている来訪者達こそが、イシェド様の保護下にある未開拓保護惑星アースに住む、アース人と呼ばれる人達と言う訳だ。我々来訪者の中では、プレイヤーと呼ばれている者達の事だね」
はいはい、完全にスペースオペラとかの世界じゃないですか。
本当に俺の知らない世界です。
それにしても、プレイヤーは未開拓保護惑星アースの住人と言う設定ですか。
でも話から察するに、能力が目覚めた人達が、現実世界のプレイヤーだよな。
だってさ、自分だけの完全に独立した世界を作れるって、どう考えても待機ルームの事じゃん。
「ちなみに、目覚めた力の事をコスモと言うらしいね。私も60年前この世界でアバターとは云え、アース人に会ったのは初めてだったからねぇ。私も年甲斐も無く興奮してしまってね。惑星アースの事や彼ら自身の事を、友人に成ってくれた彼らから、色々と聞いてしまったよ。いや~、あれも良い思い出だねぇ、はっはっはっ!」
え~っと、つまり俺たち現実世界からログインしているプレイヤーは、コスモと言う能力を使えるアース人という事らしい。
おそらく、コスモプレイヤーが俺達の正式な呼び名になりそうだ。
「只でさえ、自分達の星から基本的、出る事ができないのがアース人だ。中でも、コスモ能力を目覚めさせた人達は、力を使い熟せる様になるまでは、自分の世界から出られない様でね。家族にすら会えないそうだ。そうなると当然、『彼らに外の世界を!』と言う声でて来るのさ。そう言う訳でコスモ専用【ERAS】を、創天様とイシェド様が用意なされた見たいなんだ。だから、今回来ているアース人達の大半は、コスモ能力者なんだよ。ちなみに、我々は彼らをコスモ能力者のプレイヤーを、コスモプレイヤーと呼んでいるんだ」
おお! コスモプレイヤーがやはり正式名称か!
待機ルームに戻ったら掲示板にでも書き込むか、IFO内の掲示板はまだ書き込めないしな。それにしても今さらっと言っていたが、待機ルームから惑星アースに行けるって事が判明したよなぁ。
ちなみに、【ERAS】とはエンパシーリアライザー・アバターシステムの略だ。
プレイヤー……いや、コスモプレイヤーの全てを文字通り管理している、コスモプレイヤーの精神が宿ったアバターを、テラからエルアクシアに送るのも戻すのもそうだし、IFO内運営公式サービスを受けられるのも皆このシステムのお陰だ。
他にも総理事を始めとする、60年前にエルアクシアに来たテラ来訪者の事を、敬意を込めてパイオニアと呼んだり。エルアクシアとテラのゲートを、生身で通り抜けて来た来訪者をダイバーと呼んだりするそうだ。
総理事三十代前半に見えるけど、もしかして100歳越えてたりするのだろうか?
それとアース人は、肉体的にゲートを通り抜ける適性が無く。エルアクシアのある創天想域に来るには、【ERAS】を使用するしか方法が無いとの事。
でもそれって、精神や魂だけなら通れるという事で、ゲームのキャラクタークリエイトで、二キャラクター作れる理由にも一応為ってる訳だ。
待機ルームは自分だけの世界だと言うし、それはもう何でもできる神様見たいなものだろう。それならアバターシステムを真似て、時間を越えて魂だけを飛ばして転生とか。そう云う理屈で、イメージクリエイトの転生者キャラが、作成できると言う事なのだろう。自キャラを待機ルームに呼び出せるのも同じ理屈かな?
あれ? と云う事はだよ。話を纏めると待機ルームのリアルアバターは、アース人って言うIFOのキャラクターでもあるって事になるよな?
それに、キャラクタークリエイトの時に、性行為が可能で子供ができるって、俺が18歳以上だからか出てたけど、これを知らん人もいるよな?
しかもこれって、待機ルームのリアルアバターも同じと云う事になるよな?
更にだ、エルナが覚えている避妊の魔法、コントラセプションの事も考えるとだ。
IFOは子供ができるから注意してね! と言うメッセージをずっと出している。
これって、結構やらかしている人が居そうだなぁ~。
俺も本当にそう云う仕様なのか、リアルアバターの確認はするけどさ。
これは、ほぼ間違いないよなぁ。
この事から分かるのは、自分のリアルアバターか、自分の持ちキャラもしくは、アバタークリエイト仕様のボディを得たナビなのか、それは分からないが。
待機ルームで、一線を越えてエロい事をした人は、自キャラかナビを妊娠させてしまった可能性があると云う事だ。
アレは注意を促す様ではあるが、その逆にIFOは幾らでも性欲発散できるよ! とアピールもしているとも言えたしな。
それにこれは、FUTURE VISION社の大規模実験としか思えない。
FUTURE VISIONなだけに未来を見据えたVR家族計画とか?
こんな問題しかない様な事を、やって良いのかと思わなくもないが。
そもそも、こんな大規模な人体実験をやれてしまっている時点で、何かしら大きな政治的力も働いているのは間違いないだろう。
フルダイブVRは一度大きな事件になっているのだから猶更だ。
では、どう考えてもそこらのワールドシミュレーター何て目じゃない、スーパー量子コンピューター
それが何かを考えて行くと……。思い出すのは、20年以上も前から都市伝説として有名な、電子世界への人類の移住計画だろうか。
この場合はIFOのVR世界へ、人類の移住やろうとしてる。そう云う事なのか?
確かに出来そうではあるが……、如何なんだろうな?
そう言えば、待機ルームの課金項目で、色んな商業施設や海や山等の地形や土地、動植物等も購入し待機ルームに設置できる事を考えると。
やはりFUTURE VISION社は、人類の移住計画を進めている様に思えてくる。
それにもう実は既に、実験では無く実行段階に入ってたりしてね?
まあそれに、これは単なる憶測だしな。
何はともあれ、待機ルームに戻って確認しないと何とも言えないし、やっぱり流石にVR世界への移住計画は無いよなぁ~……多分。
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