2章

39 空の上で掲示板を見る

 青い空には太陽が輝き、竜の姿になったエナ越しに見る眼下には、雲とプティサルーン浮遊大陸の大地が広がっている。今はジュナ皇国の首都、皇都ドーンライズを目指し、エナの背中に乗せて貰らい移動している最中だ。

 結局の所、一番近い創天神殿とはジュナ皇国の首都だったと云う事だ。

 そうしたらエナが、「エルナよ。わしの背中に乗せて連れて行ってやるのじゃ!」との事で、のんびり風景を見ていた訳だ。

 しかし、何時までも風景を見ていても飽きると言う物だ。

 どうせなら、自分で飛べばよかったかなぁと、思わなくもないが。詳しい場所を知らないし、直観も反応しないので、こうしてエナに甘えさせて貰っている。

 ちなみに、チナは湯たんぽ代わりにと、エルナに抱きかかえている状態だ。

 まあ、抱きかかえているのは俺なんだがな!


 星霊姫であるエルナには、特段寒さなど感じないのだが。抱きかかえているチナは、ぽかぽかと暖かくて心地よいとても幸せな気分になれる。

 きっとこれは、エルナもそう思っているに違いないだろう。そう云えば、まだ何か結構重要な事があった気がするな? う~ん。何だったかな~?


『シズル様。忘れているのは掲示板の事では?』


 うわっ!? びっくりした!! そう云えばソフィーちゃんが居たんだった。

 ちょっと、ソフィーちゃんの事も忘れていたが、俺が何を忘れているのかを見事に教えてくれた。それにしても、俺完全に思考読まれてるじゃん!


『おや? シズル様は、思考を読まれたくないのですか? てっきりワザとソフィーちゃんが、助言し易い様なさっているのだとばかり思っていました。でしたら、思考が駄々洩れにならない様に、イメージ制御すればよろしいのでは?』


 ソフィーちゃんに、思考駄々洩れ状態をどうにかする方法を聞き、スマホを使うようなイメージで制御する事が出来た。それはともかく、メニューでは加護持ち交流掲示板に若干略されている、【加護持ち者達の交流掲示板】を観て見る事にする。


 メニュー画面に掲示板が映る。まず、目につくのが、この世界の加護持ち達が書き込んできた大量のスレッドだ。有用そうな情報も、ありそうな気はするが。

 まずは、イメージキャラクタークリエイトによって作られた転生者達のスレッドを観て見たい。転生者と言ってもプレイヤーとは限らない様なので、IFOの設定にあるテラの転生者の括りで探すとスレが出て来る。


 取り合えず、どんな転生者が居るのか気になったので、自己紹介スレを見る事にする。一通り見て俺も一応書き込もうとしたが、コメントを書き込む所が無く書くことが出来ない。

 システムメッセージが、透かさずエルナは現在閲覧オンリーであると言ってくる。

 書き込めんのかい! まあ、書き込めなくとも、見れるだけで掲示板は有用だ。

 ただし、デマが流れなければな。


 おそらく、プレイヤーであろう彼らのキャラ情報を見て、俺は少し安心する。

 エルナも大概だが、他の転生者も結構アレだなと思う。

 BALV4006とか、こんな高LVスタートが有りなんだとか。イメージの詳細の詰めが甘いと、その人にとって残念な事になる割合が高く意図せずTSしてしまったりとか。スレの前半にも性格の事で嘆いている人がいたが、後半には当人的にはヤバイ性格に成ってしまったと云う物も書かれていた。

 それに、寝落ちでやらかしている人も、スレ全体を見ると結構居たようである。

 それに、ユニークキャラクターっぽい人もいるし見てよかったと思えた。

 特に高LVの転生者は現状エルナでプレイしている俺が、仲良くなれる可能性を持つ数少ないプレイヤー達である。中の人など関係なく美少女キャラが良いな。

 ちなみに、俺がスレを見た限りイメージクリエイトのキャラは、イメージする事でキャラの設定や側が作られ、思いの強さと多分熱量でキャラの強さが作られている様に見えたな。


「にゅ? エルナはなに見ておるのじゃ?」


 俺が何か見ているのにチナが気が付いた様だ。


「交流掲示板って言うのが見れる様になったから、記憶喪失で分からなくなった知識とか、掲示板を見て補えないかなと思って見てるんだよね」


「けいじばんか! わちも見ることができるやつなのじゃ!」


 ほうほう、チナも掲示板が見れるのか。

 なら、一緒に見る事ができるのか試して見るか。

 すると、特に何もなくあっさりできた。


「エルナは、転しぇちゃが気になるのじゃ?」


「うん。ほら、私も転生者だしね。それに今、テラって言う異世界から、来訪者って呼ばれる人達が沢山来てるんでしょ? だから、その世界から転生したって人達の事が気になっちゃって」


「ふみゅ。言われてみれば、たちかに気になるのじゃ!」


 そんな訳で、チナと一緒に掲示板を見る事にした。チナの髪のキューティクルが作る天使の輪を見て癒されながら。今度は別の転生者スレで、転生者がIFO内で起こった事を書いているスレを見る。


 スレを見ていくと、転生者は来訪者と違い本当に自分達が転生して、本当にこの世界に生きている様に感じているんだろうと思えた。

 彼らの来訪者に対する感情が俺にそう思わせるのだが。

 俺はまだ来訪者に合ってもいないし、エルナの記憶と人格の統合などが行われなかったので、彼らほど転生したという実感を持っていない。

 来訪者の行動は俺から見ると、そういう人達は必ず一定割合いるのはしょうがないし、スプラッタもフィルターを掛けていれば気付かないだろう。

 それにスプラッタに関しては、この世界で生きて行く事を考えるなら、転生者達の反応は少し来訪者に対して過剰に思える。

 ブエナの町の冒険者は、観光地だから身綺麗にしている方だと思うけど、それでも依頼から返ってきた直後とか、割とスプラッタな人もいたしね。

 来訪者に対しては、特別な感情でも働いているんだろうか?

 自分達と同じ価値観を持ってる筈なのにとか?

 でも、自分達と同じって言うけど現実世界でも人種や国で価値観が違う物だし、やっぱり過剰に反応しているように感じるなぁ~。

 これはDDSを使った、来訪者と転生者の仲違い誘発の仕掛けだったりしてね。


「こやつらは、何をしょんなにしゃわいでおるのじゃろう? らいほうちゃは少し変わっておるが、しょこまでしゃわぐほどには思えんのじゃ。別のしぇかいには、別の価値感があるものじゃ。わちらは、しょれを良く知っているのじゃ。たちかに、不快なことばを使う者もおるようじゃが。新たないしぇかいとの、ほんかくてきな初交流なのじゃから、こんなの普通のことじゃと、わちは思うのじゃ」


「やっぱり、チナもそう思う?」


「とうぜんなのじゃ!」


 ふむ。チナの舌っ足らずな喋りや見た目とは裏腹に、真面目な話はやっぱ見た目と違って中身は大人なんだなぁと、しみじみ感じながら。

 流石は、様々な世界と交流があるエルアクシアの住人だと思うのだった。


 しかし、大賢者さんが言うように来訪者が怪しいのは確かだ。

 来訪者がエルアクシアに現れてから60年と言う話だが、今まではクローズドβプレイヤーが来ていたんだろうと勝手に思っていた。

 だが、この世界の歴史やIFO自体の事を考えると、その来訪者が現実世界のプレイヤーだったとは限らないのではないか? そう思える様になった。


 それから、ワープポータルとか1000万エアとか、払えるけどなかなかに酷い。

 特に課金をさせようとしているのが酷い、IFOって一応月額課金制のゲームなんだよ? ゲーム内外の追加の課金要素が有るだけで。

 ちなみに、俺は料金がお得になるので、一番お得な年間払いしてますよ。

 するとエナが話しかけて来た。


『エルナよ。もう直ぐジュナの首都、皇都ドーンライズが見えてくるのじゃ』


 エナの言う通り大きな都市らしき物が見えて来た。

 その大都市は、一本の巨大な大樹を中心に巨大な宮殿と高層建築が立ち並び、その町並みは違和感なく自然とマッチしていた。

 その大都市から少し離れた周囲を大都市の大樹ほどではないが、やはり現実の世界の樹々を知っている俺から見ると、ファンタジーに良く出て来る世界樹にしか見えない。その六本の大樹がまるで、六芒星を思わせる配置で生えている。

 六本の大樹の周囲にも都市がある様で高層建築が見えた。

 どの都市も高層建築の合間には緑が見え、科学と自然が一体になりましたと言ってる様だった。


 古い遺跡何かが、森の中にあるのとは違う。

 生きた都市が、まるで森の中にある様に見える不思議な光景だった。

 実際には、森がある訳ではないのに。

 俺にはそう見えてしまうほど、その光景は圧巻だったのだ。


 これがジュナ皇国首都、皇都ドーンライズか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る